利用権方式とは|老人ホームの契約方式について分かりやすく解説
介護施設には、いくつもの種類があり、契約の方式にも違いがあります。契約の方式には、利用権方式と賃貸借方式という2種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
今回は、利用権方式と賃貸借方式の違い、利用権方式のメリット・デメリット、支払い方法、利用権方式の介護施設と賃貸借方式の介護施設について解説していきます。
大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。
利用権方式について
まずは、利用権方式と賃貸借方式がどのような契約方式なのか説明していきます。
利用権方式とは?
利用権方式は、居室や共有部分がある居住部分を利用するための料金、介護サービスや生活支援などを利用するための料金をパッケージ化した方式になります。契約した場合、亡くなるまでの利用権、つまり終身にわたる利用権を手にすることができる契約方式でもあります。入居者が亡くなると権利は消失するため、家族などが相続権を得ることはできません。
賃貸借方式との違い
契約方式の中には、賃貸借方式というものもあります。賃貸借方式についても解説し、利用権方式とはどのような違いがあるのかみていきましょう。
賃貸借方式は、借地借家法という法律によって整備されている施設の契約方式です。「建物賃貸借方式」と「終身建物賃貸借方式」の2種類があります。それに対して利用権方式は、何らかの法律で整備されている契約方式ではなく、有料老人ホームのような施設で採用されているケースが多いです。
介護サービスを提供することが前提条件になっている介護付有料老人ホームのおよそ8割、住宅型有料老人ホームのおよそ6割が利用権方式で契約をしています。このことから、賃貸借方式よりも利用権方式の方が有料老人ホームにおいては一般的なのです。
建物賃貸借方式については下記の記事を参考にしてください。
利用権方式の支払い方法
利用権方式の老人ホームには、2種類の支払い方法があります。それが、前払い方式と月払い方式です。続いては、その支払い方法について解説していきます。
前払い方式
前払い方式は、1ヶ月にかかる費用(家賃や管理費、介護費、食費など)を計算します。そして、平均寿命から割り出される想定入居期間分の費用を、一括で入居時に支払うという方式です。入居した後は、施設が定めた方法や年数で償却されていきます。
前払い方式だと想定されている入居期間を超えた場合、追加で利用料がかかることはありません。そのため、長生きする人ほどお得に介護サービスを利用できます。
前払い方式の老人ホームを選択すると、継続した支払いをする必要がありません。そのため、経済的にも見通しが立てやすくなるというメリットが生まれます。しかし、支払いが済んでいるため、入居中の老人ホームの利用料金が下がったとしても差額を返金してもらえないというデメリットもあります。
月払い方式
月払い方式は、その名の通り毎月かかる費用(家賃や管理費、介護費、食費など)を支払うという方式です。月払い方式は、前払い方式と比較してみると,、1カ月あたりの利用料が高めに設定されています。つまり、入居する年数が長ければ長くなるほど、割高になってしまうのです。
月払い方式のメリットには「入居中の老人ホームの利用料が下がったら支払額も下がる」「特別養護老人ホームなどへ入居する前の待機期間などの短期利用にも適している」といった点が挙げられます。それに対してデメリットには「入居中の老人ホームの利用料が上がってしまう可能性があるため、経済的な見通しを立てにくい」といった点が挙げられるでしょう。
一部前払い方式(入居一時金方式)
一部前払い方式(入居一時金方式)は、終身にわたって支払う予定の家賃のうち一部だけ前払いにして、残りは月払いにするという支払い方式です。利用権方式を採用している老人ホームの中では、前払い方式に次いで取り入れているところが多い支払い方式になっています。
一部前払い方式(入居一時金方式)のメリットは「返還金制度があるので償却期間が終わる前に退去すると入居一時金として支払った金額のうち、未償却分が返金される」点です。それに対してデメリットは「前払い方式と比べると月々に支払わなければいけない金額が高めに設定されている」という点です。
利用権方式を採用している老人ホームの多くは、前払い方式を採用しているケースが多いです。次に多いのが一部前払い方式(入居一時金方式)を採用している老人ホームです。それぞれにメリットとデメリットがあるので、経済状況などを踏まえ、どの支払い方式が最も負担軽減できるか考えて施設選びをしてください。
利用権方式の介護施設は多い?
最後に、利用権方式の介護施設と賃貸借方式の介護施設にはどのようなところがあるのか、どちらを採用している老人ホームが多いのかといった点についてみていきましょう。
利用権方式の介護施設
利用権方式を採用している介護施設には介護付き有料老人ホームがあります。介護付き有料老人ホームとは一体どのような老人ホームなのでしょうか?
介護付き有料老人ホームは、介護を必要とする高齢者(65歳以上で要支援1~要介護5までの介護認定を受けている人)が、生活支援や介護サービスを受けながら暮らす場所です。入居一時金や月額費用は施設によって異なります。施設によっては、入居一時金だけで数千万円かかる場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
介護付き有料老人ホームで受けられる主なサービスは、基本的な介護サービス(食事介助や入浴介助、排せつ介助など)、食事の提供、リハビリ、レクリエーション、健康管理といったものです。1日のスケジュールがあらかじめ決められているところが多くなっています。
介護を前提としている施設なので、介護スタッフが24時間常駐している、手厚い介護をしてもらいやすいといったメリットを感じられます。また、レクリエーションを活発におこなっている施設が多いことから、入居者同士が仲良くなりやすい環境にもなっているのです。
介護付き有料老人ホームに限らず有料老人ホームという名前が付いているところでは、利用権方式を採用しているケースが多く見られます。しかし中には例外もあるので、入居前に確認しておくと安心です。
介護付き有料老人ホームについては下記の記事を参考にしてください。
賃貸借方式の介護施設
賃貸借方式を採用している老人ホームにはサービス付き高齢者向け住宅があります。続いては、サービス付き高齢者向け住宅について説明していきます。
サービス付き高齢者向け住宅は、基本的に介護サービスを必要としていない自立している高齢者が対象となっている介護施設です。自立した高齢者向けの背勝支援サービスをスタッフがおこないます。入居条件は、60歳以上で自立もしくは軽度の要介護状態が原則となっています。
サービス付き高齢者向け住宅で提供されている主なサービスには、安否確認や生活相談、生活支援などです。生活支援サービスでは、居室の掃除や買い物代行、病院への付き添いといったサービスを提供しているケースが多く見られます。
有料老人ホームと比べてみると、サービス付き高齢者向け住宅は入居後の自由度が高くなっています。介護スタッフの目が届く範囲で安心できる暮らしを手に入れたい人におすすめの施設だと言えるでしょう。体調が良ければ、外出や外泊も自由に楽しめます。
もしもサービス付き高齢者向け住宅に入居し、食事の提供や訪問看護、訪問介護、デイサービスなどを利用する場合は、別途契約する必要があり、費用もプラスになるという点には注意が必要です。
入居前に契約方針をきちんと理解しておこう
利用権方式は、有料老人ホームで多く採用されている契約方式です。利用権方式以外には、賃貸借方式というものがあり、それぞれ異なる特徴を持っています。入居予定の老人ホームがどちらの契約方式を採用しているから、あらかじめ確認しておくことも大切です。
基本的に介護付き有料老人ホームをはじめとする有料老人ホームは利用権方式、サービス付き高齢者向け住宅のように介護を前提としていない施設では賃貸借方式を取り入れているケースが多いと覚えておいてください。
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この記事のまとめ
- 利用権方式は有料老人ホームに多い契約方式
- 利用権方式の支払方法は大きく分けて3つある
- 介護を前提とした施設は利用権方式が多い
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