介護休業とは|介護休暇との違い・給付金・書類申請の方法などを紹介

両親をはじめとして家族に介護の必要性が生じたとき、多くの人が「介護離職」を思い浮かべます。介護は日がな対象者をサポートする必要が生まれる場合もあり、出社できないこともあるからです。その際に使えるのが「介護休業制度」になります。

しかし多くの場合は初めての経験であり「どうやって申請すべきなのか」「給付金はいくらほど受け取れるのか」などの疑問点があることでしょう。

不安な人に向けて、今回は介護休業制度に関する概要や介護休暇との違い、申請方法、受取額などを紹介します。

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平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。

介護休業制度とは、育児・介護休業法にまつわる制度

介護休業制度とは育児・介護休業法にもとづいて制定された制度です。条件を満たした場合に会社を休業でき、期間中は給付金を受け取れる可能性もあります。介護は家族にとって負担が大きいものです。安心して会社を休み、介護に専念するために同制度が生まれました。

最大93日間の休業が可能

介護休業制度を用いることで最大93日間まで勤め先を休めます。なお2017年に育児・介護休業法が改正されました。以前は93日の休業期間を1度に使い切る必要がありましたが、現在では3回に分けて取得できます。より利用者にとって柔軟に使えるように法改正が進んでいる状況です。

例えば3月1日から20日まで休み、その後に出勤をして4月1日から20日まで休業、その後、5月1日から残りの53日間を使うなど、分割して休みを取ることもできます。

ただし気をつけたいポイントは「同じ対象家族に対して4回以上の申請はできない」ということ、また「93日を超えてはいけない」ということです。ただし他の家族の介護をする場合は、新たに日数がカウントされます。

また、もちろん休業期間中は、その分の給料が減ってしまうことになります。ご自身の資金を考えながら、計画的に取得しましょう。介護休業を取得した際は、必ず開始日をメモしておくことも大切です。

介護休暇との違いとは

介護休業と混同されがちな制度に「介護休暇」があります。介護休暇は介護休業に比べてライトに使える制度です。違いについて3つの観点から紹介します。

取得日数の違い

休業できる日数が違います。介護休業が先述したように93日間を最大3回に分けて取得できるのに対して、介護休暇は1年間で5日間にわたって休める制度です。

申請の方法

介護休暇の場合、勤務先の上司に当たる人に口頭で伝えるのが一般的です。有給休暇に近い感覚で休みを取得できます。しかし介護休業は最大で93日間の休みになりますので、労務の担当者に相談してから休業開始日と休業終了日を決定し、会社に報告が必要です。報告に必要な書類に関しては「介護休業の申請について」の項目で後述します。

給付金について

介護休暇の場合は、勤め先の会社によって賃金の支払い有無が変わります。数日間の休みということもあり、基本的には給付金もありません。しかし介護休業では条件によって休業給付金を受け取れます。給付金の申請や受け取りの流れに関しては、のちほど「介護休業給付金について」の項目で説明をします。

このように介護休業と介護休暇はまったく違う制度です。介護施設への面会など、数日間の休みで事足りる場合は介護休暇で済みます。介護休業は長期にわたって会社を休むための制度です。では続いて、具体的に介護休業をするための条件について説明しましょう。

介護休業をする条件とは

介護休業をするためには一定の条件があります。対象者の状態や勤務先との契約状況などによって介護休業を取得できない場合もありますので、確認をしておきましょう。

対象者の状態について

対象者の状態について「介護対象者が2週間以上の期間にわたり、常時介護を必要とする状態であること」が条件です。厚生労働省は具体的に「適用範囲内にある対象者の状態」を以下の表で解説しています。

「常時介護を必要とする状態」とは、以下の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合であること。

(1)介護保険制度の要介護状態の区分において要介護2以上であること。

(2)状態①~⑫のうち2が2つ以上又は3が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること。

項目/状態
①座位保持(10分間一人で座っていることができる) 自分で可 支えてもらえばできる できない
②歩行(立ち止まらず、座り込まずに5m程度歩くことができる) つかまらないでできる 何かにつかまればできる できない
③移乗(ベッドと車いす、車いすと便座の間を移るなどの乗り移りの動作) 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要
④水分・食事摂取 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要
⑤排泄 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要
⑥衣類の着脱 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要
⑦意思の伝達 できる ときどきできない できない
⑧外出すると戻れない ない ときどきある ほとんど毎回ある
⑨物を壊したり衣類を破くことがある ない ときどきある ほとんど毎日ある
⑩周囲の者が何らかの対応を取らなければならないほどの物忘れがある ない ときどきある ほとんど毎日ある
⑪薬の内服 自分で可 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要
⑫日常の意思決定 できる 本人に関する重要な意思決定はできない ほとんどできない
引用:厚生労働省「よくあるお問い合わせ(事業主の方へ)

ただしこの表を重視しすぎるあまり、労働者の介護休業の権利を侵害しないよう、事業主に向けて注意書きも記されています。あくまで目安として考えるレベルとして見なしてください。

対象家族について

介護休業を取得する際は、必ず対象者が家族でなければいけません。では「家族」とはどこまでの関係性を指すのでしょうか。厚生労働省によると以下の画像の通りになります。

対象家族の範囲 参考:厚生労働省「介護休業の対象となる労働者

一般的な「家族」という言葉とは違い、祖父母までが含まれます。ただし配偶者の祖父母は含まれません。

労働者の契約状態について

また労働者の契約状態によっては介護休業を取得できない場合があります。以下の項目に当てはまる労働者は取得できません。

  • 日雇いの労働者
  • (現状勤務先の企業について)雇用期間が1年未満の労働者
  • 93日以内に雇用関係が終了する労働者
  • 1週間の所定労働日が2日以内の労働者
  • 労使協定で定められた一定の労働者
  • 個人事業主、または主婦

原則として「一定期間以上労働していること」また「日常的に労働していること」「介護休業期間中に契約が終わらないこと」が基準として定められてあります。

これら3点の基準を通過した労働者は介護休業を受けられます。では前提として条件を満たしたとして、詳しく介護休業の申請の流れについてご紹介しましょう。

介護休業の申請について

先ほど触れた通り、介護休業は長期的な休みになりますので、基本的には会社の労務担当者と日程を調整しながら進める必要があります。またその後、会社に書類を提出しなければいけません。ではその際に提出すべき「介護休業申出書」について詳しくご紹介します。

介護休業申出書とは

休業開始日と休業終了日を決定した後は「介護休業申出書」に必要事項を記載して勤務先に提出します。介護休業申出書は厚生労働省のホームページに掲載されています。勤務先に提出する際には労務担当者の人が窓口です。ただし労務担当者が不在であれば代表者などに提出しましょう。

必要記入事項としては以下の通りです。

  • 申出日と申出者
  • 休業にかかる家族の状況
  • 介護対象者申出者の氏名
  • 本人との続柄
  • (家族が祖父母、兄弟姉妹、孫である場合は)同居・扶養の状況
  • 介護を必要とする理由
  • 休業の期間
  • 申出に係る状況
  • 休業開始予定日の2週間前に申し出ているか
  • 家族の同一の要介護状態について過去に介護休業をしたことがあるか
  • 家族の同一の要介護状態について過去に介護休業を撤回したことがあるか
  • 家族についてのこれまでの介護休業及び介護短時間勤務の日数

要件を満たしている場合、事業主は原則断れない

申請がきちんと要件を満たしている場合、事業主は原則として申し出を断れません。これは厚生労働省の資料にも明記されています。ただし独自で労使協定を結んでいる場合は、適用外として断ることが可能です。申請する際は勤務先の会社が労使協定を結んでいないかをチェックしておきましょう。

書類を申請すると、いよいよ介護休業の準備が整ったことになります。介護に専念できますが、申請者にとって休業業期間中の賃金は不安材料でしょう。もちろん労働をしていないので、一時的に給料はなくなってしまいます。そこで国では介護休業給付金という名前で給付金を定めているのです。次に介護休業給付金の概要や申請方法などについて説明します。

介護休業給付金について

介護休業給付金を受け取るためには条件があります。すべての労働者向け有期雇用契約者向けの2種類があります。3つの観点から条件を書き出してみましょう。なお、以下の記事で介護休業給付金の受給条件や金額、申請の流れなどについて詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてください。

介護休業給付金とは、受給までの流れや記入例などを紹介

介護休業給付金の受給条件(すべての労働者に共通)

まずは「介護休業前の就業日数」について以下の2点を満たしている必要があります。

  • 介護休業開始日以前の2年間に11日以上就業した月が12カ月以上あること
  • 1年以上の雇用期間があること

「1年以上の雇用期間があること」は介護休業の条件にもあります。そのうえで給付金を受け取るためには、介護休業開始日以前の2年間で11日以上就業した日が12カ月以上あることが必要です。

また介護休業中の就業日数に関しても条件があります。「介護休業中の勤務日が月に10日以内であること」です。介護休業制度は家族の介護に専念するための制度ですので、きちんと休業をしていることが給付の条件になります。

さらに介護中の賃金に関しても条件があります。「介護休業中の月々の賃金が休業前の80%未満であること」です。介護休業中も通常と同じ程度の賃金を受け取っている場合は受給できません。

介護休業給付金の受給条件(有期雇用契約の人のみ)

有期雇用契約を結んでいる場合は、これらの条件に加えて新たに以下の2つの条件を満たす必要があります。

  • 同じ雇用主のもとで1年以上、働いていること
  • 介護休業開始予定の日の93日後~6カ月後までに労働契約満了とならないもの
引用:厚生労働省「H28.10・育児休業や介護休業をすることができる有期契約労働者について

特に注意したいのは「介護休業開始予定日の93日~6カ月後までに労働契約満了とならないもの」という条件です。介護休業は終了後に元の職場に戻ることが前提なので、はじめから期間終了の後に退職が決まっている場合は受給できません。

介護休業給付金で受け取れる金額

受給条件を満たした場合に受け取れる給付金の額について、表にまとめました。これも状況によって計算式が変わるので注意が必要です。

介護休業給付金の計算方法
休業期間中に賃金が支払われなかった場合 支給単位期間が30日以上 休業開始時賃金月額(賃金日額×30)×0.67
支給単位期間が30日以下 休業開始時賃金日額×0.67×休業日数(暦日数)
休業期間中に賃金が発生した場合 支払われた賃金が休業開始時月額賃金の13%以下 休業開始時の賃金日額×支給日数×0.67の67%
支払われた賃金が休業開始時月額賃金の13%超~80%未満 実際に受け取った賃金と給付金の合計が休業開始時賃金月額の80%に達するまでの金額
支払われた賃金が休業開始時月額賃金の80%以上 給付金は発生しない

注意しておくべきポイントとしては2点です。「介護休業期間中に賃金が支払われたか」「介護休業期間中に支払われた賃金額はいくらか」になります。この2つの条件をかけ合わせることで、介護休業給付金の額を算出できます。

介護休業を受ける際は、あらかじめ自身の賃金を把握しておきましょう。今後必要になる「食費」「介護用品の購入費」などと照合することで、節約すべき額などが分かります。気持ちに余裕も出てくるでしょう。

介護休業の申請から給付金受給までの流れ

それでは最後に、実際に介護休業を申し込んでから介護休業給付金を受け取るまでの流れについて説明します。あらかじめ押さえておきたいのは「介護休業給付金は介護休業期間が終了した後に振り込まれるお金」ということです。期間前や期間中には振り込まれませんのでご注意ください。

介護休業の申し込み

休業開始日の2週間前までに介護休業を会社に申し込みます。先述したように、話し合いで開始日と終了日を決めたら、事業主が市区町村に介護休業の書類を提出することになります。基本的には労働者が自分で市区町村に申請する必要はありません。

介護休業・給付金の申請

最大93日間の介護休業となります。介護休業給付金は終了日から2カ月後の末日までに申請が必要です。申請は介護休業の申請と同じく、労働者が事業主に申し立てをし、事業主がハローワークに申し出をします。給付金の振り込みは、申請をして支給が決定してから約1週間後になります。

介護離職を防ぐためにも介護休業を

疾患やケガ、認知症などで、ご家族の介護が必要になる場合があります。前もって準備ができる場合もありますが、急にその時が訪れることも多くあるのが実状です。

介護のために会社を辞める「介護離職」を選択する人は、年間で9万9,000人にも及びます。介護が必要になり出社が難しくなった場合は、介護休業をするのも大きな選択肢の1つです。期間中に施設を探すことで、対策が打てることもあります。休みが長期にわたる場合は介護休業を、短期の際は介護休暇を申請して、無理なく家族の介護を進めましょう。

介護休業を取得すれば安心して介護をすることができます。とはいえ、自宅でいきなり介護をするのも非常に大変です。

特にトイレやお風呂の介護をするときに大変な思いをしている方が多く、介護休業を取ったとはいえ、自分一人で介護を全てできるわけではありません。社会的には訪問介護や訪問入浴などのサービスがあります。色々な情報を得て、いざという時のために備えておくと安心です。

この記事のまとめ

  • 急な在宅介護の際は最大93日間の介護休業を
  • 数日間の休みだったら介護休暇のほうを選択すべき
  • 介護休業の際は給付金を受け取れることもある