介護付き有料老人ホームの費用とは|月額の相場・要介護度別のサービス費など
介護付き有料老人ホームには介護スタッフが24時間常駐し、必要なケアや食事、健康管理などが受けられます。
介護付き有料老人ホームへの入居を考えるうえで、費用について知っておくことは重要です。「いくらかかるのか」「内訳には何が含まれるのか」など、気になるポイントを解説します。後半では費用の軽減に役立つ制度も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
CFP®認定者、CDA、相続手続きカウンセラー。大手金融機関での営業など、お金に関する仕事に約30年従事。乳がんを発症した経験から、備えの大切さを伝える活動を始める。2015年2月に金融商品を販売しないFP事務所を開業。子どものいない方やがん患者さんの相談、介護資金などの終活にまつわる相談、医療従事者へのセミナーなどをおこなっている。
介護付き有料老人ホームとは
介護付き有料老人ホームは、常駐する介護スタッフから24時間365日体制でケアが受けられる介護施設です。有料老人ホームのなかでも、介護保険の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設だけが「介護付き」と名乗れます。
指定を受けるうえで一定の基準はあるものの、民間会社が運営する施設のためホームによってサービスの充実度や費用に差があるのが実状です。介護付き有料老人ホームへの入居を考える際には、まずメリットとデメリットを理解しておきましょう。
介護付き有料老人ホームのメリット
- 24時間、介護を受けられる
- 介護サービス費は要介護度による月額制なので、高額になる心配がない
- 常駐する看護師による健康管理が受けられる
- レクリエーションやイベントがある
- 人との交流が増える
介護付き有料老人ホームで生活する最大のメリットは、日中・夜間を問わず介護を受けられることです。介護費用も月額制ですので「呼び出し回数によって料金が変わる」といった心配もありません。日中は看護師の常駐義務もあり、健康管理も受けられます。
また、高齢者の心身の健康に配慮したレクリエーションやイベントが開催されることも特徴です。入居者同士や地域住民との交流などもあり、独居よりも生き生きと過ごせるように工夫されています。
介護付き有料老人ホームのデメリット
- 介護施設のなかでも費用が比較的高い
- 利用頻度にかかわらず、一定の介護サービス費が発生する
- 基本的に外部の介護サービスは利用できない
- 生活リズムが決まっていることが多い
介護付き有料老人ホームに入居するうえで、ネックになりがちなのが費用です。「民間施設であること」「要介護度に応じた介護サービス費が必ずかかること」などから、比較的高額になるケースが多々あります。しかし最近では費用を抑えた施設も登場していますので、一概に諦める必要はありません。費用の詳細については、後ほど説明します。
介護付き有料老人ホームでは、基本的に施設のスタッフから直接介護を受けます。外部サービスは利用できませんので「これまで在宅で利用してきたサービスを継続したい」という方にはデメリットとなるでしょう。
また介護施設では複数の方が生活していますので、生活リズムもある程度決まっていることが大半です。「食事や入浴の時間などは自分で決めたい」という方は、どれくらいの自由度があるのかを入居前に確認することが大切になります。
介護付き有料老人ホームについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
介護付き有料老人ホームの費用について把握しておきたいこと
介護付き有料老人ホームの費用について解説する前に、知っておきたいポイントを紹介します。
入居一時金が発生する
介護付き有料老人ホームでは、初期費用として「入居一時金」が発生するケースが大半です。「入居一時金」とは「利用権方式」という契約方式のもと、家賃やサービス費の前払いとして支払う費用になります。
「利用権方式」と「償却制度」
利用権方式は簡単にいうと、入居一時金を支払うことで施設を利用する権利を得る契約です。想定される入居期間分の家賃やサービス費の一部、もしくは全部を事前に払う方式で、月額費用はその分抑えられます。反対に入居一時金が無料の場合は、月額費用が割高になるケースがほとんどです。
入居一時金は費用の前払いですので、支払ってすぐに全額が使われるわけではありません。想定入居期間の間に一定の割合で必要な費用に充当される仕組みです。これを「償却」といいます。
償却期間には特に規定がなく、施設によってまちまちです。おおむね3~10年程度ですが、さらに長期の場合もあります。
償却できなかった入居一時金は返還される
入居一時金はまとまった金額ですので、支払うことに不安や抵抗がある方もいるでしょう。覚えておきたいのは「償却期間内であれば入居一時金は返還が可能」ということです。
入居一時金は想定入居期間をかけて少しずつ償却されます。もし期間の途中で退去することになれば、残りの金額は返還される決まりです。
ただし「初期償却」といって、入居時に10~30%程度をまとめて償却されるケースもあります。実際にいくら返還されるかは、初期償却の有無や残りの償却期間の長さによって異なりますので、注意が必要です。
利用権方式について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
生活保護でも入居できる施設は1割程度
介護付き有料老人ホームは費用が高額というイメージも強く「生活保護では入居できないのでは」と心配な方もいるでしょう。
令和元年度の調査によると、実際には介護付き有料老人ホームの10.9%に生活保護を受給している入居者がいるのです。平成30年度の同調査では12.8%だったことから、生活保護受給者の受け入れはやや減少傾向にあることが分かります。
生活保護を受けている方は、介護保険の自己負担がありません。さらに生活保護の方用の料金プランを用意している施設もあり、通常より費用が抑えられる可能性もあります。
とはいえ受け入れ可能な人数は限られていることが多く、スムーズに入居できないケースも多いのが実状です。入居先を検討する際は、生活保護を受給していることを最初に伝えたうえで、受け入れの可否や料金を確認するようにしましょう。
介護付き有料老人ホームにかかる費用
それでは介護付き有料老人ホームに入居する際にかかる費用について見ていきましょう。入居するタイミングでかかる費用としては「入居一時金」のみです。その他の費用は毎月支払う「月額費用」になります。
入居一時金
前述したとおり、入居一時金は家賃やサービス費を前払いする費用です。入居一時金が無料の施設もあれば、数千万円程度かかる高級施設もあります。複数の料金プランを設けている施設も多いため、費用には差があることが特徴です。
複数の料金プランがある場合は、入居一時金を支払ったほうが月額費用の負担は軽くなります。なお償却期間を過ぎた後も月額料金は変わらないため、結果的に支払う総額も安くなる傾向です。
居住費
居住費は、一般的な物件でいう「家賃」に相当します。周辺の家賃相場、居室の広さや間取りなどによって金額は異なります。
管理費
共用設備の維持・管理費や水道光熱費などに充てられる費用です。事務管理部門の人件費なども含まれます。
掃除や洗濯などの費用も管理費として支払う施設もあれば、別途費用がかかるケースもあり、注意が必要です。どのサービスが管理費に含まれているのかは、事前に確認しましょう。
食費
介護付き有料老人ホームでは、基本的に3食全て施設から提供されます。食費は食材費のほか、厨房の人件費や維持費も含まれた金額です。
実際に食事をとった分だけ請求される施設もありますが、人件費や維持費のために最低限の利用額が決められている場合もあります。また追加の料金を支払うことでランクアップメニューを楽しめるなど、食事は施設によって差が生じやすいポイントの1つです。
介護サービス費
介護付き有料老人ホームの介護サービスは、介護保険の適用対象です。そのため自己負担額は、基本的に1割となります。所得によっては2割、もしくは3割となりますので、ご自身の負担割合を確認してください。
介護サービス費は要介護度に応じて異なる金額です。1カ月間の目安の金額は下の表を参考にしてください。なお、お住まいの地域によっては金額が上下する可能性もあります。
要介護度 | 月額の自己負担額(1割負担) |
---|---|
要支援1 |
5,460円 |
要支援2 |
9,330円 |
要介護1 |
1万6,140円 |
要介護2 |
1万8,120円 |
要介護3 |
2万220円 |
要介護4 |
2万2,140円 |
要介護5 |
2万4,210円 |
参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造(R3.1.18)」
上乗せ介護費
「上乗せ介護費」という言葉になじみのない方も多いでしょう。「介護サービス費」と似ていますが、異なるものです。
介護付き有料老人ホームでは、3人の入居者に対して常勤換算で1人の介護職員、もしくは看護職員を配置することが義務付けられています。いわゆる「3:1」の基準です。
施設によっては基準を上回る人数の職員を配置し、手厚いケアを提供していることがあります。人員が多いと、施設はその分の人件費が必要になりますので「上乗せ介護費」として利用者に負担を求めることができるのです。
つまり上乗せ介護費は全ての介護付き有料老人ホームで発生するのではなく、基準以上に人員を配置している場合のみ対象となる費用です。
医療費
病院を受診したり訪問診療を受けたりした場合、医療費が発生します。介護付き有料老人ホームでは看護師による健康チェックなども実施されますが、既定のサービスの範囲は施設によって異なります。回数や内容によっては追加の医療費がかかる可能性もありますので、事前に確認しておくことが大切です。
日用品の購入費
個人的に使用する日用品は、基本的に実費で購入します。ティッシュや歯ブラシ、歯磨き粉、石けんなどがその例です。購入から補充までを入居者、もしくは家族がする場合もあれば、施設側が補充して費用だけを請求されるケースもあります。どのような方法をとっているかは施設ごとに確認しましょう。
またオムツを使用する方はオムツ代も必要です。介護サービス費には含まれませんので、注意してください。
理美容費など、自費でのサービス利用費
介護付き有料老人ホームでは、基本的なサービスに加えて自費で受けられるサービスがあります。理美容師が定期的に施設を訪問したり、プロが主催する教室(例えば、陶芸やヨガなど)を受講できたりすることもあるのです。任意のサービスは全額自己負担のケースが多く、金額も施設やサービス内容によって異なります。
介護付き有料老人ホームの費用相場
費用の内訳が分かったところで、実際の月額費用はいくらくらいかかるのでしょうか。
月額費用の目安は10~30万円程度です。ただし「入居一時金を支払うか月額払いにするか」「要介護度はいくつか」などによって、金額が大きく異なる可能性もあります。
また介護付き有料老人ホームは民間施設ですので、事業者によっても料金に差があることを理解しておきましょう。低所得の方でも入りやすい価格帯の施設もあれば、豪華な設備やサービスを整えている高級施設もあるのです。
いずれの場合でも、費用を考える際は初期費用と月額費用のバランスを見ることが大切です。「何年くらい生活するつもりなのか」をあらかじめ考え、無理なく支払い続けられる施設を選ぶ必要があります。
長期的な入居を考えている方は、ある程度初期費用がかかっても月額費用を抑えたほうが支払い総額が少なくなる傾向です。反対に短期間の入居であれば、初期費用が少ないほうがまとまった出費がなく経済的といえるでしょう。
介護付き有料老人ホームの費用を軽減できる制度
最後に、介護付き有料老人ホームに入居するうえで「できるだけ費用を軽減したい」と考えた際に役立つ制度を紹介します。あらかじめ知っておくと、いざというときに慌てなくて済むでしょう。
高額介護サービス費
介護付き有料老人ホームの介護サービスは介護保険の対象ですので、自己負担は1~3割に抑えられます。しかし介護保険には「サービス加算」という制度があり、提供するサービスによっては料金が追加されることもあるのです。
介護サービス費が高額になった場合、上限額以上は払い戻される制度があります。それが「高額介護サービス費」です。上限額は所得によって異なりますので、以下の表を参考にしてください。
区分 | 対象者 | 自己負担限度額(月額) |
---|---|---|
第4段階 | 課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 | 14万100円(世帯) |
課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1,160万円)未満 | 9万3,000円(世帯) | |
市町村民課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満 | 4万4,400円(世帯) | |
第3段階 | 全員が市町村民税非課税の世帯(第1段階・第2段階に該当しない方) | 2万4,600円(世帯) |
第2段階 | 全員が市町村民税非課税の世帯、かつ前年の公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下の方等 | 2万4,600円(世帯)
1万5,000円(個人) |
第1段階 | 生活保護を受給している方等 | 1万5,000円(世帯) |
高額介護サービス費を適用するためには、自治体の窓口に申請が必要です。該当者には通知が届きますので、案内にしたがって申請してください。なお1回申請すれば、2回目以降は自動的適用される仕組みです。申請期間はサービスを利用した翌月から2年間と決まっていますので、忘れないように注意しましょう。
高額医療・高額介護合算療養費制度
「高額医療・高額介護合算療養費制度」は、医療費と介護サービス費を合算して上限を超えた場合に払い戻しが受けられる制度です。介護サービス費だけに限定した「高額介護サービス費」に対して、医療費も合わせて計算できる点が異なります。
「高額医療・高額介護合算療養費制度」は医療保険に基づく制度です。適用するためには医療保険の窓口での申請が必要になります。
なお、上限額は所得と年齢に応じた金額です。「高額介護サービス費」は月額で計算しますが「高額医療・高額介護合算療養費制度」は年間の費用で算出します。
所得区分 | 被用者保険または国民健康保険
かつ70歳未満の方がいる世帯※ |
被用者保険または国民健康保険
かつ70歳~74歳の方がいる世帯※ |
後期高齢者医療制度(75歳以上)※ |
---|---|---|---|
「現役並み所得者」
標準報酬月額83万円以上 課税所得690万円以上 |
212万円 | 212万円 | 212万円 |
「現役並み所得者」
標準報酬月額53~79万円 課税所得380万円以上690万円未満 |
141万円 | 141万円 | 141万円 |
「現役並み所得者」
標準報酬月額28~50万円 課税所得145万円以上380万円未満 |
67万円 | 67万円 | 67万円 |
「一般」
標準報酬月額26万円以下 課税所得145万円未満 |
60万円 | 56万円 | 56万円 |
「低所得者2」
住民税非課税世帯 |
34万円 | 31万円 | 31万円 |
「低所得者1」
住民税非課税世帯 (必要経費・控除を差し引いたときに所得が0円になる方、または老齢福祉年金受給者) |
34万円 | 19万円
(介護サービス利用者が複数の場合は31万円) |
19万円
(介護サービス利用者が複数の場合は31万円) |
※介護保険に加入していることが前提
税制上の控除制度
税金の控除を受けることで、経済的な負担を軽くする方法もあります。代表的なものは「扶養控除」「配偶者控除」「障害者控除」「医療費控除」の4つです。
扶養控除
納税者が親族を扶養している場合に受けられる所得控除です。親族が老人ホームに入居しても、月額費用などを代わりに支払っていれば扶養対象として見なされます。70歳以上であれば「老人扶養親族」に該当し、一般の扶養親族よりも控除額は大きく48万円です。
扶養控除額
区分 | 控除額 | |
---|---|---|
一般の控除対象扶養親族
(その年12月31日時点で16歳以上の人) |
38万円 | |
老人扶養親族 (その年12月31日時点で70歳以上の人) |
同居老親等以外の者 | 48万円 |
同居老親等(※) | 58万円 |
参考:国税庁「No.1182 お年寄りを扶養している人が受けられる所得税の特例」
配偶者控除
配偶者を扶養している場合も控除対象となります。配偶者控除は、納税者の所得によって異なる金額です。
配偶者控除額
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | 控除額 | |
---|---|---|
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者
(その年12月31日時点で70歳以上の人) |
|
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
障害者控除
納税者本人、もしくは配偶者や扶養親族が障害者の場合に受けられる所得控除です。所得税法上の障害者に当てはまるかどうかは、複数の基準があります。主に高齢者に関わる基準は次のとおりです。
- 精神または身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が精神・知的・身体障害者に準ずるものとして市町村長などや福祉事務所長の認定を受けている人
- その年の12月31日の現況で引き続き6カ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする(介護を受けなければ自ら排便などをすることができない程度の状態にあると認められる)特別障害者
要介護者が障害者に該当するかどうかの基準は、各市区町村によって定められています。気になる方はお住まいの地域の情報を確認してください。
障害者に当てはまる方は、以下の控除が受けられます。
障害者控除額
区分 | 控除額 |
---|---|
障害者 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者(※) | 75万円 |
参考:国税庁「No.1160 障害者控除」
医療費控除
納税者自身や家族のために支払った医療費が一定の額を超えたら、控除対象となるケースもあります。
ただし、介護付き有料老人ホームでの平常の生活にかかる費用は対象外です。訪問診療や通院などの医療サービスを利用した場合は、医療費として認められます。
また6カ月以上寝たきりでオムツを使う必要があると医師に認められたら、オムツ代も医療費として計算できます。オムツ使用の証明書が必要となりますので、申告したい方は医師に相談してください。
介護付き有料老人ホームの費用は施設によってさまざま
介護付き有料老人ホームでは、日常の介護サービスや毎日の食事などを施設から直接受けられることが魅力です。外部サービスを利用しない分、施設に支払う費用は高額になる傾向にあります。
一方で、介護付き有料老人ホームは民間施設のため、施設ごとに金額が異なることも特徴です。生活保護の方向けのプランなど、低所得者に配慮した料金を設定している施設も存在します。反対に高級な施設では、一般的な介護施設では体験できないような充実したサービスを提供するなど、差別化を図っているところもあるのです。
施設への入居を考える際は、予算だけでなく希望するサービスや入居期間などをよく検討しましょう。数カ月、数年単位で生活する場として納得できる施設を見つけるためには、事前の準備が大切です。
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関東 [3688]
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北海道・東北 [1538]
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東海 [1310]
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信越・北陸 [585]
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関西 [1686]
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中国 [672]
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四国 [319]
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九州・沖縄 [2601]
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