体位変換とは|在宅介護でやる方法・クッションの使い方など

要介護状態が進み、寝たきりになってしまうと、自分自身の力で寝返りを打つことが難しくなってしまいます。ずっと同じ姿勢で寝ていると、肩や臀部(でんぶ:お尻のあたり)など一部に負荷がかかってしまい、褥瘡(じょくそう)、いわゆる床ずれの原因になってしまう可能性があるのです。褥瘡を防ぐために、定期的な体位変換が必要になります。

今回は、体位変換の必要性や実施する頻度、方法、使用できるツール、家族でおこなうのが難しい場合に使える外部サービスについて解説します。

体位変換とは|在宅介護でやる方法・クッションの使い方など
松本健史

この記事の監修

松本健史

合同会社松本リハビリ研究所 所長

理学療法士。佛教大学大学院社会福祉学修士課程修了。専門は生活期リハビリテーション。病院・デイサービス勤務後2014年合同会社松本リハビリ研究所設立。全国の老人ホーム、デイサービス、介護施設でリハビリ介護のアドバイザー、生活リハビリセミナー講師、雑誌・書籍の執筆など活動中『転倒予防のすべてがわかる本 』(講談社)など著書多数。
YouTubeチャンネル「がんばらないリハビリ介護」/オンラインサロン「松リハLAB

体位変換とは

まずは、体位変換とは一体どのような行為を指すのか解説していきます。

体位変換は、褥瘡予防のために必須となる行為です。「体位交換」や「体交」と呼ぶ場合もあります。日本褥瘡学会が手掛けている「褥瘡ガイドブック第2版」では、以下のように定義されています。

ベッド、椅子などの支持体と接触しているために体重がかかって圧迫されている身体の部位を、身体が向いている方向、挙頭の角度、身体の格好、姿勢などを変えることによって移動させることをいう

さらに本書では、体位変換の際の体のポジションに関しては、以下のように記載されています。

運動機能障害を有する者に、クッションなどを活用して身体各部の相対的な位置関係を設定し、目的に適した姿勢(体位)を安全で快適に保持すること

姿勢を変えるだけではなく、体の各部位を相対的な位置関係に整えるためにも体位変換は重要な役割を担っています。

引用:日本褥瘡学会「褥瘡ガイドブック第2版

体位変換することで褥瘡を予防できる

寝たきりの場合に注意しなければいけないのが「褥瘡」です。褥瘡は、体の一部分に負担がかかり続け、皮膚組織の循環障害を起こすものになります。最悪の場合は壊死してしまうこともります。

褥瘡になりやすいのは「寝返りを打つことができない寝たきりの方」「麻痺などの感覚障害によって圧に気が付けない方」「痩せ型で皮膚の老化や骨の突出が著しい方」などです。

寝たきりになった場合、同じ姿勢を取り続けると「関節が固まる」「変形して本来の機能が失われる」などのリスクが生じます。すると、より介護の必要性が高まり、在宅介護が困難になることもあるのです。

しかし、定期的に体位変換をすることで、体の一部に負荷がかかることを防げます。これが褥瘡の予防にもつながるのです。

体位変換をする際の注意点

適切に体位変換をするためには、注意しなければいけないポイントがあります。

体位変換前に、必ず声をかける

突然、体に触れられると驚き、不快感を覚えてしまいます。たとえそれが家族であっても同様です。ですので体位変換をする前に声をかけることをおすすめします。意思をきちんと確認することはもちろん、「首と背中の下に腕を通しますね」「体を右側に向けますね」といったような言葉を掛けると安心して身を任せてもらえます。

皮膚の状態をチェックする

体位変換をする際に、オムツ交換や清拭をするケースもあります。その際に、皮膚の状態をチェックします。「発赤がないか」「陰部が蒸れてただれていないか」など細かい部分まで確認することが重要です。特に本人に麻痺がある場合は、皮膚に異常が起こっていても本人が気づけません。その都度、確認するようにしてください。

シーツにしわがないようにする

シーツにしわがあると、褥瘡につながる可能性が高くなってしまいます。高齢になると皮膚も弱くなってしまうため、少しのしわが皮膚への負担になるのです。

体位変換は何時間おきにすべきなのか

体位変換は適切な頻度で実施することが重要です。では、何時間おきにすべきなのでしょうかか。

体位変換を褥瘡予防のためにおこなう場合、2時間ごとがスタンダードです。もちろん本人の組織耐久性や活動性、可動性などによっても適切な体位変換のスパンは異なります。しかし「2時間ごとの体位変換」は介護施設にとって暗黙の了解のようになっています。

日本褥瘡学会の「褥瘡予防・管理ガイドライン」によると、「粘弾性フォームマットレス」や「上敷二層式エアマットレス」などを使用している場合は、4時間に1回と体位変換のペースが緩やかになります。

POINT
  • 基本的には2時間に1度
  • マットレスで工夫をしている場合は4時間に1度

体位変換の方法

在宅介護で安全に体位変換をするには、正しい方法を知っておく必要があります。体位変換の方法について解説していきます。

家族が1人で体位変換をするには

まずは仰臥位(仰向け)から側臥位(横向き)に体位変換する方法について解説していきます。参考にしてみてください。

1.本人の体を向ける方向と反対側に立つ

体位変換をする際に、本人には両手を腕の前に組むようにし、体をできるだけ小さくまとめます。関節の固定などがない場合は膝を立ててもらうとよりスムーズにできます。このタイミングで体位変換前に使っていたクッションやタオルなどを外します。

2.介護する側にからだを引き寄せる

本人の体を介護する側の方へ引き寄せます。一度に全身を引き寄せるのではなく、まず上半身、次に下半身を引き寄せるとやりやすいです。その際にシーツにしわができてしまうと褥瘡の原因になります。その都度、丁寧に直すことも重要です。

3.介護する側は本人の体が向く方に立つ

体の向きを変えるときに、本人の体がベッドから落ちないように気をつけなければいけません。必ず介護する側は本人の体が向く方に立ちます。

4.背中や足などにタオルを入れる

体位変換をした後にその体制を維持できるよう、背中や足など必要な部分にタオルを入れていきます。適切な入れ方はそれぞれ異なるため、理学療法士などからアドバイスをもらうようにします。

5.マットレスと接触している肩を引く

マットレスと接触している肩は、皮膚がよれている状態です。肩の骨は他の部分と比べると比較的突出しているため、側臥位になると褥瘡ができやすくなってしまいます。マットレスと接着している肩を引き出すことで、防げます。

体位変換の際に使えるツール

体位変換をする際に、介護する側とされる側が感じる負担を軽減することが大きな課題になっています。少しでも負担を軽減するには、体位変換の際に使えるツールを有効活用する必要があります。では、具体的にどのようなツールがあるのかみていきます。

クッション・枕など

自宅にあるクッションや枕を使用することもできます。家に使っていないクッションや枕がある場合は、ぜひ有効活用してみてください。

使えそうなものがない場合は、体位変換用に開発された体位変換クッションの使用がおすすめです。体位変換クッションのなかには、リング状にして使える商品もあるため、どのような形状が良いか吟味してみてください。

クッションや枕は、体位変換をして体の向きを変えた際に使用します。側臥位を維持するために背中側に置いたり、足の間に挟んで膝やかかとなどに褥瘡ができないようにしたりといった目的で使用されることが多いです。

体位変換器(ポジショニングツール)

体位変換器(ポジショニングツール)は、体位変換を容易におこなえるようにサポートするためのツールです。エアマットやクッション(枕型、スネーク型、バナナ型など)、スライディングシートなどが体位変換器に含まれます。

さまざまなタイプの体位変換器を上手く利用できれば、体位変換時の負担を大幅に軽減できます。

スライディングシート

スライディングシートは、滑りやすい生地で作られていて、体位変換をする際に使われます。スライディングシートのメリットは介護する側が腰痛になりにくい本人も快適に体位変換ができるなどです。種類豊富ですので、どのスライディングシートが使いやすいか吟味することをおすすめします。

スライディンググローブ

スライディンググローブは、シーツ交換時やベッドを起こした時の背抜き、体位変換をする際に使用されることが多いツールです。滑りやすい生地で作られているため、お互いの負担軽減を実現できます。

自力での体位変換ができない際の訪問介護サービス

在宅介護をしている場合、家族が体位変換をする必要があります。もし「自分ではできない」といった場合は、訪問サービスを利用します。

訪問介護

ホームヘルプサービスとも呼ばれている訪問介護サービスは、在宅介護を支えている存在です。ホームヘルパーがそれぞれの家に足を運び、食事や入浴、排せつ、更衣などのサポートをします。さらに、掃除、洗濯、買い物といった生活援助もしてもらえ、負担を大幅にカットできます。

訪問看護

訪問看護は、看護師や保健師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった医療従事者が家に足を運び、医師の指示に基づいたサービスを提供します。訪問看護サービスを受けるためには、主治医から訪問看護指示書を用意してもらわなければいけません。サービスの内容は、症状の観察や食事・栄養の指導、喀痰吸引、膀胱カテーテルの交換、口腔ケア、褥瘡の処置・予防など多岐にわたります。

その他の訪問系サービス

訪問系の介護サービスには、この他にもいくつかの種類があります。訪問入浴介護訪問リハビリテーション居宅療養管理指導夜間対応型訪問介護(地域密着型サービス)定期巡回・随時対応型訪問介護看護(地域密着型サービス)といったサービスが訪問介護サービスに含まれます。どのサービスを利用すべきなのか迷った場合は、担当のケアマネジャーに相談するといいです。

この記事のまとめ

  • 体位変換をするいちばんの目的は「褥瘡予防」
  • 体位変換のスパンは基本的に2時間に1度
  • アイテムや外部サービスを駆使することでスムーズにできる

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