介護休業給付金とは|受給までの流れ・条件・記入例などを紹介

 「父親が倒れてしまった」「母親の認知症が進んでいる」など、介護は急に必要になることがあります。すぐに施設が見つかれば職員に任せることも可能です。しかし入居までに時間がかかる場合や、在宅介護を選択した場合は介護休業を利用する必要があります。

 介護休業中は賃金がなくなります。そこで金銭的な負担を軽くするために申請できるのが「介護休業給付金」です。この記事では介護休業給付金についての概要受給条件申請の方法振り込みまでの流れ支給額の計算方法などを記載します。

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平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。

在宅介護の現場について

家族の介護は大きな負担がかかります。まる1日を使うことも珍しくありません。厚生労働省が調査したデータによると、介護対象者が要支援1では全体の6.1%、要介護5だと54.6%が「ほとんど終日介護している」と回答しました。たとえ対象者の要介護度が軽くても、一日中お世話が必要なケースもあります。

家族が協力してくれる場合は時短出勤も可能でしょう。しかし1人で介護する際には仕事を休まざるを得ません。はじめに介護休業制度について簡単に紹介します。

介護休業制度とは

介護休業を取得するための制度が「介護休業制度」です。介護休業制度は育児・介護休業法によって定められています。労働者が要介護状態の家族を介護するために仕事を休む場合、適用される制度です。

ただし全ての人が介護休業制度を受けられるわけではありません。条件によっては介護休業と見なされない場合もあります。具体的には以下の条件に当てはまった人のみが休業を取ることが可能です。

介護休業を取得できる条件
  • 要介護状態にある家族を介護する場合
  • 日雇いではない場合
  • 契約社員や嘱託社員は申出時点において、次のいずれにも該当すれば介護休業をすることができる。
    • ① 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
    • ② 取得予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までの間に、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと
  • 労使協定で定められた一定の労働者も介護休業をすることはできない。
引用:厚生労働省「介護休業制度

まずは「自分が介護休業と見なされるか」について確認しておきましょう。では介護休業を取得できたことを前提として、本題である介護休業給付金の説明に移ります。

介護休業給付金とは

介護休業の際に受け取れるのが「介護休業給付金」です。介護は人の命に関わる行為であり、仕事よりも大事な行為ともいえます。ただし休業となるので、その期間は収入がありません。そのため、もし介護によって休業を余儀なくされてしまった場合はもともとの所得に応じて、国から介護休業給付金が支払われるのです。給付金は休業時の備えとして活用できます。

介護休業給付金の受給条件について(すべての契約形態)

介護休業給付金の4つの受給条件
介護休業前の就業日数 介護休業開始日以前の2年間に、11日以上就業した月が12カ月以上あること
1年以上の雇用期間があること
介護休業中の就業日数 介護休業中に月に10日以下しか仕事をしていないこと
介護休業中の賃金 介護休業中の月々の賃金が、休業前の賃金の80%未満であること

では介護休業給付金の受給条件について見ていきましょう。まずは正社員やアルバイト、パートタイマー、契約社員、嘱託社員など、すべての契約形態の労働者に共通する条件です。

介護休業前の就業日数に関して

まずは就業日数に関して以下の2つの条件があります。

  • 介護休業開始日以前の2年間に11日以上就業した月が12カ月以上あること
  • 1年以上の雇用期間があること

前提として「介護休業に入る前に一定期間の労働をしていたのか」という部分にチェックが入ります。

介護休業中の就業日数に関して

続いて介護休業中の就業日数に関しては以下の条件があります。

  • 介護休業中に月に10日以下しか仕事をしていないこと

介護休業給付金は就業できない状態の人に向けたものです。介護休業中に就業している人には当然、給付金が支払われません。具体的には月に11日以上、就業をしている場合は受け取れないことになります。

介護休業中の賃金に関して

最後に、介護休業中の賃金に関して以下の条件を満たす必要があります。

  • 介護休業中の月々の賃金が、休業前の賃金の80%未満であること

介護によって休業することで経済的に打撃を受けている人にしか、給付金は支給されませんのでご注意ください。

厚生労働省が以上の4つの要素をチェックしたうえで、介護休業給付金を受け取れるかが決まります。

大きな観点でいうと「介護を始める前にしっかり就業をしていたのか」また「介護就業期間中に働けていないのか」という2点が介護休業給付金が受け取れるかを判断するポイントです。

介護休業給付金の受給条件(有期雇用契約)

契約期間に関して

有期雇用契約を結んでいる場合は新たに2点の条件が発生します。

  • 同じ雇用主のもとで1年以上、働いていること
  • 介護休業開始予定の日の93日後~6カ月後までに労働契約満了とならないもの
参考:「H28.10・育児休業や介護休業をすることができる有期契約労働者について

「長期的に同じ職場で働いていること」また「介護休業直後に契約満了にならないこと」が重要視されています。

介護休業給付金は「介護休業後の職場復帰を前提とした制度」です。ですから「休業前にしっかりと就業していたのか」「休業後に職場復帰をするつもりがあるのか」というポイントが重要になります。

介護休業給付金を受給するまでの流れ

では実際に家族に介護の必要性が生じて介護休業を申請する際は、どのような流れで介護休業給付金を申し込み、いつごろ給付金が振り込まれるのでしょうか。流れに沿って説明しましょう。

STEP1 介護休業の申し込み(休業開始の2週間前までに)

まずは勤務先に書面で介護休業をする旨を伝えます。原則として、介護休業開始日の2週間前までに伝えなければいけません。最終出社日や復帰予定日なども、この段階ですり合わせます。

STEP2 事業主が市区町村に申し込み

介護休業は基本的には事業主が手続きをする義務があります。希望がない限り、申請者が動く必要はありません。ただし会社によっては独自のルールを設けている場合もありますので、あらかじめ確認しておくことが重要です。

STEP3 介護休業が開始、最長93日で終了

希望日に合わせて介護休業期間がスタートします。先述した通り、最長で93日間です。一時的に収入がゼロになることで不安を覚えるかもしれません。しかし期間中に月に11日以上就業をしてしまうと、介護休業給付金を受け取れなくなってしまいます。家族のサポートに専念することが重要です。

STEP4 介護休業終了の2カ月後の末日までに介護休業給付金を申請

介護休業給付金を申請するのは、介護休業期間の終了後です。具体的には期間が終了してから2カ月後の末日までに、ハローワークへの申請が必要になります。例えば1月15日に介護休業が終わった場合、3月31日が期日です。

勤務先でそろえるべき書類もありますので、基本的には事業主がハローワークに申請します。ただし、希望によっては個人での申し込みも可能です。個人で申請する場合の方法や必要書類ついては、のちほどご紹介します。

STEP5 介護休業給付金の振り込み

支給が決定してから1週間程度で振り込みになります。申し込んだ側としては気になるところですが、厚生労働省いわく「振り込みに関する電話での問い合わせには回答できない」とのことです。あまりに振り込みが遅れている場合は、ハローワークの窓口で直接確認をしましょう。

参考:厚生労働省「Q&A~介護休業給付~」

介護休業給付金の金額を導き出すための計算方法

介護休業給付金の計算方法
休業期間中に賃金が支払われなかった場合 支給単位期間が30日以上 休業開始時賃金月額(賃金日額×30)×0.67
支給単位期間が30日以下 休業開始時賃金日額×0.67×休業日数(暦日数)
休業期間中に賃金が発生した場合 支払われた賃金が休業開始時月額賃金の13%以下 休業開始時の賃金日額×支給日数×0.67
支払われた賃金が休業開始時月額賃金の13%超~80%未満 実際に受け取った賃金と給付金の合計が休業開始時賃金月額の80%に達するまでの金額
支払われた賃金が休業開始時月額賃金の80%以上 給付金は発生しない

続いて「具体的にいくら振り込まれるのか」について解説しましょう。あらかじめ受給額を知っておくことで、介護休業中に備えておくべき金額も明確になります。精神的な負担を解消することにもつながるでしょう。

受給額については基本的に「休業開始時の月額賃金×67%」という計算式で導き出すことが可能です。ただし「介護休業期間が30日以上か」「介護休業中に給与支払いがあったか」などで式が変動しますので注意が要ります。では仮に「休業前に月30万円の給料が支払われていた」として各パターンを見ていきましょう。

休業期間中に賃金が支払われなかった場合

休業期間中に給与が1円も払われなかった場合は2パターンに分かれます。

1. 支給単位期間が30日以上(介護休業期間が30日以上ある場合)

30日以上の介護休業期間がある場合は、月額賃金をベースに介護休業給付金が計算されます。

  • 休業開始時賃金月額(賃金日額×30)×0.67

以上が計算式であり、今回の例を用いると30日あたり「30万円×0.67=20万1,000円」が支払われます。

2. 支給単位期間が30日以下(介護休業期間が30日以下の場合)

休業期間が30日以下の場合は、月給では計算できません。日割りでの賃金をもとに介護休業給付金が計算されます。

  • 休業開始時賃金日額×0.67×休業日数(暦日数)

以上が計算式です。週休2日として30万円を日割りにすると、1日あたり1万3,636円となります。20日間にわたって介護休業を利用した場合は「1万3,636円×0.67×20=18万2,722円」が受給額です。

また休業期間によっては、1と2を組み合わせることもあります。たとえば45日であれば最初の30日間は1が適用され、後半の15日間は2の日割り計算が適用されるのです。2つを足すことで受給額が分かります。例に当てはめてみると「(30万円×0.67)+(1万3,636円×0.67×15)=33万8,041円」が支給額です。

休業期間中に賃金が発生した場合

続いて、介護休業期間中に少しでも賃金が発生した場合の計算方法を紹介します。計算例は、いずれも30日間の介護休業を取得した場合の金額です。

1. 支払われた賃金が休業開始時月額賃金の13%以下

まずは、支払われた賃金が休業開始時の月額の13%以下だった場合です。介護休業前の月給が30万円だった場合「30万円×13%=3万9,000円以下の賃金」が支払われたケースを指します。この場合はオーソドックスな「休業開始時の賃金日額×支給日数×0.67」がそのまま適用されます。30日間の介護休業の場合「休業開始時の賃金日額×支給日数」は「休業開始時の月額」と同じです。この場合は30万円になります。そのため受け取れる給付金は「30万円×0.67=20万1,000円」です。賃金と合わせると「3万9,000円+20万1,000円=24万円」となります。

2. 支払われた賃金が休業開始時月額賃金の13%超~80%未満

次に13%~80%の場合です。「30万円×80%=24万円」なので、ここでは「3万9,001円以上24万円未満」となります。この場合は「実際に受け取った賃金と給付金の合計が休業開始時賃金月額の80%に達するまでの金額」が支給されます。

例えば5万円が賃金として支給された場合は「24万円-5万円=19万円」が給付金として支払われます。ここでも給付金と賃金の合計は24万円です。

3. 支払われた賃金が休業開始時月額賃金の80%以上

月額賃金の80%以上が支払われた場合は給付金は発生しません。今回の例だと24万円以上を賃金として受け取っている場合は、給付金は0円になります。

介護休業給付金支給申請書について

介護給付金を受け取るためには「介護休業給付金支給申請書」が必要です。先述したように、介護休業期間が終わってから2カ月後の末日までにハローワークに申請すべき書類になります。

基本的には勤務先が申請します。ただし希望によっては個人で出すこともできる申請書です。では記載すべき事項を紹介しましょう。

  • 介護休業被保険者(介護をする側)のマイナンバー
  • 被保険者番号
  • 資格取得年月日
  • 事業所番号
  • 介護休業被保険者の姓
  • 介護休業被保険者の名
  • 介護休業開始年月日
  • 介護対象家族(介護を受ける側)のマイナンバー
  • 介護対象家族の姓
  • 介護対象家族の名
  • 介護対象家族の生年月日
  • 支給対象期間その1
  • 全日休業日数
  • 支払われた賃金額
  • 介護休業終了年月日
  • 終了事由(「職場復帰」と「休業事由の消滅」から選択)
引用:厚生労働省「介護給付金支給申請書

こちらの介護休業給付金申請書は厚生労働省のサイトからダウンロードできます。ハローワークにも用紙は用意されていますが、こちらを出力して使うことも可能です。

被保険者番号やマイナンバーなど、忘れがちな項目もありますので、自分で申請する人はあらかじめ把握しておくことを忘れないようにしましょう。

介護休業給付金に関するよくある疑問

介護休業給付金は申請の流れや振り込み金額など、分かりにくい部分もあります。だからこそ間違って認識してしまうこともあり、注意が必要です。介護休業給付金に関する間違いがちな情報について記載します。

産前産後休業中・育児休業中の併用はできない

介護休業は産休や育休との併用はできません。実際に出勤をしている最中にしか使えないので注意が必要です。なお介護休業中に産休や育休がスタートした場合、新たな休業開始日をもって介護休業は終了となり、給付金もその日までの分しか受け取れません。

「2週間以上の介護が必要」はあくまで目安

厚生労働省の目安では「介護休業は2週間以上の休業が条件」とされています。しかし、これはあくまで「家族が常時介護を必要としている」という目安です。なので「家族が施設に入居するまでの5日間だけ介護休業を取得したい」という申し出も、許可が下りる可能性があります。

介護休業終了後に退職が決まっている場合は適用外

先述したとおり、介護休業給付金はあくまで職場復帰を前提とした制度になります。ですので、介護休業前に退職が決まっている場合は利用できません。

介護休業給付金で少しでも負担を軽く

介護休業給付金は国の大きな制度改革の一つです。上記のように金銭面でのサポートが受けられるのは魅力になります。家族の介護は体力的にも金銭的にも負担を感じるものです。

だからこそ利用できる制度は積極的に取り入れながら、安心して介護を進めることが重要になります。賃金の67%という大きな金額に関わることなので、必要な際はすぐに会社に報告しましょう。

雇用主には、介護休業が必要な社員に「時短勤務にする」「休業してもらう」などの措置をとることが義務付けられています。急に必要になった場合、言いにくさを感じるかもしれませんが、安心して相談しましょう。

またこの給付金以外にも、独自で介護休業に関する相談窓口を設けていたり、独自の給付金やお見舞金制度を設けている企業もあります。万が一に備えて、就職や転職をする際には、このような福利厚生が充実しているかどうかも確認しておくと安心ですね。

この記事のまとめ

  • 介護給付金は介護休業制度の一環
  • 介護給付金の金額は条件に応じて前後する
  • 事前に介護給付金の額を計算しておくべきである