両親が高齢になり、少しずつ体が弱ってきています。まだ介護が必要な状態にはなっていませんが、いつ介護が必要になるか正直心配です。要介護状態になる前に何らかの対処ができるのであれば、ぜひ教えていただきたいです。運動や食事、体操など、普段の生活の中で取り入れられるようなものが理想的なので、もしあったら教えてください。
フレイルは、年齢とともに疲れやすくなるなどの理由から運動量は減ってしまったり、友人や知人との交流が少なくなったりすることが原因でなってしまいます。それが全てではありませんが、周りと交流する時間を設けたり、運動をしたりすると、予防できる可能性が高まります。また、自治体によってはフレイル予防体操を発信しているので、その体操を試してみるのも良いでしょう。
フレイルになると、さまざまな症状が現れるようになってしまいます。生活に支障をきたしてしまう可能性もあるため、フレイルの原因や対処法をきちんと理解が必要となってきますよ。
今回はフレイルの予防方法を知りたい人向けに、運動や食事、体操などをご紹介します。両親が高齢になり、不安が募っているという人はぜひ目を通してみてください。
まずは、フレイルが一体どのような状態を指すのか解説していきます。
フレイルを一言で表すと、自立と要介護の中間の状態です。自立から要介護になるまでの流れについて、ここでは説明していきます。
自立をしているのは、健康な証です。生活習慣病を防ぐために歩いたり、バランスの良い食事を心がけたりすることで、健康を維持できます。しかし、少し体力が衰えてきて、介護予防が必要になった人はプレ・フレイル(前虚弱)という状態に分類され、要支援に認定される人も増え始めます。
そして、自立支援に向けたケアが必要になってきた場合はフレイル(虚弱)に分類されます。フレイルに分類されると、外出するのが億劫になってしまったり、より疲れやすくなったりします。年齢を重ねるとこのような状態になる人は多いのですが、適切な対処ができれば改善も見込めるのがフレイル特徴です。
周りとの関係が少なくなったり、外へ出るのが困難な状態になったりすると、要介護状態(身体機能障害)になってしまいやすいです。要介護になってしまえば、地域包括ケアなどの利用を検討しなければいけない段階に突入します。
フレイルになると、共通した状態に陥ってしまいます。どのような状態に陥ってしまうのか知っていれば、フレイルになっても状態を維持できる可能性が高まります。では、どのような状態になったらフレイルを疑うべきなのか見ていきましょう。
フレイルになると、体重が急激に減少するケースが多く見られます。内臓疾患などがない人の体重が急激に減少した場合は、フレイルが疑われます。体重減少が半年間で2kg~3kgとなっているのであれば、フレイルの可能性が高いです。
特に病気をしていないのに体重が明らかに減少していると気が付いたら、食事が進まない、食べたいものがない、食べること自体に興味がないといった変化がないか確認してみてください。以前とは違う様子が見られた場合は、状態がさらに悪くなっていく可能性も高いと言えるため、適切な対応を取る必要があります。
フレイルは、心身の状態が衰えた状態を指します。厚生労働省では、加齢によって心身の活力が低下し、生活機能の低下や心身の脆弱性が出現した状態で、適切な介入や支援をおこなうことで状況は改善すると定義しています。
フレイルになると、外出をするのが億劫だと感じるようになり、自宅にこもってしまうケースが非常に多いです。そうなってしまうと、運動をする機会もすくなくなってしまい、体力も落ちてしまいます。走ると息切れがしやすくなったり、ちょっとした外出でも疲れやすくなったりした場合は、フレイルの可能性が高いと言えるでしょう。
外に出たくなくなるのもフレイルの特徴の一つです。年齢を重ねることで、若い頃よりも活発に外出できなくなってしまうのは仕方ないことですが、それがより顕著になった場合フレイルに分類される可能性が高まります。外に出るのが面倒だと感じるようになると、社会的な孤立状態になってしまい、さらに良くない状況に陥ってしまうケースも少なくありません。
高齢になった両親が以前よりも外出しなくなったことに気が付いたら、早めに対策を取るようにしましょう。状況が悪化する前に適切な対応ができれば、要介護状態になるまでの時間を伸ばせる可能性も高まるので、同居している人は少しの変化も敏感に感じ取れるように心がけてみてくださいね。
フレイルには、身体的フレイル、心と認知機能のフレイル、社会的フレイルという三つの種類があります。続いては、それぞれのフレイルがどのようなものか解説していきましょう。
身体的フレイルは、フレイルの定義として一般的に浸透して使用されています。具体的には、筋肉や関節の活動が低下した状態です。
サルコペニアやロコモティブシンドロームと似たような状態になるのです。サルコペニアは、筋肉量が低下することによって身体的に衰えた状態をさします。ロコモティブシンドロームは、運動器の低下を意味します。サルコペニアやロコモティブシンドロームなどは、身体的フレイルの含まれる病態と考えてください。
さらに、身体的フレイルに陥ってしまうと、口腔機能も低下してしまいます。そこの着目したオーラルフレイルも近年は注目されるようになってきました。
心と認知機能に関するフレイルは、精神・心理的フレイルと呼ばれます。精神・心理的フレイルになると、抑うつ状態になったり、意欲が低下するアパシーという状態になったりします。また、認知機能の低下も顕著に見られるため、同居している家族も様子がおかしいことに早い段階で気が付きやすいです。
精神・心理的フレイルだけではなく、身体的フレイルが併存することも珍しくありません。そのような状態は、認知的(コグニティブ)フレイルと呼ばれます。
社会性に関するフレイルは、社会的フレイルと呼ばれます。一人暮らしや同居している家族が仕事をしているなどの理由から、外出の頻度が少なくなってしまったり、友人や知人との交流頻度が低下してしまったりするとなる可能性が高まります。外出をすることが難しくなってしまったことで、暮らしている地域から孤立した状態になっているのが社会的フレイルです。
フレイルになる前段階にサルコペニアという状態があります。サルコペニアは、加齢に伴って体の状況が変化したり、慢性的な疾患を有していたりするとなる可能性が高いです。サルコペニアになると、筋肉量や体力が減少して基礎代謝量が低下し、食欲の低下や低栄養状態を引き起こします。
さらに、筋力が低下してしまうため、身体機能も低下してしまいます。身体機能の低下に認知機能の低下なども加わってしまうとより一層活動量が少なくなり、社会的にも阻害されていき、日常生活にも何らかの支障をきたすようになってしまうでしょう。
日常生活に大きな支障をきたすようになると要支援や要介護状態として認定されます。そうなるとエネルギーの消費量はさらに少なくなり、食事量も少なくなるでしょう。そしてさらに低栄養状態となる悪循環を繰り返して、フレイルはどんどん進行してきます。
フレイルによって低栄養状態や転倒、嚥下機能の低下、接触機能の低下といった身体的な側面、そして認知機能や意欲、判断力の低下といった精神的な側面などが合わさっていくと、状況はさらに悪化してしまいます。それでは家族の負担も大きくなってしまうので、適切な対処をする必要がでてくるのです。身体的な側面と精神的な側面に対するアプローチはもちろんですが、体力の低下などを理由に社会的に孤立しかけているケースでは社会的な側面からのアプローチも必須になります。
フレイルかどうかは、セルフチェックができます。ここでは、厚生労働省が示しているチェックリストと指輪っかテストの2つをご紹介します。
厚生労働省が示しているチェックリストは以下の通りです。
No. | 質問票 | 回答 | |
---|---|---|---|
1 | バスや電車で1人で外出していますか | 0.はい | 1.いいえ |
2 | 日用品の買い物をしていますか | 0.はい | 1.いいえ |
3 | 預貯金の出し入れをしていますか | 0.はい | 1.いいえ |
4 | 友人の家を訪ねていますか | 0.はい | 1.いいえ |
5 | 家族や友人の相談にのっていますか | 0.はい | 1.いいえ |
6 | 階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか | 0.はい | 1.いいえ |
7 | 椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がってますか | 0.はい | 1.いいえ |
8 | 15分間位続けて歩いていますか | 0.はい | 1.いいえ |
9 | この1年間に転んだことがありますか | 1.はい | 0.いいえ |
10 | 転倒に対する不安は大きいですか | 1.はい | 0.いいえ |
11 | 6ヶ月間で2~3kg以上の体重減少はありましたか | 1.はい | 0.いいえ |
12 | 身長(cm)・体重(kg)・(BMI=)(注) | ||
13 | 半年前に比べて堅いものが食べにくくなりましたか | 1.はい | 0.いいえ |
14 | お茶や汁物等でむせることがありますか | 1.はい | 0.いいえ |
15 | 口の渇きが気になりますか | 1.はい | 0.いいえ |
16 | 週に1回以上は外出していますか | 0.はい | 1.いいえ |
17 | 昨年と比べて外出の回数が減っていますか | 1.はい | 0.いいえ |
18 | 周りの人から「いつも同じ事を聞く」などの物忘れがあると言われますか | 1.はい | 0.いいえ |
19 | 自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか | 0.はい | 1.いいえ |
20 | 今日が何月何日かわからない時がありますか | 1.はい | 0.いいえ |
21 | (ここ2週間)毎日の生活に充実感がない | 1.はい | 0.いいえ |
22 | (ここ2週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった | 1.はい | 0.いいえ |
23 | (ここ2週間)以前は楽にできていたことが今ではおっくうに感じられる | 1.はい | 0.いいえ |
24 | (ここ2週間)自分が役に立つ人間だと思えない | 1.はい | 0.いいえ |
25 | (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする | 1.はい | 0.いいえ |
このチェックリストを確認し、点数がどのくらいになるかチェックします。点数が高ければ高いほどフレイルのリスクは高まります。
1~20の合計が10点以上、6~10の合計が3点以上、11の回答が「はい」、12の回答が18.5未満、12~15の合計が2点以上、18~20の合計が1点以上、21~25の合計が2点以上だった場合は、フレイルの可能性が高いので要注意です。
指輪っかテストは、両手の親指を人差し指で輪を作り、ふくらはぎの一番太いところを掴むだけのチェックテストです。椅子に座った状態で前かがみになり、膝が90度になるようにしてふくらはぎの一番太いところを掴んでください。足を足の角度が変わると太さも変わってしまうので、膝がきちんと90度になることを意識して確認してください。
太さを測るのは、利き足ではない方が理想的です。しかし、利き足がどちら皮赤らない場合は、どちらの足でチェックしても問題ありません。ふくらはぎを掴んだときに掴めなければフレイルの可能性が低く、隙間がたくさんでいればフレイルの可能性が高くなります。
フレイルを予防するためには、日ごろの生活の中でいくつかのポイントを意識することが重要になります。では、どのようなポイントを意識すべきなのか見ていきましょう。
食事は、バランスよく栄養を摂取できるように心がけてください。肉や魚、卵、大豆製品、牛乳などを積極的に摂取するように意識することが大切なポイントになります。また、しっかりと噛むことも大切です。
毎日少しずつでも運動を継続しておこなうのもフレイルを予防するためには重要なポイントになります。運動をすると筋力の低下を防いだり、骨を丈夫にしたりといった効果も期待できるため、転倒による骨折で寝たきりになってしまうリスクも軽減できるというメリットがあるのです。
趣味や就労などによって、社会参加することもフレイルの予防になります。社会参加が難しくなることが原因でフレイルになってしまうケースも多いため、積極的に外部との交流に参加するようにしましょう。自分や家族が一番楽しいと思える活動を探してみてください。
自治体によっては、フレイル予防体操を推進しているところもあります。ここでは、3つの自治体を例に挙げてご紹介しましょう。
きんたろう体操は、介護要望サポート隊によって作られた体操です。誰もが知っている童謡・金太郎に合わせて柔軟やバランス、筋力の維持、筋力の向上を目指すための動きが盛り込まれています。コンディショニング(調整体操)版、筋力トレーニング版、ストレッチ版の3種類があります。
てんとうむし体操は、転びにくい体を作るための体操です。習志野市オリジナルの音楽が付いていて、市民ボランティアである転倒予防体操推進員がメインとなって地域に広めています。てんとうむし体操には椅子編、畳編、立位編の3種類があり、習志野市のホームページで確認できます。
KOTO活き粋体操は、江東区でおこなわれている介護予防のオリジナル体操です。筋力トレーニング編と水彩音頭編の2種類があります。筋力トレーニング編はバランス力や筋力をアップさせる目的でおこなわれ、水彩音頭編は江東水彩音頭に合わせて楽しく動きながら脳トレができる体操となっています。
高齢になるとBMIは少し高めの方が良いと考えられています。若い頃はできるだけBMIが低い方が健康的だと考える人が多いですが、少しだけBMIが高めの高齢者の場合は栄養状態が良いといわれています。フレイルは低栄養状態も原因の1つなので、BMIは少し高めを意識して体重を管理すると良いでしょう。
大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。