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認知症になる原因は何ですか?ストレスや疾患との関係などについて教えてください

両親が60代後半に差し掛かってきました。今はまだ元気なのですが、今後70~80代に突入するなかで認知症にかかってしまうのではないか、と心配です。もし認知症になる原因がはっきりしているなら、予防できると思います。認知症になる原因について教えてください!

A認知症の原因はさまざまです。病気以外に、ストレスや生活習慣とも関係が深いことが分かってきています。

認知症は70以上の種類があり、原因は一概に決めつけられません。食事やストレスなどあらゆる背景があったうえでかかってしまう病気です。なので、あくまで一例として認知症の原因を紹介します。

浦上 克哉
浦上 克哉
一般社団法人 日本認知症予防学会 代表理事

認知症は70以上も種類があり、原因は一概に決めつけられません。食事やストレスなどあらゆる背景のうえでかかってしまう病気です。この記事ではさまざまな原因をご紹介したうえで対処法についてもご紹介しますので、ぜひ参考になさってください。

認知症は種類も原因もさまざま

認知症の主な種類

「認知症」とは一つの病気の名前ではありません。いろいろな要因によって記憶・判断・計画などの脳の認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態のことをいいます。認知症には多くの原因があると考えられており、種類や症状も多種多様です。

まずは、なかでも代表的な疾患やストレス、生活環境など、認知症との関係が深い原因について詳しく見ていきましょう。

ストレスが認知症を引き起こす?

認知症の原因の一つとして考えられているのが「ストレス」です。ストレスホルモンが出ると血流が悪くなり、脳の神経細胞にも必要な酸素や栄養が届きにくくなってしまいます

また、ストレスによって、認知症以外にもうつ病や高血圧などを引き起こすことがあります。うつ病は、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症との関連を指摘する研究があり、危険因子の一つです。また、高血圧は、脳血管性認知症の原因である脳梗塞や脳出血の危険性を高めます。

つまり、ストレスは直接的にも間接的にも認知症の原因になり得るといえるのです。しかし、もちろんストレスだけが認知症の要因ではありません。なかには思わぬ病気が隠れていることもあります。それでは、認知症の原因にはどのような病気があるのでしょうか。

認知症の原因になる疾患

先に出てきた「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」のように、認知症を引き起こす疾患にもさまざまな種類があります。代表的な病気について、その特徴や症状を解説しましょう。

アルツハイマー病

認知症の原因のうち、最もよく知られている疾患が「アルツハイマー病」です。国内の認知症患者のうち、約5~6割はアルツハイマー型認知症といわれています。

アルツハイマー病になると、記憶をつかさどる海馬を中心に脳が萎縮し、記憶障害や思考能力低下などを招きます。「新しいことが覚えられない」「日付が分からなくなる」といった症状のほか、自分でしまったものを誰かに盗まれたと思い込んでしまう「物盗られ妄想」などが特徴的です。症状が進行すると、生活の大半で身体介護が必要となります。

まだ根本的な治療法はないものの、進行を緩やかにする治療は可能です。そのため、早期発見が重要と考えられています。

脳卒中(脳梗塞や脳出血など)

脳梗塞や脳出血などの脳卒中が引き金となり、脳がダメージを受けて認知症につながることがあります。特に認知症患者の約2~3割を占めている脳血管性認知症の原因となることが多くあります。

大きな脳卒中で急激に症状が出る場合もあれば、小さい障害の蓄積でだんだんと進行する場合もあり、個人差が大きいのが疾患の特徴です。さらに、脳の障害の部位によって症状の現れ方や程度も異なるうえ、日によって症状の程度にも変化があることから「まだら認知症」とも呼ばれます。

症状としては、物忘れなどの記憶障害、歩きづらさ、手足の震えなどの運動障害、初期にうつのような精神症状が現れるのが多いことも特徴です。

レビー小体の蓄積

レビー小体型認知症の原因となるのは、脳の細胞に「α(アルファ)-シヌクレイン」という物質が蓄積してできる「レビー小体」です。

このレビー小体はパーキンソン病の患者にも見られ、レビー小体型認知症の場合もパーキンソン病と同様に「手足が震える」「動きが遅くなる」「筋肉が硬くなる」といった症状が現れます。そのほかの症状としては、いないはずの人や動物がはっきりと見える「幻視」や、自宅にいるのに夕方になると「家に帰る」と言うなどの「妄想」が特徴的です。

患者数でいうと、男性が女性の約2倍と性別による大きな差があることも知られています。

前頭葉や側頭葉の萎縮

前頭葉や側頭葉が萎縮することで前頭側頭型認知症(ピック病)につながります。前頭側頭型認知症は記憶障害などがほとんど見られず、認知症と気づきにくい病気の一つです。多くの場合、40~60歳代と比較的若いうちに発症します。

脳のなかでも「人格」「社会性」「言語」をつかさどる部分が正常に機能しなくなるため、まるで性格が変わったかのような変化や言語障害が現れるのが特徴です。

初期症状は「周りに配慮できず自分の思い通りに行動してしまう」「他人に共感できない」といった自制力の低下や感情の鈍化のほか「知っているはずの言葉の意味が理解できない」などの言語障害があり、発症すると平均6~8年ほどで寝たきりの状態まで進行してしまいます。

甲状腺機能低下症

甲状腺の問題や甲状腺刺激ホルモンの不足などによって、エネルギー代謝を活発にする甲状腺ホルモンが不足してしまう状態です。

皮膚の乾燥や体のむくみ、疲れやすさ、便秘などの身体症状のほか「物覚えが悪くなる」「ぼーっとする」などの認知症状が出ることがあります。

甲状腺機能低下症が原因の認知症状は、甲状腺ホルモンの治療をすることで改善できます。認知症を疑って受診しても、甲状腺機能は検査されないことも多く、異常を見落としてしまうケースも少なくありません。もし気になる症状があれば「甲状腺機能に問題はないか」と医師に尋ねてみるといいでしょう。

慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、脳腫瘍などその他の疾患

軽い頭部の外傷のあとに髄膜の間でじわじわと出血する「慢性硬膜下血腫」、脳脊髄液が正常より多く貯まる「正常圧水頭症」、「脳腫瘍」などの疾患により、脳が障害を受けて認知症になることもあります。その場合は、原因となっている病気の治療や手術によって改善が可能です。

慢性硬膜下血腫は、頭をぶつけてから数カ月程度経って現れる物忘れ、歩行のふらつき、片側の手足の動かしづらさなどが特徴的です。歩行障害のほかに尿失禁が見られるときは、正常圧水頭症の可能性があります。

これらの病気を見落とすと、病気そのものの症状が進行してしまうこともありますので、心当たりがあれば医師に確認するようにしてください。

生活習慣病

「生活習慣病が認知症の原因になる」と聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。

糖尿病や高血圧などの生活習慣病は、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症の発症に大きく関わっているとする研究も多く、重要な要因の一つと考えられています。また、生活習慣病は脳梗塞や脳出血などのリスクを高め、結果的に脳血管性認知症を引き起こしかねません。

認知症の原因となる病気になる可能性を高めるという意味でも、生活習慣病は認知症の一因であるといえます。

認知症のカギを握る脳内物質

認知症のなかで最も割合が多い「アルツハイマー型認知症」について、もう少し詳しく見てみましょう。

近年の研究で、アルツハイマー型認知症の発症には脳内の「アミロイドβ(ベータ)」という物質が大きく関わっていることが分かってきました。アミロイドβは、アルツハイマー病の脳の特徴である老人斑(脳内のシミのようなもの)の大部分を構成する物質です。通常であれば脳内のゴミとして分解されるものですが、分解されずに蓄積されてしまうと脳細胞を死滅させると考えられています。

アミロイドβによる変化が必ずしも認知症を引き起こすとは断定できないものの、できるだけ蓄積しないようにすることが肝要です。

その他、意外なものが認知症の原因に

ここまでは疾患や生活習慣病などが認知症の原因になる、という対策を打ちやすい原因についてご紹介しました。しかしこれらの疾患だけではなく、実は身近なところにも認知症の原因になりうる物質があります。

「カビ」が認知症の原因となる可能性も

私たちの生活に身近な「カビ」に認知症のリスクが潜んでいるとは意外な事実でしょう。米国のデール・ブレデセン医師らの研究チームは、アルツハイマー型認知症と、水銀などの有害金属やカビから発生するカビ毒などの毒性物質との関連を指摘しています。

アミロイドβは本来、炎症や毒物から脳が神経を守る防御反応で作られる物質です。そのため、日常的にカビ毒や水銀などの毒性物質にさらされると、脳内ではアミロイドβが作られます。それが蓄積することで認知症のリスクが高まるというのです。ブレデセン医師らが実施した認知症治療プログラムで最後まで原因不明だった患者には、共通して自宅の地下室に大量の黒カビが生えていたことも報告されています。

カビ毒はすべてのカビが原因となるわけではなく、黒カビや青カビなどの一部が発生源です。あくまでもリスクの一つではありますが、カビが気になる場合は、定期的な換気や「HEPAフィルター」を使った高性能空気清浄機の設置などの対策をするといいでしょう。

歯周病がアルツハイマー型認知症につながる

歯周病とアルツハイマー型認知症との関係性は以前から指摘をされてきました。九州大学をはじめとした研究チームは「歯周病菌がアルツハイマー型認知症に関与していること」を発見しました。2020年にはマウスを使った実験でそのメカニズムを解明。アルツハイマー型認知症の原因物質である「アミロイドβ」が、歯周病菌の「ジンジバリス菌」によって産生されることが分かっています。

歯周病菌とアルツハイマー型認知症との関係については以下の記事でも紹介しています。

認知症予防に効果的な食べ物は?

これまでに挙げてきたように、さまざまな原因が考えられている認知症ですが、残念なことに決定的な予防策はまだ発見されていません。

ただし認知症予防に効果がある食べ物や成分についての研究は、徐々に進んでいます。特にアルツハイマー型認知症は、原因物質である「アミロイドβ」の蓄積を防ぐことができれば効果的と考えられ、予防に有力な食べ物もいくつか分かってきているのが現状です。

アミロイドβの蓄積を防ぐ食べ物

アミロイドβの蓄積抑制効果があると考えられている成分には「EPA」「DHA」「葉酸」「ポリフェノール」「カテキン」などが挙げられます。それぞれの効果とおすすめの食品をまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。

アミロイドβの蓄積抑制に効果的な成分と食品
アミロイドβの蓄積を防ぐ成分 期待できる効果 おすすめの食品
EPA(エイコサペンタエン酸) 血液をサラサラにして血流を促進することで、脳に十分な栄養や酸素を送り込む。また、血栓を防止する。
DHA(ドコサヘキサエン酸) 記憶力や判断力の向上に役立つ。
葉酸 不足すると、アミロイドβの作用強化や動脈効果の進行を招く「ホモシステイン」が増加してしまう。 緑黄色野菜、果物
ポリフェノール、カテキン 抗酸化作用があり、体や脳の老化を防ぐ。 緑茶、赤ワイン

日本人は古くから緑茶を飲む習慣があるほか、伝統的な和食には魚も多く用いられます。魚を多く食べるほど認知症になりにくいとする研究もあり、注目されている食材です。毎日の食事の際に、少し意識して取り入れてみるといいでしょう。

アルツハイマー型認知症を予防する「マインド食」

アメリカのラッシュ大学医療センターが提唱する「MIND食(マインド食)」も注目を集めています。マインド食とは、地中海沿岸の伝統的な「地中海式食事法」と、高血圧予防の「DASH食」を組み合わせた、アルツハイマー型認知症のリスクを低減させる食事法です。

マインド食の積極的にとるべき食品と控えるべき食品
積極的にとるべき食品 目安
緑黄色野菜 1日1回
ナッツ類 ほぼ毎日
ベリー類 1週間に2回
豆類 2日に1回
全粒穀物 1日3回
少なくとも1週間に1回
鶏肉 1週間に2回
ワイン グラス1杯
控えるべき食品 目安
赤身の肉 週4日以下
バター 1日に大さじ1杯未満
チーズ 1週間に1回以下
揚げ物 1週間に1回以下
ファストフード 1週間に1回以下
(引用:アルツハイマー病の発生率の低下に関連するMINDダイエット

方法は「積極的にとるべき食品」10品目を意識的に食事に取り入れ、反対に「控えるべき食品」5品目は極力避けるというシンプルなものです。高血圧や高コレステロール、糖尿病といった生活習慣病の予防にも効果的と考えられています。すべてを厳密に守らず部分的に実施した場合でも効果が期待できるという報告もあり、気軽に取り入れられるのも嬉しいですね。

正しい知識を身に付けて、認知症を予防しよう

認知症の原因は多岐にわたるうえ、まだまだわからないことも多いのが実情です。だからこそ、やみくもに恐れるのではなく、原因となりうる疾患や生活習慣などについて正しい知識を身に付けることが大切です。

なかには先に紹介した食事のように、比較的手軽に取り組める予防法もあります。普段の生活を振り返り、実践できる予防法はぜひ日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

日本老年精神医学会・理事、日本脳血管・認知症学会・理事、NPO法人高齢者安全運転支援研究会・理事。認知症早期発見のためのタッチパネル式コンピューター「物忘れ相談プログラム」等の機器開発やアロマによる認知症予防効果の研究等も行う。テレビ番組にも多数出演。

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