寄稿

オレンジプランとは|認知症に向けた取り組み・新オレンジプランとの違いなどを解説

オレンジプランは2012年に発表された認知症に関する国の施策です。 今回は、オレンジプランがどのような施策なのか、政府が考えている認知症施策の方向性はどのようなものか、2013年から始まった新オレンジプランとは何かといった点について解説していきます。認知症に関する理解を深めていきたいと考えている方は、ぜひ目を通してみてください。

オレンジプランとは

オレンジプランとは

オレンジプランは、厚生労働省によって公表された認知症施策推進5カ年計画のことです。以下の7本の柱が軸となっています。

  • 標準的な認知症ケアパスの作成・普及
  • 早期診断・早期対応
  • 地域での生活を支える医療サービスの構築
  • 地域での生活を支える介護サービスの構築
  • 地域での日常生活・家族の支援の強化
  • 若年性認知症施策の強化
  • 医療・介護サービスを担う人材の育成

認知症に関する施策の歴史

認知症に関する施策は、オレンジプラン以外にもいろいろなものがありました。まずは、行政の認知症対策の歴史をみていきます。

年次 内容
1982年 老人性精神保健対策に関する意見
2000年 介護保険がスタート
2003年 実現すべき介護の姿の提言
2004年 「痴呆症」から「認知症」への用語変更
2005年 「認知症を知り地域をつくる10カ年」構想
2008年 認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト
2012年 オレンジプランのスタート
2013年 新オレンジプランのスタート

【1982年】老人性精神保健対策に関する意見

老人性精神保健対策に関する意見は、1982年11月24日に公衆衛生審議会において発表されました。認知症に特化した文章のなかでも初期段階に発表されたものですが、現在のオレンジプランにも共通点があります。

老人性精神保健対策に関する意見では「6本の柱」が軸になっています。

老人性精神保健対策に関する意見の軸
  • 老人の痴呆疾患の予防及び普及啓発
  • 地域老人精神保健対策
  • 精神病院における老人精神障害者対策
  • 老人精神保健事業者の確保及び資質の向上
  • 研究体制の強化
  • 老人の痴呆疾患のための保健医療及び福祉対策の連携
出典:公衆衛生審議会「老人精神保健対策に関する意見」

このうち、地域のケア体制を確立することを含む包括的なケアシステムの確立を促すという点、長期的な視野で見た総合的な施策を推進することなどが盛り込まれているという点は、現在の認知症ケアとよく似ています。現在の地域包括ケアシステムの理念の先駆けです。

【2000年】介護保険がスタート

2000年には介護保険制度が始まりました。介護が必要な高齢者が増加し、家族の負担が増えるなか、介護をする家族の負担を軽減するために創設された制度です。

介護保険制度は40歳以上の国民全員で介護が必要な方を支援する制度になります。認知症の介護に関しての金銭的な負担を大きく軽減するきっかけにもなりました。

【2003年】実現すべき介護の姿の提言

高齢者介護研究会「2015年の高齢者介護~高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて~」では、介護予防・リハビリテーションの充実や生活の継続性を維持するための新しい介護サービスの構想を打ち出しています。

新しい介護サービスの構想
  • 在宅で365日24時間安心して過ごせる
  • 新しい住まいを提供する
  • 高齢者の在宅生活を支えるための新しい施設の役割
  • 地域包括ケアシステムの確立
  • 新しいケアモデルの確立(痴呆性高齢者ケア)
  • サービスの質の確保と向上
参考:厚生労働省「2015年の高齢者介護~高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて~

介護保険が根付き始めた2003年に上記の発表があり、実現すべき介護の姿を提言しました。そして2004年の年度末を終期とした「ゴールドプラン21」以降は、家族や地域住民が認知症に関する正しい知識を持ち、地域全体で支援すべきだという方向性に変わっていきます。それを実現するために国民運動としての広報啓発キャンペーンがなされ、認知症サポーターが誕生しました。

【2004年】「痴呆症」から「認知症」への用語変更

2004年にはそれ以降の施策に多大な影響を与える出来事がありました。それは、呼び名が痴呆症から認知症へ変更されたということです。「痴呆という言葉には、侮辱するような意味が含められている」「症状を正しく表していない」といった理由から、認知症への変更がなされました。

【2005年】「認知症を知り地域をつくる10カ年」構想

「認知症を知り地域をつくる10カ年」構想は、認知症という呼び名への変更がただの言葉遊びで終わらせないようにするために推進された政策の中核となるものです。

この構想では、認知症サポーター100万人キャラバン、「認知症でもだいじょうぶ町づくり」キャンペーン、認知症の方向けの本人ネットワーク支援、認知症の方やその家族の力を活かしたケアマネジメントの推進しています。このような取り組みをすることによって、認知症の方が安心して過ごせるような街作りを目指していきました。

このなかでも「認知症サポーター」は、予想をはるかに超えるスピードで普及しています。平成30年の3月には1,000万人を突破。日本の取り組みがもとになり、ヨーロッパ圏でも「Dementia Friends運動」として広がりを見せています。「認知症サポート医療研修」や「かかりつけ医認知症対応力向上研修」といった今後新オレンジプランにもつながるプログラムが始まったのもこのころです。

【2008年】認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト

認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクトは、2008年7月10日に厚生労働省によって公表された報告書です。これは、関連する分野の専門家によって構成されたプロジェクトチームの議論を元にしてまとめられたものになります。

そんな認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクトは、実態の把握、研究・開発の促進、早期診断の推進と適切な医療の提供、適切なケアの普及及び本人・家族支援、若年性認知症対策が軸となっていて、これからの認知症ケアを意識したものとなっているのです。このプロジェクトでは、地域包括支援センターに認知症連携担当者を配置するという内容が盛り込まれていて、認知症地域支援推進員の先駆けとなる取り組みをしたといえます。

なぜオレンジプランが生まれたのか

オレンジプランは、新しい地域精神保健医療体制を構築するために生み出されました。厚生労働大臣政務官をメインとした新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チームによって、これまでの精神医療にメスを入れることになったのです。その第2ラウンドとして、認知症と精神医療が開かれました。

そこで基本となる方針を取りまとめ、認知症疾患に関する医療センターの整備や認知症の退院支援、地域連携クリティカルパス、外来・訪問診療、入院医療と認知症を考慮した目標値などが検討されました。そして、2011年11月29日に早期退院を目指す目標値などを含めた取りまとめが公表されています。

しかし、その取りまとめは精神科医療の側面からなされた検討で、介護保険サービスや地域における支援という側面から見た場合の検討も必要だと考えられました。それを受けて厚生労働大臣政務官をメインとした認知症施策検討プロジェクトチームが発足し、「今後の認知症施策の方向性について」という報告書を発表したのです。そして、そこから施策などを設定したものがオレンジプランになります。

ちなみに「オレンジ」は日本の認知症支援を象徴する色です。認知症サポーターが手首に巻く「オレンジリング」もオレンジ色をしています。色の由来は江戸時代に生まれて世界に広まった柿色の「赤絵陶器」です。同じように日本の認知症の取り組みも世界に広まってほしいという願いから「オレンジ」が採用されました。
参考:厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」

オレンジプランの特徴

認知症に対する施策は、症状だけに目を向けているものが多かったのですが、認知症に対する理解を深めて正しいケアをすることが重要だという認識を持つ方が増えてきました。それには、オレンジプランが一役買っていると考えられます。

取り組み課題の1番目に「認知症ケアパスの作成」を掲げ、市町村ごとの対応を求めたのもオレンジプランの特徴です認知症ケアパスとは、認知症の方とその家族が、地域で本来の生活を営むために、専門家や地域で連携する仕組みとなります。

政府が考えている認知症対策の方向性とは

オレンジプランについて正しく理解するには、政府が考えている認知症に関する施策の方向性についても知っておく必要があります。続いては、その方向性について紹介します。

中核は「ケアの流れを考えること」

政府が考えている認知症施策の方向性の中核になっているのは、「ケアの流れを考えること」です。これまでは、認知症になると精神科病院に入院したり、介護施設に入所したりしなければいけないといった考えが主流になっていました。しかし、その考え方を改めて認知症になったとしても本人の意思を尊重し、住み慣れた街で少しでも長く生活できる社会を作り出していこうという方向性へと変わっていったのです。

そのような社会を実現するために「ケアの流れを変えていくことが重要だ」といわれるようになっていきます。そして認知症ケアパスを構築することが目標として定められました。

2013年から始まった「新オレンジプラン」とは

2013年からは、新オレンジプランが始まりました。新オレンジプランは、認知症に対する意識をより深めていくことが目的となっています。高齢者が増え、認知症に悩む方の数も増えていくと予想されます。新オレンジプランはその状況に合わせて適切な対策を講じられるようにするためのものであり、早期診断や早期対応を実現することも盛り込まれているのです。

オレンジプランの際にもあった7つの柱が、新オレンジプランでは新しくなりました。

オレンジプランの7つの柱
  • 標準的な認知症ケアパスの作成・普及
  • 早期診断・早期対応
  • 地域での生活を支える医療サービスの構築
  • 地域での生活を支える介護サービスの構築
  • 地域での日常生活・家族の支援の強化
  • 若年性認知症施策の強化
  • 医療・介護サービスを担う人材の育成
新オレンジプランの7つの柱
  • 認知症の理解を深めるための普及・啓発の促進
  • 認知症の容態に応じた適宜・適切な医療・介護等の提供
  • 若年性認知症施策の強化
  • 認知症の方の介護者への支援
  • 認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進
  • 認知症の方やその家族の視点の重視
  • 認知症の方を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進

新オレンジプランでは認知症高齢者が住み慣れた街で活動的に過ごすことを目的にしています。ただしオレンジプラン自体も同じビジョンを持っていたのは確かですので発表当時は「新鮮味がない」と揶揄されることもありました。

新オレンジプランは各人がふさわしい場所で介護を受けられるように「循環型のサービスを構築すること」を目指しています。病院、介護施設、自宅と、認知症の程度に合わせて最適な場所に移ることで「ぴったりのサービス」を提供し続けることが目標です。

新オレンジプランの7つの柱について

新オレンジプラン 引用:厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)

新オレンジプランは、7つの柱を軸に構成されています。各項目について詳しく紹介します。

認知症の理解を深めるための普及・啓発の促進

認知症の理解を深めるための普及・啓発の促進のためには、認知症に対する理解を深められるようなキャンペーンをしたり、認知症サポーターの支援や活動のサポートをしたりすることが盛り込まれています。また、学校教育でも認知症に関する理解を深められるような取り組みをするとしています。

認知症の容態に応じた適宜・適切な医療・介護等の提供

認知症の容態に応じた適宜・適切な医療・介護等の提供は「本人を主体とした医療や介護を徹底すること」「発症の予防を促進すること」「多岐にわたる症状に対する適切な対応をできるようにすること」「医療と介護がより有機的な連携を取れるようにすること」などが盛り込まれています。

若年性認知症施策の強化

若年性認知症で悩む方も少なくないため、若年性認知症に関する施策の強化も重要な課題となっています。自立支援をサポートできるような体制やネットワークの調整役が必要となるため、それを実現するための取り組みも新オレンジプランには盛り込まれています。

認知症の方の介護者への支援

認知症の方を介護するのは、心身ともに大きな負担になってしまう傾向があります。介護する側の負担が大きくなってしまうとトラブルの原因になることもあるので、認知症のの介護者への支援も重要なポイントです。それに関する取り組みも新オレンジプランには盛り込まれています。例えば「認知症カフェ」の設置などが該当します。

認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進

研究開発及びその成果の普及の推進においては、KPI(key performance indicator:主要業績評価指標)を揃えて整合性を持たせることを重要視しています。

認知症の方やその家族の視点の重視

認知症の方ならではの視点でキャンペーンを開催したり、生きがいを支援したりすることが大事です。認知症の方やその家族に寄り添うことにつながっています。また若年性認知症の施策を強化することも含まれています。

認知症の方を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進

認知症の方を含む高齢者にやさしい地域づくりを進めるためには、生活の支援はもちろんですがハード面の整備も重要な課題です。それだけではなく、就労や社会参加の支援、安全確保なども含まれています。

認知症のケアをするなら正しい知識を身に付けておこう

認知症のケアに限ったことではありませんが、介護をするなら正しい知識を身に付けておくことが重要なポイントになります。オレンジプランでは、在宅ケアの推進だけではなく、適宜グループホームなどの介護施設を利用することも重要だといった内容が盛り込まれています。

家族が認知症を患っている方、自分自身が高齢になり認知症に対する理解を深めておきたいという方は、ぜひオレンジプランや新オレンジプランに関する知識も身に付けておいてください。

この記事の監修

尾渡順子

医療法人中村会 介護老人保健施設あさひな・認知症介護レクリエーション実践研究会

介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、認知症ケア上級専門士、認知症介護実践リーダー、米国アクティビティディレクター、他。介護職として働く傍ら、レクや認知症、コミュニケーションに関する研修講師も務める。2014年米国アクティビティディレクター資格取得。レクリエーションを通じ、多くの高齢者に「人と触れ合う喜び」を伝え、「介護技術としてのレクリエーション援助」を広める一方、介護情報誌やメディアにおいて執筆等を手掛けている。『認知症の人もいっしょにできる高齢者レクリエーション 』(講談社)など著書多数。

介護のほんね編集部

この記事の寄稿者

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