【2022年版】アルツハイマー型認知症とは|症状の特徴・治療法などを紹介

認知症の中でも日本で現在、最も多いタイプとされているのがアルツハイマー型認知症です。物忘れが多くなり、これまで当たり前にできていたことができなくなるなど日常生活に支障をきたします。認知症は誰でもなる可能性がある症状です。

もし、自身や家族が認知症になってしまったらと考えると心配でしょう。認知症の中でも最も症例の多いアルツハイマー型認知症とはどのような認知症なのか、またその原因や治療法家族としての付き合い方などについて解説します。

【2022年版】アルツハイマー型認知症とは|症状の特徴・治療法などを紹介
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

アルツハイマー型認知症とは

アルツハイマー型認知症は認知症の1種で、発症数が最も多い種類とされています。アルツハイマー型認知症の症状は、物忘れから気付くケースが大半です。日常生活でこれまでできていたことができなくなることや、新しい物事を覚えられない思い出せないことが顕著となります。その他にも、場所や時間がわからなくなってしまうことも特徴として挙げられます。

現在、認知症の半数以上がアルツハイマー型認知症といわれています。アルツハイマー病は比較的若い年代の女性から発見されたため、昔は「アルツハイマー病」と「アルツハイマー型認知症」が年代によって分類されていました。しかし、現在では病理学的には同一のものであると認識されており、分類を区別せずに同様の症状を表す言葉として使われています。

アルツハイマー型認知症になる原因

アルツハイマー型認知症になる原因としては、脳にアミロイドβ(ベータ)やタウたんぱくといった異常なたんぱく質が蓄積して神経細胞が死んでしまい、脳全体が萎縮することで起こるとされています。この時、脳の中でも記憶をつかさどっている海馬という器官から萎縮が始まり、徐々に脳全体へと広がります。

脳に異常なたんぱく質が蓄積することが原因とされていますが、一方でなぜそのようなたんぱく質が蓄積してしまうのかという根本的な原因ははっきりしていないのが現状です。

アルツハイマー型認知症の症状と特徴

アルツハイマー型認知症の症状は一人ひとり異なります。記憶障害などを引き起こすことが多いとされていますが、それ以上に多くの障害を併発する可能性があります。ここからは、アルツハイマー型認知症の症状とその特徴についてご紹介していきます。

記憶障害

アルツハイマー型認知症の最も代表的な症状とされているのが、物忘れなどの記憶障害です。物忘れ自体は誰にでも起こり得ますが、アルツハイマー型の症状としては体験したことそのものを忘れてしまうことが特徴として挙げられます。そのため、通常であればヒントや忘れていることを教えられればピンときて思い出せることも、できなくなるのです。

生活機能障害

日常生活において、これまでできていたことができなくなってしまうことを生活機能障害と言います。生活機能は生きていくうえで重要な役割を果たしており、例えば食事や衣服の着脱、移動、排泄、入浴といった行為も含まれています。介護をする人にとっては、この障害がどの程度あるのかで負担が大きく変わるでしょう。

見当識障害

見当識障害とは、時間や場所、人物の認識や判別が困難となることを指します。今日が何日なのか、曜日や時間の感覚までもわからなくなります。まず時間の認識ができなくなり、次に自分のいる場所がわからなくなる、そして人物の判別ができないといった経過をたどります。

例えばよく行くスーパーなどであっても迷子になったり、家のトイレの位置までわからない状態になったりするでしょう。人物の判別としては、普段顔を見合わせている家族でも誰かわからなくなってしまう場合があります。

言語障害

言語障害は主に固有名詞や語彙が出てこなくなってきてしまい、「あれ」といった指示代名詞をよく用いるようになります。言葉の理解や復唱は普段どおりできることが多く、自発語も流暢ですが、進行してくると発語自体が減少します。突然、今話していることとは無関係な話を切り出すことや、記憶障害も相まって同じ話を何度も繰り返すことも増えるでしょう。

より進行し高度なアルツハイマー型認知症となれば、さらに発語は減少していくでしょう。話しかけた言葉の復唱は比較的できるものの、短い言葉をそのまま使った会話となります。

視空間認知障害

視空間認知障害とは、自身が見えている対象物の位置関係や、その対象と自身との関係、空間の中での自身の位置関係の把握が困難となることを指します。具体的には、物体失認や相貌失認、同時失認、失読も含む空間認知障害です。

位置関係の把握が困難となることから、車の車庫入れや冷蔵庫に食品を詰め込む作業なども難しくなります。症状が進行していくと、道順がわからなくなったり、衣服の着脱時の袖通しに躊躇したり、ズボンの前後がわからなくなったりします。

その後、さらに進行してしまうと遂行機能障害も相まって、これまで住み慣れた家の中であっても迷ってしまったり、玄関から一歩外に出てしまうと家に入れなくなったりするなど、より顕著な生活機能障害が現れます。

遂行機能障害

遂行機能は、物事に対し目的を持ち自立して成し遂げるための機能です。比較的早期から、日常動作の段取りや要領が悪くなることがあります。しかし、進行していっても遂行機能障害は目立ちにくいので、作業が遅くなっているだけだと認識されがちです。

自身が得意としている作業も失敗し、行為そのものが単調化していく傾向があります。さらに症状が進行すると、そういった行為そのものもしなくなり、やがて毎日使うはずの炊飯器のスイッチすら押せなくなるほどです。

精神症状

比較的早期段階から、うつ症状や無関心などの意欲の低下、妄想、焦燥などの症状がみられます。妄想のなかでよく見られているのは、身近なものを盗られたという物盗られ妄想や家族や親族が自身に対して意地悪されている迫害妄想などです。

徘徊や不穏などの異常行動や睡眠障害も多発します。不穏とは、落ち着きがなかったり叫んで暴れてしまったりする状態を指します。幻覚や幻視も発症する可能性はありますが、早期においては数パーセントの発症率となり、中期にかけて徐々に発症が増えていく傾向にあります。

アルツハイマー型認知症の症状の種類

物忘れとの違い

一般的に物忘れは誰にでも起こりうることです。そのため加齢による物忘れと混合されがちですが、アルツハイマー型認知症の物忘れには大きな違いがあるのです。

加齢による物忘れの場合、体験したことの一部を忘れてしまうことが多く、ヒントがあれば思い出せます。また、時間や場所などははっきりと認識できており、日常生活にも支障はきたしません。

一方、アルツハイマー型認知症での物忘れの場合、体験した出来事そのものを忘れてしまうため、いくらヒントを得ようともその体験を思い出せません。さらに、新しいことを記憶できないことや時間や場所などの認識もあいまいになってしまうことなどから、日常生活にまで支障をきたしてしまいます。

アルツハイマー型認知症の進行の仕方

アルツハイマー型認知症の進行は比較的緩やかで、年単位で段階が進行していく場合がほとんどです。発症した時点ですでに脳に原因物質が蓄積している状態であるため、根本的な治療や効果的な予防は現在でも困難だとされています。

初期の段階では、物忘れのほか「時間が分からなくなる」「手順や効率を考えて行動できない」といった症状が代表的です。病気が進行すると、時間だけでなく場所が分からなくなったり、着替えなどの日常的な動作もできなくなったりします。

後期になると「言葉が出なくなる」「自力で食事ができない」「排泄に介助が必要になる」など、介護なしに日常生活を送ることが困難です。ただし、あらゆる機能が失われても感情は損なわれにくいとされています。意思疎通ができなかったとしても、できるだけ尊厳を尊重することが大切です。

アルツハイマー型認知症の治療

アルツハイマー型認知症は、現在でも根本的な治療法は見つかっていません。現段階で大切なのは早期発見と早期治療です。早期発見・早期治療で症状の進行を緩やかにもできます。

何かおかしい、いつもと違うなと感じることがあれば、早めに受診するように促していきましょう。アルツハイマー型認知症に用いられている薬がいくつかあるので、ここからは治療薬について紹介していきます。

治療に用いる薬

アルツハイマー型認知症は完治できないとされていますが、一時的に症状を緩和させる薬はいくつか存在しており、その薬と併用して対症療法をすることもあります。大きな分類としては2種類あり、一つはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬、もう一つはNMDA受容体拮抗薬に分類されています。

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬

薬の名称としてはアリセプト(ドネペジル塩酸塩)、レミニール(ガランタミン)、リパスタッチ・イクセロンパッチ(リパスチグミン)の3つがあります。どれも症状の初期から中期にかけて用いられる薬となっており、アリセプトとレミニールは1日1~2回内服、リパスタッチパッチは1日1回貼り付けます。効果としては、低下した脳の働きを一時的に改善するとされている薬です。

NMDA受容体拮抗薬

薬はメマリー(メマンチン)のみです。メマリーは中期から後期にかけて用いられることが多い薬で、1日1回の内服となります。効果は脳細胞の損傷を防ぐとされています。

どちらもアルツハイマー型認知症の進行を一時的に緩やかにする効果が期待できます。一人ひとり、症状も異なれば処方される薬も異なります。副作用や作用機序なども異なることから、一概にどれが効果的であるとは言えません。主治医と相談しながら服用を進めていくこととなります。

アルツハイマー型認知症の進行を緩やかにする以外にも、本人や家族への負担を軽減するために対症療法が用いられる場合もあります。睡眠障害に対して睡眠薬やイライラ、抑うつ状態に対しての抗うつ剤、精神安定剤などもあることから主治医の指示に従って服用できるようにしていきましょう。

【2022年最新】アデュカヌマブ(製品名:アデュヘルム)が認可される可能性あり

2021年に日本のエーザイ株式会社とアメリカのバイオジェン・インクが共同で開発した「アデュカヌマブ(製品名:アデュヘルム)」がアメリカで条件付きで認可されました。

他の薬は「症候改善薬」といって、一時的に症状を良くする効果が期待されるものでした。しかしアデュカヌマブは他の薬と違い「疾患修飾薬」です。アルツハイマー病の原因であるアミロイドβを減らすことで、症状の進行を抑制する効果が期待されます。

アデュカヌマブは、アメリカでは認可された一方、EUでは承認されませんでした。日本でも2021年12月22日に厚生労働省の諮問機関である薬事・食品衛生審議会第一部会に申請がされましたが、現時点のデータだけでは有効性を判断できないとして承認を見送り、両社に追加データを求めています(2021年12月23日現在)。

参考:プレジデント社「PRESIDENT 2021.9.3号 」/株式会社エーザイ「アデュカヌマブの製造販売承認申請について継続審議 薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会が追加データを求める

薬以外の治療法

薬を使用せずに認知症にアプローチする方法もあります。ゲームや言葉遊びなどを通じて認知機能の改善を目指すリハビリや、日常的な家事に取り組む生活リハビリ、音楽療法などが代表例です。介護施設では、認知症に効果が期待できるレクリエーションを実施しているところもあります。

認知症の治療については以下の記事でも詳しく紹介していますので、参考にしてください。

アルツハイマー型認知症との付き合い方

アルツハイマー型認知症は自身では認識できないことが多くあります。しかし、そんな中でも日常生活においてできないことが増えていくことが不安に感じたり、自尊心を傷つけてしまうことも増えていったりします。そのため、より本人が暮らしやすいようにどう周りが動いていくべきなのか、アルツハイマー型認知症との付き合い方についてご紹介します。

認知症の方への基本的な対応について

アルツハイマー型認知症の方だけでなく、認知症の方全体に言えることとして、やはり自尊心が保たれるように対応することが重要です。また、なぜそのような行動を起こしたのか理解するよう努めることも必要となります。

今までできたことができなくなってしまってもそれを責めるのではなく、できる部分に注目し引き出したり、その方が主婦であったならその人の役割を奪わないようにサポートしたり、一個人として対等に接したりすることが基本的な対応として重要となります。

対応の具体例

物盗られ妄想|一緒に探してあげる

財布を盗られたなどといった物盗られ妄想などの場合には、盗っていないと怒って反論するよりも、本人と一緒に財布を探して発見したら次に見つけやすい場所に置き換えるようにしてみましょう。

食べたのに「食べていない」と言う|食事の内容を工夫

食べたことを忘れてしまい、食後に再度食事をしたがる場合には、延々と食事をさせたりせずに1回の食事の中で季節の食材をなるべく用いたり、食事をゆっくり楽しめる工夫をすると効果的です。

同じものばかり買う|買い物リストを作る

同じものを何度も買ってきてしまう際には、買い物メモを持たせたりリストを可視化できるようにしたりしましょう。多すぎるのであれば本人の見ていないところで処分するようにしてみてください。

本人は忘れたくなくてもすぐに忘れてしまうので、何度も同じ言動を繰り返してしまうでしょう。それに対して家族としてもイライラしてしまうことが多くなってしまうようです。しかし、否定したりその都度怒ったり繰り返すと本人の自尊心も傷つけてしまうことにつながります。まずは否定せずに話をよく聞き、冷静に対応していきましょう。

介護サービスの利用や施設入居も視野に入れる

アルツハイマー型認知症は進行が比較的ゆるやかなため、在宅で介護を続ける方も多いでしょう。しかし夜間に問題行動を起こすなど、片時も目を離せないようになってくると、家族の負担も非常に重くなります。

要介護認定を受けることで、デイサービスや訪問介護などの介護保険サービスを利用可能です。要介護認定の結果が出るまでにはおよそ1カ月程度かかります。限界を迎えてしまう前に、早めに申請しておくと安心でしょう。

要介護認定については、以下の記事をご覧ください。

また介護サービスを活用しても在宅でのケアが難しい場合などは、介護施設への入居も選択肢の1つです。介護施設の多くは認知症の方にも対応しています。「認知症ケア専門士」など認知症に詳しい職員を配置しているところもあり、本人にとって自宅以上に快適に過ごせるケースもあるのです。

介護施設に入居したいと思っても、待機人数が多かったり必要な書類の準備に時間がかかったりしてスムーズに入居できないこともあります。気になる施設があるときは、余裕のあるうちに見学してみましょう。

介護施設の種類について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

周りがアルツハイマーの症状を理解することが大切

アルツハイマー型認知症は、年月をかけて徐々に進行していく誰もがなりうる認知症の1つで症状は多岐にわたり、些細な物忘れから妄想、徘徊まで個人によってさまざまです。症状の度合いによっては、身近な家族が対応しなければならない場合も多くあります。

アルツハイマー型認知症がどのようなものなのか理解し、どう対応していけばいいのか試行錯誤しながら共存していけるように接していくことが大切です。自尊心を傷つけないように適度に見守りながら、安全な環境で安心して暮らしていけるように専門家を交えて考えてみると良いでしょう。

この記事のまとめ

  • アルツハイマー型認知症は最も多いタイプである
  • 症状は一人ひとり異なる
  • 対応するときは否定から入らない

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