【全10種類】地域密着型サービスとは? サービス創設の背景、特徴と課題、住所地特例との関係について解説!
介護保険で利用できるサービスの中には、地域密着型サービスと呼ばれる対象者を地域住民に限定したサービスが存在します。地域密着型サービスにはどのような種類があるのか、なぜこのようなサービスが生まれたのか解説します。
理学療法士。佛教大学大学院社会福祉学修士課程修了。専門は生活期リハビリテーション。病院・デイサービス勤務後2014年合同会社松本リハビリ研究所設立。全国の老人ホーム、デイサービス、介護施設でリハビリ介護のアドバイザー、生活リハビリセミナー講師、雑誌・書籍の執筆など活動中『転倒予防のすべてがわかる本 』(講談社)など著書多数。
YouTubeチャンネル「がんばらないリハビリ介護」/オンラインサロン「松リハLAB」
地域密着型サービスとは?
地域密着型サービスとは、介護保険制度において利用対象者をその地域に住んでいる高齢者に限定しているサービスのことです。高齢者が介護が必要になっても住み慣れた地域で最後まで自分らしく暮らせるように、2006年の介護保険法改正で誕生しました。
地域密着型サービスの対象者
地域密着型サービスを利用できるのは、事業所所在地の住民票を持っている方(同じ市区町村に住んでいる方)のみで、他の市区町村に住んでいる方は利用できません。
例えば、A市にお住まいの方がグループホームへの入居を検討する場合、入居できるのは同じA市内の施設のみで、B市やC市にある施設に入居することはできません。
また、仮に住民票を移したとしても、すぐに地域密着型サービスを利用できるとは限りません。市区町村によって期間は異なりますが、通常3カ月〜1年程度はその市区町村に住んでいる必要があります。
隣接する市区町村同士が協定を結び、利用を認めているケースもあります。ただし、対象者や対象サービスに細かな条件があるため、事前に確認が必要です。
住所地特例と地域密着型サービス
介護保険制度は市区町村単位で運営されており、住民票のある市区町村が保険者となるのが原則です。しかし、A市の住民がB市にある老人ホームに入居すると、それまで保険料を納めていたA市ではなく、施設所在地のB市が施設サービスの提供にかかる費用を肩代わりすることになってしまいます。これでは施設の多い市区町村に負担が偏ってしまうため、施設入居のために他の市区町村(B市)に転入しても、もともと住民票のあった市区町村(A市)が引き続き保険者となる特例が設けられています(住所地特例)。
住所地特例の対象となる施設は次のとおりです。
- 特別養護老人ホーム*
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- 有料老人ホーム*(サービス付き高齢者向け住宅を含む)
- 軽費老人ホーム*
- 養護老人ホーム*
また、住所地特例者は入居先(B市)の地域密着型サービスの一部を利用することが認められています。
- 認知症対応型通所介護
- 地域密着型通所介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 夜間対応型訪問介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 看護小規模多機能型居宅介護
住所地特例者となるには、入居先に住民票を異動させる必要があります。A市からB市の対象施設に入居しても、住民票がA市のままではB市の地域密着型サービスは利用できません。老人ホームに入居した場合は、住民票異動の手続きも忘れずにおこないましょう。
地域密着型サービスの種類と概要
現在、提供されている地域密着型サービスは次の10種類です。
認知症対応型通所介護
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サービス |
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認知症のある方を対象にした通所介護(デイサービス)です。専用の施設を持つ単独型や特養や老健など他の施設に併設された併設型、グループホームなどの共用スペース(リビングダイニングなど)を活用した共用型があります。
利用定員は12名以下*と小規模で家庭的な雰囲気が特徴です。レクリエーションには園芸療法や音楽療法、回想法など、認知症に効果があるといわれるプログラムが取り入れられています。なお、サービス費は通常の通所介護よりもやや高めに設定されています。
地域密着型通所介護
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サービス |
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通所介護のうち利用定員が18名以下の小規模な事業所は地域密着型サービスに区分されます。利用するには要介護1以上の認定が必要ですが、認知症の有無については問われません。
療養通所介護
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サービス |
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地域密着型通所介護のうち、看護師を手厚く配置することで、医療と介護の両方のニーズを持つ重度要介護者を受け入れている施設です。ニーズはあるものの、事業所数は全国で約80と非常に数が少なく、サービスが提供されていない地域も珍しくありません。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
対象者 |
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サービス |
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24時間体制で訪問介護と訪問看護が利用できるサービスです。サービスの提供方法は定期巡回と随時対応の2種類があり、定期巡回は一日に数回、あらかじめ決められた時間にホームヘルパーや看護師が自宅を訪問してケアをおこなうもの。随時対応は緊急時や必要時に電話や専用端末(ケアコール)を通じてオペレーターに連絡し、必要に応じてヘルパーや看護師を派遣してもらうものです。
サービスを利用する際は居宅介護支援事業所のケアマネジャー(居宅ケアマネ)にケアプランの作成を依頼しますが、訪問回数や訪問時間は事業者が柔軟に調整可能です。また、通常の訪問介護・訪問看護のサービス費が出来高払いなのに対して、定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービス費は要介護度別の定額制で分かりやすいのが特徴です。
24時間体制でサポートしてもらえる安心感に分かりやすい料金体系と、利便性の高いサービスです。しかし、事業所は都市部に偏っており、サービスが提供されていない地域もあります。
夜間対応型訪問介護
対象者 |
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サービス |
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夜間から早朝(基本的に夜10時〜翌朝6時)にかけて、あらかじめ決められた時間にホームヘルパーが自宅を訪問して体位変換や排泄の介助をおこないます(定期巡回)。さらに、緊急時や必要時には電話や専用端末を通じてオペレーターに連絡がつながり、必要に応じてヘルパーが派遣されます(随時対応)。
サービス費はオペレーションセンターがあるかどうかによって異なり、ある場合は基本サービス費に加え訪問回数に応じた利用料がかかり、ない場合は基本サービス費のみとなります。
夜間対応型訪問介護は定期巡回・随時対応型訪問介護看護よりさらに事業所が少なく、サービスや利用者が重複していることから、サービス統合についても議論されています。
小規模多機能型居宅介護(小多機)
対象者 |
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定員 |
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サービス |
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通所介護(デイサービス)を基本に、必要に応じて宿泊(ショートステイ)や訪問介護(ホームヘルプサービス)が利用できます。同じ事業所の職員から3つのサービスが提供されるためなじみの関係が築きやすいのが特徴で、認知症の方に効果が期待されます。サービス費は定額制で、要介護度別に毎月決まった金額を負担します。
ただし、ケアプランは小多機のケアマネジャーが作成するため、これまで居宅ケアマネを利用していた場合、ケアマネを変更しなくてはなりません。また、他の通所・宿泊・訪問介護サービスとの併用もできません。
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)
対象者 |
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定員 |
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サービス |
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小多機の通所・宿泊・訪問介護に、訪問看護が加わったサービスです。訪問看護が加わることで、退院後スムーズに在宅生活に移行するための支援や、末期がんなど看取り期や病状不安定期に在宅生活を継続するための支援、家族に対するレスパイトケア*や相談支援など、利用者のさまざまな医療ニーズに応えます。
小多機が要支援でも利用可能なのに対し、看多機を利用するには要介護1以上の認定が必要です。実際、利用者には要介護3以上の重度者が多いことが特徴です。
また、登録利用者以外にも訪問看護や短期入所サービスを提供することで、地域の高齢者が抱えるさまざまな医療ニーズの受け皿となることが期待されています。しかし、看護・介護職員の確保が難しいこと、特に看取り期や重度者の対応のためには夜勤ができる職員が必要なことから、サービスが全国に普及していないことが課題となっています。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
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サービス |
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認知症の診断を受けた高齢者が、少人数(5〜9名)で共同生活を送る施設です。入居者は施設職員のサポートを受けながら、それぞれできる範囲で買い物や料理などの家事に参加します。住環境も家庭に近く、一つのユニットは共用のリビングダイニングと各々の居室で構成されています。居室は言わば自宅における寝室のような位置付けで、キッチンやトイレ、洗面、浴室などの水回りの設備も基本的に共同で利用します。
共同生活の場という施設の性格上、要介護度が低めの方向けの施設形態ですが、「要介護度が進んでも住み続けたい」「看取りまでお願いしたい」という入居者からの希望に応える施設も増えています。ただし、看護職員の配置義務がないため、たん吸引や経管栄養などの医療ニーズが発生すると対応が難しく、退去となるケースもあります。
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(特別養護老人ホーム)
対象者 |
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定員 |
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サービス |
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特別養護老人ホームのうち入居定員が29名以下の小規模な施設は地域密着型サービスに区分されます。
地域密着型特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホームなど)
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定員 |
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サービス |
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特定施設(介護付き有料老人ホームなど)のうち入居定員が29名以下の小規模な施設は地域密着型サービスに区分されます。
通所介護(デイサービス)や特別養護老人ホーム、特定施設(介護付き有料老人ホームなど)の中には地域密着型サービスに区分され、地域住民に利用を限定しているものがあることに注意が必要です。
地域密着型サービス創設の背景
世界にも類を見ないスピードで高齢化が進む日本では、医療や介護に対するニーズが右肩上がりで増え続けることが予想されています。特に1947〜1949年生まれの団塊の世代がすべて後期高齢者(75歳以上)となる2025年には、およそ5人に1人が75歳以上となる見込みです。
この2025年に向けて、厚生労働省は2003年から地域包括ケアシステムの構築を推進しています。地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で最期まで自分らしい暮らしを続けられるように、住まい・医療・介護・介護予防・生活支援サービスを包括的に提供する体制のことです。
これを受け、2006年の介護保険法改正で生まれたのが地域密着型サービスです。
通常、介護サービスの指定・監督の権限は都道府県にありますが、地域密着型サービスの指定・監督権限は市区町村にあり、それぞれの地域の実情に合わせ指定基準や介護報酬の設定が柔軟にできるようにしています。
地域密着型サービスの特徴
このような背景から地域密着型サービスには次のような特徴があります。
特徴1:小規模でアットホームな雰囲気
地域密着型サービスに共通する特徴は、1事業所(1ユニット)あたりの利用定員が少なく、小規模でアットホームな雰囲気であることです。要介護認定を受ける高齢者の約半数に認知症の症状がみられることから、なじみの関係を築きやすいよう定員が少なく設定されています。また、お祭りや花火大会などの地域のイベントに参加するなど、地域交流も積極的におこなわれています。
特徴2:さまざまなサービスが一つの事業所で完結
地域密着型サービスには、一つの事業所が複数のサービスを提供するタイプが多く含まれます(例:定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、[看護]小規模多機能型居宅介護)。ワンストップでさまざまなサービスを提供することで、職員ともなじみの関係を築きやすいことに加え、利用者のニーズに合わせて利用時間や利用回数を柔軟に設定しやすいという効果があります。
特徴3:運営推進会議を通じた透明性の高い運営
地域密着型サービスは、地域に開かれたサービスとして透明性の高い運営が求められています。具体的には、利用者・家族・地域住民の代表者・市区町村または地域包括支援センターの職員・有識者が参加する運営推進会議を定期的に開催したり、自己評価や外部評価をおこなうことが義務付けられています。
運営推進会議を2カ月に1回以上実施 |
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運営推進会議を6カ月に1回以上実施 |
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介護・医療連携推進会議を6カ月に1回以上実施 |
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運営推進会議の議事録は事業所内への掲示やホームページへの掲載などの方法で公表することになっていますので、サービスを選ぶ時の参考にしてみてもいいかもしれません。
地域密着型サービスの課題
地域密着型サービスの大きな課題は、担い手不足や採算性の低さがネックとなり、普及が進んでいないサービスや認知度の低いサービスが多いことです。
また、通常の居宅サービスから(看護)小規模多機能型居宅介護にサービス変更する場合、これまで担当してくれていたケアマネを変更しなくてはならないこと、これまで利用してきたサービスは併用できないことがネックとなり、利用を断念するケースも見受けられます。
今後、どのように人材を確保し、事業の採算性と継続性を担保するのか、利用者にとって真に使い勝手のよいサービスとなっていくかが注目されます。
- 介護サービス情報公表システム「公表されている介護サービスについて」
- 厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会 第219回(令和5年7月10日開催)「【資料1】通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護」「【資料2】療養通所介護」
- 厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会 第218回(令和5年6月28日開催)「【資料1】定期巡回・随時対応型訪問介護看護・夜間対応型訪問介護」「【資料2】小規模多機能型居宅介護」「【資料3】看護小規模多機能型居宅介護」「【資料4】認知症対応型居宅介護」
- 厚生労働省「2005年度介護保険法改正」
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」
- 厚生労働省「我が国の人口について」
- 一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟・編集『最新 社会福祉士養成講座2 高齢者福祉』中央法規出版(2021年)
- 本間清文・編著『最新図解 スッキリわかる! 介護保険 第2版 基本としくみ、制度の今とこれから』ナツメ社(2021年)
- 高室成幸・監修『図解入門ビギナーズ 最新介護保険の基本と仕組みがよ~くわかる本[第8版]』秀和システム(2021年)
- 牛越博文・監修『最新版 図解 介護保険のしくみと使い方がわかる本』講談社(2021年)
- 2023/10/23 見出し修正
- 2023/10/11 タイトル・本文修正
- 2023/09/28 全面更改
- 2022/03/30 タイトル修正
- 2021/12/24 タイトル修正
- 2021/12/21 タイトル修正
- 2021/04/14 本文修正
- 2021/04/12 本文修正
- 2021/04/08 カテゴリ修正
- 2021/02/03 初版公開
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