今は健康な親ですが、今後のことを考えると認知症の予防を考える必要があると思っています。そこで認知症予防に効果的なおすすめの脳トレ方法を教えてください。
脳トレの方法は道具が無くてもできる簡単な運動から、プリントやホワイトボードを使った計算、なぞなぞ、間違い探しなど、たくさんの種類があります。
脳トレは認知症予防にもつながります。毎日やるからこそ意味がありますので、楽しく簡単にできる方法が知りたいですよね。ここでは、いくつかの脳トレ方法を紹介していきます。自分や家族のお気に入りのトレーニングを見つけていきましょう。
年をとると物忘れが多くなり「もしかして認知症なんじゃないか……」と不安に感じたことがある人もいると思います。「自分や家族が認知症になったらどうしよう」と思ったことがある人におすすめなのが「脳トレ」です。脳トレは認知症の予防として老人ホームや病院でも多く取り入れられています。
高齢者の脳トレは、楽しみながら考えたり覚えたりすることで脳が刺激され、認知症の予防として大きな効果を期待できます。友人や家族などと脳トレをすることで、コミュニケーションもとれて脳も活性化するのです。
では具体的にどんなことをするのでしょうか。道具のいらない方法や、大勢で楽しむことのできるレクリエーション型、1人の時間でも楽しめる脳トレなど、さまざまな種類があります。自分にあった方法を見つけられるように、誰でも楽しめる簡単な脳トレを紹介していきましょう。
始めに紹介するのはプリントを使った脳トレです。印刷物を用意しておけば、1人でもみんなでもやりたい時に簡単に楽しめます。
数字が書いてある点を1から順番につなげていくと、最後に一筆書きの絵が完成します。数字を順番に探しながら点と点をつないでいく作業は、手を動かしていくことが脳への刺激となるのです。最終的に浮かび上がってくる絵を考えることによって、イメージ力もアップします。
「計算問題」と聞くと難しそうなイメージがあるかもしれません。計算問題にはたくさんの種類があり、簡単な足し算や引き算の問題はもちろんですが「50□15=35」のように空欄に当てはまる記号を考える脳トレもあります。
高齢者にはそろばんが得意な方も多いので、楽しみながら計算問題に取り組めるのではないでしょうか。
魚や花などの難しい漢字の読みを考えたり、バラバラになった漢字の一部を組み立てながら、何の漢字になるかを考えたりするなど、漢字を使った脳トレは高い人気があります。
他にも四字熟語や、俳句、百人一首などを使った問題も多くありますので、好みに合わせた問題を楽しめるのが魅力です。
友人たちと一緒に複数人で盛り上がる脳トレといえば、ホワイトボードを使ったものです。レクリエーションとしてすることも多いですが、自宅にホワイトボードとマーカーペンさえあれば、家族みんなで楽しめます。
まずはホワイトボードにいくつかの単語を書き出します。その単語に当てはまるオノマトペをみんなで意見を出し合いながら考えていくゲームです。
例:雨→ザーザー
風→ヒューヒュー
冬→???
「冬」と聞いて思いつくオノマトペは何でしょう?「シーン」でも「しんしん」でも大丈夫です。決まった正解はありませんので、出た意見を書き出していきましょう。
書き出した単語のオノマトペが決まったら、書き出した単語を消します。ホワイトボードにはオノマトペだけが残るはずです。
今度は反対にオノマトペを見て先ほど書き出した単語が何だったかを思い出すクイズをします。
自分たちで単語のイメージを想像してオノマトペを考える楽しさと、少し前の記憶を思い出す作業により脳が活性化されます。
タイトルの通り「〇〇しい」の〇〇に当てはまる言葉を探すゲームです。例えば「うれしい」「たのしい」「うらやましい」などがあります。
なかなか言葉が見つからない時には「あ」から始まる言葉で考えてみましょう。「『あたらしい』はどうですか?」と提案しても大丈夫です。
「〇〇しい」という言葉が見つかったら、今度は見つけた言葉から話を聞いていきます。
例えば「たのしい時ってどんな時?」や「うれしい時の思い出はなんですか?」といった具合で質問するといいでしょう。
言葉を見つけることはもちろん、昔の記憶を呼び起して思い出しながら話すことも「回想法」と呼ばれる効果的な脳トレです。思いがけない昔の恋愛話や武勇伝が聞けて会話が盛り上がること間違いありません。
ホワイトボードに、ある歌に出てくる言葉をいくつか書いていきます。例えば「きれいな花」「扉はせまい」「腕を振って」。この時点でなんの歌か分かりますか? 正解が出てこない場合には、もう少し単語を書き出していきましょう。
出題者のポイントは、少し難しい単語から書き出して、だんだんと分かりやすいヒントにすることです。すると、さまざまな答えが出てきて盛り上がります。
では、ヒントを追加していきましょう。
「しあわせ」「汗かき」「べそかき」「一日一歩」
もう分かった方も多いかと思います。答えは水前寺清子さんの『三百六十五歩のマーチ』です。
正解が出たら後はその曲を流してみんなで歌を歌うこともいいでしょう。カラオケ気分で歌を歌うことで気分転換にもなります。
子どもから大人まで楽しめる「なぞなぞ」も人気です。「パンはパンでも食べられないパンはな~んだ?」「フライパン!」と、道具がなくてもすぐに楽しめる遊びとして絶大な人気があります。
さまざまな種類から、特に脳トレに効く高齢者向けのなぞなぞを紹介しましょう。
出題者が、答えから連想するいくつかのヒントを言います。例えば「赤、白、黄色などたくさんの色があって、歌にもなっている、春に出てくるものなーんだ?」
分かりましたか? 最終ヒントは「花」です。
答えは「チューリップ」。言われたヒントもイメージしながら、身近にある物を思い出すことは脳を活性化するのにとても効果的なのです。
季節を感じながらのなぞなぞは高齢者に大人気です。テーマを「春」や「食べ物」など1つの区分に絞ることで答えが導きやすくなり、簡単に楽しめます。
この他にも、地域の特産物や観光名所をヒントに、どの都道府県化を考える「都道府県なぞなぞ」や、○か×で答える「○×クイズ」も人気です。
体を動かして体操することも大切な脳トレです。しかし、高齢者となると体を大きく動かすラジオ体操などは難しい場合も多いですよね。
そこで、座ったままでも簡単にできる、脳トレに効果的な簡単体操を紹介しましょう。
指を1つずつ折りながら1~10まで数えていく指先の体操です。
まずは両手を胸の前でパーにします。次に両手の親指を曲げながら数を数えていきます。1で親指、2で人差し指。5の時には、左右ともにグーの状態になりますよね。続いて、6は小指を上げます。そこから順に一つずつ指を開いていき、10になると両手がパーの状態に戻ります。
高齢者にとって、指を1つずつ動かすことは難しいのでゆっくりとしましょう。その後、少しずつスピードアップすることで、脳に刺激を与えられます。
簡単な体操なので、脳トレ前の準備体操として毎日取り入れるのもいいでしょう。
こちらも座ったままできる体操です。まずは、椅子に座ったまま足踏みをし、歩くときのように腕も振ります。この時に腕と足が同じにならないようにしましょう。歩く時と同じなので、右腕をふるときには左足が動くはずです。
足踏みに慣れてきたら、次は「3の倍数」で手拍子をします。この時に注意したいのは、3の倍数で手拍子しているときでも、足踏みは続けることです。1~30までの数で挑戦してみましょう。
3の倍数なので、右腕、左腕を振ったら手拍子、となります。始めはできなくても、リズムさえつかめば思ったよりも簡単にできるのです。
3の倍数に慣れてきたら「3と5の倍数」にも挑戦してみてください。
足踏み体操は、頭、口、腕、足を一度に動かすことができ、脳トレに効果絶大です。足を動かすことで、簡単な筋トレにもなり転倒防止にもつながります。
2つの絵を見比べながら、いくつかの違っている箇所を探す間違い探しは、高齢者でも気軽に楽しめる脳トレとして人気です。
瞬時に絵を記憶しようとし、観察力を使って間違いを見つけようとすることで脳が刺激されます。漢字や計算などの脳トレは、難しそうなイメージがあって挑戦できずにいる高齢者の方でも、イラストや写真が使ってあることで取り組みやすく、ゲーム感覚で挑戦できるのでオススメです。
イラストだけでなく、漢字を使った間違い探しもあります。
例えば、
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤示赤赤赤
さて、間違いはどこにあるでしょう?
答えは2列目の右から4番目。「赤」の文字の中に一つだけ「示」という漢字が混ざっています。
このように漢字を使った間違い探しもありますので、たまには上級編として楽しむのもいいですね。
「手遊び」を知っていますか? 手指を動かすことは脳の活性化を促しますので、手遊びは高齢者の脳トレにも効果的なんです。手のひら全体を使うものや、指先を使うものなど、いろんな手法があります。
実際に施設のレクリエーションとしても使われていることが多い手遊びを紹介します。
誰もが知っている童謡を使った手遊びです。まずは、片方の手をチョキにして、もう片方の手でグーを作ります。そして、チョキにした手の上にグーの手をのせて、かたつむりを作りましょう。
このかたつむりを、今度は反対の手にチェンジします。最初に左手がチョキだったならグーにして、グーだった手をチョキにします。
これを「でんでんむしむし かたつむり おまえの目玉はどこにある つのだせ やりだせ 目玉だせ」の歌に合わせて、かたつむりを交互に作り直していくという手遊びです。
歌を歌いながら、両手を同時に動かすので脳トレには最適です。始めはゆっくり手を入れ替えていき、慣れてきたら少しスピードアップして手を入れ替える回数を増やしていくとおもしろいですよ。
後出しジャンケンは「ジャンケンポン・ポン」と一拍遅れて手を出す遊びです。後出しを下側が勝つのを目指すパターンと負けなければいけないパターンがあります。
認知症予防に効果的な脳トレにはたくさんの種類があります。準備物や道具がいらない体操や、なぞなぞ、手遊びの脳トレは気軽にいつでも楽しむことができるのです。
ホワイトボードやプリントを使った脳トレは、ご家族やお友達とコミュニケーションを取りながらおこなってみましょう。
毎日の習慣として、意識的に脳トレをすることは健康を維持していくために重要です。年をとるにつれ、自分が思っているよりも体は老化していきます。散歩など、体を動かすことも大切ですが、なかなか毎日はできなかったり、体力的にも辛かったりする人も多いですよね。
脳トレは、どんな方でもチャレンジできるリハビリです。脳を活性化させるだけでなく、体を動かすことで筋肉を鍛えることにもつながります。また、「コグニサイズ」といって「運動」と「認知課題」の両方に同時に取り組むとさらに効果的です。前述した「足踏み体操」の3の倍数や3と5の倍数で手を叩くという行為はコグニサイズにあたります。
ぜひ、ご自身の楽しいと感じる脳トレを見つけて、毎日の習慣に取り入れてください。
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、認知症ケア上級専門士、認知症介護実践リーダー、米国アクティビティディレクター、他。介護職として働く傍ら、レクや認知症、コミュニケーションに関する研修講師も務める。2014年米国アクティビティディレクター資格取得。レクリエーションを通じ、多くの高齢者に「人と触れ合う喜び」を伝え、「介護技術としてのレクリエーション援助」を広める一方、介護情報誌やメディアにおいて執筆等を手掛けている。『認知症の人もいっしょにできる高齢者レクリエーション 』(講談社)など著書多数。