【2020年版】認知症の治療方法を一覧で紹介|薬物・非薬物治療や費用など

家族が認知症になった場合、症状の進行を抑えるために治療が必要になります。大きく分けて、薬を使う「薬物治療」普段の生活から改善する「非薬物治療」の2種類です。治療法は認知症の種類によって使い分けることが必要になります。そこで今回はどのような治療が認知症に効果的なのかを一覧でご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

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平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。

認知症とは

まずは認知症についておさらいします。認知症とは「脳の機能低下によって引き起こされる症状の総称」です。全体の92%は三大認知症(アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症)になります。しかし細かく分けると全部で70種類ほどです。

もちろん、それぞれによって原因や症状に差異があり、治療法も違います。まずはあらためて「対象者にどのような症状があるのか」「何が原因で認知症になったのか」を把握しておきましょう。

あらかじめ概要を掴んでおくことで、治療をする際にどの薬を飲むべきか、どんな対策を打つべきかが分かります。

認知症の基礎疾患の内訳

参考:厚生労働省老健局「認知症の総合的な推進について

認知症は完治できないが、進行を遅らせることは可能

ただしほとんどの認知症は完治できないとされています。例えば認知症全体の67%を占めているアルツハイマー型認知症を治す薬の開発は進んではいますが、2020年8月現在ではまだ完成していません。

しかし治療によって症状の進行を遅らせることはもちろん可能です。認知症には前期、中期、末期、と3段階の進行度合いがあります。薬物・非薬物療法によって、症状の進行を抑えることで、介護の負担を軽減できる可能性があるのです。

認知症の進行度合いに関して詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
「認知症は一気に進む」と聞きましたが、本当なのでしょうか?

「認知症は早期発見・早期治療が大事」とよくいわれる理由はここにあります。早期に治療を開始することで後々の介護の大変さが異なるのです。

認知症は治るのか、という問題に関して詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
認知症は治るのですか?または進行を遅らせる方法はありますか?

認知症の治療は2種類

では具体的な認知症治療の方法についてご紹介しましょう。認知症の治療法は大きく分けて薬物療法非薬物療法の2種類があります。

薬物治療

薬を用いて認知症の進行を抑制する治療法になります。現在、日本で認可されている薬はアリセプト、レミニール、リバスタッチパッチ・イクロセンパッチ、メマリーです。

アリセプトとレミニール、リバスタッチパッチ、イクロセンパッチは「アセチルコリンエステラーゼ阻害薬」に分類されます。アセチルコリンとは脳分野のうち記憶や思考を司る神経伝達物質です。薬によってアセチルコリンの分解を抑制することで、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の症状を抑えられます。

メマリーは「NMDA受容体拮抗剤」といわれています。脳内の興奮物質であるグルタミン酸の作用を抑えることで、脳神経の損傷を抑えることに役立ちます。

分類 名称 適応 剤型 使用回数
アルツハイマー型認知症 レビー小体型認知症
軽度 中等度 高度
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬 アリセプト 内服 1日1回
レミニール 内服 1日2回
リバスタッチパッチ、イクロセンパッチ 貼付剤 1日1回
NMDA受容体拮抗剤 メマリー 内服 1日1回

ただしこれらの薬はアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症を中心に効果があるとされています。

非薬物治療

このほか、薬物を用いずに普段の生活の体験によって、認知症を改善する方法もあります。普段の生活から脳に刺激を与えることによって、認知機能にプラスの影響が生じるのです。

日ごろ、私たちは無意識的にさまざまな思考をしています。例えば料理を作って食べる際には以下の手順を踏むことが必要です。

  • 「今食べたいもの」や「昨日の食べたもの」「栄養のバランス」を踏まえて献立を考える
  • 「価格」や「開店時間」を考えたうえで買い物をする場所を選ぶ
  • 「適切な量」や「調理時間」「今後の献立」を考えたうえで買い物をする
  • 帰宅後「料理の最終形態」をイメージしながら調理をする
  • 「見栄え」を考えながら盛り付ける
  • 「今回の反省点」や「次回のプラン」を考えながら食べる

何気なく過ごしているなかで、脳は常に動いています。ただ生活をするだけでも、中核症状である記憶障害や見当識障害などの改善につながるのです。ただし認知症の症状によってはこうした家事が困難になります。その場合は家族や介護職員のサポートのもと、生活をすることで、機能改善が期待できるのです。

非薬物の治療の多くは「アクティビティケア」ともいわれる

認知症の高齢者がさまざまなアクティビティ(体験)を行うことで、心のケアをおこなうことをアクティビティケアといいます。介護現場で行われる音楽や園芸、ゲーム、手遊び、カラオケなどのレクリエーションがこれにあたります。単なる娯楽のように思われがちですが、アクティビティケアの効果は息抜きだけではありません。

アクティビティケアの目的は認知症の予防や心身機能を改善し、日常生活を気持ちよく過ごせるよう維持するというものです。認知症では、表情が乏しくなってしまったり、悲観的になってしまうことが少なくありません。そんなとき、アクティビティケアによって、これまでの笑顔を取り戻したり、ポジティブな気持ちに切り替えていくことができるのです。

近年では、認知症の人が生活のなかでできるアクティビティに取り組むことで、症状を和らげられることも明らかになってきました。また、アクティビティケアには身体機能の改善、生活の質を向上させるという効果もあるとされています。

認知症ケアの現場でアクティビティケアの重要性が問われる今アクティビティケアの専門家を養成する動きもあります。一般社団法人日本認知症コミュニケーション協議会では認知症アクティビティ・ケア専門士という資格の認定制度を創設。認知症を理解し、アクティビティプログラムを考え、ケアの中心に立てる専門家を養成しています。

認可されている治療薬を用いた治療

では薬物療法と非薬物療法の概要をご紹介したところで、具体的にそれぞれの具体的な情報を紹介しましょう。まずは認知症の治療薬と期待される効果について紹介します。

アリセプト(ドネペジル)

アリセプトはエーザイ株式会社が開発した製品でアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の症状の進行を抑制する効果があります。剤型としては唾液で溶かして飲む「口腔内崩壊錠」、飲み込む力が弱い人用の「ゼリー状」、水に溶かして飲む「ドライシロップ」があります。

前述したようにアセチルコリンという神経伝達物質の濃度を高める作用があります。アセチルコリンを分解する「アセチルコリンエステラーゼ」の働きを阻止するのです。

メマリー(メマンチン)

メマリーは第一三共株式会社が開発した薬で、主に中等度以上のアルツハイマー型認知症の方が服用します。認知症の場合は脳内のグルタミン酸が過剰になっており、記憶機能を妨害していると考えられています。メマリーを服用することでグルタミン酸の過剰な放出を抑えることが可能です。またアリセプトと併用できるのも特徴になります。

レミニール(ガランタミン)

ヤンセンファーマ株式会社が販売しているアルツハイマー型認知症の飲み薬です。レミニールを服用することでアリセプトと同様、アセチルコリンエストラーゼの阻害をしてくれます。またアセチルコリンそのものの働きをサポートする効果もあるのが特徴です。

リバスタッチパッチ・イクロセンパッチ(リバスチグミン)

リバスタッチパッチ・イクロセンパッチは軽度・中等度のアルツハイマー型認知症の用の貼り薬です。小野薬品工業株式会社から販売されているものを「リバスタッチパッチ」といい、ノバルティス ファーマ株式会社のものを「イクロセンパッチ」といいます。皮膚に直接貼ることで薬の成分が吸収され、アセチルコリンエステラーゼとブチリルコリンエステラーゼという2種類の物質の働きを阻害するのが特徴です。

認知症の治療薬に関して詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
認知症の薬にはどんな種類がありますか?具体的な効果や副作用は?

非薬物治療の種類と内容

では続いて非薬物治療(アクティビティケア)について「具体的に介護施設やデイサービスなどで取り組まれていること」について紹介しましょう。

項目 概要
認知機能リハビリテーション ゲームやパズル、言葉遊びなどで楽しく認知機能を改善する
生活リハビリテーション 家事などを通して、生活のなかで認知機能を改善する
園芸療法 植物にふれることで季節感を取り戻すなど、見当識障害の抑制になる
回想法 昔を思い出して人に伝えることで、記憶障害の抑制や自己肯定につなげる
ペット療法 ペットに対して興味を持つことで自発的な姿勢になる。またリラックス効果も高まる
音楽療法 音楽によってストレスを軽減し、不安感を払拭する

脳トレなどの認知機能リハビリテーション

ゲームやパズル、言葉遊び、間違い探しなどのは楽しみながら認知機能を改善する方法です。そのほか、囲碁や将棋、麻雀、読書などの趣味も含まれます。複数人で楽しめるので「認知症の治療」というマイナスイメージがありません。

家事などの生活リハビリテーション

前述したように、家事をはじめ、普段の生活において人は思考をしています。洗濯や料理、掃除などをすることで認知機能の改善が期待できるのです。そのため、認知症の方を入居対象としたグループホームでは洗濯や掃除などを入居者自身が実施しています。

園芸療法

園芸療法とはその名の通り、草花や野菜などの園芸を通して、心身の回復を図る療法です。五感を刺激することはもちろん、植物を育てることは、時間や季節の感覚が薄れてしまう見当識障害にも有用といわれています。

認知症初期~中期の記憶障害では、昔の記憶は失われにくい傾向があります。そのタイミングで有効なのが回想法です。写真や音楽、映像などで昔を懐かしむことで記憶を思い出すことにつながります。脳の活性化にも役立つのです。また、自分を振り返り、他の誰かに伝えることで自己肯定感も高まります。抑うつやアパシー(意欲の低下)にも効果的な側面があるのが特徴です。

回想法に関しては以下の記事でも紹介しています。
思い出話の力「回想法」で認知症ケア!

ペット療法

認知症によって積極性が失われてしまうケースがあります。そんなときに役立つのがペット療法(アニマルセラピー)です。ペットを可愛がることで、自発性が芽生えます。また癒やし効果もあり、リラックスができるのです。

アニマルセラピーについてもっとよく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
アニマルセラピーとは|効果・適した動物・問題点などを紹介

音楽療法

認知症になると不安な気持ちに苛まれてしまうこともあります。そんなときには音楽療法が効果的です。「歌は世に連れ、世は歌に連れ」とはよくいいますが、音楽を聴くことで昔を懐かしめます。またメロディによってリラックス効果もあるのです。さらに言葉がうまく出ない認知症の人でも、歌ならはっきりと歌え、自信を取り戻すといったケースもあります。

介護施設でも取り入れるところが増えています。カラオケで笑顔が増えた、童謡のエレクトーン演奏を聞いた認知症の方が涙を流したなど、うれしい効果が出ているところもあるんだそうです。こわばった心身をほぐしたり、機能の回復や改善に音楽を使うという音楽療法、具体的にはどんなことをしているのでしょうか。

音楽療法士という職業もある

きちんと資格試験に合格した「音楽療法士」という職業があり、対象者の状況を踏まえたうえで、一緒に歌を歌ったり楽器を演奏したりします。おもに介護施設や福祉施設で活躍をしている方々です。

日本はもちろん、アメリカをはじめ海外では認知されている職業になります。音楽療法士に関しては以下の記事も参考にしてください。
音楽療法士 ~音楽の力で人を癒そう~

音楽療法は認知症の薬と同じで人によって相性があります。若い時に聞いていた音楽、感覚的に好みの音楽は違いますので、もし施設に見学などをする際は音楽療法の方向性なども質問をしてみましょう。

認知症治療にかかる費用の目安

では認知症の治療にかかる費用について紹介しましょう。もちろん在宅介護と施設介護では大きく違いますし、認知症の進行度合いによっても費用は前後します。あくまで一例として参考になさってください。

薬物治療の費用の目安

前述した4種類の薬はそれぞれ価格が違います。ここでは成分や剤型ごとに薬の価格を一覧でご紹介しましょう。

アリセプト(1錠あたりの価格)
錠剤 細粒 ゼリー剤 ドライシロップ OD錠
10mg 537.4円 573.2円 552.0円 562.1円 537.4円
5mg 300.6円 286.6円 306.7円 281.05円 300.6円
3mg 203.5円 172.0円 200.2円 168.63円 203.5円
メマリー(1錠あたりの価格)
価格
5mg 13.8円
10mg 24.6円
20mg 44円
レミニール(1錠あたりの価格)
錠剤 OD錠 内服薬
4mg 107.3円 107.3円 96.6円
8mg 191.5円 191.5円 193.2円
12mg 242.5円 242.5円 289.8円

リバスタッチパッチ・イクロセンパッチ(1枚あたりの価格)
価格
4.5mg 34.7円
9mg 39.1円
13.5mg 41.9円
18mg 44.0円

認知症の進行度にもよりますが、薬は毎日飲むものとして考えましょう。ただしもちろん介護保険を使えますので1~3割負担で済みます。

例えば介護保険1割負担の方が、アリセプトの10mgを1日に1回飲むとした際の月額料は以下の通りです。

537.4円×30日×1割負担=1,612円

入居施設の月額費用

在宅介護の場合は薬代のほか日常の生活費だけです。しかし施設に入居して治療を受ける場合は月額利用料がかかります。表にしてご紹介しましょう。ただし施設によって価格は変動しますので、あくまで参考程度にご覧ください。

施設種類 月額費用の目安
特別養護老人ホーム 5万~15万円
介護老人保健施設 8万~15万円
グループホーム 8万~30万円
ケアハウス(軽費老人ホーム) 6万~15万円
介護付き有料老人ホーム 10万~30万円
住宅型有料老人ホーム 10万~30万円
サービス付き高齢者向け住宅 10万~30万円

施設入居を選択した場合、ここに薬代などが含まれることになります。必ず認知症である本人の意向を尊重し、予算と照らし合わせたうえで在宅介護か施設介護かを決めるようにしましょう。また施設介護の場合は認知症の受け入れ体制が整っているかを見なければいけません。「介護職員は認知症の扱いに慣れているか」「治療法の知識があるか」を事前に確かめましょう。

認知症に対応している介護施設の選び方に関して詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
認知症に対応できる介護施設の選び方を教えてください

また認知症によって入院することも可能です。認知症と入院についての詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
認知症で病院への入院は可能でしょうか? また拒否された場合の対処法は?

認知症は早期発見・早期治療がカギ

前述した通り、認知症は早期発見によって症状の進行を抑制できます。簡単にいうと「早く見つけるほど、軽度のままで長く暮らせる」ということです。だから、治療の前にまずは早めに診断を受けることが大切になります。「おかしい」と感じたらすぐにかかりつけ医の診察を受けてください。そのうえで医師や介護職員、ケアマネジャーなどと協力しながら、薬物療法・非薬物療法を組み合わせて進行を遅らせましょう。

また認知症を完治するための薬の研究・開発は世界中で進んでいます。国内企業も海外企業と共同でアルツハイマーを治すための薬を長年、開発し続けており、今後は「抑制」以上の効果を発揮する薬ができるかもしれません。

この記事のまとめ

  • 認知症の種類によって治療方法は異なる
  • ほどんとの認知症は完治できない
  • 「薬物治療」と「非薬物治療」を実施し症状を緩和させる