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地域包括支援センターの役割と機能について分かりやすく教えてください

義父が体調を崩して入院しているのですが、今後は介護施設を利用できないかと考えています。しかし、どこに相談すればいいかイマイチ分からないので、最初に相談した方がいいと勧められた地域包括支援センターに足を運んでみようと思います。地域包括支援センターがいったいどのような場所なのか、足を運ぶ前に知っておきたいので、教えてもらいたいです。

A地域包括支援センターは、高齢者のお悩み相談窓口です。

地域包括支援センターは、高齢者が持つ悩みを相談できる「何でも相談窓口」のような場所です。65歳以上の方や介護が必要だと考えられる高齢者と関わっている人なら、誰でも利用できます。要介護認定を受けたいと考えている場合や介護予防サービスを利用したい場合などに相談に乗ってもらえます。

平栗 潤一
平栗 潤一
一般社団法人 日本介護協会 理事長

地域包括支援センターは、これから介護サービスを利用したいと考えている人が足を運ぶべき場所です。今回は、そんな地域包括支援センターがいったいどのような場所なのか、具体的にどのような役割を担っているのかについて解説します。地域包括支援センターがどのような場所なのか知りたいと思っている人は、ぜひ目を通してみてください。

地域包括支援センターとは

地域包括支援センターは、高齢者をサポートするための拠点です。基本的には、人口2万人~3万人の日常生活域と呼ばれる範囲のなかに1カ所ほど設置されています。管轄する地域に暮らしている65歳以上の高齢者、高齢者に関わっている人であれば、誰でも利用できます。いわば「高齢者の何でも相談窓口」です。

要介護認定を受けたい、介護予防サービスを利用したい、老後の財産管理に不安があるといった高齢者自身からの相談も多く寄せられています。その他にも、遠方に住んでいる子どもからの相談にも乗ってくれます。「近所で一人暮らしをしている高齢者が心配だ」といった近所の人からの問い合わせにも対応している、間口の広い相談窓口です。

設置主体は自治体

地域包括支援センターは、全国の市町村が設置している公的な機関です。運営しているのも市町村、または市町村から委託を受けた法人になります。委託先は社会福祉法人や社会福祉協議会、医療法人がであることが多いです。

また自治体によっては、地域包括支援センターという名前ではない場合があります。「高齢者支援総合センター」「あんしんすこやかセンター」「シニアサポートセンター」といった名前の自治体もあるため、気になる方はお住まいの役所の高齢福祉課などで確認してみてください。インターネットで「(住んでいる地名)地域包括支援センター」とキーワード検索しても探せます。

地域包括支援センターの役割は4つ

地域包括支援センターは、自治体の福祉をより充実させるために欠かせない存在となっています。主な役割は以下の4つです。

  • 高齢者に関する総合相談支援としての役割
  • 高齢者の権利を守る役割
  • 包括的・継続的ケアマネジメントを支援する役割
  • 介護予防のマネジメントをする役割

それでは地域包括支援センターが担っている役割について1つずつ見ていきましょう。

高齢者に関する総合相談支援としての役割

地域包括支援センターの役割の1つは、高齢者に関する総合相談支援です。地域におけるネットワークを構築するために必要不可欠な役割となります。

家族や近所の人の相談にも対応

地域包括支援センターの総合相談支援は、家族や近所の住民から寄せられた相談を受けて、適切な窓口へとつなぐための重要な役割を担っています。要介護認定の申請、認知症や身体機能の低下に関する不安など多岐にわたる相談を受け付けています。電話や窓口での相談も可能ですが、状況によっては職員が自宅を訪問して相談を受けることもできるような体制が整っているので安心です。

相談を受けた職員は、それぞれの状況に適した対処法を検討し、利用すべきサービスへと結び付けてくれます。福祉に関する知識がないとどのようなサービスがあるのか、どのサービスなら利用できるのかなどたくさんの疑問が出てくるものです。そのような疑問や不安に対する適切な答えも出してもらえるので、家族が要介護状態になってしまった場合の不安を払しょくできるでしょう。

親が遠方に暮らしている場合でも相談ができます。遠方に暮らしている場合は、親が暮らしている地域の地域包括支援センターに連絡をしてください。そうすると、職員が必要に応じて自宅を訪問し、状況に応じた適切な対応をとることになります。

高齢者の権利を守る役割

地域包括支援センターが担っている役割のなかには、高齢者の権利を守るという役割もあります。続いては、高齢者の権利を守る役割がどのようなものか解説していきましょう。

人権や財産など

高齢者の権利を守る役割は、高齢者の人権や財産を守る権利擁護を指します。本人からの相談はもちろんですが、家族や近所の住民から相談を受けることも可能です。

相談を受けて調査をした結果、高齢者に対する虐待をしていることが分かった場合は、被害者を施設に入所させるように手配したり、介護者自身のメンタルケアをおこなったりします。一時的な対応だけではなく、再発防止のためのサポートをおこなうのも地域包括支援センターの役割の1つです。

それだけではなく、訪問販売や詐欺の被害に高齢者が遭わないように成年後見制度を活用するように支援したり、被害に遭った場合は警察や消費者センターへ連絡したりといった仕事も地域包括支援センターが担っています。

包括的・継続的ケアマネジメントを支援する役割

包括的・継続的ケアマネジメントを支援する役割も地域包括支援センターが担っています。続いては、包括的・継続的ケアマネジメントを支援する役割がどのようなものかみていきましょう。

ケアプランのチェックなど

包括的・継続的ケアマネジメントを支援する役割というのは、その地域で活動しているケアマネジャーのサポートをするものです。ケアマネジャーが円滑に仕事を進められるように他の機関と連携を図ったり、情報交換会を開催したりするのが包括的・継続的ケアマネジメント支援にあたります。

介護サービスを利用するために必要となるケアプランの作成や、ケアマネジメントの過程チェックなどの仕事をします。なかには対応が難しい案件を抱えるケアマネジャーもいるため、相談に乗りながら適切な対処法を一緒に考えていくのです。そして他の機関と連携して高齢者のサポートをしていくことで、より高齢者が暮らしやすい地域社会を目指します。

介護予防のマネジメントをする役割

介護予防のマネジメントをするのも地域包括支援センターが担っている重要な役割です。介護予防のマネジメントをする役割についても解説していきましょう。

介護予防の観点を大事にする

介護予防ケアマネジメントとは、要介護状態になる可能性がある高齢者に対しての支援です。要支援認定を受けた人が介護予防サービスを利用するために必要となるケアプランの作成や、保健所などでおこなっている介護予防体操のマネジメントをします。また、高齢者が住み慣れた地域でできるだけ自立した生活を送れるようサポートすることも介護予防ケアマネジメントに含まれています。

地域包括支援センターの相談事例

地域包括支援センターには、様々な相談が寄せられています。そのなかでも特に多く寄せられている相談を3つピックアップしてご紹介しましょう。

一人暮らしを継続するのが不安

現在、85歳で足腰が弱まってきたことを自分でも感じます。子どもは遠方で結婚して生活しているので、こちらに呼び寄せるのも難しいと感じています。何か介護保険サービスを使いたいのですが、どうすればいいですか?

年齢を重ねていくと心身ともに衰えてしまうため、一人暮らしに不安を感じるようになる人は少なくありません。そのため、地域包括支援センターにも一人暮らしが不安だという相談は多く寄せられます。一人暮らしをしている本人から連絡が来ることもありますが、遠方に暮らしている家族が心配して管轄の地域包括支援センターに連絡をするというケースも少なくありません。

一人暮らしが不安になってきた場合、デイサービスや訪問介護などのサービスの利用を検討することになります。その前段階として地域包括支援センターに相談し、どのようなサービスが適しているのかアドバイスしてもらうのはとても大切です。今後の暮らし方を考えるきっかけにもなるため、不安を感じたらまずは地域包括支援センターに相談してみましょう。

家族の介護がストレスになっている

自宅で母の介護を3年続けているのですが、正直ストレスが溜まってきています。他の自宅での介護をしている人はどう、発散しているのか、何かコツがあるのか、などを知りたいです。交流できる場所とかあるのでしょうか。

介護する側である家族から、「親の介護が辛い」という相談が寄せられることもあります。介護がストレスになってくると虐待の原因にもなってしまうため、早い段階で地域包括支援センターや市役所の高齢者福祉課などに相談することが重要なポイントになります。地域包括支援センターや市役所の高齢者福祉課などに相談すると、それぞれの状況に応じて適切な対応をとってもらえるでしょう。

また地域包括支援センターでは、介護をしている家族向けにおこなわれている介護教室や、当事者同士で話ができるイベントなどの紹介もしてくれます。同じような環境に置かれている人同士で悩みをぶつけあうことで、気持ちがすっきりしたり、前向きに考えられるようになったりするので、そのようなイベントを紹介してもらうのもおすすめです。

認知症について

親が認知症になり、性格や行動が日に日に変わっていくので戸惑っています。また、どのように接したらいいか分かりません。私自身の心の整理の仕方や、認知症の人に対するコミュニケーションの取り方などを知りたいです。

親や親族が認知症になったとき、今までと違い振る舞いに戸惑うこともあるでしょう。また、認知症になった本人が物忘れなどの症状に悩まされ、変わっていく自分自身に不安を覚えるかもしれません。そのような場合も地域包括支援センターに相談可能です。

例えば「認知症の方への向き合い方」「認知症の方が使える介護サービスの使い方」について教えてくれます。このほか「家族に認知症のような症状があるが、本人が受診を嫌がって検査につながらない」といった場合へのアドバイスも受けられます。

自治体によっては、認知症になっても安心して暮らせるまちづくりに地域全体で取り組んでいる場所もあります。地域包括支援センターが地域と共同で取り組みをおこなっていることもあるので、興味がある方は居住区のセンターに聞いてみましょう。

地域包括支援センターを運営する目的

続いて、そもそも地域包括支援センターはどんな目的で運営されているのか紹介します。地域包括支援センターの目的は、地域包括ケアの実現です。地域包括ケアシステムを構築するのは市町村が持つ責務となっていますが、その中心になってシステムの構築をするのが地域包括支援センターになります。

ただシステムを構築するだけではなく、有効に機能させるために必要な保健師や社会福祉士、主任介護支援専門員などがチームとなって活動できるような環境を整えることも大切な役割です。

目的を達成するために

地域包括支援センターが持つ目的を達成するためには、総合性包括性継続性予防性という4つの視点がとても重要なポイントになります。高齢者のさまざまな相談を総合的に受け止め、介護保険サービス以外の社会資源に結び付けていくことの窓口でもあるためです。また、高齢者の状況に応じた継続的な支援や、将来的に発生すると考えられる課題を見据えた予防をする必要があります。

どのような機能が期待されているのか

地域包括支援センターに期待されている機能には、地域のネットワークを構築する機能ワンストップサービスを提供するための窓口としての機能権利を擁護する機能介護支援専門員を支援するための機能が挙げられます。地域のネットワークを構築する機能がきちんと働いていれば、そのほかの3つにもつながりやすくなるでしょう。

地域包括支援センターの地域包括支援事業

地域包括支援センターがおこなっている主な事業は、地域包括支援事業です。では、地域包括支援事業とはいったいどのような事業なのか詳しく解説していきましょう。

地域包括支援事業は、「被保険者が要介護状態等となることを予防するとともに、要介護状態等となった場合においても、可能な限り、地域において自立した日常生活を営むことができるよう支援する」ものとして定められている事業です

介護保険法第1条では、尊厳の保持や自立支援の理念を具現化するための手段を拡充することが地域包括支援事業の目的とされています。また介護保険法第4条では、その目的を実現するために国民にも努力を求めているのです。

地域包括支援事業は総合相談・支援事業、権利擁護事業、包括的・継続的ケアマネジメント支援事業の4つ

地域包括支援事業は、介護予防ケアマネジメント事業総合相談・支援事業権利擁護事業包括的・継続的ケアマネジメント支援事業の4つに分類できます。要介護状態になるのを予防するための取り組みをおこなうのが介護予防ケアマネジメント事業、必要な支援を把握して適切なサービスの利用につなげるのが総合相談・支援事業です。

そして、住み慣れた地域で尊厳のある生活ができるように対応するのが権利擁護事業、それぞれの状態に応じて適切なケアマネジメントを実践できるようにするのが包括的・継続的ケアマネジメント支援事業となっています。

これ以外にも、生活機能の低下が危ぶまれる高齢者を早期に発見するための二次予防事業の対象者把握事業、介護予防に関する基本的な知識を多くの人に知ってもらうための介護予防普及啓発事業、介護予防に関わるボランティアを育成するための地域介護予防活動支援事業も含まれます。

このことから、地域包括支援センターはかなり幅広い事業をおこなっていることが分かるでしょう。まさに「高齢者の何でも相談窓口」という呼び名にふさわしい機関です。

保険者としての役割も

地域包括支援センターは、保険者としての役割も担っています。介護保険所管セクションと連携することによって、円滑に地域包括支援センターの業務を進められるようになります。何らかの支援を必要としている被保険者に対する対応をスムーズにおこなうためには適宜見直しが必要になるため、介護保険所管セクションだけではなく地域包括支援センターの理解もなくてはならない要素です。

例えば予防給付の場合だと、介護保険を担当している部門が要支援認定の結果に関する情報を地域包括支援センターに情報提供しなければいけないことになっています。そして地域包括支援センターは、予防給付を受ける要支援認定者の状況が改善、もしくは悪化したなどの情報を介護保険の担当部門に提供しなければいけません。そのため、介護保険所管セクションの連携はとても重要なポイントになるのです。

地域包括支援センターには介護が必要になったらすぐにいく

地域包括支援センターは、これから介護サービスを受けようと思っている家族や本人が最初に足を運ぶべき場所です。介護サービスを受けるためには要介護認定を受けなければいけませんが、そもそも「要介護認定を受けるためにはどうしたらいいのか」といった初歩的な相談も地域包括支援センターで聞いてもらえます。また、要支援認定を受けて介護予防サービスを受けたいという場合も、地域包括支援センターに相談可能です。

また、家族や本人からの相談だけではなく、近所の人からの相談も受け付けています。もしも周囲に高齢者がいて様子がおかしいなと感じた場合は、地域包括支援センターに相談してみましょう。

平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

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