介護保険証(介護保険被保険者証)とは|使い方や再発行と更新の手順などを紹介
65歳になる誕生月に、居住する市区町村から交付されるのが「介護保険証」です。介護保険サービスを受けるために必要なものになります。介護のリスクが高まる65歳以上になると全員が交付対象です。ただし40~64歳で加齢による要介護状態になった人にも交付されます。
この記事では専門家の監修のもと「介護保険証の概要」や「事務的な手続き」「サービスを利用する条件」などを分かりやすくご紹介します。「40歳からの流れがよく分かっていない」「紛失や引っ越しの際の手続きについて知りたい」という人はご覧ください。
大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。
介護保険証(介護保険被保険者証)とは
介護保険証とは、介護保険サービスを利用するための保険証です。なお介護保険証には「第1号介護保険被保険者証」と「第2号介護保険被保険者証」の2種類があります。2つの違いは後述します。
介護保険証にまつわる流れは難しく、理解しづらい部分もあるでしょう。はじめに介護保険にまつわる40歳から65歳までの流れについて解説します。
40~65歳までの介護保険料にまつわる流れ
40歳を超えると生活習慣病などによって要介護状態になるリスクが高まります。また両親に介護が必要になるケースも多いでしょう。さらに国内では高齢化が進んでおり、在宅介護のために介護離職をする人が増えるなどのさまざまな課題が噴出してきました。
そこで一定の年齢以上の国民で介護費をまかなう介護保険制度が生まれ、介護保険法によって40歳から介護保険料を納付することが義務付けられました。
介護保険料の納付に特別な手続きは必要なく、通常の健康保険料と一緒に徴収されます。会社員であれば健康保険、個人事業主であれば国民健康保険料に組み込まれるのが基本です。保険料の金額は、所属している健康保険組合によって違います。ただし、どの組合であっても介護保険料は生涯にわたって払い続けなければいけません。
その後、65歳を迎えると介護保険証が届きます。同時に介護保険料が年金から引かれるようになるのを覚えておきましょう。65歳以降の介護保険料納付額は、市区町村によって異なります。気になる人は、あらかじめ住んでいる自治体の情報を確認しておきましょう。
介護保険料については、以下の記事で詳しく紹介しています。
65歳以上で要介護認定を受けた人は、実際に介護保険サービスを利用できます。ただし40~64歳の人でも条件を満たして要介護認定を受ければ、介護保険サービスを利用することが可能です(それぞれの条件に関しては後述します)。
「65歳以上」と「40歳から64歳まで」の違いが分かったところで、それぞれの介護保険証の違いについて見ていきましょう。
第1号介護保険被保険者証
「第1号介護保険被保険者証」とは65歳以上の人々を対象にした介護保険証です。65歳の誕生月になると郵送で交付されます。介護保険の保険者は基本的に市町村と東京23区です。ただし地域が広域連合を設置している場合は広域連合になります。
第1号被保険者は市区町村などに介護保険料を支払う義務があり、年金から自動的に天引きされます。その代わりに介護サービス費用の自己負担は1割(前年度の所得によっては2、3割)で済むのです。ただし介護サービスを受ける際には、あらかじめ要介護認定を受けなければいけません。
第2号介護保険被保険者証
第2号介護保険被保険者とは「40~64歳で加齢による疾病(※)により要介護状態になった人」に向けて発行される保険証です。前述したとおり、40~64歳の介護保険料は月々の健康保険(勤め先の保険や国民健康保険など)と一緒に徴収されます。なお勤め先から引き落とされる場合、一般の健康保険料と同じく事業主と被保険者が半分ずつ負担をします。※=特定疾病といわれるもので、具体的には以下の16種類の疾病を指します。
特定疾病
1 | がん(末期) |
2 | 関節リウマチ |
3 | 筋萎縮性側索硬化症 |
4 | 後縦靭帯骨化症 |
5 | 骨折を伴う骨粗鬆症 |
6 | 初老期における認知症 |
7 | 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病 |
8 | 脊髄小脳変性症 |
9 | 脊柱菅狭窄症 |
10 | 早老症 |
11 | 多系統萎縮症 |
12 | 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症 |
13 | 脳血管疾患 |
14 | 閉塞性動脈硬化症 |
15 | 慢性閉塞性肺疾患 |
16 | 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症 |
では続いて第1号介護保険被保険者証、第2号介護保険被保険者証介護保険証を受け取る方法について紹介します。
介護保険証を受け取る方法
介護保険被保険者証は第1号、第2号ともに郵送で届けられます。役場に出向く必要はありません。第1号(65歳以上)は誕生月に交付されます。第2号(40~64歳)の場合は先述した特定疾病に該当することが分かり、要介護認定を受けたら自宅に送付されます。
ただし第1号介護保険被保険者証の場合は、介護保険証を受け取ってからすぐに介護サービスを利用できるわけではありません。介護保険証を取得したうえで「要介護認定」を受ける必要があります。では「要介護認定とは何なのか」「どのような流れで認定されるのか」について紹介しましょう。
介護保険サービスを受けるために必要な「要介護認定」
要介護認定とは、対象者の介護の必要性を7段階で評価したものです。「要支援1、要支援2、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5」に区分されます。なお要支援に満たない人については、介護の必要がない「自立」となり、介護保険は適用されません。
要介護認定については、以下の記事で詳しく紹介しています。
要介護認定を受ける流れ
では具体的に要介護認定を申請してから、サービスを利用し始めるまでの流れをご紹介しましょう。保険適用内で介護サービスを受けるには申請が必要です。
市区町村の窓口で申請
まずはお住まいの市区町村で書類に記入し、窓口から申し込みましょう。申し込みを郵送で受け付けている自治体もあります。
認定調査と主治医意見書による一次判定
認定調査と主治医の意見書によって一次判定をします。認定調査とは、調査員が対象者や介護担当者に話を聞いて介護度のレベルを確かめる方法です。その結果に主治医からの意見書をかけ合わせ、必要な介護の度合いをコンピューターで算出します。
介護認定審査会による二次判定
二次判定では、保健や医療、福祉の学識経験者でつくる「介護認定審査会」が一次判定の結果を審査します。その結果、一次判定の結果が変わる可能性もあります。
要介護状態と認定されケアプランを作成
認定結果の通知には最大30日かかります。しかしその間に症状が変わる可能性もあるので、市区町村によっては2週間以内に暫定の結果を通知する場合もあるようです。要介護1~5に当てはまった場合、居宅介護支援事業者と契約して介護の計画を立てます。この計画を「ケアプラン」といいます。
ケアプランに準じて介護サービスを利用
ケアプランに基づいた居宅・施設サービスを利用すると、保険適用内で介護サービスを受けられます。なお保険が適用されるのは、要介護認定と介護保険証を得ていることが前提です。
では続いて具体的に受けられる介護サービスについて紹介しましょう。
介護保険証を用いて受けられるサービスの種類
認定を受けた要介護度(要支援度)によって、受けられるサービスが違います。あらかじめご家族の要介護度を把握することが重要です。
ここでは数あるサービスのうち、主なものを紹介します。実際はケアマネジャーと相談しながら本人に適したサービスを考えましょう。
介護保険サービスについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
在宅サービス
まずは在宅で受けられる介護サービスについて紹介します。
訪問介護
ホームヘルパーが対象者の自宅を訪問して介護をしてくれるサービスです。排泄のケアや食事、洗濯などをサポートしてくれます。こちらは要支援1~要介護5まですべての人が利用可能です。
訪問看護
看護師が住まいを訪れて排泄ケアや調理などの日常生活のサポートをしてくれます。また医師の指導のもと、医療行為をできるのが特徴です。要支援1~要介護5まですべての人がサービスを受けられます。
福祉用具のレンタル
ベッドや車イスなど、福祉用具をレンタルする際に保険が適用されます。こちらも要支援1~要介護5まですべての人が使えますが、なかには要介護度が高い人のみに適用される用品もあるので確認が必要です。
福祉用具の購入
レンタルだけではなく購入費にも保険が適用される場合があります。こちらも要支援1~要介護5まですべての人が対象です。
介護リフォーム費
リフォームによって要介護の人が生活しやすい環境を実現するのが「介護リフォーム」です。施工をする際に介護保険によって補助金が支払われます。介護保険が適用されるリフォームは以下の6つです。
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 床材の変更(滑りにくくするなど)
- 扉の変更(引き戸への取り替えなど)
- 和式から洋式便座への変更
- 上記5種類に関する付帯工事
日帰りなどの通所サービス
続いて日帰りなどで施設を利用できるサービスです。大きく分けて以下の2種類に介護保険が適用されます。
通所介護(デイサービス)
食事や入浴のほか、身体機能、口腔機能向上などのために用いられるサービスです。入居するわけではなく、定期的に日帰りで利用します。要支援1~要介護5まですべての人が介護保険の適用内です。
通所リハビリテーション(デイケア)
一般的には「デイケア」といわれるサービスです。日常生活で自立した生活ができるように、理学療法士や作業療法士のサポートのもと、リハビリテーションに取り組む施設になります。要支援1~要介護5まですべての人が利用可能です。
短期入所型のサービス
続いて短期入居型(宿泊型)のサービスです。短い期間だけ施設へ宿泊することで食事や入浴、心身の訓練などのサービスが受けられます。
短期入所生活介護(ショートステイ)・短期入所療養介護
いわゆるショートステイといわれるもので、家族の負担を軽減するために短期的に施設に寝泊まりをしながら心身の機能向上を目指します。こちらも要支援1~要介護5までが対象範囲です。
施設入居サービス
長期的に施設へ入居できるサービスのうち、介護保険が適用されるものについて紹介します。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
通称「特養」といわれる施設です。公的機関が運営しており、低価格で充実したサービスが受けられます。人気が高く、1~2年ほど待機しなければいけないケースが多いのが特徴です。要介護1~5まで入居できますが、基本的には要介護3以降の人が対象になります。
介護老人保健施設
よく「老健」と略されます。病院での治療のあと、リハビリによって在宅復帰を目指すための施設です。入所期間は3~6カ月ほどで、終身利用はできません。要介護1以上の人が対象になります。
介護療養型医療施設
要介護1以上であれば入居できます。要介護度が重い人に向けた施設であり、医療処置もできます。比較的少ない費用で利用可能です。
介護医療院
介護医療院は2018年に新たにできた施設です。医療処置と日常的なケアの両方ができる場所になります。要介護度1以上の人であれば利用できます。
ここまでは介護保険証を用いることで受けられる介護サービスについて紹介しました。
最後に介護保険証を紛失したときや、住所変更などが必要になった際の事務的な手続きについて紹介しましょう。いざ介護サービスを受けるときに保険証が使えないと困ります。あらかじめ、万が一の際の対応方法について知っておくと安心です。
介護保険被保険者の事務的な手続きについて
「介護保険証を紛失した」「交付後に引っ越しをした」「他界後に返却したい」「届かない」など、介護保険証に関して事務的な手続きが必要になる場合があります。どこでどのような手続きをすべきかを紹介しましょう。基本的には発行元の市区町村で手続きを進めます。ただし役場内の窓口は市区町村ごとに違うという点に注意してください。
紛失した場合
紛失した場合は再交付の手続きが必要です。お住まいの市区町村の役場で、手続きを進めてください。本人が来庁する場合は、運転免許証やパスポートをはじめとした本人確認証が必要です。また市区町村によっては印鑑が要ります。
本人が寝たきり、または重度の認知症などで来庁できない場合もあるでしょう。その際は代理人が再発行手続きをすることも可能です。「被保険者本人の本人確認証」「代理人の本人確認証」「委任状」などが必要になります。ただし必要な物は市区町村によって異なりますので、あらかじめ自治体のホームページを確認してください。
住所変更したい場合
引っ越しにともなう住所変更の場合は、介護保険証の再交付が必要です。同市区町村内での転居と、他市区町村への転出で手続きが違います。
同市区町村内での転居の場合
住所変更の際に介護保険の窓口に向かい、住所変更の申請をすれば完了です。その後、新たな住所に介護保険証が送付されます。もちろん改めて介護認定を受ける必要もなく、元のデータがそのまま引き継がれるため安心してください。
他市区町村への転出の場合
他の市区町村に引っ越す場合は、転出元と転入先のそれぞれで介護保険に関する手続きを進めることになります。ここでは3ステップに分けて手順を紹介しましょう。
1.介護保険証を返却し「資格喪失手続き」をする
まずは転出元の市区町村で介護保険証を返却しなければいけません。窓口で返却をするとともに「資格喪失手続き」をします。その市区町村での被保険者資格がなくなったことを表すものです。
2.介護保険受給資格証を受け取る
「資格喪失手続き」をすると同時に役場から「介護保険受給資格証」を渡されます。これは転出元で要介護認定を受けていたことを証明する書類であり、転入先の役場で提出するものです。なお、市区町村によってマイナンバーカードにまとめられている場合は発行しません。
3.引っ越しから14日以内に転入先で介護保険証を再発行する
介護保険受給資格証を持って転入先の役場に行き、再発行を依頼しましょう。すると要介護認定に関するデータが引き継がれて、介護保険証が再発行されます。新住所でも同じサービスを受けられるのです。ただし14日を超えてしまった場合、転入先で新たに要介護認定を受ける必要があり、発行までに時間がかかってしまいます。
返却する場合
被保険者が亡くなった場合は介護保険証を返却しなければいけません。亡くなってから14日以内に介護保険資格喪失届に記載をし、窓口で介護保険証を返却しましょう。介護保険資格喪失届は役場にあります。また市区町村によってはホームページからダウンロードできる場合もあり、あらかじめ準備することが可能です。
なお返却をすると保険料の過不足分が分かります。喪失手続きをすると、月割で介護保険料の計算がなされるからです。未納がある場合は相続人が未納分を納めなければいけません。また払い過ぎている場合は還付金が戻ってきます。
介護保険証が届かない場合
万が一介護保険証が届かない場合は、自分が住んでいる市区町村の役場に連絡しましょう。第1号介護保険被保険者証は65歳に達する月に市区町村から郵送されてくるものです。自治体によっては、誕生月の前後1カ月に届く場合もあります。申請の必要はなく自動的に送られてくるなので、届かないときは確認が必要です。
第1号介護保険被保険者証が届かないときには「転居などで送付先変更の手続きをした際に不備があった」「保険証をもらえる時期を勘違いしている」といった可能性が挙げられます。特に第1号介護保険証は65歳となる「年度始め」ではなく「月」を基準に送付されますので、落ち着いて確認してみましょう。
また第2号介護保険被保険者証は、特定疾病に該当すると認められ、要介護認定を受けた時点で自宅に郵送されるものです。届かない場合は役場に連絡しましょう。
介護保険証と健康保険証の違い
介護保険証と健康保険証は、根本的な役割が違います。
冒頭で触れた通り、介護保険証は介護保険制度によるサービスを受けるための保険証です。介護保険を納めることで、介護サービスを1~3割負担で受けられます。
一方で、健康保険証は実費の一部負担で医療が受けられる保険証です。健康保険料を納めることで、国が医療費の一部を負担してくれます。
そのため、介護保険証と健康保険証をそれぞれのサービスに代用することはできません。
また、サービス利用までの流れも違います。健康保険証はもらった瞬間から医療機関で治療を受けるのに使えます。しかし介護保険証を持参していきなり介護施設やデイサービスなどに行っても、その場でサービスが受けられるわけではありません。介護サービスを利用するには、要介護認定を受ける必要があります。
介護保険証は介護サービスを受けるための“パスポート”
超高齢社会となった日本では介護の必要性が高まっている状態です。65歳以上になると、介護保険サービスを利用する機会も増えます。介護保険証はサービスを受けるためのパスポートのようなものです。利用条件や事務的な手続きについて理解して、準備をしておきましょう。
また最近では介護保険証の提示でタクシーの乗車料金や美術館・博物館などの入場料が安くなるといったシルバー割引などの特典を受けられる介護以外のサービスもあります。
介護保険証を手にすると「介護を受ける歳になった」と落ち込む人もいますが、メリットも存分にありますので、上手に活用しましょう。
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この記事のまとめ
- 65歳と64歳以下で2種類の介護保険証がある
- 介護保険証によってさまざまな介護サービスを受けられる
- 介護保険証によって介護以外の割引サービスも受けられる
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