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認知症の初期症状と、家族が心がけたい対応を教えてください

両親が70代になり、認知症について心配になってきました。今は健康なのですが、いつ認知症を発症してもおかしくない年齢です。「認知症は早期治療が大事」と聞くので、初期症状を見逃したくありません。どんな特徴に注目すべきですか? また家族はどう対応したらいいのでしょうか?

A症状によって物忘れや判断力の低下などがあります。気になる場合はかかりつけ医への相談がおすすめです。

認知症の初期症状には「物忘れ」「判断力の低下」「時間や場所の把握能力の低下」などがあります。ただし加齢による衰えの可能性もありますので、気になる際はかかりつけ医に相談してみましょう。

平栗 潤一
平栗 潤一
一般社団法人 日本介護協会 理事長

「もしかしたら自分は認知症かもしれない」「最近、両親の様子がおかしい」と思ったことはありませんか? 認知症には初期症状があります。認知症の早期発見をすることで、早期改善が見込めます。それでは、認知症の初期症状や家族の対応方法について説明しましょう。

認知症の初期症状のチェックポイント

認知症の初期症状を知るためには、まず認知症がどんな病気なのかを知ることが大切です。認知症は基本的に症状が進行するほど治療が難しくなっていくので、いかに初期症状を見極めて早期治療に臨めるかが重要です。

近年の認知症治療は格段に進歩しているため、早期発見が叶うことで症状の進行を遅らせ、改善させるなど、さまざまな効果が期待できます。したがって、もしかしたら認知症かもしれないと思ったら初期症状に当てはまるかどうかチェックしましょう。

早期発見によって早期治療が開始されれば、本人はもちろんご家族の方の負担の軽減につながります。専門家からの的確なアドバイスをもらい、どうやって認知症と向き合えばいいのかが分かるでしょう。

しかも要介護認定を受けて介護サービスも利用できるようになる可能性があるので、もし介護する必要性があったとしてもある程度の余裕が生まれるのは大変ありがたいことです。どのような症状が認知症の初期症状に当てはまるのか、チェックポイントを知っておきましょう。

初期症状で注意すべき変化

「加齢だから」、「本来の性格だから」、「たまにこういうことがあるから」、などと見逃してしまいそうな症状こそ、認知症の初期症状ということも十分に考えられます。些細な行動を見逃してしまうと、いつの間にか症状が進んで早期治療ができなくなる可能性があるので「もしかして」と思ったら注意深く観察することが大切です。

認知症の初期症状で注意すべき変化についてご説明しましょう。

物忘れ

一般的に認知症ではない人でも起こりやすい症状ですが、認知症の場合は一般的な物忘れとは症状が違います。「さっき話した電話の相手の名前を忘れる」「食べたばかりなのにご飯を催促する」「何度も同じことをする」と、物忘れのレベルを超えています。

症状が進行すると一緒に暮らしている人の名前すら思い出せなくなるなど、症状がひどくなりがちです。先ほどの症状のほかに、常に探し物をしているといった状態を見かけたら、認知症の初期症状を疑いましょう。

判断力の衰え

日常生活における判断力の低下も認知症の初期症状の1つです。たとえば、以前までできていた運転や料理、計算や片づけ、趣味や遊びなど、さまざまな場面でミスが多くなったり、新しいことが覚えられなくなったりと、明らかに日常生活に支障をきたすような症状があります。

判断力が鈍るのは満足な日常生活を送れなくなる可能性があるため、早急に治療を受けることが必要です。

時間・場所把握能力の低下

認知症の初期症状のなかでも、時間の勘違いや慣れた道でも迷うような行動を頻繁に繰り返す場合は要注意です。1度や2度なら誰しも起こり得ることですが、何回も遅刻したり約束を忘れたり、道を間違えたりするようであれば認知症を疑いましょう。

人柄の変化

認知症は人柄をも変化させることがあります。たとえば、以前は温和で心優しい人だったのに急に怒りっぽくなった。自分の失敗を人のせいにするなどの変化が認知症の初期症状です。

初期症状なので、もしかしたら本人も人柄の変化に戸惑い、苦悩しているかもしれません。そんな時はむやみにその人を責めるのではなく、認知症の診断を受けるのがおすすめです。

強烈な不安感

認知症の初期症状は、時に強烈な不安を感じさせることがあります。「1人でいると急激に怖くなったり寂しくなったりする」「外出する際には何度も持ち物を確認しないと気が済まない」「本人が『最近自分自身がおかしくなったのでは』と訴えてくる」などが特徴です。

このような時こそ、ご家族の方がサポートしてあげることが大切です。

意欲の減退(うつ)

認知症の初期症状として、強烈な不安を感じるだけでなく、意欲が減退している場合も当てはまります。「以前は趣味に没頭していたにもかかわらず、急に興味を示さなくなる」「何をするにも嫌がったり億劫になる」など、目に見えて大きな変化が見てとれます。

暴力的な言動・行動

認知症の初期症状によって、急に暴力的な言動や行動を取ることが多くなります。以前は暴力的とは無縁な性格だったにもかかわらず、次第に荒々しくなったり暴力的な言動をするようになったり、何かに八つ当たりするかのように物を蹴ったり殴ったり破壊したりします。

もちろん本人もやりたくてやっているわけではありません。しかし家族にも危害を加える可能性があるので、早急に病院で検査を受ける必要性があります。

妄想や幻覚

時に認知症は妄想や幻覚の初期症状が現れることもあります。事実とは異なることを話すようになったり、時折誰もいないのに一人で喋っていたりするなどの症状が特徴です。

特に幻覚は事故などにつながる恐れがあるので、ご家族の方が常に注意する必要性があるでしょう。

徘徊

徘徊は初期症状の段階で起こる可能性があります。自分が見ていないところで勝手にフラフラとどこかに出かけていったり、目的もなくさまよい歩いたりすることがあったら、認知症の疑いがあります。

認知症の初期症状を感じた際には検査を

これらの初期症状を覚えた場合は、できる限り早急に検査を受けましょう。もちろん本当に認知症による初期症状なのか分からない場合は、セルフチェックによる判断も可能です。

それでは、どのようなセルフチェックを行うのか、病院での検査は何を行うのかご説明しましょう。

セルフチェック

現在では認知症による認知機能の低下がみられないかセルフチェックが可能です。なかでも実際の医療現場で行われているのが、以下の検査です。注意したいのは「セルフチェック」とありますが、正しい結果を得るためには必ず医師のもとですべき、という点です。家族だけでしてしまうと結果を曲解してしまったり、口論になってしまうことがあります。

  • HDS-R(長谷川式認知症スケール)
  • MMSE(ミニメンタルステート検査)
  • CDT(時計描画テスト)
  • ADAS(アルツハイマー病評価スケール)
  • WAIS-R(ウェクスラー成人知能検査)
  • GDS(高齢者うつスケール)

詳しいテストの内容については以下の記事を参考にしてみてください。
認知症のテストや検査方法とは|病院での診断と自宅でする方法を紹介

病院での検査

病院で検査を受ける場合、主に以下の検査を受けるのが一般的です。

  • 面談、問診
  • 身体検査
  • 認知症検査

基本的に面談や問診をして、血液検査をはじめとする身体検査、そして認知症検査を行う流れとなっています。

病院での検査の際の初期費用や処方されるお薬について

病院で認知症検査を受けた場合の初期費用が気になる人もいるでしょう。もちろんどんな認知症検査を受けるのかにもよりますが、医師の診察や認知機能テスト、画像診断や血液検査などの一般的な検査を受ける場合、初期費用は数千円~2万円程度かかります。

また、病院で処方される薬は、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンからなるコリンエステラーゼ阻害薬とメマンチンを使うMMDA受容体拮抗薬です。

コリンエステラーゼ阻害薬のドネペジルとガランタミン、リバスチグミンの3種類は全ていっぺんに処方されるわけではありません。どの薬も認知機能改善効果に大きな差がないので、患者の行動や心理状態に応じて選択され、処方されるのが一般的です。

いずれの処方薬は副作用が発生する可能性がありますが、副作用は投薬された初期に起こりやすく、徐々に副作用が起こらなくなることが多くあります。患者によって改善効果が見られるまでは全く違うので、投薬期間が長くなることも覚えておきましょう。

また、副作用が心配な人でも、基本的に少量の投薬から始められるので、身体が投薬になれてきたと判断したら微量ずつ用量を増やしていくのが一般的です。

他にもレミニールやアリセプト、リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ、メマリーといった処方薬もあります。認知症薬については以下の記事を参考にしてみてください。

認知症の薬にはどんな種類がありますか?具体的な効果や副作用は?

初期の認知症で心がけたい家族の対応

もしもご家族のなかで初期の認知症を発症した方がいる場合、介護をする可能性があります。まだ初期症状だとはいえ、家族が見ていないところで危険なことをしていたり、時にはご家族の言うことを聞かなくなったりとさまざまな症状に悩まされることも想定されるでしょう。

急な介護の必要性によって混乱するかもしれませんが、本人が一番辛いということを忘れてはいけません。それでは、初期の認知症で心がけたい家族の対応についてご説明しましょう。

無理に叱らない

第一に無理に叱らないことが大切です。

特に物忘れが頻繁に起こる場合は、家族も突き放してしまうこともあるでしょう。物忘れは認知症でなくとも起こるものですし、下手をすれば認知症の初期症状であるにもかかわらず怒ってしまうこともあるかもしれません。

ただ、物忘れが頻繁に起こっていることは本人も自覚しているはずです。自分の物忘れのせいで家族に負担をかけて申し訳ない気持ちでいっぱいになっていることでしょう。そんななかで叱られてしまうと、一層自信を無くしてしまいます。

ここは無理に叱るようなことはせず、笑顔で対応してあげたり、メモを活用してあげたりすることが大切です。家族が笑顔であれば「ちゃんと自分のことを気遣ってくれている」と感じて家族に負担をかけまいと努力するようになります。

紛失物や事故に注意

初期の認知症は物忘れが頻繁にあったり、徘徊による事故を引き起こしたりする可能性があります。認知機能が薄れることによって火を扱っていることに気づかず、火事を引き起こす危険性もあるので、常に家族の誰かがサポートしてあげる必要性があります。

また、鍵など大事なものを失くしてしまうこともあるので、ご家族の誰かが管理するか、常に物の行方を把握しておくことも大切です。

相手を尊重する

何よりご家族が大切にしておきたいのが、認知症であっても変わらず相手を尊重することです。本人は認知症になりたくてなったわけではありません。また初期症状だからこそ自分がおかしな行動をしていることをしっかり自覚しています。

症状が少しずつ進行しているなかで、本人の認知機能を改善するためにはご家族の方が相手を尊重する姿勢が大切です。そうすることで本人は自分が認知症でも大切に想ってくれていると感じます。

認知症の症状は4段階

初期症状からどのような経過を辿るのでしょうか? 認知症の症状の段階は主に「前兆期」「初期」「中期」「末期」の4段階で考えられています。あくまでも人によって進行具合や症状が異なりますが、段階別の主な症状を紹介しましょう。

前兆期(軽度認知障害)

前兆期は軽度認知症(MCI)と呼ばれている状態です。基本的に生活に支障をきたすことがないので、家事や買い物も問題なく1人でこなせます。症状としては「名前が思い出せない」「同じ話を繰り返す」などの記憶力の低下が見られます。

軽度認知症(MCI)については下記の記事を参考にしてください。
軽度認知障害(MCI)とは|初期症状や診断基準、病院での治療法など

初期(軽度)

初期段階のだいだいの目安は、認知症を発症後のおよそ1~3年です。さらに記憶力の低下が目立ち、直前のできごとを忘れてしまうことも。家事や買い物、金銭管理、服薬管理などの日常生活にも支障がきたします。

本人もできたことができなくなるため、精神面でも気持ちが滅入るでしょう。アパシーや易刺激性、物取られ妄想などの症状が現われることもあります。

中期(中度)

中期は、発症後およそ2~10年です。この頃は、特に人や環境によっても進行度合いが違います。「電車やバスの乗り方が分からない」「話が噛み合わない」「家族の名前を忘れる」などの認知機能の低下がみられます。加えて日常生活動作(ADL)が低下し、常時介護が必要となる可能性も高いです。周辺症状には、徘徊、不安、妄想、幻覚などが挙げられます。

末期(重度)

末期は、発症後およそ8~12年、認知機能と日常生活動作がさらに悪化します。ほとんどの方が、寝たきり状態でしょう。

寝たきり状態の不快感からくる便をさわる、なすりつけるなどの不潔行為もみられます。また嚥下障害言語障害を生じることもあり、コミュニケーションも難しい状況です。

対応に困る場合は「認知症初期集中支援チーム」にご相談を

それでも家族が認知症の方の対応に困った場合は「認知症初期集中支援チーム」に相談してみましょう。

認知症初期集中支援チームとは認知症やその疑いがある家族のもとへ複数の専門職の方が訪問し、アセスメントや家族支援などの初期支援を包括的かつ約6カ月間にわたって自立生活のサポートをするチームです。

支援チームのサポートが受けられる対象者は40歳以上で在宅生活であり、認知症及び認知症が疑われる方で、以下の条件を満たしていることです。

  • 認知症疾患の臨床診断を受けていない方
  • 継続的な医療サービスを受けていない方
  • 適切な介護保険サービスに結び付いていない方、もしくは中断している方
  • 医療サービスや介護サービスを受けているものの、認知症による行動、心理状態が顕著なので対応に困っている方

以上の条件に当てはまる場合は、認知症初期集中支援チームに相談してくださいね。地域包括支援センターまたは福祉保健センターが窓口となっています。

平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。

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