物忘れ外来とは|診察・検査の流れ、認知症と物忘れの違いなどを紹介

加齢とともに記憶力は低下し、物事を思い出せなくなることはよくあることです。しかし、その物忘れが認知症なのか、単なる老化なのか、不安を覚えることでしょう。「認知症かも?」と思っても、その判断は一般人には難しいところです。

そんなときはぜひ「物忘れ外来」に足を運んでみてください。もし認知症だった場合は、早期に発見できるため進行を遅延させることも可能です。

この記事では、認知症の専門医である内門先生(湘南いなほクリニック院長)の監修のもと、物忘れ外来について解説します。

物忘れ外来とは|診察・検査の流れ、認知症と物忘れの違いなどを紹介

横浜市立大学医学部卒業。2011年より現職。現在は、いなほクリニックグループ共同代表として認知症在宅医療を推進する一方、N-Pネットワーク研究会代表世話人、日本認知症予防学会神奈川県支部支部長、レビー小体型認知症研究会事務局長などの取り組みを通じて、認知症診療の充実ならびに認知症啓発活動に精力的に取り組む。『 レビー小体型認知症 正しい基礎知識とケア 』(池田書店)など著書多数。

物忘れ外来とは

物忘れ外来とは、老化による「物忘れ」疾患による「認知症」を判別し、認知症を早期発見・治療するための外来です。専門医に診てもらうことで適切な判断ができます。たとえ、認知症だった場合もスピーディーに治療を始めることが可能であり、早期発見にも効果があります。

総合病院やクリニックに併設されていることが多く、認知症分野の専門医が在籍しています。神経内科や精神科、脳神経外科などの医師が担当することが多いでしょう。

また物忘れ外来と言わず「メモリークリニック」「認知症外来」と呼んでいる医療機関もありますが、内容は同じです。

「認知症は早期発見が重要」といわれる理由

認知症は進行性の病気であるため、日々進行していきます。重くなってしまうと、介護を担当するご家族にも負担がかかるのです。ただし治療によって、症状緩和や進行遅延を期待できます。だからこそ「認知症かもしれない」と感じた際には早めの診断が大切なのです。

また認知症は完治しないというイメージもありますが、認知症の原因となる疾患によっては治る認知症もあります。「特発性正常圧水頭症」「慢性硬膜下血腫」などは手術することによって、認知症の症状を解消できるのです。こういった治る認知症も重症化すると、治療が難しくなることもあります。

また、正しい疾患や状況を把握しておくことで、介護者としての対応も理解が深まります。結果、認知症の重症化や進行が抑えられるのです。

老化現象と認知症の違い

高齢の方が物忘れをする度に「認知症ではないか」と心配してしまいます。しかし高齢になると物忘れが増えることは自然なことです。

次に「老化による物忘れ」「認知症による物忘れ」の違いを紹介します。老化による物忘れは体験の一部を忘れているのに対し、認知症による物忘れは体験そのものを忘れていることが特徴です。両者の違いを理解して、自分や家族の異変を見定めてください。

老化による物忘れ
  • 地名や人の名前など一般的な知識を忘れる
  • 食事したことは覚えているが、何を食べたかを覚えていない
  • 進行・悪化はしない
  • 物忘れをした自覚がある
認知症による物忘れ
  • 経験した出来事を忘れる
  • 食事したこと、買い物に来たこと自体を忘れる
  • 進行していく、進行に伴い日常生活に支障をきたす
  • 物忘れをした自覚がない

認知症の症状は物忘れだけではない

認知症の症状は「物忘れ」などの認知機能の低下だけではありません。他にも認知症のサインである症状をまとめました。思い当たる節があれば、かかりつけ医または専門医の受診を検討してみてください。

認知症のサイン

  • 熱中していたことに興味がなくなった
  • お金の管理ができない
  • 家族とのケンカが増えた
  • 「財布が盗まれた」「浮気している」などの被害妄想
  • お風呂に入りたがらない
  • 夜中に徘徊するようになった
  • 性格が変わった

認知症の症状については以下の記事に詳しく解説しています。

物忘れ外来の選び方

高齢化とともに物忘れ外来の病院数も増加しています。物忘れ外来の受診を考えている方のために、物忘れ外来の選び方を紹介します。

かかりつけ医に紹介してもらう

かかりつけ医がいる場合は、まずはかかりつけ医に相談します。そこで物忘れ外来などの認知症の専門医を紹介してもらいましょう。

日ごろの健康状態を知っているかかりつけ医と認知症の専門医の連携が取れていると、治療が始まった際も服薬管理や他の疾患などの情報提供がスムーズです。

医師で選ぶ

かかりつけ医がいない場合は、認知症に精通している医師を選ぶのもいいでしょう。もの忘れ外来の医師は、日本認知症学会日本老年精神医学会や日本認知症予防学会で認知症専門医の資格を修得した医師が多くいます。

各学会のホームページには全国の認知症専門医のリストがありますので、ぜひ参考にしてください。

場所で選ぶ

通いやすい場所で選ぶのも適した物忘れ外来を探す方法の1つでしょう。弊社が提供する無料の医療辞典「メドレー」のホームページでは、全国の物忘れ外来の病院・クリニックも検索できます。駅や地名を入力して、近隣の物忘れ外来を探してみてください。

地域包括支援センターに相談する

地域包括支援センターは、生活や介護に関する相談窓口です。認知症に関する相談も受けつけており近隣の物忘れ外来を紹介してもらえます。

地域包括支援センターについては以下の記事に詳しく解説しています。

物忘れ外来での検査の流れ

物忘れ外来では、初回は認知症診断を実施します。おおまかな検査の流れを紹介しましょう。

面接・問診

担当医から、現在困っていることや気になる症状、健康状態、疾患について質問されます。あくまで、ご本人の診察なので、ご本人に医療者は寄り添いますが、一方で、ご家族の付き添い(ご家族からの情報)もまた必要です。

ご本人から許可を得る形で、付き添いのご家族はご本人の行動などを医師から聞かれますので、答える準備をしておきましょう。ご家族の客観的な見解も認知症かを判断する材料の1つです。

以下に医師から質問されがちな項目をまとめました。突然、聞かれても対応できるように普段から対象者の行動や気になることをメモしておくことをおすすめします。

主に質問される内容
  • いつ頃から様子が変わったか
  • どんな異変があったか、まとめておく
  • 今までの大きな病気を患っているか
  • 現在、治療中の病気があるか
  • 現在、服薬している薬があるか
  • 家族として困っていることがあるか

身体検査

認知症の原因となる疾患がないか、必要に応じて、尿検査、血液検査(内分泌、感染症などの検査を含む)、心電図検査、胸部X線撮影など一般的な身体検査も実施します。

特に糖尿病や高血圧や高脂血症などの生活習慣病は、脳血管に障害をもたらしやすく認知症のリスクを高める危険因子といわれています。身体検査をすることで危険因子を見極めることが可能です。

神経心理学検査

神経心理検査は、高次脳機能障害を客観的に評価するテストです。もの忘れ外来のスタッフ(医師、看護師、臨床心理士など)が患者に質問しながら言語・思考・認知・記憶・行為・注意の項目を念頭におきながら評価していきます。実施するテストは医療機関や進行によって異なりますが、主な神経心理検査には以下の項目があります。

主な神経心理学検査
  • 長谷川式認知症スケール(HDS-R)
  • ミニメンタルステート検査(MMSE)
  • 時計描画テスト(CDT)
  • アルツハイマー病評価スケール(ADAS)
  • ウェックスラー成人知能検査(WAIS-R)
  • 高齢者うつスケール(GDS)

なお「長谷川式認知症スケール」は日本で一番使われているテストです。どんなテスト内容なのか、神経心理学検査のテストについては以下の記事に詳しく解説しています。

また「ミニメンタルステート検査」は海外で頻繁に用いられる認知症の検査です。詳しくは以下の記事をご覧ください。

また認知症の予備軍である軽度認知障害(MCI)を判定する「MCIスクリーニング検査」という検査もあります。軽度認知障害(MCI)については、後述します。

画像検査

画像検査には、脳の形を調べる「形態画像検査」と血液の流れを調べる「機能画面検査」があります。脳の構造を画像で診ることで脳内の異常を鮮明に確認できるのです。

また障害の部分を診る(特に機能画像検査)ことで、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の区別がつきやすくなります。

  • 形態画像検査:CT、MRI(VSRADなどによる解析)
  • 機能画面検査:SPECT(e-ZISなどによる解析)、PET

再来院・治療開始

これらの検査結果に応じて、認知症の疑いがある方は今後の治療について医師の説明を受けます。認知症の治療には、薬物治療非薬物治療があります。詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

物忘れ外来の受診前に必ず本人の意志を確認する

物忘れ外来に率先して行く高齢者の方は少ないかもしれません。なぜなら自分ではもの忘れが自覚しにくく、「自分では(記憶などの認知機能に関して)おかしいところはない。」と思ってしまうからです。

本人が頑なに拒否するときに無理やり連れて行くのはおすすめしません。自尊心を傷つけることになり、家族との信頼関係も崩れてしまいます。

問診や検査でも行きたくない気持ちが大きいと、落ち着いて検査が受けられません。リラックスしたいつものコンディションで受けることがベストです。

拒否する家族を連れて行く方法

物忘れ外来の受診を拒否したとしてもご家族としては心配です。

とはいえ「ご飯を食べに行こう」「健康診断に行こう」などごまかして病院へ連れて行くことはおすすめしません。すぐに騙されたと気がつき、結果相手を傷つけてしまうことが大半です。

その際に傷つけずに家族を物忘れ外来に連れて行くポイントとしては「相手の自尊心を傷つけないこと」です。

「これからも元気でいてほしい」と思いやりの言葉を一言プラスして「家族のためにも診てほしい」などとお願いすると納得していただけるケースもあります。また「治る認知症もある」と説得するのもいいでしょう。

ご家族で説得できない場合は、かかりつけ医から直接受診を勧めてもらうのも一案です。

物忘れ外来にかかる費用について

物忘れ外来の費用は、検査内容によって費用が異なります。あくまでも目安ですが「医師の問診+身体検査+神経心理学検査+画像検査」を合わせて、1万~3万円ほどの初期費用が必要です。なお保険の種類、負担割合によって費用も異なります。

検査ごとのだいたいの費用は下記を参考にしてください。

主な検査 1割負担の場合 3割負担の場合 自費の場合
神経心理学的検査 50~300円 150~1,500円 500~3,000円
画像検査 CT 1,300~2,000円 1,300円~2,000円 1万3,000~2万円
MRI(VSRAD※) 1,500~3,000円 4,500~9,000円 1万5,000~3万円
SPECT 8,000~1万円 2万4,000~3万円 8万~10万円
PET 8,000~1万円 2万4,000~3万円 8万~10万円
※VSRADはMRIの検査費用に含まれることが多い

認知症の予備軍、軽度認知障害(MCI)について

物忘れ外来では、認知症だけではなくその前段階の軽度認知障害を早期発見することも可能です。軽度認知障害は「MCI(Mild Cognitive Impairment)」とも呼ばれています。

軽度認知障害(MCI)は老化による物忘れと認知症の間の状態であり、さらに見極めが難しいところです。厚生労働省は、下記の5項目がすべて当てはまる人を軽度認知症(MCI)と定義しました。

軽度認知障害(MCI)の定義
  • 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する。
  • 本人または家族によるもの忘れの訴えがある。
  • 全般的な認知機能は正常範囲である。
  • 日常生活動作は自立している。
  • 認知症ではない。
参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「軽度認知障害

また軽度認知障害(MCI)を放おっておくと、約5年で半数以上の方が認知症になるといわれています。逆をいうと軽度認知障害(MCI)の段階で発見できると、認知症の発症を防げる可能性があります。

軽度認知症(MCI)については下記の記事を参考にしてください。

認知症を自分でテストする方法

認知症の神経心理学検査など本格的な検査は医療機関ですることをおすすめします。「一般社団法人 認知症予防協会」が作成した認知症自己判断テストもありますのでご紹介します。

所要時間は5分ほど、記憶力や計算力、空間認識能力などに関する10の質問に答えるだけです。Web版とPDF版で公開されており、誰でも無料で実施できますのでぜひ試してみてください。

【Web版】スマホ・PCでテストする場合
【PDF版】プリントして紙でテストする場合

認知症の予防方法については下記の記事を参考にしてください。

いつもと違う……と思ったら早めの受診を

認知症だとはっきりさせることは、本人にとっては怖いことかもしれません。しかし、認知症になったことで人生が終わってしまうわけではありません。認知症でも、笑顔で生き生きと暮らしている方は多くいらっしゃいますので、ご安心ください。

大切なのは初期段階で気づき、認知症の治療に早期に取り組むことです。そのためにも物忘れ外来に足を運び、早めの診断を心がけましょう。もし認知症だったとしても、医師のサポートを仰ぎながら進行を遅らすことが可能です。

この記事のまとめ

  • 物忘れ外来に行くことで認知症の早期発見・早期治療が可能
  • 老化による「物忘れ」と疾患による「認知症」を判別できる
  • 本人の自尊心を傷つけないで検査を受けることが大切

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