「介護のほんね」地域医療支援チームについて
病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)や看護師からの依頼を受け、患者さんが退院後に安心して生活できる老人ホームをご提案し、ご入居までをサポートしています。
譜読みと作曲が趣味の音楽少年
まず簡単にご経歴を教えてもらえますか?
社会人になってまずは信用金庫に入りました。親族に金融機関に勤めている人が多くてその影響もあって。私は埼玉の浦和で育ったんですが、銀行だと全国転勤があるのが嫌で地域密着型の信用金庫に入りました。そこでいろいろな経験をさせてもらって、成績面でも自信になるような評価をいただけて、ただ……。
ただ?
ただ、金融機関の業務は毎日決まった流れに沿って行うことが大切なため、自分で創意工夫できる範囲が限られる印象を抱いていました。それで「金融機関にずっと勤めるのはどうかな」という思いもあって、展覧会の企画運営や関連書籍の出版をおこなう会社に転職しました。
深野さんはもともと音楽や美術がお好きだそうですね。
はい、昔から油絵を描いたりピアノを弾いたりしています。
すごい! (同じ地域医療支援チームの)澤村さんもピアノを習っていたと聞きました。
彼は中学までですが、私はその逆で中学からピアノを始めました。背が高かったので部活はバレーボール部でアタッカーをやってましたけど、休み時間は交響曲の譜面を読んだり、家では音楽ソフトで弦楽四重奏を作曲したりするような感じでした。
さ、作曲まで! 本当にお好きなんですね。
ええ、それでその会社には10年ほど勤めました。海外出張も多くて楽しかったですね。
出張にはどちらへ?
一番よく行ったのはパリですね。
うわあ、パリ……。でもなぜその仕事を辞めてしまったんですか?
私の祖父母が老人ホームに入ったんですよ。大腿骨を折ってしまって自宅での生活が難しくなって。海外での仕事は充実していたんですが、その知らせを聞いたときに「国内に目を向ければ高齢化問題がある。それなら国内でもっとできることがあるんじゃないか」と思ったんです。
新規事業の立ち上げ……営業に向かった先は?
そんな経緯でメディパスという会社で訪問診療、当時は訪問歯科診療の導入支援をしていました。訪問先には有料老人ホームも多かったせいか、ある日、老人ホームの紹介事業(旧:ゴイカのかいご)を立ち上げるよう指示されまして。
急展開ですね。ゼロから事業を立ち上げるのは大変だったかと思います。
はい、大変でした(笑)。何にもわかってませんでしたから。退院支援の相談をもらうために片っ端から病院を訪問しました。今となっては笑い話なんですけど、老人ホームの紹介事業なのに小児専門病院にまで訪問していましたからね。「うちは小児専門の病院なので対象者はいませんよ」と言われて初めて気が付きました。
よくそこまで丁寧に対応してくださいましたね。
本当に介護保険制度や老人ホームの費用の仕組みもよくわかっていませんでした。介護サービス費や医療費は一人ひとり違うので、パンフレットに掲載されているのは毎月決まってかかる利用料だけですよね。
月額利用料に何が含まれて何が含まれないのか、総額はいくらになるのか、初めて見る方にはわかりづらいですよね。そういった自分自身がつまづいた経験が生かされることもありますか?
そうですね。あのときの経験があるからこそ、ご家族の気持ちがわかる部分はあると思います。
“当たり前”を愚直に実践する
ほかの相談員から「深野さんは施設の情報をよく把握している、施設の方と良い関係性を築いている」と聞きました。何か心がけていることがあるんでしょうか?
当たり前かもしれないんですが、ご家族を施設に案内する前には必ず現地を訪れて、当日案内を担当してくださる方にご挨拶しています。やはり自分の知らない施設、行ったことのない施設を提案するのは抵抗がありますし、見学当日にご家族の前で「初めまして」って名刺交換するのはちょっと……。
体裁が悪いと言うか……。
実はこれも自分で「失敗したな」という経験があって。ご家族をお送りする途中に「深野さん、これから行く施設は行ったことがあるんですか?」と聞かれたときに「いえ、今日が初めてです」と答えたら、車内がシンとしたんですよ。
大手法人が運営する施設だと「同じブランドの別の施設に行ったことはある」ということはよくありそうです。
そうなんです。同じブランドだと人員体制やサービス、料金はある程度標準化されているから、知っている気になってしまうんですよね。でもその経験から「それもちょっと違うんじゃないかな」と思い始めて。同じブランドの施設でも学校の近くにあればにぎやかだし住宅街の中にあれば静かだし。住まいに求める条件は一人ひとり違いますが、信頼して住まい探しを任されている以上、そこまで把握しているのが当たり前と考える方もいるでしょう。
確かに、同じブランドでも「施設長がどのような考えで運営しているか」によってずいぶん雰囲気が違ったりしますもんね。
そうですね。この点については心がけています。
“対面”ではなく“伴走”する仕事
入居相談で嬉しかったエピソードはありますか?
ご家族とはショートメッセージやメールでやりとりすることが多いんですが、感謝のメッセージをいただくと嬉しいです。最近いただいたものだと「私のような人を助けてあげてください」と。
ああ……、そこまで言われるとグッと来ます。
見学の帰り道に車中で「本当にいい施設を紹介してくれてありがとうございます」って涙を流す方もいらっしゃいますね。みなさん、「この先どうなるんだろう」「合う施設は見つかるんだろうか」「お金はどうなるんだろうか」という不安のただ中にいらっしゃるので、条件に合う施設が見つかると嬉しい……というより安堵感からか涙が出るんでしょうね。
ほっとして涙が出るんですね。
本当に困っている方の役に立てるというのはやりがいを感じる部分です。お世話になっている入院先の病院からのご紹介なので、初対面の私たち(入居相談員)のことを無条件に信頼してくださっていますし。今まで携わってきた仕事はお客様と相対しますが、私たちの場合は隣に寄り添うというか、伴走する感じ。
ゴールに向かって並んで走る、ということですね。では、最後に老人ホームを探す上で大切なことを教えてもらえますか?
老人ホームは数がとても多いので、ぜひ私たちのような専門家を頼っていただければと。私たち地域医療支援チームの強みは、その施設の照明の明るさや雰囲気まで知っていることなので、うまく使っていただければなと思います。
ホームページやパンフレットの写真はプロが撮影したものなのでどれもきれいです。けれど、それがかえって入居したあとの生活をイメージしにくくしている側面もあります。ですので、見学のときはぜひ入居されている方の表情に注目してください。
なるほど。私たちがお手伝いできるのは入居するまでですが、ご本人やご家族にとってはそこからがスタートですもんね。
その通りです!
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この記事の寄稿者
介護のほんね編集部
年間1万件以上の老人ホーム探しをサポートしている介護のほんね編集部です。介護に関する情報を、認知症サポーターの資格を持つスタッフが正しく・分かりやすくお届けします。