訪問入浴介護とは|サービス内容・人員基準・利用方法・料金などを紹介

訪問入浴介護は、専用の浴槽を自宅に持ち込んで入浴の介護をしてくれるサービスです。自宅の環境や心身の状態によって入浴が困難な要介護者にとっては、とても便利で有益なサービスといえます。

この記事では、訪問入浴介護を利用するための条件利用方法料金などをご紹介します。「自宅での入浴が難しくなってきた」という人は、ぜひ参考にしてください。

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平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。

訪問入浴介護とは

訪問入浴介護は、看護職員や介護スタッフが自宅を訪問して入浴の介護をしてくれるサービスです。自宅の浴室ではなく専用の浴槽を持ち込んで入浴するため、安全な入浴環境が整っていない場合も活用できます。デイサービスなどに出向くことなく入浴できるので、移動が困難な人にとっても助かるサービスでしょう。

訪問入浴介護には介護保険が適用されます。そのため、自己負担額の割合も利用料金の1割~3割です。

ただし、訪問入浴介護は利用対象者が決まっています。まずはどのような人が対象となるのかを把握しましょう。

訪問入浴介護の利用対象者

  • 要介護1~5の認定を受けている人
  • 医師から入浴を許可されている人

介護保険の対象となるサービスですので、利用者は「要介護」の認定を受けていることが必要です。また、入浴は体の状態に影響を与える恐れもあります。医師による入浴許可がなければ、訪問入浴介護を利用できません。

また、要支援1、2と判定された人も「介護予防訪問入浴介護」の対象となる場合があります。利用できるのは「自宅に浴室がない」「感染症などの理由でデイサービスで入浴できない」といったケースです。

実際に要支援で介護予防訪問入浴介護を利用している人の理由では、家の設備の不備によるものが半数以上を占めています。

自宅で問題なく入浴できる人は、訪問入浴介護サービスの利用対象外となります。

厚生労働省の指定による人員基準

訪問入浴介護の事業者には、法律に基づいて定められた人員基準があります。規定は次のとおりです。

第四十五条 指定訪問入浴介護の事業を行う者(以下「指定訪問入浴介護事業者」という。)が当該事業を行う事業所(以下「指定訪問入浴介護事業所」という。)ごとに置くべき指定訪問入浴介護の提供に当たる従業者の員数は、次のとおりとする。

一 看護職員又は准看護職員(以下この章において「看護職員」という。) 一以上
二 介護職員 二以上

引用:厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年三月三十一日/厚生省令第三十七号)

つまり、最低でも看護職員1人と介護職員2人の合計3人で入浴の介助にあたります。介護職員だけでなく看護職員も配置されているため、その日の体調によって入浴できるかどうかの判断もできるのです。

なお、要支援の人が利用する「介護予防訪問入浴介護」の場合は、看護職員1人と介護職員1人と決まっています。人員配置も異なることを理解しておきましょう。

訪問入浴介護のメリットと注意点

自宅での入浴が困難な人をサポートするサービスが訪問入浴介護です。しかし、入浴は生きていくうえで必要不可欠ではありません。それでも訪問入浴介護を利用するメリットは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

メリット

体を清潔に保てる

最大のメリットは、介護が必要な人の体を清潔に保てることです。清拭やシャワーでもある程度の効果はありますが、浴槽につかることによってよりきれいにすることができます。皮膚に付着した細菌やウイルスも洗い流し、感染症の予防にもなるのです。

血行が良くなる

温かいお湯につかると、その温度や水圧によって血行が促進されます。血の巡りがよくなると新陳代謝も高まり、体内の老廃物の排出にも効果的です。

リラックスできる

お湯につかることで浮力が働き体が軽く感じられるため、リラックス状態になります。気分転換にもなり、適度にリフレッシュできるでしょう。

家族の負担を軽減できる

介護が必要な人を入浴させるのは、体力的にも時間的にも負担がかかるものです。訪問入浴介護ではプロの介護職員や看護職員が入浴の介助をしてくれるので、お世話する家族の負担が軽減できます。

体調の心配なく入浴できる

訪問入浴介護では看護職員が体調を確認したうえで入浴させてくれます。「持病がある」「体調が変わりやすい」などの不安がある人にとっては、安心して入浴できることは大きなメリットです。

注意点

訪問入浴介護を利用するにあたって、注意が必要な点もいくつかあります。あらかじめ理解したうえで利用を検討しましょう。

本人が入浴を拒否する場合がある

入浴の際は衣服を脱ぎますので、本人が恥ずかしがって入浴を拒否するケースがあります。特に異性のスタッフに介助されることに抵抗を感じる人が多いようです。他にも、認知症などで状況がきちんと理解できず、拒否反応を示す場合もあります。

事業者によっては同性のスタッフを指名できることもありますので、心配なときは事前に相談してみましょう。また、事業者を選ぶときには「本人の性格に合いそうかどうか」という視点も忘れずにチェックしてください。

看護職員は医療行為ができない

訪問時には看護職員も同行しますが、対応できる行為には制限があります。「入浴前後のバイタルチェック」「軟膏の塗布」「湿布の張り替え」「褥瘡のケア」が主な内容です。

いずれも、あくまでも入浴に付随する行為となります。それ以外の「たん吸引」や「インスリン注射」などの医療行為はできません。

必要な医療行為がある場合は、訪問看護などのサービスの利用も検討しましょう。

専用車の駐車スペースが必要

訪問入浴介護では専用の浴槽やホースなどの機材を運ぶ必要があるため、専用車で自宅を訪問します。そのため、近隣に駐車スペースが必要です。

専用車から浴槽までホースを延ばしてお湯を引くケースが多く、ホースが届く範囲に駐車スペースを求められることもあります。

ホースが届かなければ、自宅の水栓からお湯を引くことで対応可能な場合もありますが、事業者によって対応が異なるのが実情です。自宅や周辺の環境を具体的に伝えて判断を仰ぎましょう。

また「専用の浴槽を持ち込む」と聞くと、自宅内のスペースを心配する人もいるかもしれません。実際のスペースに関しては、1畳半~2畳程度あれば可能としている事業者が多数です。

詳細は事業者ごとに異なりますので、念のため契約前に確認しておきましょう。

訪問入浴介護を利用するまでの流れ

メリットや注意点を理解したうえで「訪問入浴介護を利用したい」と決めた場合は、どのような手順が必要なのでしょうか。まずは訪問入浴介護を契約するまでの流れを見ていきましょう。

STEP1. ケアマネジャーに相談

訪問入浴介護に限らず、介護保険が適用されるサービスを利用するときは「ケアプラン」が必要です。そのため、ケアプランに訪問入浴介護を入れてもらうよう、ケアマネジャーに相談しましょう。

要支援の人が介護予防訪問入浴介護を利用したいときは「介護予防ケアプラン」が必要になります。地域包括支援センターで作成してもらえますので、相談してください。

STEP2. サービス提供事業者を決定

ケアマネジャーや地域包括支援センターから、訪問入浴介護を受けられるサービス事業者を紹介してもらいます。

できれば複数の事業者を紹介してもらい、比較しながら検討しましょう。前述したように「同性のスタッフを指定できるか」「介護対象者と合いそうか」といった点も確認しておくと安心です。

STEP3. サービス内容や手続きの説明を受ける

契約前には必ず、サービス内容や料金、必要な手続きなどの説明があります。口頭ではなく書面で確認することが義務付けられていますので、内容をしっかり確認してください。

この時点で疑問がある場合は、納得できるまで担当者に質問しましょう。特に金銭面や利用条件はトラブルになることも多いポイントです。

問題なくスムーズに利用するためにも、あらゆる内容を事前に確認しておくことが重要になります。

STEP4. サービス提供事業者と契約

しっかりと内容の説明を受け、納得できたらいよいよ契約です。契約も口頭ではなく、書面で交わします。

また、契約の前後で実際に自宅の様子を見て、問題なくサービスを提供できる環境か確認されることもあります。下見のタイミングは事業者によってまちまちですので、心配なことがある場合は早めに相談しておくと安心です。

入浴当日の流れ

事業者と契約したら訪問入浴介護の利用がスタートします。入浴にかかる時間準備物入浴の流れについて確認しておきましょう。

所要時間

サービス事業者が自宅に到着してから片づけを終えるまでの時間は、45~60分程度です。入浴前後のケアの内容によっても時間が前後します。

実際に入浴している時間は約10分ほどのことが大半です。残りの時間は事前の準備や健康チェック、着替え、片付けなどにあてられます。

なお訪問入浴介護にかかる料金は、時間ではなく回数で決まります。料金についてはこの後で紹介しますので「訪問入浴介護の料金」の項目を参考にしてください。

準備するもの

入浴後の着替えバスタオルを準備しておきましょう。入浴の機会にシーツも交換したい場合は、一緒に準備しておくとスムーズです。

入浴に必要なシャンプーやボディーソープ、洗面器などは基本的に訪問入浴介護のサービス事業者が用意しています。なかにはタオル類や交換用のシーツまでそろえているところもあるため、実際に何を用意すればいいかは事業者に確認してください。

また、サービスを利用したという確認のために押印が必要になることもあります。念のため印鑑も準備しておきましょう。

入浴の流れ

実際に入浴する流れは次のとおりです。事業者によって異なる場合もありますので、参考としてご覧ください。

STEP1. 入浴前の健康チェック

専用車で介護スタッフ2名と看護職員1名が到着したら、まずは看護職員による健康チェックです。体温・脈拍・血圧などを測定し、入浴が可能か判断します。

体調に異変があれば、入浴できないと判断されることもあります。その場合、代わりとして部分浴清拭など無理のない範囲のサービスに変更するケースが多数です。

また事業者によっては、健康チェックに合わせて体重測定なども実施します。

STEP2. 入浴準備

体調に問題がなければ、入浴するための準備を進めます。

まずは専用の浴槽の搬入です。浴槽の組み立てが済んだら、お湯を沸かします。

お湯は専用車からポンプで入れるパターンと、自宅の浴室などで給湯して使用するパターンが代表的です。事業者によっては、入浴剤や温泉水などを使用することもあります。

STEP3. 浴槽へ移動

要介護者の脱衣を介助し、準備ができたら浴槽への移動です。スタッフが抱えるほか、担架などを使用する場合もあります。

STEP4. 洗顔・洗髪・洗身

サービス事業者が持参したシャンプーやボディーソープなどを使って、体や髪などを洗います。

STEP5. 入浴後の健康チェック

入浴が終わったら、看護職員が再び健康チェックをします。入浴によって体調に異変が生じていないかを確認するためです。

また軟膏の塗布や湿布の張り替えなど、必要に応じてケアをします。

STEP6. 機材の片付け

看護職員が健康チェックをしている間に、介護スタッフは浴槽などの機材を片付けます。入浴で使用したお湯は、自宅の排水溝などを使って排水します。

自宅に持ち込んだ機材をすべて撤収したら、訪問入浴介護は終了です。

訪問入浴介護の料金

訪問入浴介護には介護保険が適用されます。そのため、利用者の自己負担額は原則的に1割です。所得によっては2~3割となる場合もあります。

また、介護保険によるサービスですので、利用料金にも規定があります。基準となる額を次の表にまとめました。

お住まいの地域によって数百円程度の差がありますが、これから訪問入浴介護の利用を考えている人は、ぜひ参考にしてください。

訪問入浴介護の料金表
要介護度 サービス内容 1回あたりの自己負担額
要介護1~5 全身浴 1,256円
部分浴 879円
清拭 879円
要支援1、2 全身浴 849円
部分浴 594円
清拭 594円
※「自己負担額1割」「1単位=10円」で計算
参考:厚生労働省「厚生労働省告示第百一号

訪問入浴介護以外の入浴サービス

ここまで、訪問入浴介護の利用方法や料金について紹介してきました。ただし入浴の介助を受けたい場合、利用できるサービスは訪問入浴介護だけではありません。

「訪問介護」「訪問看護」「通所介護(デイサービス)」「通所リハビリ(デイケア)」でも入浴は可能です。どのサービスを利用するかには、自宅の入浴環境が整っているかどうかが大きく関わっています。

訪問介護、訪問看護

自宅の浴室で入浴できるという人は、訪問介護や訪問看護を検討しましょう。訪問介護と訪問看護では、自宅の浴槽を使った入浴介助が可能です。

訪問入浴介護のように機材を運び入れることなく、入浴ができます。ただし、訪問介護と訪問看護には人数の規定がありません。「介護職員2名・看護職員1名」という人員体制の点では、訪問入浴介護のほうが充実しています。

通所介護(デイサービス)、通所リハビリ(デイケア)

自宅での入浴が難しい場合は、デイサービスやデイケアで入浴介助を受けられます。介護のための施設ですので、安全に入浴できる環境が整っているのが魅力です。

デイサービスとデイケアはどちらも通所型のサービスですので、外出拒否がある人や身体的に外出が難しい人には向いていません。外出が困難な場合は、訪問入浴介護の利用を考えましょう。

訪問入浴介護を利用したい人は、ケアマネジャーに相談を

介護が必要になっても「お風呂に入りたい」と願う人は多いものです。ターミナルケアの一環として「元気な頃にお風呂が好きだったから、ゆっくり入浴させてあげたい」というケースも多々あります。

しかし一方で、家族だけで入浴介助をすることは大きな負担も伴います。特に寝たきりやそれに近い状態になると、体をきれいにしてあげることも難しくなるものです。

訪問入浴介護は、入浴に特化した介護保険サービスとして、介護が必要な人や家族にとって大きな役割を担うでしょう。自宅の環境が整っていない場合でも、自宅でゆっくり入浴できる方法があるということは大きな魅力です。

この記事でも紹介したとおり、訪問入浴介護を利用するには要介護認定を受け、ケアプランを作成することが必要になります。利用を検討している人は、ぜひケアマネジャーに相談してみましょう。

この記事のまとめ

  • 訪問入浴介護は、看護職員と介護職員が浴槽を持ち込んで入浴介助をするサービス
  • 訪問入浴介護の利用には、要介護認定に基づいたケアプランが必要
  • 介護保険適用で、1回の全身浴にかかる料金は1,256円(自己負担1割の場合)