この記事の監修
日吉 優
介護福祉士
通所介護施設に勤務しながら介護福祉士資格を取得する。機能訓練特化型デイサービスを立ち上げ、生活相談員として従事。さらに介護事業を展開する企業の広報を経て、現在は株式会社メドレーの介護のほんね地域医療支援チームで、主に病院から退院される患者様の施設探しをサポートしている。
昨日まで元気に暮らしていた親に突然介護が必要になる、ということは珍しくありません。脳卒中や骨折・転倒など突発的な出来事がきっかけで介護が始まるケースが全体の約3割を占めています(参照:内閣府「高齢社会白書」)。
親に介護が必要になったとき「長男がやって当たり前」「誰がお金を負担するのか」といった問題できょうだいの間に深い溝が生まれることがあります。このようなトラブルを防ぐためには、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。
きょうだいで話し合う前に確認しておきたいこと
まず確認しておきたいのが、介護を受ける本人の希望と介護にかかる費用の出所です。介護が必要になってからでは既に意思疎通が難しいこともあるため、日常会話の中で「万が一のときはどのようなケアを希望するのか」「お金の管理はどうすればいいか」それとなく聞き出しておくのが理想的です。
介護を受ける本人(親)の意向
まずはどこでどのような介護を受けたいのか親の意向を確認します。具体的には、住み慣れた我が家で介護を受けたいのか、施設に入居したいのか、家族中心に介護してほしいのか、なるべく家族を頼らずに介護サービスを利用したいのか、といったことです。
親の意向を確認せずに子どもだけで話を進めると、ヘルパーの訪問や施設への入居を拒まれるケースもあります。子どもにも事情があるため、親の意向を100%叶えられるとは限りませんが、本人の希望に配慮することが大切です。
介護にかかる費用の出所
次に介護にかかる費用の出所を確認しておきます。親の介護をめぐりきょうだい間でトラブルになりやすいのがお金の問題です。トラブルを避けるためにも「基本的に親の介護費用は親のお金で賄う」という認識を共有し、それでは十分なケアが受けられそうにないという場合に限りきょうだい間でどこまで支援が可能か話し合うようにしましょう。
なお、高齢世帯の貯蓄、年金、介護にかかる費用の相場を調べると、次のようになりました。
貯蓄額(2人以上世帯、60歳代)
平均額 | 中央値 |
---|---|
3,014万円 | 1,400万円 |
年金額の平均額
国民年金 | 厚生年金 |
---|---|
月5.6万円 | 月14.6万円 |
介護費用の平均額
初期費用 | 在宅介護 | 施設介護 |
---|---|---|
74万円 | 月4.8万円 | 月12.2万円 |
きょうだいで決めるべき4つのこと
親に介護が必要になった場合、きょうだい間で次のことを話し合いましょう。1. できること・できないことを明らかにする
きょうだいが集まったら、時間・労力・経済面で「できること」と「できないこと」を率直に話し合います。親を中心に家系図を書き、それぞれの仕事や家庭の事情などを簡潔にまとめておくと、後々ケアマネジャー(以下、ケアマネ)や生活相談員などに情報を共有する際にも役に立つでしょう。
介護における役割分担の不公平感が親の死後に相続争いにまで発展した、という話も珍しくありません。当然ながら、親が亡くなった後もきょうだいの関係は続きます。「家族だからわかってくれるだろう」「察してくれるだろう」という期待は禁物です。後々しこりを残さないよう、自身の置かれている状況や気持ちを正直に伝えること、相手の話に耳を傾けることを心がけましょう。
2. 主介護者・キーパーソンを決める
在宅介護の場合に主に介護を担う人物が主介護者、在宅介護か施設入居かを問わず外部とのやりとりや意思決定で中心的な役割を果たす人物がキーパーソンです。主介護者とキーパーソンは同じこともあれば違うこともあります。いずれにせよ、同居している子どもや近くに住んでいる子どもが担うのが一般的です。
介護が始まるときには、要介護認定の申請から調査への同席・協力、施設探し、ケアマネとの打ち合わせなど、さまざまなタスクが発生します。仕事や家事、育児など、普段担っている役割にこれらのタスクが加わると、負担は想像以上に大きいものです。なし崩し的に負担が集中しやすいため、主介護者やキーパーソンが1人で抱えこまないように役割分担しましょう。
また、キーパーソンが決めたことに対して後から「聞いていない」「それには反対」と異議を申し立てるきょうだいが出てきて、話が一向に進まない──というのもよくある話です。このようなトラブルを避けるためにも、きょうだい間での情報共有はこまめにおこなうようにしましょう。
3. 介護費用の予算を決める
介護を受ける親自身の貯蓄や年金から、どのくらいのお金をかけられそうか予算を決めます。親のお金だけで十分なケアが受けられそうにない場合、きょうだいで負担するか、介護にかかる費用を軽減する制度もあります。介護保険制度の利用については地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。
4. 介護のロードマップを決める
いつまでに何をするのか見当をつけます。介護する場所(在宅か施設か)を問わず、介護保険サービスの利用に必ず必要なのが要介護認定の申請です。要介護申請の結果によって、利用できる介護保険サービスの量や入居できる施設が変わってきます。また、申請から認定が下りるまで通常1〜2ヶ月かかるため、施設への入居を希望する場合はその間に資料請求や見学を進めておくとスムーズです。
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この記事の寄稿者
介護のほんね編集部
年間1万件以上の老人ホーム探しをサポートしている介護のほんね編集部です。介護に関する情報を、認知症サポーターの資格を持つスタッフが正しく・分かりやすくお届けします。