在宅介護と施設介護を徹底比較|負担・費用・快適さ・安心度など

病気や高齢などの理由で介護が必要になったとき「自宅で介護するべきか、施設を利用するべきか」と誰しも迷ってしまうのではないでしょうか。「在宅介護と施設介護のどちらがいいか」は人それぞれで違います。決断をするためには、介護を受けるご本人やご家族の気持ちを整理しなければいけません。予算も含めて話し合いや確認をしたうえで、最適解を選択することになります。まずは在宅介護と施設介護の詳細を知ることが大切です。この記事ではそれぞれの特色やメリット・デメリットなどを詳しくご説明します。また決断する際に家族間で話し合うポイントにも触れますので、ぜひ参考にしてください。

在宅介護と施設介護を徹底比較|負担・費用・快適さ・安心度など
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

在宅介護とは

在宅介護とは、自宅で家族または介護士などが介護をすることです。住み慣れた我が家で介護を受けられるため、要介護者の方はそれまでと同じ環境で生活を続けることができます。

在宅介護に関する詳しい概要は以下の記事をご覧ください。

以前は、家族のみで介護をするケースが主流でした。現在では、要介護度に合わせて「訪問介護サービス」や「通所系介護サービス」などの「居宅介護サービス」を自宅で受けられるようになり、家族の負担を軽減できる場面も増えています。「居宅介護サービス」に含まれる主なサービスは次の通りです。

訪問介護

介護福祉士やホームヘルパーが要介護者の自宅を訪れ、身体介護(入浴、食事、排せつなど)や生活援助(買い物、調理、掃除、洗濯など)をします。

訪問介護に関する概要は以下の記事をご覧ください。

訪問看護

看護師が要介護者の自宅を訪れ、医療面で必要な処置(健康チェック、医師の診察補助、点滴や栄養チューブの管理など)をします。

訪問看護に関する概要は以下の記事をご覧ください。

訪問入浴介護

専用の簡易浴槽を使い、スタッフが自力や家族の介助だけでは入浴が難しい要介護者の入浴を手助けします。

訪問入浴介護に関する概要は以下の記事をご覧ください。

訪問リハビリテーション

理学療法士、作業療法士、言語療法士が、自宅で機能訓練をします。

居宅療養管理指導

医師・歯科医師・薬剤師などが自宅を訪れ、生活の管理・指導・アドバイスをします。

訪問栄養

管理栄養士などが自宅を訪れ、食事の調理方法のアドバイスや栄養管理をします。

上記の介護サービスのほか、在宅介護を始めるには、介護状態によって自宅の設備を整える必要性が生じることもあります。費用はかかりますが、一部費用を介護保険でカバーできるものもあるので、事前に問い合わせるといいでしょう。具体的には次のような制度があります。

福祉用具貸与

車椅子や電動ベッドなどの福祉用具をレンタルできます。品目によって介護保険の適用が可能です。

特定福祉用具販売

トイレの便座や入浴用の小物など、衛生面においてレンタルがしにくい用具を、少ない自己負担で購入できます。

住宅改修

手すりの取り付けや、自宅内の段差を取り除くなど、要介護者が生活しやすく、家族の不安を減らすためにバリアフリー関連の改修をします。

介護対象者が実際に短期間だけ施設に通うことでサービスを受ける「通所サービス」もあります。通所系介護サービスには、次のようなものがあります。

デイサービス(通所介護)

自宅からデイサービスセンターや介護施設に日帰りで通い、食事レクリエーション機能訓練などが受けられます。

デイサービスについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

デイケア(通所リハビリテーション)

自宅から病院や施設に日帰りで通い、医師の指示のもとで療養士とともに運動機能や口腔機能の向上・栄養改善などを目的としたリハビリテーションが受けられます。

デイケアについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

このほかにも、ショートステイとして施設に短期宿泊し、生活介護や療養介護を受けられる「短期入所型」や、訪問・通所・短期入所を組み合わせて利用する「複合型のサービス」もあります。

在宅介護のメリット・デメリット

ではそんな在宅介護のメリット・デメリットに関してご説明します。双方を理解したうえで介護の方向性を決めましょう。

在宅介護のメリット

在宅介護最大のメリットは、要介護者の方が住み慣れた自宅で、家族と一緒に生活できることです。特に高齢者の方は馴染みのある環境で過ごすことで、自分らしく生活できます。その点でも在宅介護は安心できます。

周りにいるのは気心の知れた家族ですので、自分のペースで暮らせることも大きなメリットです(受けるサービスによっては、介護士や看護師、療養士などが、訪問介護で訪れることもあります)。また在宅介護は自由度が高く、要介護度や介護保険の適用範囲・家族の希望などに応じて、先述した介護支援サービスを組み合わせることができます。

在宅介護のデメリット

在宅介護のデメリットは、介護している家族に負担が集中してしまう点です。要介護度によっては要介護者を1人にしておけず、四六時中気が抜けないために心労が溜まっていくこともあるでしょう。「介護できる家族が少ない」または「家族も高齢である老老介護」のケースでは、その度合いはさらに高まってしまいます。

家族が介護をする場合には、親や夫婦への愛情や責任感が生まれるために、すべてを背負ってしまいがちです。慌ただしい生活のなかでは気づきにくいですが、うつ病の症状が出てしまったり、体調を崩したりすることも増えます。仕事を続けられなくなり、やむを得ず「介護離職」の道を選ぶ方もいます。

施設介護とは

施設介護とは、施設に入居して介護を受けることです。施設は「介護施設」「介護保険施設」に分けられます。介護保険施設は介護保険の適用対象となり、公的施設の意味合いを強く持っており、運営母体は地方公共団体・社会福祉法人・医療法人などです。そのため、民間施設とも呼ばれる介護施設よりも費用を抑えて利用できます。

介護保険施設は、次の4つに分類されます。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

原則で、要介護3以上と認定され、常に介護が必要な方のみが利用できる施設です(認知症を患っている、家族からの虐待を受けているなどの事情があれば、要介護1または2でも入所できる場合があります)。

この施設では、食事・入浴・排せつなど日常生活全般の手助け機能訓練健康管理などを受けられます。部屋タイプが4種類あり、ユニット型個室(10名くらいで利用できるリビングが併設された居室)、ユニット型個室的多床室(ユニット型個室に仕切りをつけた形式の居室)、従来型個室(通常の個室)、多床室(定員2人以上の、大部屋のような形式の居室)に分類されます。

特別養護老人ホームについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

介護老人保健施設(老健)

要介護認定は受けているが、病状が安定しており、主にリハビリテーションを受けることで自宅での生活ができるようにサービスを提供する施設です。医学的管理のもとで、介護サービス(入浴や排せつ)や機能訓練、医療ケアなどをします。

老健には、医師が1人以上常勤しているほか、リハビリの専門家である作業療法士や理学療法士、言語聴覚士のいずれかも常勤しています。非常勤でも医師ができる特養と比べて、医療的なケアを安心して受けられる点が老健の特徴です。

設備面では、リハビリをするうえで必要な器具が充実していることが特徴になります。また、生活を送るうえで必要なキッチン、台所、トイレ、食堂、リビングなどは共用です。多くの老健では、大部屋を複数人数で利用する「従来型多床室」が採用されています。

リハビリが目的の施設ですので、入所できる期間は長くても6カ月程度となっています。このため、介護施設のなかでは比較的入所までのハードルが低く、満室でもすぐ空きが出ることも多いのです。

介護老人保健施設について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

介護医療院

要介護認定を受けており、慢性疾患のために長期療養が必要な方に対して、医療行為と介護を同時に提供する施設です。長期入所を前提としており、終身で利用する方もいます。

介護医療院は2つのタイプがあり、要介護者の容体によって利用する施設が分かれます。提供するサービスはどちらも同じで、日常生活の支援(調理や家事全般など)、医療面でのケア(痰の吸入や経管栄養など)、介護サービス(食事・排せつ・入浴・移動介助など)の3つです。受けられるサービスの幅が広く、地域住民の方々との交流イベントを開催している施設もあります。

介護医療院について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

介護療養型医療施設

要介護認定を受けており、急性期の治療から長期の療養に移行するために介護や医療ケアが必要な方にサービスを提供する施設です。

介護保険制度が2000年に始まるにあたって、高齢者の療養生活の場を提供するための「療養型病床群」から再編されたのが、介護療養型医療施設です。その後、医療療養と介護療養に分類されましたが、実際には線引きがとても難しいという問題が起こっていました。

そこで新たに「介護医療院」が新設されたため、現在介護療養型医療施設として機能している施設は、2023年度末までに介護医療院や介護老人保健施設などへ移行することになっています。

ご紹介した4種類は介護保険制度を利用できます。そのほかに保険適用外で利用できる以下の施設もあります。

有料老人ホーム

介護付き住宅型健康型の3つに分類され、要介護認定を受けた方が介護付きのホームを利用する場合は介護保険が適用されます。

介護付き有料老人ホームについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

住宅型有料老人ホームについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

健康型有料老人ホームについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

サービス付き高齢者向け住宅

高齢者が生活しやすいように、バリアフリーに対応している賃貸住宅です。介護が必要な方は、外部サービスと別途契約する必要があります。要介護認定を受けていれば介護保険の在宅サービスを利用が可能です。

サービス付き高齢者向け住宅について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

グループホーム

要支援2もしくは要介護1以上で、認知症を患っている方を対象とした施設です。利用するには、施設と同一地域内に住民票を持っている必要があります。こちらも介護保険の対象です。

グループホームについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

施設介護のメリット・デメリット

では各施設の概要について理解をしたうえで、施設介護を選択のメリット・デメリットをご紹介しましょう。

施設介護のメリット

施設介護のメリットは、まず何より要介護者と家族双方の負担を軽減できる点です。要介護者は「介護をしてくれる家族に対して負担をかけている」との引け目を感じていることがあります。施設を利用することで、気持ちが楽になることも多いのです。家族にとっても、肉体的・精神的負担を減らすことができます。

また、要介護者の体調が悪くなったときに、すぐ対応してもらえる点も大きなメリットです。医師による治療が必要な場合も、在宅介護と違って専門家の対応が迅速に受けられるので安心です。

施設介護のデメリット

施設介護のデメリットとして、やはり費用面が挙がります。特に、介護保険が適用されない施設では、入居一時金だけでも数千万円かかるケースも珍しくありません。介護保険施設に入所できれば、負担は多少抑えられますが、それでも在宅介護と比べると多額の費用がかかります。

また、自宅とは異なる環境のなかで生活することで、要介護者が新たなストレスを抱える可能性もあります。その結果、退去してしまうこともあり、違う施設を探すか在宅介護に戻るかを選ぶ結果になるかも知れません。

要介護度別に見る在宅と施設の割合の違い

厚生労働省も参考資料としている、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが令和2年8月に発表した「在宅介護実態調査」によると、基本的には要介護度が高くなるにつれて、施設等の検討をするようになるという結果が出ています。

要介護度別・施設等検討の状況 出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「全国の在宅介護実態調査データの集計・分析結果〔概要版〕

なかでも要支援2から要介護1、要介護2から要介護3のタイミングで上昇率が高まっているのが特徴です。要介護1以上や要介護3以上といった入居条件がある施設が存在するのが理由だと考えられます。

またこの他に要介護度が高まるにつれて、在宅での介護にプラスして訪問系の介護サービスを利用する割合も高まっています。また、訪問系サービスを利用している方は、施設への入所を検討している割合が低いという結果も出ています。

訪問系サービスを利用することで、介護する家族の不安が軽減されたり、介護離職することなく仕事を続けていくことが可能だったりしているのです。さらに、要介護度が重度化しても、訪問系サービスを利用していることで施設入所を検討していない人の割合が低いことも判明しています(ここでの訪問系とは、訪問介護・訪問入浴介護・訪問リハビリテーションなどです)。

訪問サービスについての概要は以下の記事で詳しくご紹介しています。

在宅介護と施設介護の費用の違い

在宅介護と施設介護では、費用がどのくらい変わるのでしょうか。地域や施設によって費用は異なりますので、一律で比較することはできませんが、おおよその目安として要介護3の方の場合を例にご紹介します。

在宅介護

介護サービス費がおよそ2万7,000円、その他(おむつ、自宅での配食サービスや介護食、医療費、交通費など)がおよそ3万5,000円で、合計6万2,000円ほどかかります。

特養(ユニット型個室)

介護サービス費がおよそ2万3,000円、家賃がおよそ6万円、食費がおよそ4万2,000円、その他雑費がおよそ1万円で、合計13万5,000円ほどかかります。

有料老人ホーム

介護サービス費がおよそ2万円、家賃がおよそ11万5,000円、管理費が9万8,000円、食費が5万4,000円、その他が1万円で、合計29万7,000円ほどかかります。

1人で考えずにケアマネジャーに相談を

ひとくちに「在宅介護・施設介護」と言っても、選択肢は多岐にわたります。さらに介護保険の仕組みや適用範囲も細かく規定されているため、どのような介護が適しているのか1人で考えていても、最良の答えを見出すことは難しいでしょう。

そんなときは、ぜひケアマネジャーに相談しましょう。ケアマネジャーとは、正式名称を「介護支援専門員」といい、介護保険制度を受けるためにさまざまなマネジメントをする存在です。

要介護者認定を受けるには、ケアマネジャーとの面談が必須です。また介護保険のサービスを利用するには、ケアマネジャーしか作成できないケアプラン(介護計画表)が必要になります。

ケアマネジャーは、介護の知識が豊富にありますので「どのサービスが合っているのか」のアドバイスや「希望に沿ったケアプランの作成」「介護施設やサービスの紹介」など、介護について不安なことは何でも相談できる心強い存在です。

ケアマネジャーの利用は無料ですので、まずは要介護者の住所を管轄している地域包括支援センターに相談してケアマネジャーを探すことをおすすめします。

ケアマネジャーについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

両方のメリットを知ったうえで判断する

要介護者が10人いれば、介護方法の選択も10通りあります。今回ご紹介したように、在宅介護と施設介護のどちらが良いかは、一概に結論付けることはできません。

在宅は、お金はかからないが負担は大きくなります。反対に、施設では費用負担は大きいですが、そのぶん安心感があります。要介護者の意思が確認できれば、その意思を尊重する選択肢もとれるでしょう。家族が在宅介護をすると決めても、容体が変化したとき対応を変えざるを得なくなる可能性もあります。

あらゆる面から比較して、誰もが納得できる介護を選ぶために1人で考えずに専門家に相談しながら判断をしていきましょう。

この記事のまとめ

  • 在宅介護は費用こそ安いが負担がかかる
  • 「施設」と一言でいっても種類は豊富
  • 負担と費用のバランスを考えて在宅か施設かを決める

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