慢性硬膜下血腫とは|症状・手術法と費用・治療法など

慢性硬膜下血腫は死に直結する恐れはないものの、機能障害や言語障害、記憶障害といったように様々な恐ろしい症状を引き起こす病気です。高齢者によく見受けられる病気で、何気ないことでも発症してしまうので、注意が必要となります。

今回は、慢性硬膜下血腫に不安を感じている人のために、慢性硬膜下血腫が起こる詳しい原因や症状、治療法など、その他役立つ情報をたくさんご紹介していきます。

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慢性硬膜下血腫とは|症状・手術法と費用・治療法など
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。

慢性硬膜下血腫とは

慢性硬膜下血腫とは、脳と頭蓋骨の下にある脳を覆っている硬膜との間に血液が溜まり腫瘍ができる病気です。通常は1~2カ月かけてじわじわと血が貯まっていく傾向にあります。これは主に頭部への外傷が原因であり、記憶に残らず忘れてしまうような軽度の外傷でも発症してしまいます。そのため、頭部へのダメージが原因であったことが記憶に残っている人が少ないのです。

年間の発生額度は人口10万人に対して1~2人とされています。どの世代の人にも見られる病気ではありますが、特に体が不自由になり転倒しやすい高齢者に多く見受けられます。

慢性硬膜下血腫は基本的には正しく診断され適切なタイミングで治療していけば完治できる病気です。血腫は右か左のどちらかに発生することがほとんどですが、人によってどちらの脳にも発生する場合があります。左右どちらにも腫瘍が見られるのは約10%の患者とかなり稀ではありますが、そうなったとしても正しく治療していけば完治が可能です。

慢性硬膜下血腫の原因

頭部への外傷が主な原因となる慢性硬膜下血腫ですが、実はそれだけではなく様々なものが原因としてつながってきているのです。続いては慢性硬膜下血腫を引き起こす原因をいくつか見ていきましょう。

頭部の打撲

頭部への打撲が慢性硬膜下血腫の原因と多くにはなっていますが、外傷と言っても激しい怪我にまでつながった人は少ない傾向にあります。柱や角に頭をぶつけてしまうだけではなく、転んで尻もちをついてしまった衝撃で起こった頭部への軽度のダメージといったように、単に頭をぶつけたからと言って発生するわけではありません

原因が特定できないケースは多く、さらには慢性と名前が付くように外傷が起きて徐々に血が溜まっていき、1~2カ月たってから症状が出てくる場合が多いため、慢性硬膜下血腫を患っていることを理解していない患者は多いです。

多量の飲酒

多量の飲酒が日課になっている人も危険です。アルコールを普段からたくさん摂取している人は脳が委縮しやすい傾向があります。脳は委縮すると脳周辺に空間ができやすく、出血が起きてしまうと血が溜まりやすい環境になってしまっていくのです。

この状態で頭部への外傷があると高確率で慢性硬膜下血腫が起きてしまうでしょう。日頃からアルコールの多飲を避けることは慢性硬膜下血腫の予防に繋がるだけではなく急性膵炎や肝臓の機能の低下を防ぐのにも役立ちます。適量であれば問題はありませんがあまりにも多くの飲酒があるとフラフラで立てなくなり転倒にも繋がる恐れがあるので止めましょう。

抗凝固剤の服用

血栓の生成を防止し血液をサラサラにすることができる抗凝固剤ですが、こちらも慢性硬膜下血腫の原因となっています。その理由は抗凝固剤を服用することで見られる特有の、打ち身をすると内出血しやすくなる副作用が原因です。この原因は足や腕といったような場所だけではなく、頭の中でも起こり慢性硬膜下血腫に繋がってしまいます。

高齢者になると抗凝固剤を服用する人は多いでしょう。抗凝固剤には病気の再発を予防するためにも服用されているためたくさんの人が服用するかと思いますが、副作用についてもしっかりと理解をしておく必要があります。

高確率で起きてしまう慢性硬膜下血腫を引き起こさないためにも杖や車いすを利用したり、バリアフリーの環境に整えたりするなど頭打たないように対策することが必要になります。

慢性硬膜下血腫の症状

ここからは慢性硬膜下血腫の症状についてご紹介していきます。感知できる病気ではあるものの、様々な症状に悩まされてしまいます。

強烈な眠気・倦怠感

症状を訴える人の多くは、最初はなんとなくぼんやりとしてしまう症状が見られます。次第に強い眠気と倦怠感が出始めて活動力が低下したことで初めて身体に違和感を覚える人がほとんどです。これは頭部を撃った直後であれば問題はなく、2週間後~3ヵ月後くらいに症状が徐々に出始めていきます。

血腫が増大していくと脳の機能障害である麻痺を感じさせる前に頭痛も引き起こします。強烈な眠気や倦怠感に加えて頭痛がおさまらないと感じたら慢性硬膜下血腫である可能性が高いでしょう。血腫がさらに大きくなると、その後はまた別の症状を引き起こし、いつもとは違う違和感に悩まされるのです。

ふらつき・手足のしびれ

慢性硬膜下血腫となった人の多くはふらつきや手足のしびれを感じます。血腫が大きくなっていくことで、圧迫されていく脳は頭痛の他脳の様々な症状を引き起こします。右の大脳であると左半身の麻痺。左の脳であれば右半身の麻痺といったように筋力の低下を感じてしまうのです。

そして歩行障害にまで発展する人は多く、約63%もの人が歩けなくなるほどにまでなります。麻痺し運動機能が低下していくことのみならず、ひどい場合には言語障害もきたすことがあります。言語障害に関しては1.8%と少ないですが、自由にしゃべられない生活にストレスも抱えてしまうことでしょう。

記憶障害

慢性硬膜下血腫は記憶障害も一つの症状として見られる病気です。ふらつき・手足のしびれといった症状の後、さらに脳圧迫の影響が強まると血腫が大きく脳を偏位させてしまい髄液の循環路をつぶしてしまうのです。そうなると水頭症を引き起こし脳の多くの機能障害がおこります。

脳の機能障害は記憶力や判断能力が低下するだけではなく、直前の行動を忘れてしまい、時には覚えていたはずの身近な人の名前すらも出てこなくなります。これは慢性硬膜下血腫になった人の24.6%もの人が発症すると言われており、多くの人が記憶障害に悩まされる可能性があるのです。ひどくなれば意識障害や痙攣する恐れもあります。

失禁

慢性硬膜下血腫となった人は失禁も症状として現れます。突然失禁したとなると単に尿道括約筋不全による尿道機能が衰えたのだろうと感じてしまう人は多いですが、実は慢性硬膜下血腫だったとして、驚く人は多いです。

これは体が麻痺してしまうタイミング見られる症状になるので、以前から眠気や倦怠感が酷いと訴える人の場合には特に注意しましょう。

慢性硬膜下血腫の検査・診断方法

慢性硬膜下血腫はほとんどの場合は検査や診断によって発見できる病気だとされています。それではどういった方法で病気を見つけ、他の病気と区別していくのでしょうか?

CT

慢性硬膜下血腫の検査は基本的に頭部CTを用いていきます。CTで頭の内部を見ていき問題がないかを確認するのですが、きっかけとなる頭部外傷したすぐ後では頭部CTで異常が認められないことが多いです。

症状が見られるほどになると血腫によって脳が圧迫されていることが鮮明に確認できるようになるので、頭部をぶつけたからと言ってすぐに検査や診断を行う必要もないでしょう。眠気や倦怠感、頭痛といったはっきりとした症状を抱えるまで医師も総合的には判断を下せないようになっています。

MRI

MRIは慢性硬膜下血腫の症状があるもののCTではしっかりと血腫が確認できない場合に用いられる診断です。慢性の血腫になるとMRIでは特に特徴的な所見を示します。それは脳と頭蓋骨の間に貯留した血腫が、三日月状の影となって現れるのです。

よりはっきりと診断でき有効的な方法として多くの患者発見に繋がっています。

慢性硬膜下血腫の治療法

進化した医療によって完治できるとされてはいるものの、どういった手術や治療が必要になってくるのでしょうか?ここからは重要な慢性硬膜下血腫の治療法についてお伝えしていきます。

外科的治療

慢性硬膜下血腫の治療法の代表となるのがこの外科的治療です。外科的治療とは薬物療法ではなく、手術によって治療していく方法です。主な手術は頭部を大きく開くことによって血腫を取り出す手術が用いられていましたが、今ではそのような大々的な手術は少なくなっている傾向にあります。

どのような手術をするのかというと局所麻酔をしてから頭蓋骨に直径約1cm程度の小さい穴を開けて行うのが一般的となってきています。開けた穴から細い管を通して血腫を除去していくのです。この手術になってからは脳の出血原因となる被膜の炎症性変化を少なくできるといってメリットがあるとされています。

血腫というのは被膜に包まれた袋状であります。手術内容的には血腫洗浄術で血腫被膜を残したままとなりますが、術後は回復する見込みが非常に高いので、最近では頭部に小さな穴を開ける手術が主流になっています。

保存的療法

一方で保存的療法というのは非手術療法のことを指します。こちらで回復させていく人はあまり多くはなく、基本的には外科的療法を用いて病気を取り除いていきます。しかしながら呼吸障害があって局所麻酔ができない場合や、患者・家族の承諾が得られない場合は保存的療法を選ぶ他ありません。

保存的療法は薬によって回復に向かわせる療法です。浸透圧利尿剤を用いた薬物で治療していきます。これは連日点滴投与をしていくもので、外科的療法以上に長期的になる傾向にあり、長い期間に渡って連用が必要です。

連用するには高齢者であると電解質異常といった合併症の問題があるため慎重に投薬することが求められます。そのため入院が必要で、外科的療法よりも長期化することから、多くの人には選ばれてはいないものの、どうして外科的療法を選びたくないという場合には、こちらも視野に入れておきましょう。

慢性硬膜下血腫の手術費用は?

慢性硬膜下血腫の手術費用は入院費含めて5~20万円ほどになると言われています。この医療費の違いは何割負担するかによって違いがあり、病院によっても違います。高齢者医療証を持っているのであれば10万円以下で済む病院が多いようです。

限度額適用認定証を持っている人は、診療する病院によって設定されている一定額を超えると自己負担限度額が計算され、費用を安く収めることができるので有効的に活用していきましょう。

慢性硬膜下血腫の術後のケア

慢性硬膜下血腫の手術後は入院となり大体の病院が1週間ほどで退院できるようになっています。術後すぐは水分が摂れません。手術が終了してから3時間後に初めて水分を飲めるのですが、1日経たないとご飯も摂れないようになっています。

またトイレに関しては術後すぐであると尿に管を入れるためトイレにいけません。1日又は2日後にはトイレに行くことができます。シャワーは7日経つまでできません。術後の検査には採決やレントゲン、CT検査があります。入院中毎日あるわけではなく2回ほどで済み、比較的に自由な入院生活となるでしょう。

しかしながら慢性硬膜下血腫は、残念ですが約10%の確立で再発するとされている病気です。再発の可能性が高いと言われる患者は過剰のアルコール摂取を頻繁にしてきた脳の萎縮が強い人が挙げられます。また、長らく放置して摂取が大量に溜まっていた場合もそれに該当します。

さらには肝臓の機能が低下している場合は抗凝固薬を飲んでいる人でも再発しやすいので、手術が終わったからといって気を抜いてはいけません。術後もCTやMRIなどの検査を活用して再発防止に努めていき、できることならばお酒は控えるようにしましょう。

後遺症は残るか

慢性硬膜下血腫は基本的には後遺症を残すことなく改善できる病気です。ただ、人によっては再発することもあるので、再発させないためにもアルコールの摂取を控えて、できることであれば抗凝固剤は服用しないようにすべきです。

思わぬところに慢性硬膜下血腫のリスクはある

慢性硬膜下血腫は頭部への打撲のみならず、直接頭部外傷がない転倒でも起こりうる病気です。孫と遊んで脳が揺すり動かされたことでも十分慢性硬膜下血腫の原因になるため、なかなか慢性硬膜下血腫だと知ることができない患者は多いです。引き起こる症状をよく確認して、自分自身や家族が慢性硬膜下血腫の疑いがないかどうか確かめてみましょう

また、治療法に関しては外科的療法と保存的療法があるものの、外科的療法による頭部に小さな穴を開けて治療する手術が一般的です。費用や入院日数に関しては病院によって違いがあるので、詳しくは各病院へ確認してみてください。後遺症はないものの再発することがまったくないわけではないので、慢性硬膜下血腫にならないよう予防していくことが大事です。

この記事のまとめ

  • 慢性硬膜下血腫は頭部以外を強く打っても起こりうる病気
  • 症状は様々で放置すると悪化してしてしまう
  • 治療法は手術が一般的で後遺症は残りにくい