フレイルとは|原因・チェック方法・予防・対策などを紹介

「フレイル」は、身体的機能や認知機能が徐々に低下しつつある状態です。健康な状態から介護が必要な状態へと変化する途中にある段階のことを指します。「フレイル」には回復の可能性があり、適切な治療や予防をすることが大切です。ここでは、自宅でできるフレイルのチェック方法効果的な予防法を紹介します。いつまでも健康で過ごすために、ぜひ参考にしてください。

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平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。

フレイルとは

「フレイル」とは「健康」と「要介護」の中間にある状態のことです。高齢者の多くは急に要介護状態になるのではなく、徐々に身体的機能や認知機能が低下すると考えられています。その過程にある段階を「フレイル」と呼ぶのです。

「フレイル」は「Frailty(虚弱)」を日本語に訳したもので、医療や介護という枠を超えた新たな概念として日本老年医学会が2014年に提唱しました。

「機能が低下し始めると食い止められないのだろうか」と不安に思う人もいるでしょう。「フレイル」は、適切な治療や予防によって改善できます。介護が必要になる前に変化に気づき、対策を講じることが大切です。

フレイルは健康と要介護の中間

フレイルが進む原因

フレイルになる原因は大きく分けて3つになります。

1つ目は身体的要素です。「筋力の低下」「栄養素の不足」「運動器の障害」などが該当します。

2つ目の原因は精神・心理的要素です。「認知症」や「うつ」などの進行によって意欲が低下したり人との交流が減少したりすることも、フレイルを悪化させると考えられます。

3つ目は「独居」や「閉じこもり」などの社会的要素です。孤独になることで精神的にも悪影響があるほか、認知機能の低下や運動機会の減少を招きます。

フレイルサイクル

フレイルの進行には「身体的要素」「精神・心理的要素」「社会的要素」が互いに影響し合うことが深く関係しています。3要素による悪循環が「フレイルサイクル」です。

フレイルサイクルのイメージ図

たとえば、加齢によって筋肉量が減少すると基礎代謝が低下するため、エネルギー消費量も低下します。すると食事の量も減って低栄養状態となり、結果的にさらに筋肉量が減少するのです。

フレイルサイクルに陥るきっかけとしては、転倒・骨折などの身体的負傷や、慢性的な疾患の悪化が多く挙がります。適切な予防や治療をしなければ状態はさらに悪化し、要介護状態になる可能性もあるのです。

フレイルと関係が深い2つの状態

「フレイル」と合わせて「ロコモティブシンドローム」「サルコペニア」という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。「ロコモティブシンドローム」と「サルコペニア」も「フレイル」に含まれる状態です。ただし、それぞれの状態には異なる定義があります。

運動器が衰える「ロコモティブシンドローム」

「ロコモティブシンドローム」は「ロコモ」と呼ばれることもあります。フレイルのなかでも運動器が衰えて移動機能が低下している状態です。

運動器とは骨、筋肉、関節、神経などが連携して体を動かす仕組みを指します。つまり、運動するための仕組みに何らかの衰えが生じ、立ったり歩いたりする機能が弱まっている状態です。

筋力が低下する「サルコペニア」

加齢や疾患などによって筋肉量が減少し、筋力低下が起こることを「サルコペニア」といいます。「ロコモティブシンドローム」が運動器全体の障害を指すのに対し「サルコペニア」は筋肉に特化していることが特徴です。

筋肉も運動器の一部ですので「サルコペニア」は「フレイル」と「ロコモティブシンドローム」の双方に含まれる状態となります。

フレイル・ロコモティブシンドローム・サルコペニアの関係

フレイル・ロコモティブシンドローム・サルコペニアに関して詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
フレイルとサルコペニアとロコモの違いについて教えてください

フレイルの診断方法

フレイルの診断に関しては、統一の基準はまだありません。

しかし主要な方法として「日本版CHS基準(J-CHS基準)」があります。国際的に用いられている「CHS基準」を、厚生労働省の研究に基づいて日本人に妥当な基準値に修正したものです。

J-CHS基準
項目 評価基準
体重減少 6カ月間で2㎏以上の体重減少があった
筋力低下 握力低下(男性:26㎏未満、助成:17㎏未満)
疲労 ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする
歩行速度の低下 通常歩行速度以下(性別・身長問わず毎秒1.0m未満)
身体活動の低下 軽い運動・体操、および定期的な運動・スポーツをしていない
参考:ヘルスプロモーション研究センター「フレイルとは:概念や評価法について

5項目のうち3つ以上に該当する場合をフレイル1~2項目のみ当てはまる場合はプレフレイル(フレイル予備軍)と判定します。ただ握力や歩行速度の測定が必要なため、気軽に判定しづらいことが難点です。

そこで、厚生労働省は新たな基準として「基本チェックリスト」を提示しています。介護が必要となるリスクが高い状態を早期に発見し、必要な予防や対策を取るために考案されたものです。

地域包括支援センターでの介護予防のチェックなどに使用されています。

基本チェックリスト
判断内容 質問項目 回答(いずれかに◯をつけてください)
1 バスや電車で一人で外出していますか? 0.はい 1.いいえ
2 日用品の買い物をしていますか? 0.はい 1.いいえ
3 預貯金の出し入れをしていますか 0.はい 1.いいえ
4 友人の家を訪ねていますか 0.はい 1.いいえ
5 家族や友人の相談にのっていますか 0.はい 1.いいえ
6 階段を手すりや壁をつたわらず に昇っていますか 0.はい 1.いいえ
7 運動 椅子に座った状態から何もつかまらず に立ち上がっていますか 0.はい 1.いいえ
8 15分位続けて歩いていますか 0.はい 1.いいえ
9 この1年間に転んだことがありますか 1.はい 0.いいえ
10 転倒に対する不安は大きいですか 1.はい 0.いいえ
11 栄養 6ヵ月間で2~3kg以上の体重減少がありましたか 1.はい 0.いいえ
12 身長 cm 体重 kg (BMI= )(注) 1.はい 0.いいえ
13 口腔 半年前に比べて固いものが食べにくくなりまし たか 1.はい 0.いいえ
14 お茶や汁物等でむせることがありますか 1.はい 0.いいえ
15 口の渇きが気になりますか 1.はい 0.いいえ
16 閉じこもり 週に1回以上は外出していますか 0.はい 1.いいえ
17 昨年と比べて外出の回数が減っていますか 1.はい 0.いいえ
18 認知症 周りの人から「いつも同じ事を聞く」などの物忘れがあると言われ ますか 1.はい 0.いいえ
19 自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか 0.はい 1.いいえ
20 今日が何月何日かわからない時がありますか 1.はい 0.いいえ
21 うつ (ここ2週間)毎日の生活に充実感がない 1.はい 0.いいえ
22 (ここ2週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった 1.はい 0.いいえ
23 (ここ2週間)以前は楽にできていたことが今ではおっくうに感じら れる 1.はい 0.いいえ
24 (ここ2週間)自分が役に立つ人間だと思えない 1.はい 0.いいえ
25 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする 1.はい 0.いいえ
(注) BMI(=体重 (kg) ÷身長 (m) ÷身長 (m) )が18.5未満の場合に該当とする。
参考:厚生労働省「介護予防のための生活機能評価に関するマニュアル(改訂版)

基本チェックリストの結果が下記のいずれかに該当する人は、介護保険の地域支援事業の対象となります。心身機能が低下していることが想定され、フレイルの状態である可能性が高いのです。

  • 1から20までの20項目のうち、10項目以上に該当する人
  • 6から10までの5項目のうち、3項目以上に該当する人
  • 11と12の2項目にどちらも該当する人
  • 13から15までの3項目のうち、2項目以上に該当する人

自分でできるフレイルチェック

より手軽にフレイルの可能性をチェックできる方法があります。東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢教授が考案した「指輪っかテスト」「イレブンチェック」です。

指輪っかテスト

両手の親指と人差し指で指輪っかを作るようにして、利き足ではない方のふくらはぎの最も太い部分を囲んでみましょう。

ふくらはぎのほうが太く指が届かない、またはちょうど囲める場合は筋肉量が十分あると考えられます。反対に、指とふくらはぎの間にすき間ができる場合は、筋肉量が減少している可能性が高いのです。

イレブンチェック

質問 11項目 回答欄
栄養 1 ほぼ同じ年齢の同性と比較して健康に気を付けた食事を心がけていますか はい いいえ
2 野菜料理と主菜(お肉またはお魚)を両方とも毎日2回以上は食べていますか はい いいえ
3 「さきいか」「たくあん」くらいの固さの食品を普通に噛み切れますか はい いいえ
4 お茶や汁物でむせることがありますか ※ いいえ はい
運動 5 1回30分以上の汗をかく運動を週2回以上、1年以上実施していますか はい いいえ
6 日常生活において歩行または同等の身体活動を1日1時間以上実施していますか はい いいえ
7 ほぼ同じ年齢の同性と比較して歩く速度が早いと思いますか はい いいえ
社会参加 8 昨年と比べて外出の回数が減っていますか ※ いいえ はい
9 1日1回以上は、誰かと一緒に食事をしますか はい いいえ
10 自分が活気にあふれていると思いますか はい いいえ
11 何よりもまず、物忘れが気になりますか ※ いいえ はい
※4・8・11の項目は「はい」と「いいえ」が他の項目と反対になっていますので、ご注意ください。
参考:東京大学 高齢社会総合研究機構 飯島研究室

上記のチェックリストをもとに、質問項目の1、2と3~11の2つのパートに分類して判定します。

1、2の項目でどちらも「はい」と答えた人は、しっかりと食習慣を意識している人です。「いいえ」があった人は栄養が不十分な可能性があるため、もう少し食事に気を配るようにしましょう。

3~11の9項目中、青色の回答が6個以上であれば筋肉量を維持できている可能性が濃厚です。反対に0~5個の場合は、筋力の低下や健康面への影響が懸念されます。

「指輪っかテスト」と「イレブンチェック」はあくまでも簡易的なチェックですが、フレイルの兆候に早めに気づくことが肝心です。「もしかしてフレイルかもしれない」と感じた人は、ぜひ積極的に予防に取り組みましょう。

フレイルのチェック方法に関して詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
フレイルを自宅でチェックする方法とは?

フレイルは予防が大切

フレイルは介護が必要になる手前の段階です。要介護状態に進んでしまわないよう、できるだけ早い段階から予防しましょう。

予防にあたっては、フレイルの原因になる「身体的要素」「精神・心理的要素」「社会的要素」を意識することが重要です。先に紹介したチェックなどをもとに、自分に何が不足しているのかを知って重点的に強化するようにしましょう。

ここからは、フレイル予防に効果的な7つのポイントを紹介します。

持病のコントロール

持病の悪化は、フレイルが深刻化する大きなきっかけになります。高齢になると多くの人が糖尿病・高血圧といった生活習慣病や心臓病など、何らかの疾患を患っているものです。

疾患が悪化すると「それまでできていたことができなくなる」「体を動かす機会が減ってしまう」など日常生活に悪影響をもたらします。結果的に身体の機能が低下したり、認知機能が衰えたりする可能性があるのです。

日頃から体調には気を配り、持病には適切な治療を受けるようにしましょう。また治療が難しい場合には、現状よりも悪化させないために医師からアドバイスを受けましょう。

感染症予防

持病の有無に関わらず気を付けたいのが、インフルエンザや肺炎などの感染症の予防です。フレイル状態の人は免疫が低下していることが多く、通常以上に感染症にかかりやすくなっています。

さらに感染症をきっかけに療養生活や入院が続くと、心身機能が著しく低下する場合もあるのです。なかには、そのまま寝たきりの生活になるというケースもあります。

本人だけではなく家族も含めて「予防接種をする」「こまめに手洗い、うがいをする」といった対策を徹底しましょう。

運動療法

筋力を維持して体を活発に保つためには、やはり運動が必要不可欠です。ただし、運動といっても負荷の大きいものを無理にする必要はありません。

毎日しっかり歩いたり、階段の昇り降りをしたりするだけでも、筋肉は活性化されます。一時的に激しい運動をするのではなく、継続して取り組むことが重要です。

もちろん、体の状態は一人ひとり異なります。不用意に体を動かしてしまうと思わぬケガを招く恐れもあるため、注意が必要です。「サルコペニア」や「ロコモティブシンドローム」が心配な人は、運動前に医師に相談しましょう。

栄養療法

フレイルサイクルの項目でも触れたように、低栄養は筋力低下を招く大きな要因です。毎日の食事を通して必要な栄養素をしっかり取ることで、筋肉や骨を強くすることができます。

食事は「主食」「主菜」「副菜」「汁物」と、バランスの取れた献立を心がけましょう。丼ものや麺類などの一品料理ばかりでは、どうしても栄養が偏ってしまいます。

筋肉のもとになる魚、肉、卵、大豆製品に加え、骨を強くする牛乳や乳製品も積極的に食べると効果的です。

口腔・嚥下機能のケア

食べることに関連して「口腔機能」「嚥下機能」を維持することも重要です。「歯が減ってしまってうまく噛めない」「飲み込みづらい」という状態を放置すると、食べ物を正しく噛んで飲み込めなくなるリスクがあります。

場合によっては誤嚥性肺炎を引き起こしたり、食事がおっくうになって低栄養になったりする可能性もあるのです。

食事のときはよく噛むことを意識し、何か異変を感じたら早めに受診しましょう。適切なケアで、口腔・嚥下機能を維持することが大切です。

社会とのつながりを持つ

最後に「社会的要素」として、誰かとつながる機会を積極的に持ちましょう。高齢になると独居や夫婦二人暮らしなど、日常的に関わる相手が少なくなりがちです。

人との関わりが減ると、精神的に孤独になり身体面にも悪影響をもたらします。うつが認知症を悪化させるという研究もあり、認知症予防の観点からも社会的つながりを持つことは重要です。

最近では地域が主体となって、趣味サークルやボランティア、お茶会などシニア向けの交流の場を設けているケースがあります。集まりに参加することでコミュニケーションが取れるうえ、地域に知り合いが増えるといざというときに見守ってもらえるメリットもあるのです。

興味のあることや楽しいと思えることをぜひ見つけて、人と一緒にイキイキと前向きに過ごせる時間を持ちましょう。

フレイルの予防法に関してもっと詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
フレイルの予防法を教えてください! 運動や食事、体操など

フレイルを知って積極的に介護予防を

フレイルは介護が必要になる一歩手前の段階ですが、予防や治療をすることで健康な状態に戻る可能性も大いにあります。反対に、何も対策をしなければ心身ともに機能の低下が進み、要介護状態になるリスクも高いのです。

ここで紹介したフレイル傾向のチェックは、自身や家族でも手軽にできます。ぜひこまめにチェックしてみてください。要介護状態にならないためには、加齢による変化に早めに気づきしっかりと予防することが重要です。

また「フレイル健診」もあります。不安な方はぜひ受診してください。フレイル健診に関して詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
フレイル健診について、概要や受け方などを教えてください

国の介護保険制度も、介護予防をより一層充実化させる方針で進んでいます。そのため自治体や地域包括支援センターを中心に、要支援・要介護の手前の人を対象とした取り組みも増加しているのです。

「対策したいけど自分ではどうしたらいいか分からない」という人は、役所や地域包括支援センターに相談してみるとアドバイスを受けられるでしょう。

いつまでも心身ともに元気で過ごせるよう、日ごろから早期発見、早期予防に努めましょう。

この記事のまとめ

  • フレイルは健康な状態と要介護状態の中間で、心身機能が低下しつつある状態
  • フレイルの原因は「身体的要素」「精神・心理的要素」「社会的要素」の3つ
  • 持病の治療や運動療法・栄養療法などの予防によって、フレイルは改善できる