介護休暇とは? 通院介助、各種手続き、打ち合わせなど急な用事を済ませたいなら
介護離職対策として、仕事と介護を両立するための制度が拡充されています。この記事では、通院の付き添いや介護保険の申請手続きなど、突発的・短期的に仕事を休みたい時に活用できる介護休暇について解説します。
大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。
家族の介護のためにピンポイントで休みが欲しい時に使える休暇制度
介護休暇は、要介護状態にある家族のために突発的・短期的に仕事を休む必要がある時に、年次有給休暇とは別に取得できる休暇制度です。
取得可能日数 | 対象家族が1人の場合:年5日まで 対象家族が2人以上の場合:年10日まで ※時間単位での取得もOK |
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要介護状態の定義 | けがや病気、または、身体上や精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態 |
対象家族 | 配偶者(事実婚を含む)、父母、祖父母、子(養子を含む)、孫、兄弟姉妹、配偶者の父母 ※同居・扶養していなくてもOK |
対象者 | 日雇いを除くすべての労働者 |
申請方法 | 口頭でもOK |
給与 | 基本的に無給 |
所得補償 | なし |
介護休暇の取得は労働者の権利
介護休暇の取得は育児・介護休業法(正式名称:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)で労働者の権利として保障されたものです。そのため勤務先に介護休暇に関するルールがなくても、法律に基づいて取得することができます。また、労働者が介護休暇の取得を申し出た時、事業者はこれを拒むことができないことになっています。
その他にも事業者には次のようなことが求められています。
禁止されていること |
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介護休暇の利用を申し出たことや実際に利用したことを理由とした不利益な取り扱い。 (例)
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義務付けられていること |
介護休暇の利用を申し出たことや実際に利用したことを理由としたハラスメントの防止措置。 (例)
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こんな時は介護休暇
例えば、次のようなケースで介護休暇が活用できます。
- 通院の付き添い
- 入退院の手続き
- 要介護認定の申請手続き
- 要介護認定の訪問調査
- ケアマネジャーとの打ち合わせ
- 老人ホームの見学や面談、契約手続き
介護休暇の取得目的には、介護(身の回りの世話)だけでなく、通院の付き添いや介護サービスを受けるために必要な手続きの代行等も含まれていることがポイントです(育児・介護休業法施行規則 第38条)。
介護休暇の取得可能日数
介護休暇の取得可能な日数は対象家族が1人の場合は年5日まで、2人以上の場合は年10日までです。「年」がいつからいつまでかは事業者が決めていいことになっており、特に定めがない場合は4月1日〜翌3月31日となります。
介護休暇の時間単位取得
以前は1日単位または半日単位での取得しか認められていませんでしたが、2021年1月からは1時間単位での取得も可能になりました*。
取得可能時間は1日の所定労働時間*を基準に考えます。つまり1日の所定労働時間が8時間の方は、対象家族が1人の場合は年間40時間まで、2人以上の場合年間80時間まで休むことができます。
また、法律上は始業時刻や終業時刻と連続して取得することが原則となっていますが、指針(厚生労働大臣告示)では中抜けも認めるよう事業者に配慮を求めています。
介護休暇の取得条件
介護休暇の取得条件(要介護状態の定義・対象家族・対象者)は次のとおりです。
要介護状態の定義
要介護状態の定義は育児・介護休業法と介護保険法で異なります。身体上・精神上の障害に加え病気やけがも対象になる点、常時介護が必要と見込まれる期間が半年ではなく2週間と比較的短期間である点が異なります。
育児・介護休業法 第2条第3項 | 介護保険法 第7条第1項 |
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負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、厚生労働省令で定める期間(2週間以上)にわたり常時介護を必要とする状態をいう。 | 身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、厚生労働省令で定める期間(6カ月以上)にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態であって、その介護の必要の程度に応じて厚生労働省令で定める区分のいずれかに該当するものをいう。 |
具体的には、介護保険で要介護2以上の認定を受けている場合か、要介護認定を受けていなくても次の12項目のうち「2が2つ以上」または「3が1つ以上」該当する状態が続く場合に介護休暇が取得できます。
対象家族
介護休暇の対象となる家族の範囲は次のとおりです。
- 配偶者(事実婚を含む)
- 父母
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 子(養子を含む)
- 孫
- 配偶者の父母
なお、対象家族と同居していなくても介護休暇は取得できます。また、扶養しているかどうかも問いません。
対象者
介護休暇は日雇いを除くすべての労働者が取得できます。正社員や契約社員、パート、アルバイトなど雇用形態は問いません。ただし、次に該当する労働者は労使協定を結ぶことで対象外とすることが認められています。
- 勤続6カ月未満の労働者
- 週の所定労働時間が2日以下の労働者
介護休暇の申請方法
次の点を明らかにすれば、介護休暇の申請は口頭でも可能です。
- 介護休暇を取得する労働者の氏名
- 対象家族の氏名と労働者との関係(続柄)
- 対象家族が要介護状態にある事実(介護を必要とする理由)
- 介護休暇を取得する年月日(時間単位で取得する場合は開始・終了時刻も)
介護休暇の申請時に書面や証明書の提出を求めることも認められていますが、急に休みが必要になるケースも考えられるため、電話などで申し出て書面や証明書の提出は後日でも構わないという運用が一般的です。
介護休暇は有給? 無給?
ノーワーク・ノーペイの原則により事業者に介護休暇中の賃金を支払う義務はないため、基本的に無給となります。また、介護休業のような休業中の所得補償制度(介護休業給付金)もありません。ただし、失効した年次有給休暇を一定の範囲内で積み立て、介護休暇として活用できる仕組みを導入している事業者もあります(参考:厚生労働省)。まずは勤務先のルールを確認してみましょう。
介護休業との違い
介護休業は、要介護状態にある家族のためにある程度まとまった期間にわたり仕事を休む必要がある時に利用できる制度です。対象家族1人につき通算93日(約3カ月)まで取得できるため、遠距離介護など、遠方に住む家族の介護の体制を整えたい時などに活用できます。
依然として低い取得率、介護について話しやすい雰囲気作りが課題
2021年度の雇用均等等基本調査によると、この年に介護休暇を取得した従業員がいた事業所の割合はわずか2.7%にとどまり、2011年度の調査(2.5%)からほとんど増えていないことが判明しました。
同調査によると、そもそも介護の問題を抱えている従業員がいるかどうか実態を把握している事業所は約6割程度、把握方法も自己申告が中心となっています。
介護をしていることを他の人には打ち明けにくいという雰囲気が実態を把握しにくくすると同時に、制度があっても利用されないという課題につながっていることは想像に難くありません。
介護は誰もが直面しうる問題です。介護について話しやすい雰囲気を作ること、介護や育児などの家庭の事情で休むことについて「お互い様」「当たり前」と支え合える組織を作ること、といった地道な土壌作りがますます重要になりそうです。
- e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」
- e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」
- 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」
- 厚生労働省「仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~」
- 厚生労働省「介護休業制度 特設サイト」
- 厚生労働省 宮城労働局 雇用環境・均等室「介護休暇・子の看護休暇の時間単位取得について」
- 厚生労働省「雇用均等基本調査」
- 東京都産業労働局「家庭と仕事の両立支援ポータルサイト」
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