アニマルセラピーとは|効果・適した動物・問題点などを紹介

近年、よく耳にするようになった言葉の一つとして「アニマルセラピー」が挙げられます。アニマルセラピーはあらゆる施設などで用いられ始めてきていますが、具体的にどういったことをするのか、またどんなことに効果的なのかを理解している人は少ないでしょう。

今後、アニマルセラピーを導入してみたいと考えているのであれば、アニマルセラピーについての知識や理解を深めておかなければなりません。そこで今回は、アニマルセラピーについて、その効果や適している動物、問題点などを解説していきます。

アニマルセラピーとは|効果・適した動物・問題点などを紹介
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

アニマルセラピーとは

アニマルセラピーとは、動物とふれあって心身の癒やしを得るセラピーのことです。

本来は、アニマルセラピーは「動物介在療法」のAnimal Assisted Therapy(AAT)と、「動物介在活動」のAnimal Assisted Activity(AAA)という2種類に分けられます。AATは、病院などの医療機関で医師や作業療法士などと一緒に患者さんの状態に合わせておこなわれる治療方法の一つです。後者のAAAは、老人ホームなどへの慰問活動で動物をなでたり、動物への声掛けをしたりすることで運動や話をする活動を指します。

2つの違いはありますが、日本では長くて言いにくいこと、また覚えにくいからかもしれませんが、併せてアニマルセラピーとされています。このように、アニマルセラピーは造語であり、内容についてはAATとAAAで異なることは覚えておきましょう。

現在、AATで実際に治療に用いられているケースはそこまで多くはありませんが、AAAは動物愛護団体などが積極的に実施しているのでアニマルセラピーの認知度は少しずつ高くなっています。

アニマルセラピーの歴史

アニマルセラピーの歴史は古く、紀元前400年の古代ギリシャでは傷を追った兵士のリハビリのために乗馬をさせていたそうです。また1700年代にはイギリスの精神障がい者施設でうさぎやにわとりを用いた治療法があったといわれます。

日本では1970年代に乗馬療法を輸入したことから、アニマルセラピーが用いられ始めました。ヨーロッパ諸国と比べると、まだ日本では歴史が浅い治療法です。

アニマルセラピストの資格がある

アニマルセラピーを専門的にとりおこなう職業に「アニマルセラピスト」があります。主に専門学校や大学で専門分野を学ぶことで取得できる資格です。高齢者施設にも「アニマルセラピスト」の資格を持つ職員が勤めている可能性はあります。

アニマルセラピストは「患者によって相性のいい動物を見極める能力」「動物が噛みついたり吠えたりしないようコントロールする能力」などに長けているのが特徴です。もし施設選びにおいて「アニマルセラピーができるか」を重要視している方は、入居前に施設にたずねてみましょう。

アニマルセラピーの効果

アニマルセラピーは一般的に、高齢者向けの施設や精神的な病気を持つ人に効果的なのではないかとイメージしている人が多いでしょう。動物を医療の現場や介護施設で用いる効果としては、「ストレスの軽減」「社会性の改善」「コミュニケーションの促進」などが期待できます。では、実際にはどのような現場に取り入れられているのか、効果が得られるのかをご紹介していきましょう。

精神科でも取り入れられている

アニマルセラピーの効果として、ストレスの軽減が挙げられます。現代社会において、何かしらのストレスにより精神を病んでしまう人は少なくありません。ストレスを抱えてしまうと精神疾患になったり、ストレスによって免疫機能が低下してしまったりもします。

近年では、精神科でもアニマルセラピーを取り入れ始めている傾向があります。まだまだ取り入れている病院やクリニック自体少ないですが、アニマルセラピーを取り入れている医療機関では資格を持った専門家のアニマルセラピストが、セラピードッグの教育を受けた専門犬と一緒にアニマルセラピーを実施しています。

アニマルセラピーはやはり介護施設での導入が多いため、精神科や医療機関でのアニマルセラピーの導入は珍しいです。しかし、ストレスの軽減や社会性の改善、コミュニケーションの促進などのアニマルセラピーによる効果を考えれば、将来的にはさらなる導入も期待できるでしょう。

ただし、現在はアニマルセラピーによる癒やし効果については証明されているものの、いまだ精神科での科学的根拠は実証されていない状態です。アニマルセラピーに期待できる効果は多々あるため、今後学術的な側面からもその効果の検証が進められていくでしょう。

認知症にも効果がある

前述したとおり、アニマルセラピーは高齢者向けの施設で用いられることが多くあります。長期間施設に入居していることで、入居者はだんだんと活動性や意欲自体が衰退し、会話や表情も変化が少なくなってしまうことがあります。外部とのコミュニケーション機会が減ってしまうことで、身体的・精神的にも不安的な状態となるケースもあるのです。

施設に入居している人のなかには、もちろん認知症を患っている人もいます。アニマルセラピーで動物と触れ合うと、自然と表情が柔らかくなったり、動物を飼ったことがある人であれば当時を思い出すことができるようになったりと精神的な効果がみられることがあります。

認知症によって自発性が失われてしまった人でも、動物への興味からなでたり、触ったり、抱っこしたりといった自発的な行動ができるようになり、身体的な機能の向上も期待できます。また、動物への声掛けをしたり、動物という共通の話題で会話が増えたりすれば、コミュニケーションの促進や言語機能の低下を防ぐことも可能でしょう。

認知症によるストレスの緩和やうつ状態の改善もアニマルセラピーでは期待できるので、活動性・社会性の向上やQOLの改善などにもつながります。

アニマルセラピーの問題点

アニマルセラピーは、動物を介して治療をしたり活動をしたりします。そのため、セラピーを受ける人間側、またセラピーをする動物側両方において問題点があることを認識していなければなりません。ここからは、その問題点について解説していきます。

ケガをする可能性がある

アニマルセラピーには癒やしの効果が期待できますが、一方で動物によってはケガをしてしまう可能性も少なからずあります。動物によっては噛みつきやひっかきなどのケガへの注意が必要です。

犬の場合、セラピードッグになるための訓練があり、試験に合格しなければセラピードッグとしての活動はできません。セラピードッグになるための訓練は民間団体で実施されています。

セラピードッグとなる犬は、基本的に人間が好きな子や性格が穏やかでフレンドリーな子が多いことから、そこまで心配はいらないと思われがちですが、セラピードッグも不安やストレスは感じます。状況によりますが、噛みつきやひっかきのリスクがまったくないとは言えません。

感染症などの問題

医療機関や高齢者向けの施設ともなれば、免疫機能が低下している人も多くいます。そういったなかでの感染症のリスクは考えていかなければならない問題でしょう。特に高齢者向けの施設では加齢によって免疫機能が低下してしまっている人が多くいるので、感染症には十分に留意しながらセラピーをする必要があります。

また、動物アレルギーがある人や動物に対して何かしらのトラウマがある人、動物が嫌いな人などにも注意が必要です。動物アレルギーであれば、動物と触れ合うことで何かしらの身体的な悪影響がありますし、トラウマや動物嫌いな人にとっては精神面の悪化をきたしてしまう恐れもあります。

動物側がストレスを感じる

動物もストレスを感じます。ストレスによる負担が大きければ大きいほど、動物も身体的な悪影響を受けてしまいます。そのため、動物側へのストレスについても考慮しなければなりません。

セラピストが医療機関や高齢者向けの施設に連れていくことがほとんどですが、施設でセラピードッグを飼育していることもあります。そうなれば、利用する人がご飯をあげすぎてしまったり、セラピードッグを散歩に連れていく時間がなかったりすることもあるでしょう。その結果、動物の運動不足や肥満につながってしまう恐れがあります。

動物が感じるストレスや疲労に対しても、真摯に向き合わなければアニマルセラピーはできません。しっかりと動物側のケアも考えながら実施する必要があります。

アニマルセラピーに適した動物

アニマルセラピーに適している動物は、性格でいうと社交的な子となります。人見知りが激しい子や臆病な子はストレスを抱えてしまいがちなため、あまり適さないでしょう。また、感染症のリスクから健康管理がしっかりとできている子、しつけがされている子というのも前提条件です。では、一般的にどのような動物が適しているとされているのかご紹介していきます。

「セラピードッグ」という資格もあることから、一般的にアニマルセラピーでは犬を思い浮かべる人が多いでしょう。犬は昔から人間と共存してきた動物ですし、ペットとしても一般的で馴染みやすさがあります。

犬はしつけをすれば、行動学的にも様々な知見が得られていることからセラピーにも介在しやすい動物だとされています。アニマルセラピーを導入している医療機関では、犬を施設内で飼育する際に、就労支援として犬のお世話をしてもらい社会復帰を目指しているケースもあります。

人と人とのコミュニケーションが難しい場合でも、犬を介することでコミュニケーションが取りやすくなり、他人とのかかわりを持ちやすくなることが期待できます。

アニマルセラピーでは犬が一般的に思われますが、猫の与える癒やし効果もアニマルセラピーでは大いに期待できます。大きさとしても猫は座っている人の膝の上に乗りやすく、なでられるのが好きな子やおとなしい子であればしばらく抱っこすることも可能です。

ただし、犬や他の動物と同様に猫にも適している性格の子とそうでない子がいます。アニマルセラピーに適している猫の性格は、甘えん坊な子です。

猫の品種によっても穏やかな性格の子や警戒心が少ない子、人間になつきやすい子など様々なので、猫をアニマルセラピーに用いるのであれば品種についてもしっかりと調べてから判断した方が良いでしょう。

うさぎやモルモットなどの小動物

アメリカの団体が作成した基準としては、うさぎやモルモットなどの小動物はボランティア活動に向いているとされています。これは、うさぎやモルモットの基本的な性格が臆病で、自身に危険が迫っているときには攻撃せずその場で固まってしまうためです。さらに、人間にとってうさぎやモルモットは抱っこしやすいサイズ感であることも向いているとされている要因でしょう。

アニマルセラピーに適していない動物

アニマルセラピーに適している動物は犬や猫、小動物と紹介しましたが、アニマルセラピーには適していない動物ももちろん存在します。その個体の性格などによっても違いますが、一部の小動物はアニマルセラピーには向かないとされているのです。なぜアニマルセラピーには適していないとされているのか解説していきます。

フェレット

同じ小動物のなかでも、フェレットなどはアニマルセラピーに向かないとされています。これは、フェレットなどが非常に活動的な動物であることが挙げられるためです。なかには性格上おとなしい子もいますが、大多数は活動的で、おとなしく抱っこすることは難しいでしょう。

カメやイグアナなどの爬虫類

しつけができないという点で、カメやイグアナなどの爬虫類も適さないとされています。そもそも大多数の人が爬虫類で癒されるわけではありません。なかには拒否反応を示す人もいます。

また、一般的なペットとしてのイメージもそこまでないことや触れ合うことが難しい爬虫類も多いこと、エサが昆虫なので虫が苦手な人にも向かないことなどが理由となり、アニマルセラピーにはあまり適していないと言えるでしょう。

アニマルセラピーは好みに合わせて実施する

動物にもアニマルセラピーの向き不向きがあるように、人によってもアニマルセラピーが向いていない場合があります。動物に危害を加えたり、暴力をふるってしまったりする人はアニマルセラピーには向いていませんし、前述したとおりアレルギー体質の人や感染症のリスクが大きい人、精神面の悪化をきたしてしまう恐れのある人もアニマルセラピーには向かないと言えるでしょう。アニマルセラピーの効果には非常に期待できるものがありますが、アニマルセラピーに向かない人に実施してしまえば逆効果となってしまうこともしっかりと留意しておかなければなりません。

また、アニマルセラピーを実施する人にも向き不向きはあります。アニマルセラピーは動物がメインとなりますが、飼い主である人もアニマルセラピーをするために向いているかどうかが分かれます。特に、アニマルセラピーが必要となる人は高齢者や何かしらの病気を抱えている人です。

アニマルセラピーは動物を介してするボランティア活動となっているので、自身の飼っているペットに資質があったとしても飼い主によっては向かない場合も十分にあります。そういった場合には、ペットだけをボランティア団体に預けて連れていってもらうようにしましょう。

この記事のまとめ

  • アニマルセラピーはストレスの軽減、社会性の改善、コミュニケーションの促進が期待できる
  • ケガや感染症のリスクが問題点に挙げられる
  • 動物だけではなく、人にも適合がある

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