認知症との付き合い方について|テスト・治療・ケア・予防の方法をご紹介

家族が認知症になった場合、症状の進行を抑えるために治療が必要になります。大きく分けて、薬を使う「薬物治療」普段の生活から改善する「非薬物治療」の2種類です。治療法は認知症の種類によって使い分けることが必要になります。そこで今回はどのような治療が認知症に効果的なのかを一覧でご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

認知症との付き合い方について|テスト・治療・ケア・予防の方法をご紹介
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

認知症とは

認知症とは、脳の認知機能が低下することによって引き起こされる症状の総称です。全部で60種類ほどあり、それぞれで症状が違います。なかでも全体の92%が「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」の三大認知症です。

認知症は誰しもがかかってしまう可能性があります。ほとんどの認知症は完治しませんが、症状を遅らせることは可能です。だからこそ早期発見が重要になります。

認知症はよく物忘れと混同されてしまいます。しかし物忘れと認知症は明確な違いがあることを覚えておきましょう。例えば「玄関に財布を置きっぱなしにしてしまった」と思い出せる場合は物忘れです。しかし「財布を持っていく理由が分からない」と行動そのものを忘れてしまった場合は認知症にになります。

まずは認知症の定義を把握しておきましょう。すると家族が認知症になっているのかを判別する際の材料になります。

認知症の対策

認知症は誰しもがかかってしまうと前述しました。明確な予防法はまだありません。しかし認知症予防に効果があるのではないか、と思われている行動はあります。大きく分けると「食習慣」「運動」「知的行動習慣」「人との交流」の4点です。

食習慣

アルツハイマー型認知症を引き起こす要因として分かっている物質が「アミロイドβ(ベータ)タンパク質」です。この物質が脳内に溜まってしまうことで、アルツハイマー型認知症を発症する可能性も高まります。アミロイドβタンパク質を減らすために有効な物質は「魚」「緑黄色野菜・果物」「緑茶」「赤ワイン」などが挙げられます。

運動

有酸素運動は特に認知症予防に効果があるとされています。体を動かすことで、血行が良くなり、脳細胞が活性化するのです。「ウォーキング」「水泳」「踏み台昇降」をはじめとする運動が効果的といわれています。

知的行動習慣

俗にいう「頭の体操」もまた認知症予防に効果があるとされています。現在ではゲーム機やスマートフォンアプリケーションが発達していますので、家族がインストールして試すのもよいでしょう。なかにはスマートフォンで音楽回想法を実践できるアプリもあります。

人との交流

他人と交流することは非常に頭を使う行為です。例えば会話をする際には無意識ながら脳を使っています。相手の言葉を認知し、適切な回答を思い描き、言葉を発するという行為だけでも脳に刺激があるのです。

認知症と診断された後は「認知症カフェ」の利用が効果的

認知症カフェとは、市区町村や社会福祉協議会、民間企業などが主催している認知症患者とその家族が交流できるカフェのことです。店によっては認知症の方が店員を務めることもあります。認知症の進行予防や家族同士の話し合いなどができる場として重宝されています。

認知症チェックの方法

予防法を試したとしても、認知症になってしまうリスクは誰にでもあります。かかってしまった場合は、前述したように早期発見を心がける必要があることを覚えておきましょう。

そのためにセルフチェックと医療機関でのチェックが必要になります。では実際に用いられているチェック方法を紹介しましょう。ただし利用する際の注意点として「対象者の体調が優れているときでないと正しく計測できない」「長谷川式やMMSEはセルフチェックによって人間関係を壊してしまうリスクがありおすすめできない」の2点があります。

長谷川式認知症スケール

精神科医の長谷川和夫氏によって作られた評価シートになります。このテストによって20点以上が記録された場合、認知機能の低下が日常生活に影響を及ぼしている可能性があります。

MMSE(ミニメンタルステート検査)

アメリカで生まれた検査方法です。特にアルツハイマー型認知症の検査として使われ、記憶力や言語力、計算力、検討式などの程度を30点満点で計測します。23点以下だと認知症の疑いがあるとされている検査です。

時計描画試験(CDT)

丸時計の絵を描くテストになります。A4の紙に11時10分を示す時計を書いてもらうだけの試験です。空間認識能力などを判別します。

このほか「ウェックスラー成人知能検査」「高齢者うつスケール」などの種類があり、使い分けることで認知症を判別できるのが魅力です。

もし認知症が疑われる場合はかかりつけ医に相談を

セルフチェックなどで認知症の疑いがあった際は、医療機関で検査をする必要があります。精神科や診療内科など、どの機関にかかるべきかわからない場合も有るでしょう。まずは、かかりつけ医に相談することをおすすめします。適した紹介状を書いてくれるので、安心して病院に行けるのです。

また物忘れ外来も全国にあります。「もしかして認知症かも」と思った際に訪れる外来です。患者側の意見を聞き、問診を通して認知症の可能性があるかどうかを精神課の医師が判断します。

認知症の治療について

医療機関から認知症の症状があると判定されたら、すぐに治療とりかかることが重要です。繰り返しになりますが、認知症は早期発見によって症状の進行を抑えることで、介護をする家族の負担も軽減されます。なので、早めに診断を受けてきちんと適した方法で治療を進める必要が有るのです。

認知症の治療には大きく2種類があります。薬物治療非薬物治療です。ではそれぞれについて具体的な治療法や薬物名をご紹介しましょう。

薬物治療

分類 名称 適応 剤型 使用回数
アルツハイマー型認知症 レビー小体型認知症
軽度 中等度 高度
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬 アリセプト 内服 1日1回
レミニール - - 内服 1日2回
リバスタッチパッチ、イクロセンパッチ - - 貼付剤 1日1回
NMDA受容体拮抗剤 メマリー - - 内服 1日1回

投薬によって認知症の進行を抑制する療法になります。2020年8月現在、認可されている認知症の薬は「アリセプト」「レミニール」「リバスタッチパッチ」「イクロセンパッチ」「メマリー」です。これらの薬はアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症にのみ効果があるとされています。

アリセプト、レミニール、リバスタッチパッチ、イクロセンパッチはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬に分類されます。アセチルコリンとは神経伝達物質であり、認知機能の保全において重要な物質です。アセチルコリンエステラーゼはそんな大事なアセチルコリンを分解しようとします。そこでアセチルコリンエステラーゼの働きを阻害するためにこれらの薬は効果を発揮するのです。

メマリーはNMDA受容体拮抗剤に分類されます。認知症の脳内ではグルタミン酸の過剰放出がなされています。その結果、記憶機能を妨害してしまいます。メマリーを服用することでグルタミン酸を抑えられるのです。

非薬物治療

薬を用いずに認知症の治療をする方法もあります。

項目 概要
認知機能リハビリテーション ゲームやパズル、言葉遊びなどで楽しく認知機能を改善する
生活リハビリテーション 家事などを通して、生活のなかで認知機能を改善する
園芸療法 植物にふれることで季節感を取り戻すなど、見当識障害の抑制になる
回想法 昔を思い出して人に伝えることで、記憶障害の抑制や自己肯定につなげる
ペット療法 ペットに対して興味を持つことで自発的な姿勢になる。またリラックス効果も高まる
音楽療法 音楽によってストレスを軽減しし、不安感を払拭する

生活のなかで私たちは自然と脳を用いています。他者と交流をしながら日常生活を送るだけも認知症の抑制に効果的です。認知症に特化したグループホームでは極力、介護職員が助けずに日常的な家事などを入居者に任せます。すると思考力が保たれ、認知症が進行しにくくなるのです。

また趣味なども認知症の進行に歯止めをかける効果があります。たとえば音楽を聞くこと。自分が若い頃に流行った音楽などを聞くと、自然と記憶が回想されるのです。また絵画なども効果的であり、脳に刺激が行き届きます。

超高齢社会に突入した日本では、以前に比べて認知症の患者が増えました。そんななか、2015年には認知症に対して正しい知識を持って接し、周りに広める「認知症サポーター」が発足、2020年には1,200万人もの認知症サポーターが日本で活躍しています。

また完治できないと言われている認知症ですが、ここ数年は治療薬の研究も進んでおり、数年後には認知症は「治る疾患」になっているかもしれません。ただし現在は早期発見、早期治療が必要です。対策を施しつつ、不安なことがあったらチェックをしましょう。もし認知症と診断されたら、落ち着いて病院に通い、なるべく進行を抑制できるよう務めることが大事です。

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最後に「認知症との付き合い方」に関する記事を一覧で掲載します。あらためて気になる記事をご覧ください。

認知症の予防について

認知症の検査方法について

認知症の症状について

認知症の治療について

認知症ケアについて

認知症の中核症状について

認知症サポーターについて

軽度認知障害(MCI)について

アパシーについて

コース立方体組み合わせテストについて

VSRADについて

この記事のまとめ

  • 認知症は誰もがかかってしまう疾患
  • 確実な予防法はないが、対策できる可能性がある
  • 「もしかしたら」と思ったら、まずかかりつけ医に相談する

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