口腔ケアについて|目的・手順・用品の使い方などを分かりやすく紹介

近年、口腔ケアが注目されているのをご存じでしょうか。口腔内が不衛生であればさまざまなトラブルが発生する可能性もあります。高齢者がいる家庭のなかには、施設に預けている人や自宅で介護をしている人もいるでしょう。より長生きしてもらうためにも、口腔ケアに注目し、どういったケアが必要であるのかを理解しましょう。

口腔ケアについて|目的・手順・用品の使い方などを分かりやすく紹介
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。

口腔ケアを始める前に知っておきたいこと

年齢を重ねていくうちにさまざまな部分に変化が生じます。それは口腔内も同じです。高齢者の口腔内がどうなっているのか、ケアを始める前にチェックしておきましょう。

高齢者の口のなかには雑菌がたくさんいる

しっかりと口腔ケアをしているのであれば問題ありませんが、若者とは違う特徴を持っている高齢者は口腔ケアを入念にしなければトラブルが発生しやすくなります。例えば入れ歯を使っている場合、手入れがされていないと雑菌が繁殖してしまいます。

自浄作用も低下しているため、歯の隙間や舌に付着した汚れが唾液によって洗い流されずに残っている可能性もあるでしょう。また、高齢者のなかにはきざみ食やとろみ食を食べている人もいます。歯の隙間に入り込みやすい特徴を持っているため、口のなかに食べかすが残りやすいのです。

こうした要因によって、高齢者の口のなかには雑菌が繁殖している可能性が高いです。口腔ケアを怠ればトラブルが発生してしまうでしょう。

口腔ケアをする目的

口腔ケアをする目的は、1つではありません。雑菌が繁殖しやすい口のなかを清潔に保てばさまざまなメリットが得られます。ケアをする目的を知り、その必要性を理解しましょう。

虫歯や感染症を防ぐ

口腔ケアの目的として最初に思い浮かべることが虫歯予防でしょう。これは、高齢者のみならずどの世代にも言える内容です。適切なケアができていれば口腔環境は整うので、歯周病や虫歯といった歯のトラブルを予防できます。

また、感染症予防にも口腔ケアは欠かせません。高齢になるとさまざまな病気の心配が予想されます。誤嚥が生じると口のなかにある細菌が肺に一緒に入り込み感染性の肺炎を起こすリスクがあります。「誤嚥性肺炎」と言われ、重症化すれば死に至る危険もあるのです。

寝ている時には自然と唾液は喉の奥へ入り込みます。それだけでも誤嚥性肺炎が起こる可能性があるので、口のなかの細菌をどれだけ減らせるかがポイントとなるでしょう。口腔ケアをしっかりとしていれば、細菌を減らせるので危険な誤嚥性肺炎のリスクも低下するでしょう。

口の筋肉を動かせるようにする

食べ物を食べるためには口を動かすので筋肉が重要となります。口の中に食べ物を入れたら咀嚼をして飲み込みますが、筋肉が衰えていれば咀嚼もうまくいかないでしょう。咀嚼で発生する刺激は脳に影響を与えると言われています。脳の活性化にも役立っているので、認知症予防にもつながるでしょう。食事をおいしく食べられることにもつながるので、口の筋肉を動かせるようになると良い影響を与えるでしょう。

話しやすくする

口腔ケアをすると口や舌の動きが向上します。喋る時の発音がよくなるので、意思疎通がスムーズになり友人や家族とのコミュニケーションがとりやすくなります。

また、口臭が改善されるのもポイントのひとつです。口のなかに雑菌が増えると口臭も気になります。「相手に嫌な思いをさせているのはないか」といった思いがあり、人とのコミュニケーションがうまくとれないケースもあるのです。

口腔ケアを続けていけば、口のなかの状態も改善していくため口臭改善にも役立ちます。口の臭いを気にせず喋れるので人と接するのが好きになるでしょう。

表情が豊かになる

口腔トラブルを抱えていると、悩みによって気持ちも重くなりがちです。しかし、さまざまなトラブルを防いで口腔機能が向上すればすっきりとした気分で過ごせるでしょう。表情が豊かになることにもつながり、コミュニケーションがとりやすくなります。

2種類の口腔ケアの手法

口腔ケアには、器質的口腔ケア機能的口腔ケアの2種類があります。それぞれにどんな違いがあるのか見ていきましょう。

器質的口腔ケア

器質的口腔ケアは口のなかの清潔さを保つためのケアです。食事をした後におこなう、うがいや歯磨きが基本となります。しかし、高齢者の場合は入れ歯や舌のケアも重要です。雑菌が繁殖してしまえば誤嚥性肺炎を引き起こす可能性もあり、器質的口腔ケアは欠かせないでしょう。誤嚥性肺炎だけではなく、歯周病や粘膜疾患にも注意をして入念にケアをしてください。

機能的口腔ケア

高齢になると飲み込む力も弱くなってきます。そのため、機能的口腔ケアでは口周辺の筋肉や舌を動かし、機能の維持や向上を図ります。方法としては、口のなかや口周辺をマッサージするほか、飲み込む力を鍛えるためのトレーニングです。体が衰えるのと同様に口腔内も衰えていくので、口腔ケアは重要でしょう。

口腔ケアをする7つの手順を分かりやすくご紹介

口腔ケアの重要性が分かっても、やり方が分からなければ実行に移せません。そこで、口腔ケアをするための7つの手順をご紹介します。

うがいをする

まずはうがいをします。ただ口の中に水を含んで出すのではなく、口周りの体操を意識してください。水を口に含んだら左右の頬を膨らまして水を移動させながらブクブクとうがいをします。

歯磨きで歯の掃除をする

うがいが終われば歯磨きです。自分でできる場合にはできる限り自力で歯磨きをしてください。歯ブラシは歯に対して90度に当てるようにし、細かく動かして磨いていきます。磨く際には1本ずつ丁寧に磨いていきましょう。表面だけではなく、歯の隙間も忘れずに磨いてください。

介助が必要な場合は指でしっかりと唇を広げて磨き残しのないようにブラッシングしましょう。重度の障害があり、誤嚥をする危険性が高い場合には歯ブラシではなくガーゼや綿棒を使用して汚れを拭き取ります。水やうがい薬を使用しながら汚れを取り除いていきましょう。

口内の粘膜の掃除をする

歯だけではなく粘膜の掃除もしていきます。掃除するべきところは次のような場所です。

  • 頬の内側
  • 上あご
  • 歯茎

傷がつかないようにスポンジ製のブラシや口腔ケア用のウェットティッシュを使用して磨いていきましょう。

舌苔の掃除をする

舌の白い苔状の汚れは細菌が集まって形成されたものなので取り除く必要があります。そのまま放置していれば口腔内の環境が悪化してしまうので、舌用のブラシで落としましょう。ただし、デリケートな部分なので優しくこすって汚れを取り除いてください。

内側から頬のマッサージをする

口腔ケアでは、頬のマッサージも欠かせません。歯ブラシの背の部分を使用して頬の内側を押し広げるように上下に動かしましょう。3~4回程度実施すれば、頬のストレッチになります。口が動かしやすくなるので忘れずに実施してください。

仕上げにうがいをする

口腔内にある汚れを取り除くためにも、仕上げにうがいをします。水ではなく、洗口液を使用しても良いでしょう。

入れ歯や義歯を洗浄する

入れ歯や義歯があれば、口腔ケアをする際に一緒に洗浄しましょう。正しい方法をご紹介していきます。

義歯をすすぐ

最初に、義歯に付着している大まかな汚れを取り除くためにすすぎをします。水道水で洗浄するだけで問題ありません。

義歯用のブラシで洗う

次に、義歯を磨いていくのですが、歯と一緒の歯ブラシではなく義歯専用の歯ブラシを用意して磨いていきましょう。隙間にある汚れも取り除くように入念にブラッシングしてください。

義歯洗浄剤につける

ブラッシングをしてすすいだ後は、義歯洗浄液につけ置きをします。付着している細菌を取り除けるので効果的です。ただし、時間のない時には省いても構いません。

口腔ケアをするメリット

口腔ケアをするとどんなメリットが得られるのかご紹介していきます。重要性を知るためにも参考になる情報です。

唾液の分泌が促される

高齢になると口腔内の自浄作用が低下するため、細菌や食べかすが残りやすい状態となります。それに加えて唾液の分泌も低下していくため、口のなかが乾燥してドライマウスを引き起こしてしまうのです。ドライマウスになると雑菌の繁殖を促し、虫歯や歯周病、口臭にもつながるでしょう。

口腔ケアをすると口の中が清潔になり、唾液の分泌が促されます。唾液腺を刺激すればさらに分泌は盛んになるので、歯ブラシは重要な要素なのです。

認知症の予防に効果がある

実は、歯の数は認知症に関係しているのです。歯がなく入れ歯をしている人は、20本以上歯が残っている人と比較すると1.9倍認知症になる確率が高いというデータがあります。口腔内の環境が悪いために食べ物があまり噛めていない人は、よく噛める人と比較すると1.5倍認知症になる確率が高くなるのです。

噛む刺激によって神経細胞が増えるといった研究があるなど、口腔内の環境は認知症に大きな影響を与えているのです。歯を失わないようにしっかりとケアをしていきましょう。

病気予防

口腔ケアをすると病気の予防にもなります。口の中にはさまざまな細菌が存在していますが、なかには食中毒を引き起こす黄色ブドウ球菌や呼吸器感染症を起こす要因でもある肺炎桿菌といった菌もいるのです。ケアをしなければ菌が増加し、感染症にかかりやすくなってしまいます。高齢者が病気になると危険な場合もあるので、リスクを抑えるためにも口腔ケアを怠らないようにしましょう。

口腔ケアをしないと起こる可能性があるリスク

口腔ケアを怠るとどんなリスクがあるのでしょうか?健康に過ごすためにも知っておきましょう。

虫歯や歯周病になる

高齢になると歯茎が下がり歯の根元が見えやすくなります。そのため、根元部分から虫歯になりやすいのです。ケアを入念にしていれば虫歯予防ができますが、ケアを怠れば虫歯になる確率は高いでしょう。

また、上記でも解説したように自浄作用が低下しているので、唾液によって洗浄されるはずだった菌がそのまま残り増殖していきます。そのため、歯周病にかかりやすい状態となっているのです。ケアをしていれば防げるので、毎日のブラッシングは忘れないようにしましょう。

誤嚥性肺炎を引き起こす

食べ物を飲み込む機能が低下すると、食べかすが口のなかに残留します。それが気管に侵入し、口のなかにある細菌も一緒に入り込むと誤嚥性肺炎を引き起こすのです。口腔ケアで食べかすや細菌を抑えれば誤嚥性肺炎は予防できます。しかし、ケアをしなければ誤嚥性肺炎のリスクは高まるでしょう。

栄養不足になる

口腔ケアは栄養不足にも関係があります。口のなかや周辺にトラブルがあれば、食べ物をしっかりと飲み込めません。食事をすることが苦痛となれば、食欲低下を招き脱水や低栄養の状態に陥ってしまいます。口でしっかりと食べられれば低栄養の状態は脱却できます。ケアをして健康的な口腔内になれば栄養状態も回復するでしょう。

引きこもりがちになる

口腔トラブルがあると、舌の動きが悪くなり発音に問題が生じる可能性があります。意思疎通がうまくいかなければ、人とのコミュニケーションを負担に感じてしまうでしょう。口臭の悩みも同様にコミュニケーションに問題が発生するケースがあるので、人との関わり合いを無くさないためにも口腔ケアは大切です。

口腔ケアで使える用品を一覧でご紹介

口腔ケアで使用できるアイテムを一覧でご紹介していきましょう。

アイテム 使い道
歯ブラシ 口腔ケアをするには欠かせないアイテムです。手や腕が不自由であれば電動歯ブラシも使用できます。
歯間ブラシ 歯と歯の隙間にある歯垢や汚れを取る際に使用できます。
スポンジブラシ 粘膜の掃除に役立つアイテムです。
舌用ブラシ 舌を磨く際に使用します。舌苔を取り除く時にも使えます。
義歯用ブラシ 広いブラシと狭いブラシがあり歯や歯茎、歯間や金属部分に使い分けて磨けます。
ウェットティッシュ マッサージや体操時に便利なアイテムです。使い捨てできるので衛生面でも問題ありません。
うがい受け ベッドの上でも無理なくうがいをしやすいよう使用されるアイテムです。
保湿剤 口腔内専用の保湿剤です。口のなかの乾燥を和らげる時に活用します。スプレータイプやジェルタイプ、マウスウォッシュタイプがあります。

健康的に過ごすためには口腔ケアは必須

口腔ケアは、高齢者にとって欠かせません。上記でご紹介したように、口腔ケア用品を使用しながらリスクを抑えるためにも入念にケアをしていきましょう。口腔ケアの手順については、専門の歯科医師などに相談するのも効果的です。家族の歯を磨く作業に慣れていない場合は、専門家のアドバイスを参考にして正しい方法で磨き、雑菌の繁殖を抑えて清潔さを保ちましょう。

この記事のまとめ

  • 口腔ケアを怠るとさまざまなリスクがある
  • 口腔ケアには器質的口腔ケアと機能的口腔ケアがある
  • 口腔ケアは病気予防に役立つ

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