「介護のほんね」地域医療支援チームについて
病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)や看護師からの依頼を受け、患者さんが退院後に安心して生活できる老人ホームをご提案し、ご入居までをサポートしています。
「人のために働こう」と介護業界へ
髙野さんは介護職員として長く働かれていたそうですね。
はい、10年以上は。でもその前は実は理容師でした。実家が床屋だったのでそれを継ぐために理容師になったんですけど、親を裏切って(笑)。
なぜ理容師から介護職に?
親不孝もしたし、このままだと地獄に落ちるなと思って(笑)。
そんなまた(笑)。
ヘルパーになる前に別の仕事も経験したんですけど──。あるとき「もうお金のためではなく人のために働こう」と思って、求人を見て電話して「お給料安くなっちゃうけど大丈夫ですか?」「資格がなくても雇ってくれるなら、それで全然構いません」って介護の世界に飛び込みました。
100点満点の施設はないからこそ
無資格から始めたヘルパーの仕事でしたが、そこから10年以上、管理者(施設長)とか立ち上げとか、有料老人ホームの運営についてはいろいろ携わらせてもらいました。なので、ほかの相談員より厳しい目で施設を見ちゃってる部分はあるかと思います(笑)。
中を知っているからこその厳しさなんですね。
はい。この方だったらもっとこんな感じでお世話すればもっと幸せになれるのにとか、この施設だったらもっとこういう対応もできるのにとか、どうしてもちょっと厳しい目で見ちゃうんですね。
相談員としてのご経験は?
これももう10年近いですかね。
髙野さんが入居相談をする上で心がけていることは何ですか?
ご家族の希望にどこまで寄り添えるかだと思っています。ただ、100点満点の施設を提案したいけど、(ご家族のご要望に対して)100点を出せるところってまずないので、そうなると70点とか80点の合格点を出せる施設を提案したり、代替案を出したり。
代替案?
例えば、経管栄養を経鼻からCVポートや胃ろうにすることで入居できるのであれば可能か確認してみたり。リハビリに特化した施設を希望されていても、リハビリではなくマッサージではいけないのかとか。
そもそもご家族が考えているリハビリとご本人が考えているリハビリに差があるケースが多いんです。家に帰るためのパワーリハビリがどういうものなのか、今ある機能を維持するための生活リハビリがどういうものなのか、説明して認識を擦り合わせていただかないと、入居するご本人がつらくなってしまいます。
もちろんご家族やご本人の意見だけで決められることではないので、施設や病院も歩み寄ることで四者が幸せになれる提案ができれば。考え方を少し変えることで全員が幸せになれる方法があると思うので、そこに気付けるような提案ができればいいなと思います。
「いい施設」とは?
「いい施設」というのが「誰にとっていい施設」なのかが問題ですね。
そうです。ご家族はホテルのような施設での生活に憧れると思うんですけど、ご入居される80代、90代の方にとってそれが快適かと言われると必ずしもそうではない。同じ宿泊施設でも民宿や旅館のような雰囲気のほうが居心地がいいかもしれない。
ご家族も施設探しは初めてという方がほとんどでしょうから「新しい施設がいいわ」って思っちゃいますよね。
そうなんですよね。先週も1年以上前に入居のお手伝いさせていただいたご家族からお電話をいただいたんです。逝去されたというお話だったんですが。
そうでしたか……。
その方が入居先を決める際に候補に残っていたのが、ご自宅から近い施設と少し離れているけどサービスが整った施設でした。
もともとご本人は油絵が趣味だったのでそういうことができる施設がいいというのがご家族の意見だったんですが、私はご自宅から近い施設をおすすめしました。もうかなりご高齢で24時間看護が必要なお身体状態でしたから、ご家族がより多く会いに行ける距離の施設のほうがいいと思ったんです。
最終的にご家族が選んだのは私がおすすめしたご自宅から近い施設でした。でも電話口でも「入居したあとも髙野さんがこの施設を勧めた理由が完全に理解できていなかった」と。ただ、施設で看取ることになったときに「毎日のように施設に顔を出せたし、いろいろな形で施設からのフォローを感じられたので、最後の最期で髙野さんの言ったことの意味がわかった」と感謝を伝えていただいて、嬉しかったですねえ……。
「私に相談して損はないと思います(笑)」
施設選びって「お部屋の広さはこのくらい」「設備はこのくらい」「お値段はこのくらい」ってスペックに目が行きがちです。
不動産みたいにね。でも介護は中で提供されているものなので。
介護職員としての経験が生かされている部分はありますか?
見学中に介護職員のちょっとした所作、立ち位置、車いすの押し方が気になることがあります。ナースコールのランプがずっと光っていたりね。直接「あれはどうなんでしょうか?」と指摘することもあります。
何か気になることがあっても大抵の人は黙って距離を取るのが普通だと思います。それに現場を知っている人が言うと説得力も違うのでは?
いや、うるさい親父だと思われてると思います(笑)。
ただ、介護業界も狭いので、元同僚が提案先の施設長になっていたりする。受け入れ実績のない方でも「こうすれば受け入れ可能なんじゃないか。僕だったら絶対こうする」という提案に「髙野さんが言うならできるかもしれない」と応じてくれることもある。
信頼関係があるんですね。
聞く耳を持ってくれますね。だから私に相談して損はないと思います(笑)。
それに「こういう方も受け入れられるんだ」という実績ができれば、施設にとっても、今入居している方、これから入居される方、みんなにとっていいことだと思うので。
施設見学の3つのポイントは第一印象、挨拶、そして?
最後に老人ホーム探しで大切なことを何か教えてもらえませんか?
私が施設見学に行くご家族にお伝えしていることは三つです。一つは玄関に入ったときの第一印象、二つ目は職員の挨拶、三つ目はにおいです。
におい?
排泄介助のときはもちろんしょうがないんですが、それ以外のときに排泄物のにおいが漂っているのはいけません。もしもそこが自分の家ならなんとかしようとするでしょう。それを解消しようとしないのは、施設の職員がそこを“家”だと思っていない証拠です。
なるほど……!
介護の世界は結局人と人です。介護をするのは人ですから。見学のときはその三つを見てください。
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この記事の寄稿者
介護のほんね編集部
年間1万件以上の老人ホーム探しをサポートしている介護のほんね編集部です。介護に関する情報を、認知症サポーターの資格を持つスタッフが正しく・分かりやすくお届けします。