【はじめに】家族の介護を始める際に知っておきたいこと
このページでは「まだ介護が必要ではないが、そろそろ準備したい」とお考えの人に向けて「介護に取り組む前に知っておきたいこと」をお伝えします。この記事さえ読んでいれば、緊急事態にも安心して対応できますので「まだ必要ない」とお考えの場合でもぜひご覧ください。
大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。
「介護が必要ない段階で準備すること」が大切な理由
40代に突入すると、ご両親の身体のことが心配になることも増えることでしょう。また65歳以上になると、自分や配偶者の体調を気遣う場面も増えると思います。「認知症にかかってはいないか」「何か病気を患ってはいないか」「転倒や事故で怪我をするのではないか」など、多くの人が気がかりになるでしょう。
65歳での定年退職は自身と家族の人生においても大きな分岐点です。新たな趣味を見つけるなど悠々自適な生活が楽しみな反面、思考力・体力ともに落ちてしまい、自力での生活が困難になる可能性が高まります。
介護が必要になる背景はさまざまです。代表的な例に「転んで大腿骨を骨折した」「認知症になった」などがあります。前々から準備ができていると、急な介護にも柔軟に対応できますが、何も知らないと不安に襲われるでしょう。「在宅介護にするか、施設サービスを使うか」「費用はいくらかかるのか」「介護する側は会社を辞めざるを得ないのか」など、焦ってしまいます。
家族の介護はほとんどが「初めての経験」であるうえに、介護保険のサービスや制度は複雑なのですぐに最善策を見つけるのは難しいのです。
80歳以上になると5人に1人が要介護状態に
厚生労働省の調査によると、65歳の場合は約20人に1人が要介護状態になってしまいます。これが70歳以上になると、約10人に1人になり、80歳以上になると約5人に1人が要介護となります。
20人に1人と聞くと、まだ安心できるかもしれません。しかし介護は脳梗塞や転倒での骨折などが原因となり、急にスタートする場合もあります。決して油断はできないのが現実です。
介護が必要になる年齢については以下の記事で詳しく紹介しています。
親の介護が必要になる理由と背景
まずは介護が必要になる背景からご紹介します。理由は多岐にわたりますが、厚生労働省の統計によると、介護が必要になった理由のトップ4は「認知症」「脳血管疾患(脳卒中)」「高齢による衰弱」「骨折・転倒」です。
出典:厚生労働省「平成30年度版高齢社会白書(全体版) 」ではそれぞれの理由に関して詳しくご説明しましょう。
1.認知症
認知症にはあらゆる症状があります。深夜や早朝などに目的もなく外をうろうろしてしまう「徘徊」、また自分の行動や行為を忘れてしまう「記憶障害」、時間や曜日の感覚が分からなくなる「見当識障害」など、症状は人によってさまざまです。物忘れとは違って、誰かが生活のサポートをしなければ日常生活を満足にできない場合があります。当然、介護が必要になるのです。
認知症については、以下の記事で詳しく紹介しています。
2.脳血管疾患(脳卒中)
脳卒中には主に3つの種類があります。「脳梗塞」「くも膜下出血」「脳出血」です。特に脳梗塞を患った後は半身麻痺や言語障害などの後遺症が残ることもあります。重い場合、寝たきり状態になってしまうケースもあるのです。介護をしながら、医師のもとでリハビリをすることで、もとの生活に戻れることもあるでしょう。
3.高齢による虚弱・衰弱
虚弱は介護用語で「フレイル」ともいわれます。高齢になると筋肉をはじめとした体内の組織が衰えていき、自立した生活ができなくなることもあります。その結果、怪我や疾患をはじめとする老年症候群にかかり、介護が必要になるケースも多々あるのです。
フレイルについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
4.骨折・転倒
高齢になると視力や足腰などが弱まることで、転倒のリスクが高まります。「階段から落ちた」「段差につまずいた」などで骨折や捻挫をしてしまうことで、介護が必要になることも多くあるのです。
このような理由から家族の介護生活がスタートします。老衰の場合は事前に準備をしておけるかもしれません。しかし脳卒中や転倒などは、突然として起きてしまうものです。「昨日までは元気だったのに」と急な生活の変化に驚いてしまう場合も多くあるでしょう。
しかし介護をしなければ、対象者が満足に生活できなくなります。時間が無いので焦ってしまうかもしれません。前々から準備をすることで、焦らずに介護の準備に取り掛かれるのです。
まずは家族で話し合う
両親や配偶者の介護が必要になった際は、家族で集まって話し合いをしましょう。
「長男が介護をする」は過去の話、今はチームプレーが大事
かつて「家文化」があった時代には「長男が家族の介護をする」という暗黙の了解がありました。長男のもとに嫁ぐ奥さんも、ゆくゆくは姑の介護を担当する必要があると考えられていたものです。その考えが兄弟姉妹に亀裂をもたらす原因になることもありました。現在では次男や三男が在宅介護をするケースも珍しくありません。介護をする際には家族全員で話し合い、最も無理なくスムーズに行く方法を決めることが重要です。
兄弟が介護の問題で揉めてしまう原因となるのは「誰が介護をするのか」「誰がお金を払うのか」などの役割分担が決まっていないからだといえます。ですので、事前に必ず話し合いをしておくことが必要なのです。
介護に関して兄弟間などで揉めてしまう原因や回避する方法は以下の記事でも解説しています。
主に家族で話し合うべきポイントは以下の3点です。
介護対象者の意向は在宅介護なのか施設介護なのか
介護をするうえで、対象者の意向を尊重するのは大切なことです。よくあるトラブルとしては「本人は在宅介護を望んでいたが無理やり施設に連れていってしまい、喧嘩になってしまった」というもの。関係性を壊さないように気をつけながら介護を進めるために、最初に本人の意向をキャッチしておきましょう。
在宅介護と施設入居の比較については、以下の記事で詳しく紹介しています。
在宅の場合は誰が介護を担当するのか
在宅介護の場合、家族のうちの誰が実際に介護を担当するのかを決めておきましょう。ただし介護は負担が大きいものです。実践する人だけでなく、家族全員でサポートすることが大切になります。介護を担当しない人も定期的に訪れて、介護対象者の心身を気遣いましょう。また在宅介護による限界を感じたら、施設介護に切り替えることも必要です。
さらに実際に介護をしていない家族が、正月やお盆などに帰省をした際に余計なアドバイスをしてしまい、関係が悪化するケースが多々あります。必ず実際に介護をしている人を思いやること、苦労をねぎらうことを大切にしましょう。
介護費用はどうするのか
「誰が介護を担当するのか」「1日のうち、どれほどの時間を介護に割けるのか」などの役割分担をすることはもちろん「介護費用の問題」を決めることを忘れてはいけません。
まずは介護対象者の財産を細かく把握しておきましょう。「親の年金で介護費用は足りるのか」「足りない場合は誰が費用をまかなうのか」などの情報を把握しておくことが大切です。最初に費用の問題を決めておくことで、トラブルを避けられます。基本的には介護対象者の資産や年金を使って支払います。
しかし金額が足りない場合も往々にしてある問題です。その際には家族の資産や貯金を取り崩す必要があるかもしれません。誰が介護費用をまかなうのかをあらかじめ決めておきましょう。もちろん負担が大きい際には家族で分担することもあります。また介護費用の負担を軽減するための制度や施策もありますので、積極的に活用することが大切です。
介護費用については、以下の記事で詳しく紹介しています。
一人っ子の場合は?
兄弟姉妹がいない場合は基本的に配偶者か子である自分が介護をする可能性が高くなります。話し合いをする必要はありませんが、すぐに介護の準備をしなくてはいけません。
介護時に使える制度を確認したり,、費用の準備をしたりと、後述する手順にそってスピーディーに介護の準備を進めていきましょう。
また在宅介護の際に特に重要なのが「協力者を作ること」です。兄弟がいれば身近な相談相手になります。しかし一人っ子の場合は相談相手がなかなかおらず、1人で悩みや責任を抱え込んでしまいがちです。「介護うつ」といううつ病になってしまうリスクもありますので、必ず事前に協力者を作ることを意識しましょう。
一人っ子の場合の対処法については以下の記事で詳しく紹介しています。
当事者とも話し合いをすることで親子喧嘩を防ぐ
介護生活に入る当事者は不安ですし、子どもの前で格好をつけたくなるものです。しかしそんな姿勢がときに親子喧嘩に発展してしまうこともあります。
例えば「老人ホームに入りたくない」という方も多くいます。高齢者世代は特に、最期まで落ち着く我が家で暮らしたいと考えて居る方も多いようです。いざというときに揉めてしまうと、施設入居ができなくなる可能性もありますので、必ず介護が始まった時期、もしくは始まる前に話し合いをしておきましょう。介護にまつわる親子喧嘩の原因については以下の記事で詳しく紹介しています。
また当事者と話し合いをすべき内容については以下の記事にまとめております。たった2人の大事な親だからこそ、常に思いやりをもって接しましょう。
遠方に住んでいる場合は?
介護が必要になった親が遠方に住んでいる場合もあるでしょう。こうした場合は3つの選択肢があります。1つ目が遠距離での在宅介護をする方法です。サービス事業者などとリモートツールや電話などでやり取りして遠距離にいながら在宅介護をします。2つ目が介護を担当する家族が要介護者のもとに引っ越して在宅介護をする方法です。3つ目が対象者が家族のもとに引っ越す方法です。
遠方で、しかも在宅介護をする場合は、どれを選ぶかについてよく話しておく必要があります。
遠方での在宅介護については以下の記事もご覧ください。
対象者の状態を説明できるようにしておく
家族での話し合いが終わったら、まずは現状を客観的に見て、介護対象者がどのような状態なのかを把握しておきましょう。なぜなら介護施設を探す際やケアマネジャーと話す際などに、説明をしなくてはいけないからです。
また「どの作業をどれくらいできるか」「介護にはどれくらいの時間がかかるか」などの要素によって入所できる施設が変わります。では具体的にどんな基準で、家族の状態を見極めればいいのでしょうか。
介護対象者の状態
まずは対象者の状態について詳しく知っておきましょう。「身体のどこに不調があるのか」「できること、できないことは何か」「主にどんな作業に苦労をするのか」などをあらかじめ知っておく必要があります。かかりつけ医の意見なども参考にしてください。
介護にかかる時間
実際に介護に費やしている時間について把握しておきましょう。1日のうち何時間を介護に費やしているかを計測し、負担を数値で確認できるようにしておくことで、介護の計画が立てやすくなります。
事故を起こす危険性
対象者の状態によっては思わぬ事故に巻き込まれる可能性もあります。例えば認知症によって徘徊の症状がある場合、夜中に外を歩いている間に交通事故を起こすケースがあります。また転倒してしまい、歩行ができなくなることもあるでしょう。事故のリスクが有る場合は夜間でも対象者から目を離せません。介護の負担にもつながるポイントですので、あらかじめ事故の危険性を知っておくことも必要です。
ここまでは自身や家族だけでできる準備についてお伝えしました。プライベートな情報がまとまったら、実際に外部の有識者の声を収集しながら介護の具体的な方向性を決めていきましょう。
地域包括支援センターに相談する
最初に訪れるべき施設は「地域包括支援センター」です。ほとんどの場合、介護は初めての経験であり、施設ごとの特徴や費用、選び方などは分かりません。そんな人のために介護についての基本的な情報を教えてくれる施設になります。
各市町村の役所に設置されているほか、独立して設置されている施設もあります。地域包括支援センターは市町村が責任主体となって運営しており、保健師や社会福祉士、主任介護支援専門員などが配置されているのが特徴です。
また地域包括支援センターでは、地域ごとにケアマネジャーを紹介してくれます。ケアマネジャーとは介護をする人に寄り添って、介護計画の立案や施設の紹介をしてくれる職業です。介護に関する知見を持っている有識者に相談することで、ホッとすることもあるでしょう。考えがまとまり、やるべきことがはっきりするのもメリットです。
要介護認定を受ける
その後、本格的に介護保険サービスを使いながら介護を進めるにあたって、前提として要介護認定を受けなければいけません。
要介護認定とは「対象者について介護が必要な度合い」を8段階で表したものです。最も軽い状態から「自立」「要支援1」「要支援2」「要介護1」「要介護2」「要介護3」「要介護4」「要介護5」となります。
介護にかかる時間や手間を基準にレベル分けがされます。介護保険施設では要介護度が重いほど入居できる施設の数が増えていき、また介護保険サービスで利用できる点数(金額)が変わります。
判定区分 | 要介護認定等基準時間と認知症加算の合計 |
---|---|
要支援1 | 25分以上32分未満またはこれに相当する状態 |
要支援2 | 32分以上50分未満またはこれに相当する状態 |
要介護1 | 32分以上50分未満またはこれに相当する状態 かつ、次のどちらかに該当する場合
|
要介護2 | 50分以上70分未満またはこれに相当する状態 |
要介護3 | 70分以上90分未満またはこれに相当する状態 |
要介護4 | 90分以上110分未満またはこれに相当する状態 |
要介護5 | 110分以上またはこれに相当する状態 |
では要介護認定を受けることで、どんなメリットがあるのでしょうか。在宅介護と施設介護に分けて、ご紹介しましょう。
要介護認定が在宅介護にもたらすメリット
在宅で介護をする場合は、介護休業が必要になる可能性があります。介護休業制度を利用するためには、介護対象者が要介護認定を受けている必要があるのです。
介護離職をしてしまった場合は収入が完全に無くなりますし、介護を終えて復職する際にまたイチから就職活動をしなくてはいけません。介護休業をすることで、会社に在籍したまま最大93日間の休業ができます。また介護休業給付金を受け取れる可能性も大いにあるのです。
また要介護認定を受けることで、介護保険を用いて「居宅介護支援サービス」を利用できます。居宅介護支援サービスとはケアマネジャーが介護の現状を把握したうえで、介護計画(ケアプラン)を作成してくれるサービスです。また計画書だけでなく、施設との連絡や調整などまでを手掛けてくれます。
施設介護の場合
介護施設にはさまざまな種類があります。介護対象者の状態や予算によって適した施設を選ぶ必要がありますが、多くの施設は要介護認定を受けていないと入所ができません。また要介護認定を受けることで、介護保険が適用され、1~3割負担で施設の介護サービスを利用できるのです。
要介護認定は住んでいる市区町村でなされます。希望する場合は、まず市区町村で申請をしましょう。書類が通過したら、一次・二次判定によって対象者の要介護度が分かり、度合いに応じた介護保険サービスが受けられるようになります。また介護保険の支給限度額も要介護認定によって上下します。
要介護度や要介護認定については、以下の記事で詳しく紹介しています。
在宅介護か、施設入居かを決める
月々の費用や症状の重さなどを加味したうえで「施設を利用するか」「在宅で介護をするか」を選ぶことになります。施設に入居する場合は、ケアマネジャーがおすすめの施設を教えてくれるかもしれません。しかし、各地域に膨大な量の施設がありますので、すぐには決めず複数の内見をしましょう。
では簡単に在宅介護と施設介護の概要やメリット・デメリットについてご紹介します。
在宅介護とは
家族が自宅で介護をすることです。居宅サービスを用いながら、できるだけ介護をする側の負担がないように進める必要があります。
在宅介護のメリット
- 費用が安く済む
- 介護対象者が慣れ親しんだ自室で介護を受けられる
- 必要に応じて柔軟に介護保険サービスを利用できる
在宅介護のデメリット
- 介護をする家族に負担がかかる
- 急に医療的なケアが必要になった際に対応しにくい
- 寝たきりになる可能性が高まる
在宅介護については、以下の記事で詳しく紹介しています。
施設介護とは
施設に入居することで包括的なケアを受けることです。介護をプロの介護スタッフや場合によっては看護師に任せられます。
施設介護のメリット
- 家族の負担が軽くなる
- プロの介護スタッフによる手厚いケアが受けられる
- 緊急事態にも対応してもらえる
- 入居者同士の交流があり、精神的にも好影響がある
施設介護のデメリット
- 在宅に比べて費用が高い
- 環境の変化によるストレスがある
- 入居者同士のトラブルの可能性がある
介護施設の種類や費用などについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
ケアマネジャーを選ぶ
ケアマネジャー(介護支援専門員)とは介護や福祉、医療などの専門的な知識を蓄えた「介護のプロフェッショナル」です。全国各地にある居宅介護支援事業所で働いています。
ケアマネジャーを選ぶ流れをご紹介しましょう。前述した通り、まずは「地域包括支援センター」で居宅介護支援事業所のリストをもらいます。次にリストからケアマネジャーを選びます。
ただしケアマネジャーによって保有している資格や経験などは大きく違います。今後の介護計画を立てるうえで家族に最も近く、介護の計画を作るための中心になる存在ですので、慎重に選びましょう。
ケアマネジャーの選び方について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ケアプランをつくる
その後は、ケアマネジャーと家族で話し合いながら「ケアプラン」をつくります。ケアプランとは「居宅で介護サービスを利用するにあたって、対象者にマッチした介護を進めるために作られた介護計画書」のことです。
介護保険サービスは無計画には利用できず、必ずケアプランを用意する必要があります。ただし施設介護の場合はケアマネージャーがケアプランを作成する必要はありません。
ケアプランの作成にあたっては、本人と面談し状態を把握する「アセスメント」が実施されます。本人や家族がどのようなことに困っていて、どんな希望を持っているかなどを聞き、一人ひとりに合った計画が立てられるのです。
具体的には1週間のスケジュールごとに予定を決めていきます。在宅介護の場合は「いつごろデイサービスに行くのか」「リハビリ施設にはどれくらい通うのか」などを設定します。このとき「予算」「介護をする人の負担」「介護対象者に無理がない範囲」の3点に気を付けることは重要です。
ケアプランについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
介護保険サービスの種類を知る
ケアマネジャーと一緒にケアプランをつくる前に、介護保険サービスの種類を学んでおきましょう。あらかじめ知っておくことで、ケアマネジャーとの話し合いがよりスムーズかつ有意義になります。大きく分けると介護保険サービスには「訪問サービス」「通所サービス」「宿泊サービス」「施設サービス」の4つがあります。
訪問サービス
訪問介護(ホームヘルパー)
訪問介護(ホームヘルパー)とは在宅介護中の人の住まいを訪問し、日常の介助をしてくれるサービスです。
訪問入浴介護
訪問入浴介護とはその名の通り、入浴に関して対象者の介助をするサービスです。簡易浴槽を実際に持ち込んだうえで入浴の介助をします。
訪問看護
訪問看護とは医療的なケアが必要な際に看護師の資格を持つ人が住まいを訪問して看護をするサービスです。
訪問リハビリテーション
理学療法士や作業療法士などの資格を持つスタッフが対象者の自宅を訪れて、部屋の中でリハビリをするのが訪問リハビリテーションです。
夜間対応型訪問介護
要介護者によっては24時間、誰かのサポートが必要になる場合があります。夜間対応型訪問介護は18時~翌朝8時の間で自宅を訪問し、介護をするサービスのことです。定期的な訪問と緊急事態に備えた臨時対応の2種類があります。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は24時間にわたり、要介護者が安心して生活できるように整備されたサービスです。具体的には定期的に巡回したり、緊急事態に随時対応したり、と必要な際に必要なだけ利用できます。
訪問サービスについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
通所サービス
通所介護(デイサービス)
デイサービスとは1日、または半日単位で施設に行き、利用者との交流やレクリエーションなどを通して在宅での生活ができるようにするサービスです。通所型では最も多くの人に利用されています。
通所リハビリテーション(デイケア)
通所リハビリテーション(デイケア)とは医師の判断のもと施設でリハビリができるサービスです。デイサービスと同じく1日型、半日型があります。
地域密着型通所介護(小規模デイサービス)
デイサービスのなかでも市町村の指定を受けた地域の事業者だけができるサービスが地域密着型通所介護(小規模デイサービス)です。対象者の「ずっと住み慣れた地域で暮らしたい」という思いに応えるべく創設されました。
療養通所介護(医療型デイサービス)
療養通所介護とは地域密着型デイサービスに内包されるサービスです。なかでも医療行為を必要とする人に向けて展開しています。
認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)
特に認知症に対応したデイサービスです。認知症による心身の衰えを予防するために作られた施設になります。
通所サービスについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
宿泊サービス
短期入所生活介護(一般型ショートステイ)
介護をする側の負担を軽減するために、ある期間だけ施設に入所をしてもらうためのサービスです。主な施設に特別養護老人ホームなどがあります。長期滞在はできず、数週間の利用となるのでご注意ください。
短期入所療養介護(医療型ショートステイ)
こちらも短期的に施設に入所をしてもらうことで介護をする側の心身の負担を軽減するサービスです。ただし医療的なケアが必要な人が対象ですので、介護老人保健施設などへの入居となります。
施設サービス
特別養護老人ホーム(特養)
介護保険を利用することで低価格で充実したサービスが受けられるため、とても人気が高い老人ホームで、一度入居すると基本的には最期まで入居し続けられます。待機が多く入居まで1~2年かかることがほとんどです。
特別養護老人ホームについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
介護老人保健施設(老健)
リハビリにより在宅復帰を目指すための施設であり、入所期間が限定されます。入所は3~6カ月の期間限定で、終身利用は望めません。ただし実際は、6カ月以上にわたって入所している人が多いのも事実です。
介護老人保健施設(老健)については、以下の記事で詳しく紹介しています。
介護療養型医療施設(介護療養病床)
重度の要介護者に対し、充実した医療処置とリハビリを提供する施設ですが、2018年4月の介護保険法改正によって廃止が決定しました。2024年3月末までに完全撤廃する予定です。
介護医療院
前述した介護療養型医療施設(介護療養病床)が廃止となり、介護医療院はその受け皿として新設されました。医療と介護の両側面を持ち、介護対象者は同じ施設で生活のサポートを受けながら、医療的なケアが可能です。看護師の人員配置が他の施設より手厚く「インスリン注射」や「痰の吸引」「経管栄養」などの医療処置に対応しています。
介護医療院については、以下の記事で詳しく紹介しています。
介護保険サービス外の介護施設
上記の「施設サービス」は介護保険が適用されるため安価で利用できるのが特徴です。そのぶん人気も高く「入居待ち」が発生する場合もあります。しかし施設はすぐにでも決めたいものです。施設介護の入居を考える際は、介護保険サービス外の施設についても概要を把握しておきましょう。
介護付き有料老人ホーム
本格的な介護や生活支援にはじまり、広いサービスを入居者の状態に合わせて提供しています。入居者3名に対し、1名以上の介護職員または看護職員が配置されており、介護保険サービスの費用は定額です。金額を気にせず、手厚いケアが受けられます。
介護付き有料老人ホームについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
住宅型有料老人ホーム
要介護および要支援認定者や自立の高齢者が入居生活できる施設です。緊急時の対応や生活援助のほか、レクリエーションなども受けることができます。介護保険サービスを利用する際は、訪問介護や通所介護といった外部のサービスを契約しなければいけません。日常的に介護が必要な人は費用面で注意が必要です。
住宅型有料老人ホームについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
バリアフリー対応の賃貸住宅です。主に自立(介護認定なし)あるいは軽度の要介護高齢者を受け入れています。日中は生活相談員が常駐し、入居者の安否確認やさまざまな生活支援サービスを受けることができます。しかし、介護が必要な場合は、訪問介護など外部の介護保険サービスと個別に契約する必要があるため高額になることもある施設です。
サービス付き高齢者向け住宅については、以下の記事で詳しく紹介しています。
グループホーム
1ユニットにつき9人までの利用者が、生活介助を受けながら共同生活をすることで機能訓練などをする介護施設です。基本的には2ユニット(18人)の人が1つの施設で生活しています。入居のためには医師による認知症の診断が必須になります。比較的元気な人向けのため空室が出にくく、居室が狭いため安価なものが多いのが特徴です。
グループホームについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
ケアハウス(軽費老人ホーム)
比較的低額な利用料金で、生活の介助やサポートを受けられる施設です。生活の自由度が高いこともあり、人気を博しています。
ケアハウスについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
このように「介護施設」と一言で言っても機能や入所期間など、サービスはさまざまあります。それぞれのサービス内容や入所条件、費用感をあらかじめ頭に入れておくことで、内見時に「イメージと違う」というハプニングが起きにくくなるのです。最終的に納得のいく施設選びができるよう、あらかじめサービスについて理解をしておきましょう。
施設を探す
入所する施設の希望条件について整理できたら、いよいよ家族が入所する介護施設を探すことになります。施設を探す方法はいくつかあります。
実際に住まいの周辺の施設を見る
多くの人が住まいの近隣にある施設を希望します。家族が近くに住んでいる可能性が高いですし、慣れ親しんだ街を離れたくないという思いが強いからです。そのため、自宅の近隣にある施設に連絡をして、実際に見学をするという選択肢があります。ただし多くの施設を確認できないのがデメリットです。
ケアマネジャーからのおすすめの施設に内見に行く
ケアマネジャーに相談することで、おすすめの施設を紹介してもらう場合もあります。ケアマネジャーは専門的な知識を豊富に持っており、要望に応じた施設を紹介してくれるでしょう。ただしケアマネジャーが紹介できる施設は限られています。納得行く施設選びをするために複数の施設を比較したい場合はあまりおすすめしません。
老人ホーム検索サービスを利用する
「介護のほんね」をはじめ、老人ホームを検索できるサービスはいくつかあります。実際にさまざまな施設に足を運ぶよりも効率的にいろんな施設を確認できるのが魅力です。また気になった施設があったらネット上ですぐに資料請求できますし、入居相談員に無料で電話相談することも可能です。
高齢化が進むに連れて介護施設の数はだんだんと増えています。施設ごとに区分はあるものの、施設ごとに特徴がありますので、気になる施設はすべて内見に行くことがおすすめです。老人ホーム検索サービスでは、専門の相談員におすすめの施設を質問することもできます。
資料を請求する
施設によってはパンフレットや資料を請求することができます。1つだけではなく複数の施設の資料をもらうことがおすすめです、比較しながら施設情報を確認できます。事前に資料で費用感やアピールポイントなどを知ることで、見学に行く前にイメージを固めることができます。
実際に見学する
希望の施設を絞り込めたら内見をしましょう。あらかじめ見学の時間を予約し、施設内を職員と一緒に回ることになります。気になった点はメモをとったり、スマホで撮影したりすることで必要な情報を残しておくことができます。また実際に施設内の食事を試食することも可能です。なお、見学時に仮申込をすることもできます。気に入った施設がある場合は、仮で押さえておくこともおすすめです。
また内見をする際には注意が必要です。あらかじめ内見予定の施設のガイドラインを確認しておきましょう。入所はできても「認知症の症状が重い場合」「施設職員や他の入所者の迷惑をかける場合」などは強制退去になる可能性もあります。あらかじめガイドラインを知っておくことで施設側とのトラブルを未然に防げるのです。
アポイントを取らずにいきなり訪問しても見学はできるか
見学の際は基本的に事前の予約が必要です。電話かWebなどで見学をする日程を調整してから訪問すると、確実に出迎えてもらえますし、スムーズに施設内を案内され説明を受けられます。
ただし、なかには「偶然、近所を通ったから」といきなり訪問をしても対応してくれる施設もあります。そのタイミングで職員の方の手が空いている場合などは、そのまま施設内を案内してもらえることもあるでしょう。
もちろん、そのタイミングで他の入居希望者の対応をしていたり、業務に追われていたりする場合は別日に見学をすることになります。ですので、見学をする際には基本的に事前に施設や紹介会社に連絡をして予約を取っておきましょう。
施設側との面談
入居者側に入所の意思がある場合は施設側との面談と審査をします。改めて入居者の身体機能や病歴などの情報を確認するのが主です。認知症の症状などで施設側が受け入れできないなど、入居後の齟齬をなくすのが目的になります。
面談の際は対象者が要介護認定を受けていれば、ケアマネジャーが同席することもあります。もし対象者が疾患やけがで入院している場合は、施設の担当者が病室を訪問してくれますのでご安心ください。
審査
面談の結果を踏まえて、入居の可否を施設側が審査します。身体面や経済状況などが審査のポイントになります。面談から審査までは施設によっても差がありますので、面談の際に質問をしておきましょう。
体験入居する
見学で施設の雰囲気を掴みきれない場合は、体験で1週間ほど入所することもできます。生活リズムやサポートの体制などをより深く知ることができるでしょう。見学だけでは把握できないメリットやデメリットが分かることもあります。
契約
見学や体験入居をして不安なく入居できるようであれば、契約にうつります。契約時には4種類の書類を書く必要がありますので、簡単にご紹介しましょう。
入居申込書
本人の入居する意志と、入居者の家族の情報を書く書類です。
入居契約書
実際に入居にあたって確認すべき基本情報が掲載されている書類です。
重要事項説明書
施設を運営している企業の情報に関する書類です。提供されるサービスなどが記載されています。
管理規程
施設の利用規定などが記載されています。実際に利用するうえで守るべきことや施設設備の使い方などに関する情報が乗っている書類です。
また入居予定の人は以下の7種類の書類を持参しなければいけません。
入居時に必要な書類
- 戸籍謄本
- 住民票
- 印鑑証明
- 印鑑
- 健康診断書(施設指定の項目があるもの)
- 診療情報提供書(入院していた場合)
- 連帯保証人・身元引受人
また費用について、施設側のサービスとして備わっているものと、入居者の負担になるものがありますので、あらかじめすり合わせておきましょう。特に「医療費」や「おむつ代」などはトラブルになることもあります。契約時に確認しておくことが大切です。
入居する
契約が完了したら実際に施設に入居することになります。入居時には施設側の備品として用意されているものと、入居者側で用意するものがあります。
入居日に合わせて衣類やおむつ、医療用品など、必要な物品を用意しておきましょう。
目の前に迫る「介護」について真剣に考える
両親や配偶者の年齢が70~80代になると、いつ介護の必要性が生じてもおかしくありません。実際に必要がなければ他人事のように聞こえてしまうでしょう。しかし前述した通り、ケガや脳卒中などによって突発的に日常生活ができなくなってしまう可能性は大いにあります。
だからこそ、いざというときに備えて情報を仕入れておくことで「自分がどのように動けばいいのか」「どのくらいの費用を貯めておけばいいのか」などの準備ができるのです。
要介護状態になってから実際に介護施設に入居するまでは、多くの場合、1カ月以上かかってしまいます。なのでスピードを意識するあまり「納得いく介護探し」ができない人も多くいらっしゃいます。あらかじめ準備をして、介護に対する知識を持っておくことで効率的に施設を探せるでしょう。その結果、納得できる施設が見つかる可能性も高まります。
今は必要ではなくても、きたるその日に備えて介護に対する情報を蓄えておきましょう。
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関東 [12230]
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北海道・東北 [6915]
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東海 [4888]
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信越・北陸 [3312]
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関西 [6679]
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中国 [3581]
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四国 [2057]
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九州・沖縄 [7730]
この記事のまとめ
- 介護は必要になる前から準備をすべき
- 要介護認定を受けることが必要
- 負担と費用を考えて在宅か施設かを決める
豊富な施設からご予算などご要望に沿った施設をプロの入居相談員がご紹介します