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親の介護もありお金がない場合、どうしたらいいですか?

現在、親の在宅介護をはじめて5年目です。最初は症状を理解して進めようとしていましたが、だんだんとストレスが溜まってきました。今後の介護費用も不安です。精神的な問題を緩和する方法はありますか?

A1人でストレスを抱え込まず、周りの信頼できる人に相談しながら進めましょう。

介護は長期にわたって続くものです。在宅介護には、家族の理解が求められます。実際に介護をしながら金銭面も含めて問題やストレスを抱えている方も多くいらっしゃることでしょう。どのようにすれば、在宅介護のストレスを緩和できるのか、在宅介護のコツをご紹介します。

平栗 潤一
平栗 潤一
一般社団法人 日本介護協会 理事長

在宅介護はどうしてもストレスを感じてしまう

親の介護をしている方は、男性よりも女性の方が圧倒的に多く、年代としては50代から70代の方が多いことが特徴です。自分の家庭や生活において、さまざまな変化が訪れやすい時期でもあります。

例えば、自分や配偶者の仕事における昇進。また定年退職などによる第二の人生のスタート。子どもの進学や独立、結婚、孫の誕生などのイベントがあります。また更年期による体調の変化などもあるでしょう。

もし40代で親の介護が必要になった場合、子どもが未成年であるケースも多いので、子育てと介護を両立しなくてはいけないこともあります。

男性が介護をする場合、それまでは家庭にいる時間があまりなかったことから、女性とは異なるストレスを抱えることもあるかも知れません。

心身ともに負担が大きい年代で、さらに親を介護するとなると、ストレスは相当なものです。「ストレスを感じない方はいない」と言っても過言ではないでしょう。

厚生労働省が統計を発表している平成28年度国民生活基礎調査では、要介護者のうち介護が必要になった原因として、認知症もしくは脳卒中が上位を占めています。これらの症状は、意思疎通が難しくなるのが特徴です。また自分の親が徐々に衰えていくという現実を目の当たりにします。そのため、身体的のみならず精神的なストレスも大きくなってしまうのです。

出典:厚生労働省「 平成28年国民生活基礎調査の概況

親を在宅介護していてストレスを受けるのは、誰にでも起こりうる自然なことです。引け目を感じる必要はまったくありません。

親の介護は放棄できる?

ストレスのあまり、親の介護を放棄したいと考えている方もいると思います。しかし民法877条第1項には以下の記載があります。

直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
出典:e-GOV「民法

親を扶養することは、法律によって定められている義務となっています。そのため、何の手段も取らずに介護を放棄することはできません。

もし親の介護の必要性を知っていながら放置をしてしまうと「保護責任者遺棄罪」として3ヵ月以上5年以下の懲役に科せられる可能性があります。またその結果、親が怪我をしたり亡くなったりした場合は「保護責任者遺棄致傷罪」「保護責任者遺棄致死罪」が課せられてしまう可能性もあります。

これらは、例えば子どもをショッピングセンターの駐車場に放置して買い物してしまった、という事件でよく見られる罪状です。自分の親だとしても、こうした罪が適用される可能性があります。

ストレスを緩和するためにはどうすればいい?

介護は放棄できないからこそ、少しでもストレスを緩和させる方法を知っておきましょう。多少なりとも気持ちが前向きになれるかも知れません。ストレスを和らげるには、どのような手段があるのでしょうか。

ケアマネジャーに相談して、施設での介護も視野に入れる

ケアマネジャーは介護支援専門員とも呼ばれます。介護保険制度のプロとして、介護を受ける側と提供する側に有益な情報を提供しながらサポートする職業です。

ケアマネジャーには、次のような仕事があります。

  • 要介護認定の申請代行・認定調査の受託
  • 介護サービスを受ける際のケアプラン作成・仲介や実施管理・継続的な把握や評価
  • 介護保険の給付管理(支給限度額の確認、利用者負担額の計算、サービス利用票や提供票の作成、給付管理票の作成や提出)

介護サービスを受けるためには、ケアプランの作成が必須です。肉体的・精神的に在宅介護を続けることが厳しい場合、ケアマネジャーに相談して施設サービスを検討するのも1つの方法です。

その場合、まずはお住まいの市区町村の役場で、介護に関する手続きを担当している窓口(高齢者福祉課・介護保険課などの名称がついています)に相談し、要介護認定の申請手続きをしましょう。

介護を受ける方によっては「自宅で少しでも長く住みたい」と思うことも多く、施設への入所を拒むケースもあります。しかし、第三者であるケアマネジャーが介入することでスムーズに説得できる場合もあるでしょう。まずは1日限りのデイサービスから始め、抵抗なく施設を利用できるようになると、家族の負担もかなり軽減できます。

信頼できる人に相談をする

ストレスを緩和する方法として、信頼できる人に相談をするのもいいでしょう。家族に相談できる相手がいればいいのですが、難しいケースもあるかもしれません。その場合は、同じ悩みを持っている友人同僚近所の方市町村の相談窓口など、相談できる相手を前もってピックアップしておくと安心です。自治体や施設によっては、介護の悩みを話せる「介護家族の会」のような集まりを設けているところもあります。

具体的な解決策は見つからなくとも、話すだけで悩みを共有でき、気持ちが落ち着くこともあるかも知れません。

介護をしていると、自宅から出ることも少なくなり、周囲との接点が少なくなりがちです。人によっては、社会から孤立したような感覚を覚えます。相談をすることで、孤独が和らぎ、人とのつながりを再認識できるのです。

親と一度しっかり話して息抜きの時間をつくる

介護の時間は、常に家族の体調や行動を観察しながら、気が抜けない時間を過ごすことでしょう。緊張が張り詰めたままの状態が長時間続くと、体の不調をきたしてしまいます。体調を崩してしまっては本末顛倒です。

これを防ぐには、意識して息抜きの時間をつくることがとても大切です。自分のための時間が過ごせれば、良い気分転換となって、また介護に向かうことができるでしょう。

なかには、施設や介護サービスの利用に対して快く思わない方もいらっしゃると思います。だからといって我慢し続けるのではなく、自分の気持ちを理解してもらえるよう話してみてください。それが介護者と親の双方にとって、大きなメリットにつながるのです。

すでに「介護うつ」になっている可能性も

「介護うつ」とは、介護者が介護を通して受ける不安やストレスが原因で発症するうつ病のことを指します。毎日の介護でストレスやプレッシャーが蓄積すると、自分が気づかないうちに、介護うつの症状が出ている可能性もあるのです。

次のような症状が出ていると、介護うつを発症している可能性が高いため、できるだけ早いうちにセルフチェックすることをお勧めします。

  • 物事の決断がしにくくなった
  • 以前は興味のあったことが楽しくなくなった
  • 落ち着きがなく、イライラしやすくなった
  • 疲れやすく、疲れが抜けにくくなった
  • 頭痛や肩こりが以前よりひどくなった
  • 集中力が欠けるようになった
  • 誰とも会いたくなく、話すこともしんどいと感じる
  • 食欲がなく、体重が減った
  • 下痢・腹痛・動悸・目まいなどが続いている
  • 身だしなみに気が回らなくなっている
  • 熟睡できず、夜中に目が覚める
  • マイナス思考で物事を考えるようになった
  • 急に涙が出て、止められない
  • 憂鬱な気持ちが止まらない

これらに複数当てはまる場合は、早急に医師やケアマネジャーなど専門家の指示を仰ぐようにしましょう。一人で抱え込んでしまうと、さらなる不調を引き起こしてしまうかもしれません。

親の介護は費用面でも不安になる

介護を受けるには、費用がかかります。介護の期間が読めないことから「一体どのくらいかかるのか」と不安に思う方は多いことでしょう。そこで、在宅介護でかかる費用とその内訳を詳しくご紹介します。

在宅介護は月に5万円かかる

在宅介護における介護費用は、次の2つに分けられます。

  • 居宅介護サービスにかかる費用(デイサービス・デイケア・ホームヘルパーなどの利用にかかる)
  • 居宅介護サービス以外の費用(介護食・おむつ・介護のための自宅リフォーム・ベッド用品・入浴用品など)

家計経済研究所が2016年に実施した「在宅介護のお金とくらしについての調査」によると、この2つを合わせて月々平均5万円かかるという調査結果が出ています。内訳は、介護サービスにかかる費用が1万6,000円、介護サービス以外の費用が3万4,000円です。

参考:季刊 家計経済研究113号「在宅介護のお金とくらしについての調査

また、要介護度が上がると費用も高くなる傾向が見られます。在宅介護を受けるときには介護保険の支給対象となり、自己負担分は1~3割で済みますが、限度額を超えた分は全額自己負担となります。

公益財団法人生命保険文化センターの調査によると「介護期間は平均4年7カ月」という数値が発表されています。これは平均ですので、なかには10年以上介護を続けた方もいらっしゃいます。介護の期間が長くなるほど、費用もかかるものです。まとまった金額を用意しておけると安心です。

参考:公益財団法人生命保険文化センター「介護にはどれくらいの年数・費用がかかる?

まずは年金を中心に介護費用を見積もる

在宅介護の費用は、要介護者の貯金や退職金、年金などから支払うのが基本です。家族には家族の生活がありますので、基本的には在宅介護の費用を全額負担する必要はありません。あくまでも不足分だけを家族で分担して補う、と考えるようにしましょう。

在宅介護を続けるなかで、要介護者からお金に関して文句をいわれてしまうかもしれません。しかし在宅介護の場合は働く時間も確保できないのが現状です。基本的には介護者の資産は崩さずに、要介護者のお金を利用するのが健全です。

より金銭的に楽に進めるために制度を利用する

介護費用を少しでも楽にするために、国の制度や民間企業のサービスなどを利用するのも手段の1つです。知っておくだけで、金銭的なストレスを緩和できるかもしれません。

マイホーム借上げ制度

資金がどうしても足りない場合は、不動産を活用するケースもあります。一般社団法人 移住・住みかえ支援機構が推進する「マイホーム借上げ制度」は、自宅を売ることなく賃料収入を得ることができる制度です。

もし在宅介護のために引っ越しをして元の住まいが空き家になっているならば、利用すると定期的な賃貸収入になります。

リバースモーゲージ

「リバースモーゲージ」は、自宅を担保として月々の融資を受け、亡くなった時点で売却するものです。ただし利息がかかってしまいますので、ご注意ください。

困った時はケアマネジャーに相談しケアプランを見直す

費用の面で困ったときには、まずケアマネジャーに相談しましょう。ケアマネジャーに依頼してケアプランを見直してもらうことで、費用を抑えられる場合もあります。

ケアマネジャーは、予算や要介護度などに応じてどのような介護サービスを受けられるかを組み立ててくれます。予算をオーバーしてしまっているときは、その旨を相談しましょう。

ケアマネジャーの業務の1つに「モニタリング」というものがあり、一度作成したケアプランが適切かどうか、月1度以上面談して確認することになっています。親の様子が変わったときだけでなく、プランの変更もこのときに伝えるといいでしょう。

費用以外にも、介護サービスを受けたことによってサービスが合う・合わないという実情や、在宅介護できる家族が減ったために介護サービスを増やしてほしいという希望なども、ケアマネジャーとこまめに相談してプランを見直しましょう。

在宅介護は兄弟姉妹間で揉めることもある

在宅介護では、費用面や介護の負担について、兄弟姉妹の間でもトラブルが起こることがあります。気心が知れているだけに、衝突することもあるのです。

あらかじめ費用や介護の担当を決めておく

親の介護が必要になったとき、兄弟間でまず決めておきたいのは「費用の分担について」「介護担当について」です。もし、親の意思が確認できる段階であれば、介護に対する希望や親の経済状況を聞けると、より安心です。

家族のなかで介護の担当を決めておけば、急に介護が必要になったとしても自然に始められます。各々のできること・できないことを確認し、誰が中心となって介護をするかを決め、それを他の家族がどのようにサポートできるかを話し合います。このとき、決して中心人物だけに負担が偏らないように注意し、少しでも援助できることがあれば積極的に伝えるようにしたいものです。

兄弟が協力しやすくなるよう「担当者」を補佐する役割を決める

ただしメイン担当だけを決めてしまうと、ストレスが一挙にかかってしまうことになります。すると「なんで兄弟は協力してくれないんだ」という怒りに発展し、兄弟間でトラブルになってしまいます。

そのため、必ず「負担がメインにだけかからないようにすること」が重要です。例えば「実際の介護はメイン担当者がするが、その際の費用は別の兄弟が担当する」や「月に一回は羽を伸ばせる日を必ずもうける」といった工夫を兄弟で決めておきましょう。

こうして介護に入る前に協議で担当者と協力者を決めておくことが、親の介護で重要な要素になります。

最悪の場合、家庭裁判所で扶養すべき兄弟の順位を決めることも

協議がうまくまとまらない場合は、家庭裁判所が最終判断をすることもあります。民法878条には以下の記載があります。

扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順序について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。扶養を受ける権利のある者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養するのに足りないときの扶養を受けるべき者の順序についても、同様とする。
出典:e-GOV「 民法

兄弟間のトラブルが解決できなければ、裁判所の判断によって介護担当者を決めることになります。

ショートステイなどの短期的なサービスも活用

兄弟が近くにいれば、たまに介護をお願いしてゆっくり羽を伸ばすこともできるでしょう。しかし一人っ子の場合や兄弟が遠方にいる場合は、親の介護を休む時間をなかなか取れません。

とはいえ、ストレスを発散するためには時には介護から離れる時間を作ることが必要です。そのために使えるサービスとして、例えば短期入所(ショートステイ)があります。1日から利用できますので、介護者の休息のためにもうまく活用したいサービスです。

それでもストレスがたまってしまう場合は、老人ホームなどの施設への入居も前向きに考えましょう。親の介護は介護する側が精神的ダメージを受ける場合もありますので、無理をしない選択をすることが大切です。

平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

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