地域密着型通所介護とは|通所介護との違いや使える単位数、人員基準など

加齢によって心身が衰えると、不自由さや孤独感から家にこもりがちになることがあります。そんな方の活動を促しつつ、日常生活のサポートをするのが通所介護です。利用者が事業所まで通い、施設内で入浴、食事、レクリエーション、リハビリなどのサービスを受けます。日帰りで利用するサービスです。

通所介護のなかでも18名以下の小規模の利用者で運営しているサービスを「地域密着型通所介護」といいます。今回はそんな地域密着型通所介護についてご紹介。通所介護との違い、費用、サービスの内容をみていきましょう。

地域密着型通所介護とは|通所介護との違いや使える単位数、人員基準など
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

地域密着型通所介護とは

利用者が事業所に通って受ける介護サービスを「通所介護(デイサービス)」といいます。通所介護のなかでも利用者の定員が18人以下の小規模事業所がおこなうサービスが「地域密着型通所介護」です。

通所介護とは? 訪問介護・ショートステイとの違い

通所介護は利用者が事業所に通うことで受けられるサービスです。多くの事業所では、送迎車で送り迎えをしてくれます。基本的には日帰りで利用し、施設内では食事や入浴の介助レクリエーションリハビリといったサービスが提供されます。

以下の記事では通所介護について詳しくご紹介していますので、気になる方は参考にしてみてください。

同じ介護保険サービスでも、訪問介護はホームヘルパーが利用者の自宅を訪れるものです。自宅内で食事・入浴といった介助、また掃除・洗濯をはじめとする家事をしてくれます。またショートステイは数日~1カ月ほどの期間、事業所に宿泊してサービスを受けるものです。

通所介護と訪問介護とでは「利用者が自宅から移動するか否か」の点で違いがあります。また、ショートステイとは「日帰りか宿泊か」の点で異なります。

以下の記事では訪問介護とショートステイについて詳しく紹介していますので「これから介護保険サービスを利用する」という方は見比べてみてください。

地域密着型通所介護の利用条件

地域密着型通所介護を利用するには次の3つの条件を満たしている必要があります。

  • 事業所と同一の市区町村に住民票があること
  • 原則65歳以上であること
  • 要介護認定を受けていること

地域密着型通所介護は通常の通所介護と違い、事業所と同じ市区町村に居住している人だけが利用できるのが大きな特徴です。地域と連携を取りながら介護事業に取り組めるような仕組みとなっています。しかし、状況によっては市区町村の同意を得て、他の地域の人が利用できる場合もあるようです。

他にも、原則65歳以上で要介護認定を受けている人が対象ではありますが、特定疾病により要介護認定を受けている場合は40~64歳の人でも利用可能です。ただし、要介護1以上の認定を受けた人のみが利用可能であり、要支援の人は利用できません。

地域密着型通所介護のサービス

地域密着型通所介護では食事や入浴、排せつ介助などの日常生活支援や体温・血圧の測定といった健康チェック生活機能訓練サービスの提供やレクリエーション活動をしています。具体的にどのような内容があるのか、見ていきましょう。

なお、利用者は前日までに着替えや歯ブラシ、予備のオムツなどの準備が必要になります。一人暮らしの利用者など、自分で用意するのが難しい場合には、訪問介護サービスの際にホームヘルパーに準備を依頼することも可能です。

食事

地域密着型通所介護では食事やおやつの提供サービスがあります。高齢になると食事量だけでなく、回数そのものが減ってしまう人も少なくありません。また、一人暮らしや食事の際にサポートが必要な人は、どうしても普段の食事に偏りが出がちです。事業所を利用するときに栄養バランスの整った食事をすることで、日々の生活に良い変化を与えられます。

事業所で他の利用者たちと会話を楽しみながら食事をすると、自然と食事量が増えたり、食べることを楽しめたりします。すると、普段の食事も積極的に摂るようになる場合が多いのです。そのため、食事を通しての健康管理や服薬のサポートに積極的に取り組む事業所も多くあります。

機能訓練

「お風呂は一人で入りたい」「大好きな手芸を続けたい」といった利用者本人の希望を叶えるため、地域密着型通所介護では機能訓練サービスを提供します。具体的な生活行為やそのための機能の維持にかかわる行為などを目標にし、実践的な訓練を反復して機能の向上や維持を図るのです。

機能訓練を繰り返して自分の希望が現実味を帯びてくると、利用者は喜びを覚えて、さらに積極的に機能訓練に励むようになります。希望が叶ったり、好きなことが続けられたりすると、人は精神的にも肉体的にも若返る傾向にあります。そのため、利用者本人の希望をしっかりと聞き取ってから機能訓練を始める事業所が多いです。

リハビリ

地域密着型通所介護では車椅子生活の利用者が歩行可能になるために足腰を鍛えたり、腕が上がらない利用者へ関節の可動域を広げるリハビリを提案したりと、個々の利用者の状況や本人から聞き取りをした結果に合わせてリハビリメニューを作成します。メニュー内容に自分の希望が含まれていることで意欲的に取り組む利用者も少なくありません。

他にも、事業所で催される体操やレクリエーション、近隣への散歩などもリハビリや機能訓練の一端を担っており、利用者が気分転換を図るとともに無理なく身体機能や生活機能の改善ができる環境が整っています。

地域密着型通所介護と通常の通所介護の違い

日帰りでさまざまなサービスを利用できる通所介護は、家族以外の人と交流が持てるため利用者にとって社会とのつながりを確認できる場です。また、普段介護をしている家族の精神的・肉体的負担の軽減や気分転換の時間を確保できる仕組みといえます。

2016年に細かく区分されるまでは、地域密着型通所介護と通常の通所介護は一つの枠とされていました。2種類に分けることによってそれぞれにどんな役割の違いが生まれたのか、地域密着型通所介護の特徴について、定員数や地域、費用面を見ていきます。

定員数

利用者定員が18人以下という小規模な事業所である地域密着型通所介護は、その定員の少なさを活かして利用者一人ひとりにより目が届きやすく手厚いサービスが提供可能です。利用定員が少ないことで個別対応がしやすく、スタッフも余裕を持って行き届いた対応ができます。

利用定員が少なければ広いスペースは必要ありません。中には民家を改装した事業所なども存在します。いかにも施設然とした事業所よりもアットホームな雰囲気で、利用者も馴染みやすかったり、スタッフとの距離の近さを感じられたりして安心感や満足を得られるケースもあります。

また、利用者定員が少ないため、スタッフの人数も多くありません。限られた人数で事業所を運営しているため、自然とスタッフ同士のコミュニケーションが活発になります。その結果、利用者一人ひとりの状況やニーズをスタッフ全員が把握しやすいです。さらに、スタッフそれぞれの意見やアイデアがピックアップされやすくなり事業所の運営にもいい影響を与えやすい環境といえます。

地域

通常の通所介護は、利用者の居住地域に関係なくサービスを提供しています。事業所の運営自体に利用者の居住地域は直接関係ないからです。しかし、それだと各自治体で整備が必要な介護事業所はどのくらいあるのかといった実態の把握ができないという問題が発生します。

そこで、介護事業所と同一の地域に住民票のある人限定で利用できる地域密着型通所介護という枠が生まれたのです。管轄も都道府県から市区町村へ細かく分けることで、その地域の実情に合わせた介護事業所の整備が可能になりました。

その結果、地域の実態を把握しやすくなるだけでなく、利用者にとっても住み慣れた地域で介護が受けられるという安心感が得られるようになったのです。ただし、例外的に市区町村の同意を得られれば他の地域の人も利用可能な介護事業所もあります。

地域密着型サービスは10種類

地域密着型のサービスは通所介護だけではありません。そもそも「地域密着型サービス」とは事業所のある地域に居住する要介護認定を受けた人に限定定期に提供される介護サービス体系を指します。

地域密着型サービスは、地域密着型通所介護を含め以下の10種類のサービスがあります。

  • 地域密着型通所介護
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  • 夜間対応型訪問介護
  • 療養通所介護
  • 認知症対応型通所介護
  • 小規模多機能型居宅介護
  • 認知症対応型共同生活介護

通所介護以外の地域密着型サービスについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にご覧ください。

費用

通所介護は1回利用するごとに費用がかかます。その点は通常の通所介護と地域密着型通所介護も変わりありません。

しかし、金額は少し異なります。要介護1の人が1単位10円で1割負担として利用した例で見てみると、通常の通所介護を3~4時間未満利用すると368円、6~7時間未満利用すると581円かかるのに対し、地域密着型通所介護を3~4時間未満利用すると415円、6~7時間未満利用すると676円かかり、地域密着型通所介護の方が若干高いです。

費用の比較例
通所介護 地域密着型通所介護
3時間以上~4時間未満 368円 415円
6時間以上~7時間未満 581円 676円
※「自己負担額1割」「1単位=10円」で計算
参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造(令和3年4月改定)

通所サービスについては以下の記事をご覧ください。

地域密着型通所介護の人員基準

地域密着型通所介護には人員基準が設けられています。介護福祉士や介護支援専門員などの資格を持った生活相談員や、理学療法士・作業療法士などの資格を持つ機能訓練指導員、看護師や准看護師の資格を持つ看護職員の他に介護職員と管理者がそれぞれ1名以上必要です。介護職員と管理者には必要な資格は特にありません。

地域密着型通所介護は小規模な事業所なため人員基準も多くなく、業務に支障がなければ無理のない範囲で他の職務と兼務している場合もあります。

地域密着型通所介護の人員基準
生活相談員
  1. サービス提供時間に応じて専従で1名以上(常勤換算方式)
    (生活相談員の勤務時間数としてサービス担当者会議、地域ケア会議等も含められる)
看護職員
  1. 単位ごとに専従で1名以上
    (通所介護の提供時間帯を通じて専従する必要はなく、訪問看護ステーションなどとの連携も可)
介護職員
  1. 利用者数が15人までは1名以上、15人以上の場合は利用者数が1名増すごとに0.2を加えた数以上
  2. 単位ごとに常時1名配置されること
  3. 「1」の数および「2」の条件を満たす場合は、当該事業所の他の単位における介護職員として従事できる
機能訓練指導員 1名以上
生活相談員または介護職員のうち1名以上は常勤
※定員10名以下の地域密着型通所介護事業所の場合は看護職員・介護職員のいずれか1名の配置で可(常勤換算方式)
参考:厚生労働省「通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護

地域密着型通所介護の費用

地域密着型通所介護にかかる費用は、要介護度によって金額が設定されています。利用者負担は原則1割ですが、一定以上の所得がある場合は2割または3割負担となるので注意が必要です。それ以外にも入浴や機能訓練をすると費用が加算されていきます。

事業所によっては食事代やおやつ代、オムツ代や送迎料金を設定しているところもあります。料金体系もそれぞれ異なるので、利用前に必ず確認しましょう。

地域密着型通所介護の費用
利用時間 要介護度 自己負担額(1割負担)
3時間以上~4時間未満 要介護1 415円
要介護2 476円
要介護3 538円
要介護4 598円
要介護5 661円
4時間以上~5時間未満 要介護1 435円
要介護2 499円
要介護3 564円
要介護4 627円
要介護5 693円
5時間以上~6時間未満 要介護1 655円
要介護2 773円
要介護3 893円
要介護4 1,010円
要介護5 1,130円
6時間以上~7時間未満 要介護1 676円
要介護2 798円
要介護3 922円
要介護4 1,045円
要介護5 1,168円
7時間以上~8時間未満 要介護1 750円
要介護2 887円
要介護3 1,028円
要介護4 1,168円
要介護5 1,308円
8時間以上~9時間未満 要介護1 780円
要介護2 922円
要介護3 1,068円
要介護4 1,216円
要介護5 1,360円
※「自己負担額1割」「1単位=10円」で計算
参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造(R3.1.18)

地域密着型通所介護は住み慣れた土地で生活できる

ここまで通所介護との違いを見ながら地域密着型通所介護についてご紹介しました。地域密着型通所介護を含む地域密着型サービスは、国が推進する地域包括ケアサービスです。浸透すれば利用者へきめ細かいケアができると期待されていました。しかし、当初の期待通りに浸透しているとはいい難い状況です。

提供する側の問題点としては定員が少なく、低い介護報酬で採算が取れないといった点や、サービス内容の対応範囲が広いので網羅できる人材確保が難しいといった点が挙がっています。利用定員が少ないとはいえ、小規模事業所となると少ない人数で運営していかなくてはなりません。それはスタッフ一人ひとりの負担が増えることを意味します。

負担が増えることで人材が不足し、人材不足がサービスの低下を招き、サービス低下が利用者を集められないという悪循環に陥ってしまうのです。事態を重く見た国は要件緩和などを検討しており、解決を図っています。

要介護認定を受けても、これまで住み慣れた地域で生活を送れる地域密着型通所介護は高齢化社会が進む状況で大きな期待が寄せられているサービスです。より良い制度となるために課題を一つひとつクリアしていき、老後も安心して暮らせる社会を作っていく必要があります。

この記事のまとめ

  • 地域密着型通所介護とは利用者に寄り添ったサービスが可能
  • 地域とより連携した介護支援を目的としている
  • 人材の確保など課題もある

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