慢性硬膜下血腫とは|症状・手術法と費用・治療法など

慢性硬膜下血腫は死に直結する恐れはないものの、機能障害や言語障害、記憶障害といったように様々な恐ろしい症状を引き起こす病気です。高齢者によく見受けられる病気で、何気ないことでも発症してしまうので、注意が必要となります。

今回は、慢性硬膜下血腫に不安を感じている人のために、慢性硬膜下血腫が起こる詳しい原因や症状、治療法など、その他役立つ情報をご紹介していきます。

慢性硬膜下血腫とは|症状・手術法と費用・治療法など
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

慢性硬膜下血腫とは

慢性硬膜下血腫とは、頭蓋骨の下にあり脳を覆っている「硬膜」と「脳」との間に血液が溜まり腫瘍ができる病気です。通常は1~2カ月かけてじわじわと血が貯まっていく傾向にあります。

慢性硬膜下血腫は、主に頭部への外傷が原因です。記憶に残らず忘れてしまうような軽度の外傷でも発症してしまいます。そのため、本人には心当たりがなくても慢性硬膜下血腫が起きていることもあるのです。

年間の発生額度は人口10万人に対して1~2人とされています。どの世代の人にも見られる病気ではありますが、特に体が不自由になり転倒しやすい高齢者に多く見受けられます。

慢性硬膜下血腫は、基本的には正しく診断され適切なタイミングで治療していけば完治できる病気です。血腫は右か左のどちらかに発生することがほとんどですが、人によってどちらの脳にも発生する場合があります。左右どちらにも腫瘍が見られるのは患者のうち約10%とかなり稀ではありますが、そうなったとしても正しく治療すれば完治が可能です。

慢性硬膜下血腫の原因

頭部への外傷が主な原因となる慢性硬膜下血腫ですが、実はそれだけではなく様々な要因が影響しています。続いては慢性硬膜下血腫を引き起こす原因をいくつか見ていきましょう。

頭部の打撲

慢性硬膜下血腫の原因の多くは、頭部への打撲です。ただし外傷といっても、激しい怪我によるものは少ない傾向にあります。「柱や角に頭をぶつけた」などの分かりやすいものだけではなく、「転んで尻もちをついてしまった」といった衝撃による頭部への軽度のダメージで起こることもある疾患です。

原因が特定できないケースは多く、さらには慢性と名前が付くように外傷が起きて徐々に血が溜まっていき、1~2カ月たってから症状が出てくる場合が多いため、慢性硬膜下血腫を患っていることを理解していない患者は多いです。

多量の飲酒

多量の飲酒が日課になっている人も危険です。アルコールを普段からたくさん摂取している人は脳が委縮しやすい傾向があります。脳が委縮すると脳周辺に空間ができやすく、出血が起きると血が溜まりやすい環境になってしまっているのです。

この状態で頭部への外傷があると、慢性硬膜下血腫が起きる可能性も高くなるでしょう。日頃からアルコールの多飲を避けることは、慢性硬膜下血腫の予防に繋がるだけではなく急性膵炎や肝臓の機能の低下を防ぐのにも役立ちます。また、あまりにも大量に飲酒すると、フラフラで立てなくなり転倒にも繋がる恐れがあるので止めましょう。

抗凝固剤の服用

血栓の生成を防止し血液をサラサラにすることができる抗凝固剤ですが、こちらも慢性硬膜下血腫の原因となっています。その理由は、打ち身をすると内出血しやすくなるという抗凝固剤特有の副作用が原因です。この副作用は足や腕といった場所だけではなく、頭の中でも起こり慢性硬膜下血腫につながってしまいます。

高齢者になると、病気の再発予防をはじめとする目的で抗凝固剤を服用する人も多いでしょう。その際は、副作用についてもしっかりと理解をしておく必要があります。

慢性硬膜下血腫を引き起こさないためにも、必要に応じて杖や車いすを利用したり、バリアフリーの環境に整えたりするなど頭を打たないように対策することが必要です。

慢性硬膜下血腫の症状

ここからは慢性硬膜下血腫の症状についてご紹介していきます。比較的感知しやすい、さまざまな症状があります。

強烈な眠気・倦怠感

症状を訴える人の多くに、最初はなんとなくぼんやりとしてしまう症状が見られます。次第に強い眠気と倦怠感が出て活動力が低下したことで初めて、身体に違和感を覚える人がほとんどです。頭部にダメージを受けた直後は問題なく、2週間~3カ月後くらいに症状が徐々に現れてきます。

血腫が増大していくと、脳の機能障害である麻痺を感じる前に頭痛も引き起こします。強烈な眠気や倦怠感に加えて頭痛がおさまらないと感じたら、慢性硬膜下血腫である可能性が高いでしょう。血腫がさらに大きくなると、その後はまた別の症状を引き起こし、いつもとは違う違和感に悩まされるのです。

ふらつき・手足のしびれ

慢性硬膜下血腫となった人の多くはふらつきや手足のしびれを感じます。血腫が大きくなっていくことで脳が圧迫され、頭痛のほかに脳の様々な症状を引き起こします。右の大脳であると左半身の麻痺、左の脳であれば右半身の麻痺といったように筋力が低下することが特徴です。

さらに歩行障害に発展する人は多く、約63%の人が歩けなくなるほどになります。運動機能の低下のみならず、ひどい場合には言語障害もきたすことがあります。言語障害に関しては1.8%と少ないですが、自由に話せない生活にストレスも抱えてしまうことでしょう。

記憶障害

記憶障害も慢性硬膜下血腫の症状の一つです。脳圧迫の影響が強まると、血腫が大きく脳を偏位させてしまい髄液の循環路をつぶしてしまいます。そうなると水頭症を引き起こし、脳の多くの機能障害が起こります。

記憶障害が生じたら、直前の行動を忘れてしまい、ときには覚えていたはずの身近な人の名前が出てこなくなることもあります。慢性硬膜下血腫を患った人の24.6%が発症するといわれており、多くの人が記憶障害に悩まされる可能性があるのです。ひどくなれば意識障害やけいれんを引き起こす恐れもあります。

失禁

慢性硬膜下血腫になった結果、失禁してしまうこともあります。突然失禁すると、単に尿道機能の衰えを疑う人が多いでしょう。実は慢性硬膜下血腫だったと知って、驚く人は多いです。

失禁は体が麻痺してしまうタイミングで見られる症状のため、以前から眠気や倦怠感がひどいと訴える人の場合には特に注意しましょう。

慢性硬膜下血腫の検査・診断方法

慢性硬膜下血腫は、ほとんどの場合は検査や診断によって発見できる病気だとされています。それではどういった方法で病気を見つけ、他の病気と区別していくのでしょうか。

CT

慢性硬膜下血腫の検査は、基本的に頭部CTを用いておこないます。CTで頭の内部の画像を見て、問題がないかを確認します。なおきっかけとなる頭部の外傷を受けたすぐ後では、頭部CTで異常が認められないことが多いです。

前述したような症状が見られるほどになると、血腫によって脳が圧迫されていることが鮮明に確認できるようになります。反対に、症状を抱えるまでは医師も判断を下せないケースが多数です。頭部をぶつけたからと言って、すぐに慢性硬膜下血腫だという診断にはならないでしょう。

MRI

MRIは慢性硬膜下血腫の症状があるもののCTではしっかりと血腫が確認できない場合に用いられる診断です。慢性の血腫になるとMRIでは特に特徴的な所見を示します。それは脳と頭蓋骨の間に貯留した血腫が、三日月状の影となって現れるのです。

よりはっきりと診断できる有効な方法として、多くの患者の発見につながっています。

慢性硬膜下血腫の治療法

慢性硬膜下血腫は多くの場合、完治が可能です。では、どういった手術や治療が必要になるのでしょうか。ここからは慢性硬膜下血腫の治療法についてお伝えしていきます。

外科的治療

慢性硬膜下血腫の治療法の代表となるのが外科的治療です。外科的治療とは、手術で原因を取り除く方法です。

局所麻酔をしてから、頭蓋骨に直径約1cm程度の小さい穴を開けておこなう手術が一般的となっています。開けた穴から細い管を通して血腫を除去していく方法です。この術式は脳の出血原因となる被膜の炎症性変化を少なくできるというメリットがあるとされています。術後は回復する見込みが非常に高いので、最近では頭部に小さな穴を開ける手術が主流になっています。

なお従来は、頭部を大きく開いて血腫を取り出す手術が用いられていましたが、今ではそのような大々的な手術は少なくなっている傾向です。

保存的療法

一方で保存的療法というのは非手術療法のことを指します。保存的療法が選択されることはあまり多くなく、基本的には外科的療法を用いて病気を取り除いていきます。しかしながら、呼吸障害があって局所麻酔ができない場合や、患者・家族の承諾が得られない場合は保存的療法を選ぶほかありません。

保存的療法では、浸透圧利尿剤を用いた薬物で治療していきます。連日の点滴投与をおこない、外科的療法以上に長期的な治療が必要です。

高齢者の場合、電解質異常といった合併症の問題があるため慎重に投薬することが求められます。そのため長期間の入院が必要となることから、あまり選ばれない方法となっています。

慢性硬膜下血腫の手術費用は

慢性硬膜下血腫の手術費用は、入院費を含めて5~20万円ほどになるといわれています。医療費の負担割合によって、また病院によっても異なります。高齢者医療証を持っている人であれば、10万円以下で済む病院が多いようです。

限度額適用認定証を持っている人は、診療する病院によって設定されている一定額を超えると自己負担限度額が計算され、費用を安く収めることができるので有効的に活用していきましょう。

慢性硬膜下血腫の術後のケア

慢性硬膜下血腫の手術後は、入院が必要です。大体の病院が1週間ほどで退院できるようになっています。

術後すぐは水分が摂れません。手術が終了してから3時間後に初めて水分を飲め、食事の開始は翌日以降となります。また排泄に関しては、術後すぐはトイレに行けません。1日~数日後にはトイレに行くことができます。

術後の検査には採血やレントゲン、CT検査があります。入院中毎日あるわけではなく2回ほどで済み、比較的に自由な入院生活となるでしょう。

手術を受ければ、いったんは治療が終了となります。しかし残念ながら慢性硬膜下血腫は、約10%の確立で再発するとされている病気です。再発の可能性が高い人は、過剰のアルコール摂取を頻繁にしてきた脳の萎縮が強い人が挙げられます。また、長らく放置して血腫が大量に溜まっていた場合も該当します。

さらには肝臓の機能が低下している場合は抗凝固薬を飲んでいる人でも再発しやすいので、手術が終わったからといって気を抜いてはいけません。術後もCTやMRIなどの検査を活用して再発防止に努めていき、できることならばお酒は控えるようにしましょう。

後遺症は残るか

慢性硬膜下血腫は基本的には後遺症を残すことなく改善できる病気です。ただ、人によっては再発することもあるので、再発させないためにもアルコールの摂取を控えて、可能な範囲で抗凝固剤は服用しないといった対策をしましょう。

思わぬところに慢性硬膜下血腫のリスクはある

慢性硬膜下血腫は頭部へのささいなダメージでも起こりうる病気です。孫と遊んで脳が揺すり動かされたことでも十分慢性硬膜下血腫の原因になるため、なかなか慢性硬膜下血腫だと気づかない患者は多いです。症状をよく確認して、自分自身や家族が慢性硬膜下血腫の疑いがないかどうか確かめてみましょう

また、治療法に関しては外科的療法と保存的療法があるものの、外科的療法による頭部に小さな穴を開けて治療する手術が一般的です。費用や入院日数に関しては病院によって違いがあるので、詳しくは各病院へ確認してみてください。後遺症はないものの再発することがまったくないわけではないので、慢性硬膜下血腫にならないよう予防していくことが大事です。

この記事のまとめ

  • 慢性硬膜下血腫は頭部以外を強く打っても起こりうる病気
  • 症状は様々で放置すると悪化してしてしまう
  • 治療法は手術が一般的で後遺症は残りにくい

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