グループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは? サービス・費用・入居条件などの特徴、住宅型有料老人ホームとの違いについて解説
身近な疾患であると同時に解明されていない点も多い認知症。グループホームは認知症ケアの専門施設として、共同生活・地域交流・在宅支援を通じ、地域における認知症ケアの拠点となっています。こちらの記事ではグループホーム(認知症対応型共同生活介護)のサービス・費用・入居条件などの特徴について詳しく解説します。
介護のほんね 入居相談グループ マネージャー。「介護のほんねの入居相談グループでは、老人ホームをお探しの方から年間2万件近くご相談を承っています。条件に合った施設の提案から見学予約の代行まで、入居相談員が老人ホーム探しをお手伝いします。お困りのことがあれば、お電話やWeb、LINEでお問い合わせください」
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは「認知症ケアに特化した民間ホーム」
認知症の診断を受けた高齢者(原則65歳以上)の方が少人数で共同生活を営む施設を認知症グループホームと呼びます。1ユニット(共同生活の単位)の定員は5〜9人で、より家庭に近い環境で生活することが可能です。また、認知症ケアの知識や技術を持った職員が24時間常駐し、生活をサポートしてくれます。
グループホームは介護保険法上、地域密着型サービスの一つである認知症対応型共同生活介護に位置付けられます。地域密着型サービスは自治体の指定を受けた事業者がその地域住民を対象に提供する介護保険サービスのため、現在お住まいの地域(住民票のある地域)以外のグループホームには原則入居できません。また、入居には認知症の診断と要支援2以上*の認定も必要です。
「2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になる*」という推計もあるなど、長寿化が進む日本において認知症は誰もがなりうる疾患です。認知症グループホームは地域交流を通じて認知症に対する理解を促進したり、併設の事業所(デイサービスやショートステイ)を通じて在宅で介護する方を支えたりと、地域における認知症ケアの拠点となっています。
グループホームと住宅型有料老人ホームの違い
認知症グループホームは認知症ケアに特化した施設です。住み慣れた土地で地域社会とのつながりを持ちながら、そして、認知症ケアに通じた職員のサポートを受けながら生活できるため、安心することができるでしょう。
一方でトイレを共用で使うことに抵抗のある方、一人で静かに過ごすことを好まれる方には向かない可能性もあります。また、入居できる施設が現在お住まいの市区町村内に限られるため、空室がなかなか見つからないケースも珍しくありません。さらに、看護師がいる施設が少ないため、医療処置が必要な場合は受け入れが難しいこともあります。
そのような場合は、認知症ケアに力を入れている有料老人ホームも併せて検討することをおすすめします。住宅型有料老人ホームであれば、認知症グループホームと変わらない予算でニーズに合った施設を見つけられる可能性があります。
グループホームのサービス
認知症グループホームでは次のようなサービスが提供されています。
食事・栄養管理サービス
グループホームの場合、入居者の方も職員のサポートを受けながら可能な範囲で盛り付けや配膳、下膳、洗い物などに参加します。食事は主に共用部のキッチンで調理したものが提供されます。一人ひとりの摂食嚥下機能に合わせ、とろみを付けたり柔らかくしたりした介護食の提供も可能です。おやつの時間にはホットケーキやたこ焼きなど、手作りのおやつに挑戦する日もあります。
介護・生活支援サービス
お身体の状態に合わせて職員から排泄・入浴・食事などの介助を受けることができます。掃除や洗濯、買い出しなどの家事についても、職員のサポートを受けながら入居者の方もできる範囲で参加するのがグループホームの基本的な方針です。
医療・健康管理サービス
協力医療機関が定期的な往診や緊急対応をおこなっています。看護師のいる施設は少数で、いたとしても勤務時間は日中のみ。日常的な健康管理、予防活動、緊急時の医療機関への連絡が主な役割となっています。施設内での看取りも対応が難しく、急変時は基本的に医療機関へ搬送されます。しかし近年は看取りのニーズも増えていることから、対応できるように医療連携を強化する施設も徐々に増えています。
リハビリテーション
今ある能力を維持するために、できることは自分の力でおこなうという生活リハビリが基本となります。朝起きて身だしなみを整える、食事をする、洗濯物をたたむ、散歩する、花や野菜を育てるなど、ほかの入居者の方と協力しながら日常生活を送ることで、認知機能や身体機能の維持に効果が期待されます。そのほか体操や脳トレなど、機能維持のための独自のプログラムを提供する施設もあります。
レクリエーション
先に挙げた、おやつ作りや植物の栽培、散歩、体操、脳トレなどもレクリエーションの一環と捉えることができます。お正月やお花見、お月見、クリスマスなどの季節行事や入居者の方の誕生日を祝うこともあります。家庭的な雰囲気を重視しているため、「毎日◯時から◯時まではレクリエーション」といった決まりごとは少なく、ご自身の趣味など自由な時間を大切にすることができます。
地域交流
グループホームを特徴付けているのが地域交流です。地元のお祭りや伝統行事に参加したり、近隣の保育園や幼稚園の子どもたちの訪問を受けたりすることで、地域とのつながりを感じながら生活することができます。また、地域に開かれたサービスを目指し、運営推進会議を2カ月に1回開催して施設の運営方針やサービスの提供状況について報告することになっています。運営推進会議には入居者やその家族に加え、地域住民の代表者、役場や地域包括センターの職員などが参加します。
グループホームの職員
日中は入居者3人に対して1人以上、夜間は1ユニットに対して1人以上の職員を配置することになっています。
ほかの高齢者向け施設と比べてグループホームの職員は入居者の方と距離が近く、家族のような関係性なのが特徴です。また認知症の方の対応に慣れているため、徘徊行動といった認知症特有の症状にも適切に対応してくれます。認知症ケア専門士や認知症介護士などの専門資格を持っている職員もいます。
ただし、看護職(看護師・准看護師)の配置は義務付けられていないため、日常的に医療処置が必要な方の受け入れは難しくなっています。
グループホームの設備
居室はすべて個室で、広さは7.43㎡以上と定められています。一般的には10㎡前後の居室にベッドが備え付けられており、テーブルやタンス、テレビなどの家具・家財は使い慣れたものを持ち込みます。
トイレ・洗面付きの居室は珍しく、基本的にキッチンやダイニング(食堂)、リビング(居間)に加え、トイレや洗面も共用となります。
このほか、家庭菜園や地域交流スペースを設けている施設もあります。
グループホームにかかる費用
認知症グループホームはほかの民間ホームと比較して、初期費用・月額費用を抑えることができます。
初期費用
認知症グループホームの場合、初期費用0円の施設も多くあります。かかるとしても敷金・保証金のみで、相場も10〜30万円程度。少なくとも入居一時金(数年分の家賃の前払金)として数百〜数千万円必要──というケースはまずありません。
月額費用
毎月決まってかかる費用は主に家賃、管理費、水道光熱費、食費、サービス費です。
施設で標準的に提供される介護サービス(認知症対応型共同生活介護)は介護保険の支給対象となり、自己負担率は前年所得に応じて1〜3割となります。協力医療機関以外への通院介助など介護保険の支給対象外となるサービスもありますので、詳細はパンフレットや重要事項説明書でご確認ください。
上記以外に医療費や通信費、理美容費、日用品代、おむつなどの介護・衛生用品代なども考慮の上、毎月必要な費用を見積りましょう。
グループホームの入居条件
入居者
次の3つの条件を満たす方が認知症グループホームの入居対象となります。
- 認知症の診断を受けていること
- 要支援2以上の認定を受けていること
- 入居先のホームと同じ自治体に住んでいること(住民票を持っていること)
認知症グループホームは地域密着型のサービス(介護が必要になっても住み慣れた地域での生活が続けられるように、という目的のもとに提供されるサービス)のため、現在お住まいのある地域(市区町村)の施設にしか入居できません。住民票を移したとしても、原則、転入後一定期間(自治体によって異なりますが、通常3〜6カ月)は地域密着型サービスを利用できません。
ただし、現在住んでいる地域に利用できるサービスがない(空室がない)、親族が住んでいる地域でサービスを利用したいといったやむを得ない事情がある場合は、両自治体の合意のもと特例的に利用が認められる場合があります。
保証人
入居には原則、保証人(身元引受人や連帯保証人)が必要です。認知症グループホームの場合、入居する時点で入居者本人の判断能力が衰えているケースも多いため、保証人が入居の手続きや利用料の振込み、入院時・退去時の手続きなどを代行します。保証人を頼める身寄りがいない場合は、成年後見制度の利用をご検討ください。
退去となるケース
退去理由として最も多いのが入院です。よくあるのが長期入院により退院のめどが立たないケースや、退院後に医療処置が必要になり対応が難しいケースです。また、費用の滞納が解消されない場合、施設側から契約解除を通告できます。なお、認知症の影響で自傷・他害行為があるような場合は一度入院し治療を受けることが一般的で、ただちに退去を求められることは少ないようです。
グループホームの入居までの流れ
認知症グループホームの入居までの流れは次のようになります。
問い合わせ
「介護のほんね」では老人ホーム探しのお手伝いをしています。入居相談員に現在お困りのことやご希望の条件をお聞かせください。条件に合った施設を提案いたします。
見学
気になる施設が見つかったら、見学予約を依頼します。3〜4施設見学し比較する方がほとんどです。見学時間はおよそ1〜2時間程度です。確認したいポイントは事前にまとめておき、見学当日は遠慮なく質問しましょう。
申し込み(仮押さえ)
見学した施設が気に入れば申し込み(仮押さえ)をします。ご家族との相談中にほかの方の入居が決まってしまうこともあります。ご契約前であればいつでもキャンセルできますので、検討から外れない限りは仮押さえしておくことをおすすめします。なお、仮押さえできる期間は施設によって異なりますので、あらかじめ確認しておくと安心です。
審査
施設の指示に従って審査に必要な書類を提出します。認知症の診断書や健康診断書、診療情報提供書は取得するのに1〜2週間(場合によっては1カ月程度)かかるため、早めに準備しておくと手続きがスムーズです。グループホームの入居にあたっては認知症の診断が必要です。必ず認知症の診断書を提出してください。
- 入居申込書
- 印鑑
- 健康保険被保険者証のコピー
- 介護保険被保険者証のコピー
- 介護保険負担割合証のコピー
- 収入証明書(課税証明書の原本など)
- 認知症の診断書
- 健康診断書、または、診療情報提供書
面談
入居されるご本人とご家族、施設担当者で面談をおこないます。施設側から施設の運営方針や設備、サービス、月々のお支払い額について改めて説明があります。少人数で共同生活を送るのに差し支えがないか、また、ご本人やご家族が希望するサービスと施設が提供できるサービスの間にミスマッチがないかを確認した上で、最終的に入居の可否を判断します。
契約
審査と面談が完了したら本契約を結びます。施設側から重要事項に関する説明がありますので、不明な点があれば必ず確認し、納得した上で契約書に押印しましょう。
- 入居契約書
- 印鑑
- 写真
- 住民票の写し、または、住民票記載事項証明書
振り込み
契約手続きが完了したら、施設の指示に従って初期費用(当月・翌月分の家賃、敷金、入居一時金など)を振り込みます。
入居
入居日に向けて引越しの準備を進めます。家具や家電については、居室や共用部に備え付けのものがある施設もありますので、持ち込み可能なものは何かあらかじめ確認しておきましょう。
グループホームのメリット・デメリット
認知症グループホームのメリットとデメリットをまとめると次のようになります。
メリット | デメリット |
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「介護のほんね」入居相談員からのメッセージ
「介護のほんね」入居相談員:遠藤より
認知症グループホームは「自宅のようなアットホームな環境で暮らしたい方」「ほかの入居者様やスタッフと積極的に交流したい方」「認知症が進行している方」におすすめの住まいです。
スタッフの協力を得ながら、1ユニット最大9人という家庭的な雰囲気の中で生活するのが特徴で、人と関わるのが好きな方や共同生活が苦にならない方に向いていると言えます。
また、認知症が進行していてほかの老人ホームの入居を断られてしまった方でも、認知症グループホームであれば受け入れ可能というケースも珍しくありません。ただし、症状によっては面談時に入居不可と判断されることもあること、一度満室になると空きが出にくいことから、なるべく複数の施設を見学し、気に入った施設があれば申し込みしておくことをおすすめします。
「介護のほんね」掲載中のグループホームへのインタビュー
最後に「介護のほんね」に掲載されている施設から、グループホームに取材した記事を紹介します。
>そのほか「取材レポート」が読める認知症グループホームを探す
- e-Gov法令検索「介護保険法」
- e-Gov法令検索「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」
- 政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」
- 厚生労働省「認知症施策」
- 2023/02/28 全面更改
- 2022/11/30 全面更改
- 2020/09/03 初版公開
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