VSRADとは|MRIでアルツハイマー型認知症の早期発見を

いまや認知症は、誰もがなり得る病気の一つとなっており、その重症化を防ぐためには早期発見が重要だと言われています。認知症の中には種類があり、その認知症ごとに診断方法から進行を緩和する治療方法などが異なります。

自分自身、年齢を重ねるにつれて認知症のリスクが上昇していきますが、自身の両親もそれに伴って高齢となり認知症となるリスクは高まっています。認知症を早期発見するためには、少なからず検査が必要となります。今回は認知症の中でも最も多く見られている、アルツハイマー型認知症を特定する手掛かりになる「VSRAD」という検査についてご紹介していきます。

更新日:
写真
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。

VSRADとは

「VSRAD」とは、「Voxel-based Specific Regional analysis system for Alzheimer's Disease」の頭文字をとった名称となっています。日本では、ブイエスラドと呼んでいます。脳ドッグで用いられることが多くなってきた検査でもあります。認知症の中でも最も多くみられるアルツハイマー型認知症の診断に有効です。大日本印刷株式会社とエーザイ株式会社が共同で開発した画像検査装置としても知られています。

通常、脳ドックではMRIで脳の状態を検査しています。しかし、アルツハイマー型認知症を診断できる海馬傍回は体積が非常に小さいことから、MRIの画像診断のみでは診断が困難となり見逃してしまうケースも少なくありませんでした。VSRADは従来のMRI検査に合わせて実施でき、より正確なアルツハイマー型認知症の診断が可能となりました。

アルツハイマー型認知症の原因である海馬の萎縮を見る機器

アルツハイマー型認知症の原因としては、脳の海馬という記憶を司っている器官が萎縮してしまうことが挙げられます。そのため、原因となる海馬が萎縮しているかを画像で判断するために、VSRADで撮影した画像と健康な状態の海馬を見比べて萎縮の程度を判断します。

ただし、あくまでもアルツハイマー型認知症の原因となる海馬傍回の萎縮の程度を判断するための画像検査となっています。そのため、VSRADで海馬傍回が萎縮しているという結果のみであればアルツハイマー型認知症だと診断はできません。診断は臨床症状と医師の総合的な診断からなされます。

アルツハイマー型認知症以外にも、海馬傍回が萎縮してしまう病気が発見されることもあるため、画像診断のみでは判断できません。もちろん、この逆も然りでVSRADの検査結果に異常が見られなかった場合でも、認知症をすでに発症しているケースがあります。認知症の診断にはあらゆる観点から判断していかなければなりません。

VSRADの内容とは

アルツハイマー型認知症は臨床症状や医師の総合的な診断、画像診断などを用いて判断されます。VSRADを用いて検査することで脳にある海馬傍回の萎縮を見ることができるようになりましたが、その検査内容とはどのようなものなのでしょうか?ここからは、VSRADの検査内容について解説します。

VSRADの検査の流れ

MRI検査は放射線部門での検査となり、VSRADは通常のMRI検査と原則同時に実施します。MRI検査の時間と合わせても30分ほどで終了する検査となっています。そのため、検査を受ける病院によって異なりますが、予約なしでも外来受診後に検査から診察までを1日で済ませることも可能です。

検査が終わると、MRIによる画像結果とVSRADによる画像解析データをPCへ転送します。検査自体にそこまでの時間を有しない、また画像結果もすぐに出ることから、検査結果を本人に渡して診察へ移れます。

解析結果レポートで脳の萎縮の程度を数値化

VSRADでは、脳の萎縮の程度をスコアとして数値化されたレポートを見られます。基本の解析結果では海馬傍回の萎縮の程度を目安から判断し、その他の解析結果として脳全体の中で萎縮している領域の割合、海馬傍回の中で萎縮している領域の割合、海馬傍回の萎縮と脳全体の萎縮との比較を表しています。これらは全て自動算出されているので、検査終了後早期に診察へと移れるようになっているのです。

VSRADの解析結果レポートでは、上記の数値化されたスコアだけでなく解析結果の元となった画像の表示もされています。脳の横断面図で表示されているので、海馬傍回の萎縮だけでなく脳全体における萎縮の程度も把握できるでしょう。

認知症で早期発見が重要な理由

どのような病気に関しても、早期発見は重要とされています。認知症においても同様のことが言え、早期発見・早期治療が非常に重要となっています。VSRADは認知症早期発見に有効であることが分かっています。ここからは、認知症で早期発見が重要とされている理由について解説していきましょう。

進行を緩和する薬があるため

認知症が発症される原因としては、脳の萎縮や脳の神経細胞が死んでしまうことが挙げられます。脳の萎縮や神経細胞の壊死によって、脳の持つ処理機能が低下してしまい認知機能が低下してしまいます。

脳は一度萎縮したり神経細胞が壊死してしまったりすれば、再生させるもしくは再生することはできません。また、同様に細胞が死んでしまうことを防ぐことのできる薬はまた見つかっていません。今後見つかる可能性もありますが、現時点では脳の細胞は再生不可であり、細胞が死んでしまうことは防ぎようがないと言え、このことから認知症となってしまった場合治ることはないと言えるでしょう。

しかし、認知症は薬で治すことはできませんが、薬で進行を緩和することは可能です。根本的な治療はできずとも進行を少しでも緩和させることで、自立した日常生活が送れる期間が長くなる、また認知症による精神症状(イライラや不安など)の緩和にも役立ちQOLの低下を防ぐ目的にもなるでしょう。

それこそ認知症の症状がそこまで進んでいない時期に早期発見することができれば、これまでの生活を保ちつつリハビリや薬で進行を緩和できます。そのため、認知症の早期発見が重要だとされているのです。

後半の介護の大変さに関わってくるため

認知症は薬で治療する方法はありますが、進行を緩和するためのものであり少しずつでも認知症は進行していってしまいます。早期発見ができれば、それだけ早く薬での治療が開始できますが、進行する速度が緩和されるだけであり進行を食い止めることはできません。

認知症を患ってしまうことで、家族もしくは介護職からの支援は必要不可欠となります。早期発見でき早期治療を始めれば、より介護する側への負担も軽くなります。

薬での治療を進めることで、脳で生き残っている神経細胞を活性化させることができ、認知機能をある程度維持することができます。進行がゆっくりであるほど、認知症となってしまっても介護の負担は軽減できるでしょう。

介護うつを防ぐため

認知症の早期発見が重要だとされるのには、介護する側の負担を軽減するためでもあると前述しました。介護する側は介護が大変で負担が大きくなっていくほど、介護うつとなりやすいです。

介護うつとは、通常介護者がうつ病を発症してしまった際の総称です。一般的には普通のうつ病と同様に治療が必要となります。

介護をする側は、介護される側の自立度によって肉体的・精神的に疲労する程度が異なります。特に介護職に就いていない家族が在宅で介護する場面では、介護する側の負担が大きくなり疲労が蓄積してしまうことで介護うつを発症してしまうことにつながります。

介護うつを防ぐためには、認知症の早期発見による早期治療が重要です。これは、早期発見できたことで日常生活がある程度自立した状態で治療を開始することができ、進行が緩和されれば介護者への負担も大きく軽減されるためです。

VSRADを受ける方法

VSRADは、アルツハイマー型認知症の早期発見に有効な手段となっています。前述したとおり、VSRADはMRI検査と同時に実施しなければなりません。VSRADを受けるためには、VSRADを導入している病院もしくはクリニックであることが必須条件となります。

また、検査を受ける条件として年齢での制限が設けられていることも少なくありません。通常、VSRADが受けられるのは50歳以上とされています。50歳以下でも検査自体は可能となっているのですが、検査をしたとしても検査結果が不規則になりやすく正確な診断は困難となります。

他にも、MRI検査と同時に実施する検査となっていることから、MRI検査が実施できない人にもVSRADは実施不可能となっています。MRI検査ができない人の例としては、心臓にペースメーカーを付けている人や閉所恐怖症の人などが挙げられます。

VSRAD以外にも認知症かどうか正確に検査したいといった場合には、核医学検査というPETやSPECTなどが選択できます。これらの検査では、点滴で造影剤を体に流し込んで検査します。

その際に、少なからず放射線物質を体内に取り入れてしまうことから体への負担もMRI検査やVSRADよりも大きくなってしまいます。さらに、保険適用外の検査となってしまうことから検査費用が自己負担となり費用も高くなりやすいです。

VSRADはPETやSPECTよりも体への負担が少ないこと、また費用もそこまで高くありません。費用は病院やクリニックによって異なりますが、MRI検査の中のオプションとして無料で実施してくれるところもあります。

脳ドックのプランにも組み込める

VSRADはMRI検査と同時に実施しなければならないことから、脳ドッグのプランに組み込むことも可能です。脳ドッグは基本的に会社や自治体がそれぞれ実施している健康診断でも脳ドッグをプラスできます。そこまで高くない上に、検査時間もさほどかからない検査となっているので、体への負担も最小限に認知症の検査が実施できるでしょう。

VSRADはリーズナブルなものだと数千円で受けられる

VSRADは認知症の中でも最も見られるアルツハイマー型認知症の早期発見、診断に非常に有効な検査となっています。認知症は早期に発見することで、早期に治療が開始でき認知症の進行を緩和することが本人にとっても、周りの家族にとっても重要です。

認知症を疑った場合、医療機関に相談することが第一優先となります。その際に、MRI検査とVSRADを受ける手段も有効です。しかし、早期発見であれば普段実施している健康診断時に脳ドッグとして追加してみるのも良いでしょう。

医療機関によって検査費用は異なりますが、数千円で検査を受けられるところも存在しています。さらに、脳ドッグに追加して組み込んでしまった方が、通常MRI検査やVSRADを受けるよりもお得に検査できるようになるメリットもあります。まずは認知症かどうか不安になるのであれば、普段の健康診断にVSRADを追加して検査してみることをおすすめします。

この記事のまとめ

  • VSRADはアルツハイマー型認知症の早期発見に役立つ
  • 早期発見によるメリット
  • 脳ドッグに組み込むことが可能