介護老人保健施設(老健)とは?
介護老人保健施設(老健)とは、高齢者の方が病院から退院するときに「すぐ家に戻るのは難しい」と思われる場合に、一時的にリハビリを受ける施設です。長期療養や日常生活のための施設ではないため、入居期間は原則3カ月、在宅復帰のめどが立てば退去となります。
介護のほんね 地域医療支援チーム リーダー。「介護のほんねの地域医療支援チームでは、主に病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)の方から患者様の退院支援に関するご相談を承っています。退院後の療養生活を安心して任せられる施設の提案から、見学予約、同行支援まで、入居相談員が老人ホーム探しをお手伝いします」
病院退院後などに在宅復帰を目指してリハビリを受ける公的施設
介護老人保健施設(以下、老健)は、高齢者の方が病院を退院したあと「すぐに自宅に戻るのは難しい」と思われる場合にリハビリを受けるための公的施設です。在宅復帰を目標に、医師や看護師、介護職に加え、リハビリ職や管理栄養士、歯科衛生士、ケアマネジャー(以下、ケアマネ)、支援相談員などさまざまな職種がチームでサポートするのが特徴です。ほとんどの施設がショートステイや通所リハビリを通じて在宅復帰後のフォローもおこなっています。
老健は病院と自宅の中間施設と位置付けられ、主に医療法人や社会福祉法人によって運営されています。入居対象となるのは要介護1以上の高齢者(65歳以上)の方です。また、在宅復帰を目指す施設のため終身利用はできず、入居期間は3カ月ごとに見直されます。
メリット・デメリット
老健のリハビリは、多職種が協働することで日常生活の中で切れ目なく提供されることに特徴があります。理学療法士や作業療法士などのリハビリの専門職によるリハビリに加え、介護職がおこなう離床や移動、食事、入浴、排泄の介助など日常生活上のリハビリも、在宅復帰を目指す上で大切です。また、公的施設のため入居時に入居一時金や敷金といった初期費用がかからないこと、要介護1以上で入居できることがメリットに挙げられます。
ただし、老健はあくまでリハビリ施設であり、長期療養や日常生活のための施設ではありません。入居期間は原則3カ月ごとに見直され、在宅復帰のめどが立てば退去することになります。同様の理由で、多床室が主流となっているため「個室がいい」という方には不向きかもしれません。リハビリに重きが置かれるぶん、レクリエーションなどの余暇活動も少なめです。
さらに、処方されている薬の種類が多い場合や高額な薬が含まれる場合などは、処方の見直しを提案されたり入所を断られたりするケースもあります。
メリット | デメリット |
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介護老人保健施設で受けられるサービス
サービス | 医師の管理のもと、ケアプアランに従って看護・介護・リハビリが提供される。特養やほかの老人ホームと比較するとレクリエーションやイベントは少ない。看取りに対応している施設もある。 |
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スタッフ | 看護・介護職員は要介護者3名に対して1名以上(3:1介護)。そのほか医師、相談員、ケアマネ、リハビリ職員などが配置される。 |
設備 | 居室の広さは、個室の場合10.65㎡以上、多床室の場合1人あたり8㎡以上。多床室が一般的。 |
サービス
ケアプランに従って医療サービス・介護サービス・リハビリを受けることができます。リハビリを重点的におこなっているため、特養やほかの有料老人ホームと比較するとレクリエーションやイベントなどの余暇活動は少なめです。看取りに対応している施設もあります。
スタッフ
入居者3人に対して1人以上の職員が配置されます(3:1介護)。常勤の医師が必ずいるほか、多くの施設が夜間にも看護職員を配置しています。そのほかにもリハビリ職(PT:理学療法士、OT:作業療法士、ST:言語聴覚士)、管理栄養士・栄養士、調理員、相談員、ケアマネと、さまざまな職種の人が働いています。
設備
居室(療養室)のタイプは主に次の4つに分けられますが、主流は従来型の多床室や個室です。
居室タイプ | 居住環境 |
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従来型多床室 | 4人部屋 |
従来型個室 | 個室 |
ユニット型個室的多床室 | 個室的多床室 + 共同のリビングスペース |
ユニット型個室 | 個室 + 共同のリビングスペース |
広さについては、多床室の場合は1人あたり8㎡以上、個室の場合は10.65㎡以上とされています。そのほか、診察室や機能訓練室、食堂、浴室、洗面所、トイレなどがあります。
介護老人保健施設にかかる費用
支払い方式 | 初期費用 | 月額費用 |
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月払い方式 | 0円 | 8〜16万円 |
初期費用
老健は公的施設のため、民間の有料老人ホームのように入居一時金(前払金)や敷金はかかりません。
月額費用
老健の月額費用の相場は8〜16万円程度です。内訳は居住費、食費、介護保険サービス費が含まれます。2人部屋や1人部屋の場合は居住費に差額ベッド代が加算されるため、多床室のほうが費用を抑えられます。また、介護サービス費は要介護度や加算の有無によっても費用が変わってきます。なお、洗濯や理美容にかかる費用などは実費(自己負担)となります。
介護老人保健施設の入居条件
入居者 | 要介護1以上の認定を受けている65歳以上の方。 |
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保証人 | 原則必要。子どもや親族など、身近に頼れる人がいない場合は、成年後見制度や保証会社を利用する。 |
退去となるケース | リハビリの結果、在宅復帰が可能な状態になった場合。そのほか、長期入院が必要になった場合や認知症が進行し暴力や暴言がある場合など。 |
入居者
老健に入居できるのは、要介護1以上の認定を受けている65歳以上の方となります。40歳以上65歳未満の方でも、若年性認知症など特定疾病のために要介護認定を受けていれば入居が可能です。
保証人
老健に入居する際には保証人が必要となります。通常は入居される方の子どもや親族が保証人となりますが、頼れる人がいない場合は成年後見制度が利用できます。また保証会社を利用できる場合もあります。
退去となるケース
リハビリの結果、在宅復帰が可能な状態になれば退去に向けて準備を進めることになります。そのほか、特養などと同様、長期入院(おおむね3カ月以上)が必要になった場合、認知症が進行しほかの入居者や職員に対して暴力・暴言がある場合なども退去となります。
介護のほんね入居相談員より「介護老人保健施設はこんな方におすすめです」
- 公益社団法人 全国老人保健施設協会
- 厚生労働省「社会保障審議会 介護給付費分科会 第183回(令和2年8月27日開催) 資料2 介護老人保健施設」
- 厚生労働省「社会保障審議会 介護給付費分科会 第144回(平成29年8月4日開催) 参考資料2 介護老人保健施設」
- 厚生労働省「平成30年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査」
- 厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」
- e-Gov法令検索「介護保険法」
- e-Gov法令検索「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」
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