介護休業給付金とは? いつ、いくらもらえるのか解説
介護休業中は基本的に無給となりますが、要件を満たせば雇用保険から介護休業給付金を受け取れるかもしれません。この記事は介護休業給付金の受給要件や申請から振込までの流れ、受け取れる金額について解説します。
大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。
介護休業給付金とは?
介護休業給付金とは、介護休業を取得したことで収入が減少した場合に雇用保険から休業前の賃金の67%(約3分の2)が保障される制度です。
雇用保険と言えば失業手当(正式名称は基本手当)のイメージが強いですが、介護休業給付金も雇用保険の給付の一種となります。
雇用保険の目的は「生活及び雇用の安定並びに就職の促進」です。介護休業給付金も雇用の継続を支援するためのものであり、復職せずに退職した場合や復職後に退職することが決まっている場合には受給できません。
介護休業給付金の受給要件
対象となる労働者
介護休業給付金を受給できるのは、次の要件を満たす人です。
- 介護休業開始日前2年間*に雇用保険の被保険者期間(11日以上働いた月)が12カ月以上ある
また、パートやアルバイト、契約社員など期間の定めのある雇用形態(有期雇用)の場合、次の要件が加わります。
- 介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6カ月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない
これを分かりやすく言い換えると「介護休業を上限の93日まで取得したと仮定した上で、復職後も半年以上働く見込みがある」という意味になります。有期雇用の方は契約内容(契約期間や契約更新の有無)について確認しましょう。
対象となる介護休業
介護休業給付金の支給対象となるのは、次の要件を満たす介護休業です。
- けがや病気、または、身体上・精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする家族を介護するための休業である
- 事業主に対して介護休業の開始日と終了日を明らかにした上で実際に取得した休業である
なお、対象となる家族は配偶者(事実婚を含む)、父母(養父母を含む)、配偶者の父母(養父母を含む)、子(養子を含む)、祖父母、兄弟姉妹、孫です。必ずしも同居・扶養している必要はありません。
対象家族に介護が必要な状態が「2週間以上」続くことが要件であり、実際に介護休業を取得した期間が「2週間以上」必要なわけではありません。介護休業はある程度まとまった期間休むことを想定した制度ではあるものの、休業期間が2週間未満でも給付金の支給対象となります。常時介護を必要とする状態の判断基準については、「介護休業とは」の記事で詳しく解説しています。
対象となる期間・回数
介護休業給付金の支給対象となるのは、対象家族1人につき通算93日を限度に3回までとなります。これは、育児・介護休業法(正式名称:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)で労働者の権利として取得が保障された期間・回数となります。仮に勤務先のルールで対象家族1人につき94日以上、4回以上介護休業が取得可能であっても、給付金の支給対象となるのは法定の範囲内となります。
雇用均等基本調査(2022年度)によると、介護休業に関するルールを設けている事業所のうち、取得可能日数が法定どおりの「通算93日まで」という事業所は約83%でした。残りの約17%の事業所では法定より長く(通算94日以上)休むことを認めていますが、給付金の支給対象になるのは「通算93日まで」となります。取得回数についても同じく、法定より多く(4回以上)休むことができても、支給対象となるのは「3回まで」です。
介護休業給付金の申請方法
申請から振込までの流れ
介護休業給付金の申請は休業終了日の翌日(復職日)から2カ月を経過する日の属する月の末日までに行う必要があります。例えば、7月25日に休業が終了した場合は、7月26日から9月30日までの間に申請します。給付金は支給決定から1週間程度で指定した口座に振り込まれます。
介護休業給付金は事後申請のため、休業中は受け取れません。同じ家族のために複数の家族が同時に介護休業を取得しても(それぞれが受給要件を満たす限り)給付金を受け取れます。しかし、休業中に収入がないことを考慮すると、順番に介護休業を取得するなどの工夫も必要です。
申請方法
介護休業給付金を申請するには、事業所を管轄するハローワークに次の書類を提出する必要があります。特別な事情がある場合は自分で行うこともできますが、申請手続きは基本的に事業所が行います。
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 賃金の額と支払い状況を確認できる書類(例:賃金台帳、出勤簿、タイムカード等)
- 介護休業給付金支給申請書
- 被保険者が提出した介護休業申出書
- 介護対象家族の氏名、申請者本人との続柄、性別、生年月日等が確認できる書類(住民票記載事項証明書等)
- 介護休業の開始日・終了日、介護休業期間中の休業日数の実績が確認できる書類(出勤簿、タイムカード等)
- 支給対象期間中に支払われた賃金の額、支払い状況、休業日数、就労日数を確認できる書類(賃金台帳等)
また、介護休業中に対象家族が逝去した場合には、戸籍抄本や死亡診断書、医師の診断書等が併せて必要になります。
介護休業給付金の申請に必要な書類のほとんどが事業所側で用意するものです。(休業を取得する)本人が提出しなければならない書類については、介護休業申請時に勤務先に確認しましょう。
介護休業給付金の金額
支給額の計算方法
介護休業給付金は休業開始前の賃金の約3分の2が支払われます。具体的には、休業開始時賃金日額(休業開始前6カ月間に支払われた賃金*の合計額を180日で割った金額)に支給日数と67%を掛けて算出します。
支給単位期間と支給対象期間
介護休業を開始した日から1カ月ごとに区切られた期間を支給単位期間といいます。給付金は各支給単位期間ごとに計算され、その合計額が一括で支払われます。なお、給付金の支給対象となる支給単位期間を支給対象期間といい、11日以上就業した支給単位期間については支給対象期間から除外されます。
支給日数
各支給対象期間における支給日数には次のようなルールがあり、支給日数と暦日数が一致しないことがあります。
- 休業終了日を含まない支給対象期間:30日
- 休業終了日を含む支給対象期間:当該支給対象期間の日数
期間 | 暦日数 | 支給日数 | |
---|---|---|---|
支給対象期間その1 | 5月1日〜5月31日 | 31日 | 30日 |
支給対象期間その2 | 6月1日〜6月30日 | 30日 | 30日 |
支給対象期間その3 | 7月1日〜7月31日 | 31日 | 31日 |
支給額の上限
支給額には上限があり、毎年8月に見直されます。2023年8月1日〜2024年7月30日における上限は1支給単位期間あたり34万1,298円です(出典:厚生労働省)。
支給額が減額されるケース
介護休業期間中に賃金が支払われた場合は、賃金と給付金の合計額が賃金月額の80%を超えないように支給額が調整されます。つまり、休業中に支払われた賃金が賃金月額の13%未満なら給付金は満額の67%が支払われますが、13%以上になるとその分が減額されていき、80%以上で支給なしとなります。
税金と社会保険料
給付金は所得税や住民税の課税対象となりませんが、介護休業中も社会保険料の納付義務はあります。休業中の社会保険料の負担方法はおおむね次の3つあり、勤務先によって異なるため、休業前に確認しておきましょう。
- 毎月被保険者が事業主に振り込む
- 事業主が立て替え、被保険者が復職した時に精算する
- 事業主が全額負担する
介護休業給付金を受給できないケースまとめ
最後に、介護休業給付金を受給できないケースをまとめると次のようになります。
- 介護休業開始前2年間の雇用保険の被保険者期間が12カ月に満たない場合
- 休業中に退職した場合
- 復職後に退職することが決まっている場合
- 同じ家族について94日以上介護休業を取得した場合
- 同じ家族について4回以上介護休業を取得した場合
- 休業中(1支給単位期間)に11日以上就業した場合
- 休業中(1支給単位期間)に支払われた賃金が休業前の賃金の80%を超えた場合
- 介護休業中に産前産後休業や育児休業が始まった場合
介護休業給付金は他の給付金(産前産後休業給付金や育児休業給付金など)と同時に受給することができません。介護休業中に育児休業が始まった場合は、育児休業の開始日前日が介護休業の終了日とみなされます。
他の家族と協力すること、介護保険を活用すること
介護休業給付金は休業中の収入減少を補てんしてくれる頼もしい制度です。ただし、復職を前提とした制度のため、復職後にしか申請できず、休業中に収入がなくなることには変わりありません。記事の中でも触れたように、他の家族と協力しながら順番に休業を取得するなど、計画的に利用する必要があります。
また「離職したら失業手当を受け取ればいい」と考えている方もいるかもしれませんが、失業手当は「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就業できる能力がある」ことが受給要件となります。つまり、介護のためにすぐに就業できる状況ではないという場合には失業手当を受け取れません。さらに、介護を終えた後も、ブランクがあることから休業前よりも劣る条件でしか再就職できないことも珍しくありません。
家族の介護が始まった時は離職を考える前に、介護保険や介護休業、介護休暇、時短勤務等の制度を活用しながら介護と仕事を両立する方法を検討してみてください。
- e-Gov法令検索「雇用保険法」
- e-Gov法令検索「雇用保険法施行規則」
- e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」
- e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」
- 厚生労働省「雇用保険制度」
- 厚生労働省「Q&A~介護休業給付~」
- 厚生労働省「雇用均等基本調査」
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