認知症の症状とは|中核症状・周辺症状・家族の対応などを種類別に紹介

高齢になるにつれて心配なのが認知症です。どれだけ注意をしていても、誰もがかかってしまうリスクがあります。早期発見によって進行を遅らせることができ、家族としては早めに対処をしなくてはいけません。そのために認知症ならではの行動について知りましょう。今回は認知症の症状についてご紹介します。「どのような変化が見られたら認知症を疑うべきなのか」を把握して、家族の介護に備えておきましょう。

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平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。

認知症とは

認知症とは「疾患などによって脳の働きが低下してしまった結果、発生する症状の総称」です。全部で約70種類ほどあります。種類によって発生する症状が違いますので、注意深く観察することが必要です。

認知症の症状は大きく2つに分かれます。それが「中核症状」と「周辺症状」です。簡単にまとめると「中核症状」は脳の機能が低下することで発生する症状であり「周辺症状」は中核症状によって引き起こされる二次的な症状になります。では、より詳しく説明しましょう。

認知症の「中核症状」とは

中核症状とは脳の機能が低下することで起こる症状です。主な中核症状を1つずつ紹介します。

記憶障害

記憶障害はその名の通り「記憶が抜け落ちてしまう症状」です。「老化による物忘れ」と誤解されがちですが、両者ははっきりとした違いがあります。物忘れは何かヒントになる情報を伝えれば思い出すものです。しかし認知症の場合は、記憶そのものが抜け落ちているので、ヒントがあっても思い出せません。

例えば昼食のメニューを思い出せない場合は「物忘れ」です。「昼ごはんを食べたか否か」を思い出せない場合は「記憶障害」になります。

見当識障害

見当識とは周りの風景や状況、人々などの情報から「なぜ自分はここにいるのか」「今日は何曜日か」「季節は何か」などを把握することをいいます。例えば「昨日は金曜日だったから今日は土曜日だ。休日だから出社はしないし、朝は〇〇のテレビ番組が放映されている」という情報はわざわざ考えなくても分かっているものです。人は見当識によって無意識のうちに自分を取り巻く情報をキャッチしています。

見当識障害になると時間や場所などの見当識を把握できません。順番としては「時間」「場所」「人間関係」の順番で分からなくなるのが特徴です。まずは日付や曜日を把握できなくなり、次に自分がいる場所が分からなくなります。進行すると自分の家族や友だちを忘れてしまうのです。

理解・判断の障害

理解・判断の障害が起きると、状況を理解して判断するまでのスピードが遅れてしまいます。たとえば「会計の際にどの硬貨をどれだけ出せばいいのかがすぐに分からない」「数人で話している際に自分だけ内容が理解できず、関係のない話を始める」などが主な行動です。

実行機能障害(遂行機能障害)

実行機能障害とは、食事や買い物などをきちんと遂行するために計画を立てたり、段取りを考えたりする能力が低下する症状になります。具体例を挙げると「食べきれない量の食品を買ってしまい腐らせる」「掃除や料理などの家事をするために、いつ、どの道具を使えばいいのかが分からなくなる」などです。

視空間認知障害

視力には問題ないのに、脳の機能低下によって空間を視認することができない状態を指します。具体的にいうと「方向感覚が分からなくなり、通い慣れた道で迷ってしまう」「置いてある物と自分との距離を正確に測れなくなる」などの問題が起きてしまうのが特徴です。

失語

脳のうち言葉を司る部位の機能が低下することによって、うまく言葉を使えなくなってしまいます。とはいえ、会話をする際に使う脳の機能はさまざまです。「相手の声を聞く」「聞いた声を言葉だと認識する」「知っている単語を探して、回答すべきフレーズを考える」「言葉を発語する」などの動作があります。失語の場合は、会話をしながらどの段階でつまづいたかを確認することで、脳のパフォーマンスが落ちている部位が分かります。

失認

触覚・視覚・聴覚・嗅覚・味覚の感覚が低下する、もしくはなくなってしまうことを指します。この結果「普段から食べている好物が苦手になる」「手先がうまく使えなくなる」「知っている人がまったく別人のように見える」などの変化が訪れます。

失行

筋肉の動きには問題がないのに、日常動作が急にできなくなることを「失行」といいます。失語や失認を総称する場合もあります。

失行は大きく分けて4種類です。無意識だとできる動作なのに意識するとできなくなる「観念運動失行」使い慣れた道具が急に使えなくなる「観念失行」図形の模写ができない「構成失行」ボタンを外して服を着るなど、着脱の順番が分からなくなる「着衣失行」になります。

これらが8種類の主な中核症状です。中核症状が起こると副次的に周辺症状が表れます。では続いて周辺症状について見ていきましょう。中核症状を主軸にしてみると理解しやすいはずです。

認知症の「周辺症状(BPSD)」とは

周辺症状とは中核症状によって引き起こされる症状です。原語である「Behavioral and psychological symptoms of dementia」を略して「BPSD」といわれることもあります。表立って表れる症状ですので、家族にとっては周辺症状のほうが目に付きやすいはずです。では、具体的に起こる症状を順に見ていきましょう。

徘徊

目的なく外を歩き回ることです。さまざまな中核症状が原因になるケースがあります。例えば視空間認知障害の場合は道に迷っているうちに徘徊してしまいますし、記憶障害の場合は帰宅途中に「家に帰っている」という動機を忘れてしまう場合もあるのです。

抑うつ

抑うつとは「気分が落ち込んでしまい、意欲が減退すること」です。中核症状によってできないことが増えます。本人も「何かおかしい」と気づいており、日常生活を満足に過ごせない結果、気分が落ち込んでしまうのです。

アパシー

アパシーとは「無気力」を指す言葉です。抑うつと混同されることもありますが、アパシーの場合は気分が落ち込むこともありません。かといって、気分が高揚するわけでもなく、フラットな状態になってしまいます。何をやってもうまくいかず外部との接触もなくなってしまった結果、身の回りのことへの関心が薄れてしまう症状です。

易刺激性・易怒性

記憶障害や見当識障害の場合は「周りが明らかに異変に気づいていても、本人は普通の行動をしている」ということがあります。そんなときに頭ごなしに否定してしまうと怒りが溜まってしまうのです。またそれが続くと結果的に怒りっぽくなってしまいます。これが易刺激性・易怒性です。

幻覚

中核症状である視空間認知障害や記憶障害などによって強烈な不安や恐怖を覚えた結果、幻覚が見えてしまう可能性があります。もともと視力に異常を来たしており、五感が安定していません。そのうえで記憶障害によって、いないはずの人が見えたりするのです。

妄想

中核症状である記憶障害が発生した結果、妄想にとらわれることがあります。例えば「物盗られ妄想」の場合は家族に対して「自分の財布を盗んだ」と疑いをかけることもあります。これは記憶障害によって記憶が曖昧になっているうえ、不安を感じた際などに出てくる症状です。

失禁・ろう便

排泄行為に関する周辺症状が起こる可能性もあります。例えば「失禁」は中核症状である「理解・判断の低下」や「失語」「失行」などによって引き起こされます。自分がトイレに行きたいことをうまく伝えられなかったり、とっさに判断ができなかったりした結果、失禁につながります。

また便を壁や床などにこすり付けてしまう「弄便」も周辺症状の1つです。「理解・判断力の低下」によって便を認識できなかったり、便を処理したいものの「失行」によって適切な処理方法が分からず、床にこすりつけてしまうケースもあります。

睡眠障害

周辺症状によって睡眠障害が起こることもあります。見当識障害によって時間がわからなくなったり、同じ周辺症状である失禁をしてしまうと不安になって眠れなくなることもあるのです。また、夜に幻視を見てしまい、恐怖で眠れなくなることもあります。

暴力・暴言

暴力や暴言も周辺症状の1つです。易刺激性・易怒性に近い理由で暴力行為をすることがあります。また脳の機能が低下することで、いつもは我慢できたこともこらえきれなくなる場合もあるのです。

これらの9項目が主な周辺症状です。あくまでも中核症状によって引き起こされる二次的な症状になります。まずは原因である中核症状をしっかりと把握したうえで、対応が必要です。

各症状の初期段階で気を付けたいこと

主な中核症状と周辺症状についてはご紹介しました。ただし突然これらの症状が顕在化するわけではなく、初期段階での明らかな変化はあまりありません。「物忘れかな」「いつも短気だから」と見逃してしまうこともあります。なぜなら軽度の物忘れや判断のミスなどは認知症でなくても起こるからです。

しかし認知症は早期発見によって進行を遅らせることができます。そのため、家族の異変には早めに気づくことが必要です。そこで言動や行動から早めに認知症に気づくために初期に見られる症状をご紹介しましょう。

記憶障害の初期症状

記憶障害は前述した通り、ヒントを与えても思い出せないのが特徴です。例えば「電話を切ったあとに、さっきまで電話をしていたことを忘れる」という初期症状があります。電話の内容ではなく、電話をしたという体験を忘れていたら要注意です。

判断力低下の初期症状

趣味や家事などでミスが続いた場合は注意しましょう。また新しいことを覚えられなくなるのも脳機能が低下していることが理由です。判断力が鈍ると、満足な日常生活を送れなくなる可能性があるため、早急に治療を検討しましょう。

見当識障害の初期症状

「集合時間に遅れる」「道を間違える」などは誰しもあることです。しかし何度も繰り返すようになったら注意しましょう。時間や場所に関する見当識が低下している可能性もあります。

人柄の変化の初期症状

「温和で心優しい人だったのに急に怒りっぽくなった」「自分のミスを人のせいにした」などの変化も認知症の初期症状の1つです。ただしむやみに本人を責めるのではなく、落ち着いて認知症の診断を検討するのがおすすめです。

抑うつやアパシーの初期症状

認知症によるミスを周りから否定され始めたら、気を付けて本人の様子を見るようにしてください。気分が落ち込んでしまう可能性があります。「一歩も外に出たがらない」「趣味をまったくしなくなった」などの行動が目立つようになったら、注意しましょう。

暴力や易怒性の初期症状

穏やかだった人が、明らかに暴力的な性格に変わった場合は注意が必要です。また、以前では考えられないような言葉を使う場合も認知症にかかっている可能性があります。

妄想や幻覚の初期症状

「事実ではないことを本当かのように話す」「会話が噛み合わない」などの症状の場合は認知症である可能性があります。また「壁に向かって1人で話している」「誰かを避けるようにして歩く」などの行動は幻覚を見ている可能性もあります。

徘徊の初期症状

徘徊は認知症の初期段階で起こる可能性がある症状です。「スムーズに家に帰ってこられない」「なぜ歩いているのかが分からない」といった症状の場合は認知症の可能性があります。

認知症ごとに症状は違うので要注意

さて認知症の中核症状、周辺症状、そして初期段階で気を付けたい症状について説明しました。これらの症状は認知症の種類によって、すべてが表れるわけではありません。認知症の種類は実に70種類以上もあり、それぞれで症状に違いがあります。

すべての認知症のうち、92%を占めているのは「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」です。まとめて「三大認知症」といわれています。では三大認知症によって、どのような症状が出るのでしょうか。順に見ていきましょう。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症とは日本の認知症の70%近くを占めている種類です。記憶力や思考力が徐々に失われてしまいます。「アルツハイマー病」が原因で引き起こされるのが特徴で、比較的、女性のほうが多いとされている認知症です。

アルツハイマー型認知症の代表的な中核症状

  • 記憶障害
  • 見当識障害
  • 理解・判断の障害など

アルツハイマー型認知症の代表的な周辺症状

  • 易怒性
  • 妄想など

血管性認知症

血管性認知症はアルツハイマー型認知症の次に多い認知症で、約20%を占めています。脳卒中を始めとする疾患によって脳がダメージを受けることで発症します。アルツハイマー型と同じく、記憶障害や判断力の衰退などがありますが、特徴的なのは手足の麻痺など、運動器官の不調です。

血管性認知症の代表的な中核症状

  • 記憶障害
  • 見当識障害
  • 理解・判断の障害など

血管性認知症の代表的な周辺症状

  • 歩行障害
  • 抑うつ
  • アパシー

レビー小体型認知症

レビー小体というタンパク質が大脳に蓄積することで発症するのが「レビー小体型認知症」です。他の2つの認知症とは大きく異なり、初期症状として「手足の震え」「動作の鈍化」などが見られます。また周辺症状として幻覚が見えるのも大きな特徴です。

レビー小体型認知症の代表的な中核症状

  • 記憶障害
  • 視覚認知機能障害
  • 実行機能障害など

レビー小体型認知症の代表的な周辺症状

  • 幻覚
  • 抑うつなど

このように認知症の種類によって症状が変わります。種類別の症状を知っておくことで、家族の異変に気づいた際はどの認知症かを予想することにも役立つでしょう。

認知症の症状に対して家族が気を付けたい対応

認知症の症状が表れると、それまでの家族の姿とは大幅に変化しますので、戸惑ってしまう場合もあります。しかし前述した通り、中核症状に対する家族の対応によって本人のストレスが溜まってしまい、周辺症状を引き起こす可能性もあるのでご注意ください。

あらかじめ家族が認知症を理解して対応することで、周辺症状の悪化を予防できる可能性もあります。そこで最後に「各症状ごとに家族が心がけたい対応方法」を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

記憶障害

記憶障害の人は、自分の言動や行動について記憶から抜け落ちてしまうことがあります。そのため、事実無根のことを口にする可能性もあるのです。しかしそんなときは否定せずに受け止めてあげましょう。またメモや付箋などを見える場所に設置するのも効果的です。

見当識障害

見当識障害は「時間」と「場所」を分かるように明示することが必要です。時間に関しては毎日カレンダーに印を付けてもらうことで「今日が何月何日か」を覚えやすくなります。場所に関しては、各部屋の扉に「トイレ」「お風呂」などを明記しましょう。

理解・判断の障害

理解・判断力が低下している人と接する場合は、とにかく「待つ」ことが重要です。動作や会話にすぐにはついてこれませんので、アクションをゆっくりと待ちましょう。

実行機能障害(遂行機能障害)

実行機能障害の方は家事や買い物などを計画的にできません。しかし一緒に付き添ってあげて、1つひとつやり方を教えることで、また改善が見られます。

視空間認知障害

視空間認知障害の場合は道が分からなくなったり、物や人の距離感をうまく掴めなくなったりします。そのため、外出する際は必ず付き添って手を引いてあげましょう。また迷子になる可能性も高いので目を離さないように注意が必要です。

失語

言葉をうまく使えないことがストレスになります。筆談などで対処しながら、最もスムーズにコミュニケーションを取る方法を考えましょう。

失認

失認の場合は五感がうまく働かなくなります。特に触覚がなくなってしまった場合は物を掴んだり運んだりする行為にハードルが生じます。適宜サポートをしましょう。

失行

進行度合いにもよりますが、失行の場合はできることとできないことがはっきりしています。何でもサポートするのではなく、できることは任せましょう。その際にも焦らず、できるまで待つことが重要です。

徘徊

徘徊が起きた際は本人に危険が伴います。ですから、地域と連携したり、センサーを準備したりして事故を未然に防ぎましょう。また何より、本人が1人で行動しないように対処することが大事です。外に出る際には一緒に行動をしましょう。

認知症による徘徊への対応法に関して詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
認知症による徘徊への、おすすめの対策を教えてください

抑うつ・アパシー

抑うつ状態の際は孤独を感じさせないことが重要です。なるべく一緒に行動してポジティブに過ごすことで笑顔も増えていきます。また生活のリズムを一定に保ちましょう。アパシーの際などは夜に眠れなくなることもあります。規則正しい生活にすることで、肉体から健康にすることが重要です。

易刺激性・易怒性・暴力・暴言

怒りっぽくなった際はこちらも耐えられなくなってしまうかもしれません。しかし言い返してしまうと喧嘩になり、ストレスが溜まってしまいます。また男性の場合は暴力を振るってくると、身の危険を感じるかもしれません。その際は周りの知人を頼ったり、施設入居を考える必要があります。

認知症によって攻撃的になってしまう症状への対応に関して詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
認知症によって攻撃的になった家族への対応はどうすればいいですか?

幻覚

体験しないと分からないかも知れませんが、幻覚は本当に見えています。頭ごなしに否定するのではなく、共感することが大事です。すると本人も心が落ち着くでしょう。

妄想

物盗られ妄想をはじめ「妄想」によるイメージは本人にとっては事実です。納得いかないことも否定するのではなく、同調することが重要になります。

認知症による妄想症状への対応に関して詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
認知症による「妄想」の種類と対応法を教えてください

失禁・ろう便

失禁や弄便をしてしまうと、本人はひどく情けない気持ちになってしまいます。そこで頭ごなしに叱られてしまうと、落ち込んでしまうでしょう。許容することが大事です。

睡眠障害

睡眠導入剤を利用するのも手段の1つですが、体調に影響を及ぼす可能性もあるのが実状です。日中の活動がないと夜も眠れなくなってしまいますので、お昼に散歩などのアクティビティをしてみましょう。自然と夜に眠れるようになります。

認知症の方への接し方に関して詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
認知症の方への接し方を教えてください。

認知症の方への対応方法に関しては以下の記事にまとめています。
認知症の方への対応方法を教えてください! マニュアルはありますか?

認知症の症状をきちんと理解して対処をする

認知症になると、記憶や見当識などに障害があらわれます。発言や行動に異変があり、戸惑ってしまうこともあるでしょう。まずはきちんと症状を認識して客観的に家族と接することが重要です。

また1人で対処すると、自分までアパシーや抑うつになってしまう場合があります。周りと協力しながら介護を進めることで、肉体的にも精神的にも負担を軽減することが可能です。

症状を理解したうえで、ストレスを軽減しながら認知症と向き合いましょう。

この記事のまとめ

  • 認知症には約70種類あり、症状もそれぞれ異なる
  • 脳の機能低下で起こる「中核症状」と、中核症状が引き起こす「周辺症状」がある
  • 周囲の対応が新しい症状の引き金になることもあるので、正しい対応方法を知っておくことが大切