【新型コロナウイルスだけじゃない】介護施設の見学で気をつけたい感染症対策とは|厚労省のマニュアルをもとに施設側の対策も紹介
新型コロナウイルスの感染拡大によって、介護施設・老人ホームでも感染症対策についてより敏感になりました。見学にいく入居者ご本人、ご家族も同じ気持ちだと想像します。
この記事では依然、油断はできない状態が続くコロナ禍において施設見学をする際に気をつけるべきことを紹介します。また介護施設における感染症対策について、厚生労働省のマニュアルに記載されている内容をもとに詳しく解説していきます。
大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。
老人ホーム・介護施設の感染予防策を知って、安心して見学をする
2020年ごろから猛威を奮い続ける新型コロナウイルス。コロナ禍において、老人ホーム・介護施設の見学を控えている方も少なくないと思います。
しかし介護が必要になり、自宅での介護ができない状態である場合は急いで老人ホーム・介護施設に入居しないといけない方もいます。
介護施設・老人ホームが感染リスクを下げるために工夫していることを知ることで、より安心して前向きに見学の申し込みができると思います。また見学者が意識すべきことを知っておくと、施設に迷惑をかけずに訪問することが可能になります。
そこで新型コロナウイルス禍はもちろん、今後の施設見学において感染症リスクを下げつつ老人ホーム・介護施設の見学をする際に心がけたいことを紹介します。また入居希望者が見学時に意識しておくべきことも解説します。
見学者がコロナ禍における老人ホーム・介護施設の訪問で気をつけるべきこと
はじめに、施設内での感染拡大を防ぐため、入居希望者が見学の際に意識すべきことを紹介します。
当日は必ず検温をして37.0℃以上ある場合はキャンセルをする
事前予約で決めた見学当日の朝に必ず検温をして、37.0℃以上ある場合、また熱がなくても、喉の痛み、せき、鼻水など体調が悪い場合は見学をキャンセルしましょう。感染リスクを減らすためであり、当日のキャンセルであっても致し方ないといえます。
マスクや消毒スプレーなどを持参する
当日に見学に行く際には必ずマスクを着用してください。また公共交通機関をつかって施設見学に行く場合は、移動中に電車のつり革、バスの手すりなどに触れることもありますので、消毒用のスプレーを持参することをオススメします。
もちろん施設内にも用意してありますが、スプレーやマスクを持参することで施設側の安心にもつながります。
見学は1~2名を意識する
感染リスクを最小限にするため、見学は最少人数を意識しましょう。本人が同行する場合は本人とそのご家族の2名、ご家族だけの場合は1名で訪問することで感染リスクを抑えられます。また小さなお子様はできるだけ親族や友人に任せることを意識してください。
老人ホーム・介護施設での基本的な感染防止策
続いて施設側が心がけている新型コロナウイルス対策について紹介します。
コロナ禍以前から厚生労働省による「感染対策マニュアル」はありました。「ウイルスが発生してしまった場合、施設の外に拡大させない」という方針の感染対策マニュアルです。
こちらのマニュアルをもとに施設側が気をつけていることを紹介します。
出典:厚生労働省「高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版」病原体(感染源)を持ち込まない・持ち出さない・拡げない
施設内で感染者を出さないために「ウイルスを施設内に持ち込まない」「ウイルスを施設外に持ち出さない」「施設外や家族などにウイルスを拡げない」という原則を守り行動する必要があります。
老人ホーム・介護施設にはさまざまな方が出入りします。施設職員、入居者、入居者の家族、業務委託先の業者、見学者、その他関係先の業者など、頻繁に接触があります。
「持ち込まない」を徹底するために検温や手指への除菌スプレーはもちろん、施設によっては靴底になどにもスプレーをすることがあります。
「持ち出さない」ために、常に施設では職員、入居者の体調管理に気を配っており、不安がある方は外出を禁じています。
「広げない」ための対策として、職員は利用者一人ひとりと接触した後に、必ず手指衛生をおこなっています。また手すりなど多くの人が触れる場所を、常に衛生的にしておくよう心がけています。
出典:厚生労働省「高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版」介護施設で定められている感染症予防策
各感染症にはそれぞれ定められている予防策があり、それらは感染経路により異なります。
接触感染の予防方法は直接触れないことです。病原菌が存在する箇所に対して触れることにより感染します。
特に排泄介助の際は手袋を着用し、マスクをしたうえで該当箇所を直接触れないようにします。使った手袋やマスクは丁寧に処理してゴミ箱に捨てることが求められています。
また空気感染を避けるために、感染者が出てしまった場合は隔離状態にするのも大切です。
出典:厚生労働省「高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版」新型コロナウイルス感染拡大後に発表された感染対策の手引き・施設向けのマニュアル
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い介護施設向けのマニュアルが新たに発行されました。こちらでは特に感染成立の3つの要因と感染対策のためにの3つの柱を紹介します。
感染が成立する3つの要因
新型コロナウイルスは、3つの要因が成立した結果、感染します。3つの要因とは「病原体」「感染経路」「感受性宿主」です。
「病原体」は主に「血液を含むすべての体液」「正常でない状態の皮膚」「口などの粘膜面」の3つのうちのいずれかに触れることで感染可能性が高まります。
もし触れてしまった場合には手指衛生を徹底的におこない、病原体を洗い流すよう明記されています。
「感染経路」の考え方としては従来の「病原体を持ち出さない、広げない、持ち込まない」という原則を守ることが重要です。
「感受性宿主」とは感染症になりやすい人のことです。抵抗力の高さによって、ウイルスに接触した場合に感染するかが決まります。抵抗力を高めるためには日常的に栄養のある食事を取り、睡眠を十分に取るなど体調を整えることが重要です。
感染対策の3つの柱
これらの3つの要因を排除し、負けない身体をつくることが感染対策となります。そこで介護施設・老人ホームでは「感染源の排除」「感染経路の遮断」「宿主(人間)の抵抗力の向上」の3つの柱を掲げています。
「感染源の排除」では「血液などの体液」「粘膜面」「正常でない皮膚」にふれる際には手袋を着用し、手袋を外した後は必ず手指を洗浄することが記載されています。
「感染経路の遮断」では大きく「接触感染」「飛沫感染」「空気感染」の3経路について記載されており、先述した「持ち込まない・持ち出さない・拡げない」の3つに関してあらためて明記されています。ここでもマスクの着用、うがい・手洗いの方法からエプロンのたたみ方に至るまで細かな指示が記載されています。
「宿主(人間)の抵抗力の向上」では利用者・介護職員の健康管理方法が記載されています。常に本人と家族の健康状態を確認し、少しでも体調が悪い時は医師に報告することが明記されている部分です。
出典:厚生労働省「介護職員のための感染対策マニュル」介護職員のコロナ対策を一日の流れで紹介
「介護職員のための感染対策マニュアル」に沿った介護職員の1日を紹介します。
出勤
通勤時はマスクを装着のうえ、できるだけ人との距離をとり接触を極力減らすことを意識しています。出勤時の服装と仕事用の服装を変更し、手洗いをしてから仕事を始めます。また、出勤前に検温を行い、体調が良好であることを確認します。
ケアの準備
利用者のケアや処置をする前、指先や手首などをハンドソープでしっかりと洗浄します。場合によってはアルコール消毒でウイルスを除去します。
感染源になるものやなる危険性が高いものに触れる際、手袋などの個人感染防具を着用して感染を防ぎます。
食事介助
食事介助をおこなう前に必ず手指衛生をします。またむせやすい方が感染していた場合、むせた飛沫で感染する恐れがあるため、あらかじめパーティションの設置やフェイスタオルなどを用意し、むせた際に口元を拭くようにします。
介護職員は上体を後ろにそらす、飛沫が飛ばない方向に向くなどして直接飛沫を浴びないように気をつけています。ケアを行う際は、マスク、エプロンに加えてゴーグルやフェースガードを装着する施設もあります。
口腔ケア
うがいをする際はむせやすいため飛沫やうがいの水がかからないように気をつけます。顔や口周りを拭き取る際には必ず手袋を装着。拭き取ったティッシュなどは唾液がついているため手袋のまま他のものに触れないよう処分します。
清拭・入浴介助
入浴前に利用者の健康状態をチェックします。体調不良の場合は清拭やケアをしないこと、入浴の順番を最後にするなどして配慮をしています。
「正常状態の皮膚などから浸透液が出ている」など感染しやすいと医師がみなした場合、換気や消毒をより徹底します。
レクリエーション・機能訓練
レクリエーションや機能訓練は参加者同士の距離が近づきすぎないように配慮されています。また対面にならないよう、椅子などを配置するなど感染防止の工夫をします。
排泄介助
排泄に関わるオムツ交換やポータブルトイレなどの処理をする場合、手袋、エプロン、ガウンなどを着用します。排泄物に直接触れることを極力避けたうえで、処理した後は丁寧に手指の衛生をします。
洗濯
濃厚接触者が使用した衣服やリネンに関して熱水洗濯する施設もあります。10分間80度のお湯で処理し、洗濯後乾燥させるか亜塩素酸ナトリウム液を浸透させてから再度洗濯・乾燥します。
環境整備
環境整備の前後には必ず手洗いをして濃厚感染者や濃厚接触者が触れた手すりや施設の物品などを消毒液で拭きます。
ただし消毒液の種類によっては吸引すると人体に有害なものがあります。消毒液の霧吹きを使用すると周りに散布されるので、使用する際は注意します。
帰宅
帰宅する前にユニフォームから着替え、ユニフォームを他のカバンの持ち物と隔離するために袋などに詰めて持ち帰ってください。着替えた後、手指消毒をしてから帰宅してください。仕事が終わった後に3密を極力避けることで、ご自身が感染源となる可能性を下げることができます。
出典:厚生労働省「介護職員のための感染対策マニュアル」施設内で新型コロナウイルスの感染者が現れた際のマニュアル
施設内に新型コロナウイルス感染者が現れた際には以下のとおりに対応します。
感染が疑われる症状が見つかった・感染者が発生した場合
感染が疑われる症状が見つかった場合、感染している可能性があることを施設の所長、主治医、家族などに報告し、職員にも情報を共有します。その後、居室や共有スペースなどの消毒と清掃をおこない病原体の除去をします。
また保健所の指示に従って行動します。疫学調査に対して協力し、利用者の情報や利用者と接触した面会者の情報を共有します。
感染者が職員や利用者の場合、原則的に入院することが必要です。
濃厚接触者は原則的に自宅待機となり、保健所の指示で健康診断をおこないます。使った部屋は十分換気したうえでマスクや手袋を装着して通常のケアを実施します。有症状者は共有スペースやリハビリテーションなどを極力使用しないようにな配慮が必要です。
出典:厚生労働省「介護職員のための感染対策マニュアル」新型コロナウイルスが落ち着いた後の新たなスタンダードに
新型コロナウイルスに関しては2021年12月現在、一時期よりは感染者数が減り、落ち着いている状態にあります。しかし新たな変異株が登場するなど、予断を許さない状況が続いています。
コロナ禍を経て、世間的にも以前より感染症に対する予防意識が高まることが予想されます。今回、ご紹介したマニュアルの一部は新型コロナウイルスに関する指示でしたが、入居希望の方は、新型コロナウイルスが落ち着いた後も、感染対策を意識しながら見学をするように気をつけましょう。
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この記事のまとめ
- 新型コロナウイルス拡大前から介護施設向けの感染症マニュアルはあった
- 厚生労働省は新型コロナウイルスの感染拡大を受けてマニュアルを刷新した
- 新型コロナウイルスが落ち着いたあとも感染対策を意識して見学をすることが重要
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