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介護保険の申請についてタイミングや流れ、書類の書き方などを教えてください

本格的に家族の介護が必要になってきました。そこで介護保険を利用しながら介護をしたいと思っています。申請の流れなどを把握しておきたいので、教えてください!

A要介護認定を受けたうえで、流れに沿って介護保険を申請しましょう。書類の記入例などもご紹介します。

介護保険を利用するためには、まず要介護認定を受ける必要があります。その後、お住まいの市区町村で書類手続きなどをしながら申請することが必要です。

小濱道博
小濱道博
小濱介護経営事務所 代表

介護保険は介護にかかる費用の一部を市区町村が負担するものです。使うためには、要介護認定などの条件を通過する必要があります。要介護認定によって受けられる介護サービスをはじめ、 要介護認定の判定方法、申請から認定までの流れ、その際のポイントなどもみていきましょう。

介護保険とは

介護保険とは介護保険制度に基づき、介護が必要な要支援者・要介護者に対し、介護サービスを受けるための費用の一部を給付するものです。給付には介護の程度の判定を受け、各市区町村や専門機関において一定の手続きが必要となります。

一方、介護保険の保険者は全国の市区町村で、被保険者(加入者)はその地域の40歳以上の居住者が対象となり、被保険者が納付する介護保険料と税金によってまかなわれます。

また介護サービスの費用の自己負担割合は1割となりますが、年収に応じて2割、あるいは3割となる場合もあります。

要介護認定されると受けられるサービス

介護保険が適用される介護サービスはさまざまですが、大きく3つに分けられます。

居宅サービス

居宅サービスは、要介護・要支援者が在宅のまま受けられる介護サービスです。種類が多いことから「訪問サービス」「通所サービス」「短期入所サービス」とさらにサービスの内容が細分化されています。

このうち訪問サービスでは、要介護・要支援者の自宅において生活支援や介護、看護、リハビリといったサービスが提供されます。

通所サービスは、訪問サービスで提供されるサービスを、要介護・要支援者が日中施設に通うことで受けられるものです。

短期入所サービスは、要介護者・要支援者を一定期間施設で受け入れることによりサービスを提供します。

施設サービス

施設サービスは要介護状態にある高齢者が「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「介護医療院」に入所することで提供されるサービスです。

特別養護老人ホームでは食事や排泄、入浴などの介護が中心ですが、他の3つの施設では医学管理のもと、さらにリハビリや看護、療養管理などもサービスも提供されます。

地域密着型サービス

地域密着型サービスは高齢者が住み慣れた地域で生活が続けられるよう、同地域に事業所を持つサービス事業者によって提供される介護サービスです。

種類は多く、訪問あるいは施設に受け入れる「訪問・通所型サービス」、通いや施設入居で生活支援や認知症ケアなどを提供する「認知症対応型サービス」、各種施設においてサービスが提供される「施設・特定施設型サービス」もあります。

介護保険申請時に必要な書類など

介護保険の給付によって介護サービスを受ける際には、まず要介護認定の申請をしなければなりません。申請には、次のような書類と身分証明証が必要となります。

要介護認定申請書

市町村役場や地域包括支援センターの窓口などで入手できます。また郵送のほか、各自治体のホームページからPDFやEXCEL形式でダウンロードし、記入して提出することも可能です。

介護保険被保険者証

65歳の誕生日を迎える前に市区町村から郵送される証書です。一方、第2号被保険者となる65歳未満で要介護認定の申請する場合には、介護保険被保険者証の代わりに健康保険証が必要となります。

マイナンバー

マイナンバーカードなど、要介護者となる本人のマイナンバー(個人番号)が確認できる書類も必要です。マイナンバーが確認できれば、写しでもかまいません。

身分証明書

顔写真入りで身分が証明できる運転免許証パスポートなどのほか、顔写真入りのマイナンバーカードも利用できます。

主治医の意見書

主治医に作成を依頼するものです。依頼は市区町村がするため、申請者は要介護認定申請書に医師の名前、病院名、連絡先などを記入するだけで、直接依頼する必要はありません。また主治医がいない場合には、市区町村が指定する医師に受診後、要介護認定申請書に記入します。

要介護認定の判定

要介護認定では要介護度を判定するために、市区町村の担当者やケアマネジャーによって調査区分に応じた聞き取り調査がなされます。この聞き取り調査は大きく5項目に分類されています。

身体機能や起居動作

介護認定を受けようとする本人の、生活上の基本動作をチェックします。聞き取り調査が中心となりますが、必要に応じて本人が実際の動作をするほか、家族に聞き取りをして確認することもあります。確認内容は次のような点です。

  • 麻痺等はあるか
  • 拘縮(関節可動域が制限された状態)があるか
  • 寝返りできるか
  • 起き上がることができるか
  • 座位を保持できるか
  • 両足での立位が可能か
  • 歩行できるか
  • 立ち上がることができるか
  • 片足での立位が可能か
  • 洗身できるか
  • つめ切りができるか
  • 視力は生活に支障がないか
  • 聴力は生活に支障がないか

生活機能

日常生活に伴う行動について確認します。確認内容は次のような点です。

  • 移乗できるか
  • 動できるか
  • えん下できるか
  • 食事は摂取できるか
  • 排尿できるか
  • 排便できるか
  • 歯磨きができるか
  • 洗顔ができるか
  • 整髪ができるか
  • 上衣の着脱ができるか
  • ズボンの着脱ができるか
  • 外出の頻度はどれくらいか

認知機能

意思の伝達や短期記憶について確認します。確認内容は次のような点です。

  • 意思の伝達ができるか
  • 毎日の日課の理解できているか
  • 生年月日をいうことはできるか
  • 短期記憶に問題はないか
  • 自分の名前をいうことはできるか
  • 現在の季節を理解できているか

精神・行動障害

過去1カ月を振り返り、社会生活を送るうえで起こした不適当な行動とその程度について確認します。確認内容は次のような点です。

  • 害的でないか
  • 作話をするか
  • 感情が不安定でないか
  • 昼夜逆転していないか
  • 同じ話をするか
  • 大声をだすことがあるか
  • 介護に抵抗しないか
  • 落ち着きがないことはないか
  • ひとりで出歩きたがることはないか
  • 収集癖はないか
  • 物などを壊すことはないか
  • ひどい物忘れがないか
  • 独り言や独り笑いがないか
  • 自分勝手に行動することはないか
  • 話がまとまらないことはないか

社会生活の適応

社会生活をするうえでの能力の有無や、集団に適応することができるか、またそれらに関する介助が必要かなどを確認します。確認内容は次のような点です。

  • 薬の内服ができるか
  • 金銭の管理ができるか
  • 日常生活における意思決定ができるか
  • 集団に適応できるか
  • 買い物ができるか
  • 簡単な調理ができるか

要介護認定等基準時間の算出

聞き取り調査の結果をもとにコンピュータによって要介護認定等基準時間の推計値が算出されます。ただしこの要介護認定等基準時間は介護サービスを受ける時間ではなく、介護の必要性を判断するために厚生労働省により設定された基準です。また推計に用いられるデータは介護老人福祉施設などに入所あるいは入院している3,500人の高齢者を対象とした調査結果によるものになります。

介護保険申請の流れ

介護保険の申請から認定までは、以下のような流れで行われます。

STEP1.書類の提出

介護保険の申請では、まず入手した規定の書類や必要な証明書などをそろえて提出します。申請先は市町村あるいは区の窓口で、要介護者となる本人またはその家族がすることもできます。しかし指定居宅支援事業者、介護保険施設などの介護支援専門員による代行申請をすることがほとんどです。もし代行申請をしていない場合は、市区町村の窓口で「地域のケアマネジャー一覧」を渡されて申請の代行をすることを勧められることが多々あります。この場合に代行料金はかかりません。

STEP2.訪問調査の日程の調整

必要な書類などを提出すると、市区町村の担当者による訪問調査の日程の調整の連絡があります。希望の日時に合わせて日程を決めますが、当日体調が悪いなど調査結果に影響を及ぼす場合には、調査日が変更されることもあります。

STEP3.要介護認定の訪問調査

訪問調査は市区町村の担当者やケアマネジャーが、直接要介護者となる本人の自宅を訪れてなされます。これが上記の聞き取り調査です。

聞き取り調査では調査結果に基づき調査票が作成され、さらに調査票で表現できない状態は特記事項として記入されます。

STEP4.要介護認定の一次判定

聞き取り調査の結果によってコンピュータでの要介護認定等基準時間の推計値の算出がでます。これにより、介護度あるいは支援度の判定ががなされるのが一次判定です。

また、このとき市区町村が主治医に意見書の作成を依頼します。上記のように、主治医がいない場合には市区町村が指定する医師受診が必要です。

STEP5.要介護認定の二次判定

二次判定では一次判定の結果に基づき、厚生労働大臣が定める基準にしたがって主治医の意見書やその他の書類による要介護認定区分の検討が行われます。判定を行うのは5名ほどの介護認定審査会です。

この介護認定審査会は必要があると認められる場合、市町村に意義を唱えることもできます。

主に「要介護状態になるのを予防するのに必要な療養」や「家事などに係る援助に関する事項」、あるいは「指定居宅サービスを適切かつ有効に利用するために被保険者が留意すべき事項」などを検討し、これらの項目に該当する場合は、介護サービスの変更を申し立てることで、よりご本人のためになる介護サービスを利用できる可能性もあります。

STEP6.約1カ月後に要介護認定の通知受け取り

要介護認定の通知は、郵送によって約1カ月以内に通知されます。認定の区分は、要支援から要介護までの7つの分類のいずれかです。

認定された場合には該当する要介護状態区分のほか、認定審査による意見が通知とともに郵送される介護保険被保険者証に記載されます。一方、該当しない場合には理由を付して申請が却下されます。

また要介護状態の認定は介護保険法第27条11項に基づき、介護保険申請のあった日に遡り、効力が発生します。

要介護認定の申請で覚えておきたいポイント

近年急激な高齢化社会により増加し続けている介護保険費用の抑制を目的に、市区町村の要介護認定の判定基準は厳しくなっているという声もあります。

しかし、介護が必要なタイミングは突然訪れることもあり、できるだけ早く、かつ適切な要介護状態区分で認定されるのが望ましいのは確かです。要介護認定の申請の際のポイントをあらかじめ押さえておくとよいでしょう。

要介護認定の結果が出る前にサービスを利用できる場合もある

要介護認定の通知は約1カ月以内に通知されます。しかし介護保険申請のあった日から効力が発生するため、認定結果が出る前でもサービスを受けることが可能です。

この場合、認定前の期間は暫定的に介護保険資格者証が交付されます。これを提示することにより、ケアマネジャーに暫定ケアプランの作成を依頼することで介護保険サービスを利用することができます。

ただし、認定前の期間には要介護度が決定していません。もし認定結果が非該当だった場合、利用したサービスは全額自己負担となります。

判定に不服がある場合は抗議できる

要介護認定の結果が非該当の場合でも、判定に不服があるときには市区町村の介護保険課認定審査係において認定結果の理由の確認と相談が可能です。

これにより、要介護認定の取り消しを求める介護保険審査会への審査請求ができることがあります。しかし審査請求は取り消しの判定までに数カ月かかり、再度認定されるためには最初から申請をしなければなりません。

そこで判定に不服があった場合に「要介護認定の区分変更申請をする」というのも1つの方法です。区分変更申請は本来要介護の区分を変更するためにしますが、要介護認定の結果に不服がある場合にもよく利用されます。

方法は要介護認定の申請と同様で、結果も約1カ月以内に通知されます。ただし、希望の区分に認定されるとは限らないため注意も必要です。

認定調査員との面談前に伝えるべきことを整理しておく

要介護認定における訪問調査の際には限られた時間の中で実情を的確に伝える必要があります。そこで、あらかじめ確認内容をチェックしておき、事前に回答を検討しておくとよいでしょう。

また、できるだけ具体的に回答できるよう、介助が必要となった原因や介助方法についてもあらかじめメモしておくことも大切です。このほか、実際に介護に割ける時間がどれくらいあるか、家族の介護力を忘れずに伝える必要もあります。

特に本人面談では「できないことをできる」と言ってしまうこともあります。

現状を正確に伝えましょう。

介護サービスを受けながら、無理せず介護をするために

介護保険の申請にはさまざまな手続きや審査があり、介護サービスを受けるのはハードルが高いと感じられることもあります。

しかしながら、核家族化が進む現代にあって、要介護者を家族だけで介護するのは困難です。そんなとき、介護保険によって受けられる介護サービスは要介護者やその家族にとって大きな助けとなります。

そこで、介護サービスの必要性を感じた際には要介護認定の申請を検討し、不明点については窓口となる各市区町村に問い合わせてみるとよいでしょう。

小濱道博

この記事の監修

小濱道博

小濱介護経営事務所 代表

小濱介護経営事務所代表、C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問、C−SR 社)医療介護経営研究会 専務理事ほか。全国各地で介護事業コンサルティングを実施。介護事業経営セミナーの開催実績は北海道から沖縄まで全国で年間300件以上。全国各地の自治体主催講演、各介護協会、社会福祉協議会主催での講師実績も多数。「日経ヘルスケア」等の連載、寄稿多数。 「これだけは押さえておきたい算定要件シリーズ」「これならわかる〈スッキリ図解〉実地指導」ほか著書多数。

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