介護リフォームとは|費用相場、利用できる補助金、風呂場・トイレ・玄関などの事例を紹介
自宅での介護を進める場合、介護を受ける本人がケガをするリスクを軽減することが大切です。そこで利用したいのが「介護リフォーム」です。今回は介護リフォームについて補助金を受けられる条件、対象の住宅改修の内容を解説します。
理学療法士。佛教大学大学院社会福祉学修士課程修了。専門は生活期リハビリテーション。病院・デイサービス勤務後2014年合同会社松本リハビリ研究所設立。全国の老人ホーム、デイサービス、介護施設でリハビリ介護のアドバイザー、生活リハビリセミナー講師、雑誌・書籍の執筆など活動中『転倒予防のすべてがわかる本 』(講談社)など著書多数。
YouTubeチャンネル「がんばらないリハビリ介護」/オンラインサロン「松リハLAB」
お得にリフォームをするために「介護リフォーム」について知っておく
介護リフォームとは、要支援・要介護状態にある方が、自宅で安全に生活できる環境を作ることを目的とした住宅改修工事のことです。
具体的には「段差をなくしフラットにする」「扉を引き戸に変更する」「トイレや浴室に手すりを設置する」といった工事が介護リフォームに当たります。
介護リフォームは要介護者の安全な生活のために必要です。そのため、介護保険を利用できたり、居住する市区町村から補助金が出たりします。
介護リフォームでは介護保険を使える
要介護認定で要支援1以上となった方は、介護リフォームの際に介護保険を利用できます。介護保険を使う際の概要に関して厚生労働省は以下のように定義しています。
要介護者等が、自宅に手すりを取付ける等の住宅改修を行おうとするときは、必要な書類(住宅改修が必要な理由書等)を添えて、申請書を提出し、工事完成後、領収書等の費用発生の事実がわかる書類等を提出することにより、実際の住宅改修費の9割相当額が償還払いで支給される。引用:厚生労働省「介護保険における住宅改修」
ここからは介護保険を使って介護リフォームをする際の適用条件、金額、リフォーム内容を紹介します。
介護リフォームの補助金を受けるための3つの条件
介護リフォームにあたって、市区町村から保険給付を受けるためには以下の3つの条件があります。
- 要支援1以上であること
- 対象住宅が被保険者の住所(介護保険証に記載の住所)と一致していること
- 利用者が施設や病院に入っていないこと
介護リフォームの支給限度額・限度回数
介護リフォームの支給限度基準額は最大20万円です。自己負担額は通常の介護保険と同じく、所得に応じて1~3割となります。つまり最大で20万円×9割(0.9)=18万円の補助金を受けることが可能です。なお、超過した分は自己負担になります。
例えば「リフォーム総額が15万円」「自己負担額が1割」の場合の自己負担額は以下のようになります。
「リフォーム総額が30万円」「自己負担額が1割」の場合の自己負担額の計算式は以下のとおりです。
原則は1人1回まで、要介護度が3段階以上重くなった場合はリセットされる
介護リフォームは、原則1人1回までとしています。ただし介護度が3段階以上重くなった場合は、再度20万円までの改修が可能です。例えば要支援1から要介護2、要介護1から要介護4などが該当します。
また、転居した場合も助成金の対象となります。ただし利用前に住所変更の手続きをすることが必須ですので、気をつけましょう。
補助金の対象となる対象のリフォーム内容
介護リフォームの対象となる改修内容は以下の6つです。
リフォーム内容 | 詳細 |
---|---|
手すりの取付け | 住宅改修告示第一号に掲げる「手すりの取付け」とは、廊下、便所、浴室、玄関、玄関からの道路までの通路等に転倒予防若しくは移動又は移乗動作に資することを目的として設置するものである。手すりの形状は、二段式、縦付け、横付け等適切なものとする。 なお、貸与告示第七項に掲げる「手すり」に該当するものは除かれる。 |
段差の解消 | 住宅改修告示第二号に掲げる「段差の解消」とは、居室、廊下、便所、浴室、玄関等の各室間の床の段差及び玄関から道路までの通路等の段差又は傾斜を解消するための住宅改修をいい、具体的には、敷居を低くする工事、スロープを設置する工事、浴室の床のかさ上げ等が想定されるものである。 ただし、貸与告示第八項に掲げる「スロープ」又は購入告示第三項第五号に掲げる「浴室内すのこ」を置くことによる段差の解消は除かれる。 また、昇降機、リフト、段差解消機等動力により段差を解消する機器を設置する工事は除かれる。 |
滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更 | 住宅改修告示第三号に掲げる「滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更」とは、具体的には、居室においては畳敷から板製床材、ビニル系床材等への変更、浴室においては床材の滑りにくいものへの変更、通路面においては滑りにくい舗装材への変更等が想定されるものである。 |
引き戸等への扉の取替え | 住宅改修告示第四号に掲げる「引き戸等への扉の取替え」には、開き戸を引き戸、折戸、アコーディオンカーテン等に取り替えるといった扉全体の取替えのほか、扉の撤去、ドアノブの変更、戸車の設置等も含まれる。 ただし、引き戸等への扉の取替えにあわせて自動ドアとした場合は、自動ドアの動力部分の設置はこれに含まれず、動力部分の費用相当額は、法に基づく保険給付の対象とならないものである。 |
洋式便器等への便器の取替え | 住宅改修告示第五号に掲げる「洋式便器等への便器の取替え」とは、和式便器を洋式便器に取り替えや、既存の便器の位置や向きを変更する場合が一般的に想定される。 ただし、購入告示第一項に掲げる「腰掛便座」の設置は除かれる。 また、和式便器から、曖房便座、洗浄機能等が付加されている洋式便器への取替えは含まれるが、既に洋式便器である場合のこれらの機能等の付加は含まれない。さらに、非水洗和式便器から水洗洋式便器又は簡易水洗洋式便器に取り替える場合は、当該工事のうち水洗化又は簡易水洗化の部分は含まれず、その費用相当額は法に基づく保険給付の対象とならないものである。 |
その他住宅改修に付帯して必要となる住宅改修 |
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住宅改修費の申請・受け取りの流れ
介護リフォームを利用する際の住宅改修費の申請から受け取りまでの流れを紹介します。
STEP1. 住宅改修についてケアマネージャーなどに相談
要介護認定が終了した後、住宅改修についてケアマネジャーなどに相談します。相談者の要望を踏まえて、ケアマネジャーがプランや施工業者を決定します。
STEP2. 申請書類または書類の一部提出・確認
申請書類の内容は以下の4種類です。
- 工事費の見積もり書
- 支給申請書
- 改修前と改修後の改修箇所の状態が分かる図面と写真
- 住宅改修が必要な理由書(※)
※理由書の作成者は「介護支援専門員」「地域包括支援センター担当職員」「作業療法士」「福祉住環境コーディネーター検定試験2級以上」その他これに準ずる資格などを有する者とされています。
この他、対象が賃貸物件の場合は「住宅所有者の承諾書」が必要です。
STEP3. 施工着手~完成
書類を確認した後にケアマネージャーが紹介した業者が施工します。完成したら工事費を業者に対して支払います。この段階では基本的に全額の支払いが必要です。
STEP4. 住宅改修費の支給申請・決定
利用者は「領収書」「工事費内訳書」「完成後がわかる書類」「(持ち家でない場合)住宅の所有者の承諾書」を保険者(市区町村)に提出します。保険者は、事前に提出された書類との確認、工事がおこなわれたかどうかを確認したうえで、住宅改修費を支給するという流れです。
なお、基本的には支払い後に介護保険が適用される「償還払い」ですが、やむを得ない事情がある場合には、工事完成後に申請することができます。
参考:厚生労働省「介護保険における住宅改修」「福祉用具・住宅改修」介護リフォームでは自治体独自の助成金を受け取れる可能性がある
自治体によっては独自で介護リフォームの助成金制度を展開していることがあります。ただし介護保険との併用ができない場合もあるので確認が必要です。
また併用できる場合も、介護保険が優先されますのでご注意ください。介護保険でも予算が不足する場合に利用できる制度、という意味合いです。
以下に2つの自治体の例を紹介します。気になる方は、ご自身がお住まいの自治体のホームページで調べてみてください。
東京都港区の例
港区では予防給付として上限20万円、設備給付として上限10万6,000~37万9,000円(工事内容によって変動)の給付金を受け取れます。介護保険と併用できますが、介護保険が優先されます。
参考:港区「高齢者を対象とした住宅改修費の助成(介護保険外のサービス)について知りたい。」大阪市の例
大阪市では介護保険の支給対象工事とならない部分についての給付制度をしています。工事内容によって5万~30万円の給付をおこないます。
参考:大阪市「高齢者住宅改修費給付事業」介護リフォームの内容・費用相場
ここからは、介護リフォームにかかる費用相場について紹介します。改修箇所によって費用は異なります。細かい金額は住まいの状況によって違いますのでご注意ください。
手すりの取り付け
手すりは主に玄関の入り口や階段、お風呂場、室内階段に取り付けます。安全に歩行することが難しい場所でのサポートが目的です。
玄関前の階段・壁掛けタイプだと6万~11万円、玄関前の階段、柱だと8万~11万円、トイレだち2万~18万円、浴室だと5,000~5万円ほどかかります。
手すりの取り付け工事の概算
種類 | 金額の目安 |
---|---|
玄関前の階段・壁掛けタイプ | 6万~11万円 |
玄関前の階段・柱使用 | 8万~11万円 |
トイレ | 2万~18万円 |
浴室 | 5,000~5万円 |
段差の解消
「車椅子の出入りをしやすくする」「転倒のリスクを軽減する」といった目的で段差を解消します。段差には「またぎ段差」と「単純段差」の2種類があり、段差の種類によって工事方法が異なります。
室内用の「段差解消スロープ」は木製の樹脂でできているものが多く、滑り止め効果が期待でき、また部屋の一部においても違和感なく家に馴染むものが多いです。
工事費用は2万~15万円程度と介護保険でまかないやすい金額です。
階段をスロープに
階段のスロープは設置型と敷設型があります。設置型はホームセンターなどでスロープを購入しDIYで玄関や自宅前に設置して使用するタイプ、敷設型は業者に頼みコンクリートなどで造るタイプです。車椅子を利用する際に出入りしやすくなります。
敷設型の改修工事は手すりの費用も含めると40万~50万円ほどです。手すりなしで短いスロープだと20万円ほどに抑えられます。
扉を引き戸に変更
扉を引き戸に変更することで、車椅子でも自力でドアを開けやすくなり外出しやすくなります。室内引き戸の場合、片引き戸、引き違い戸、引き込み戸など多くの種類があります。
交換にかかる費用相場は約5万~10万円です。室内扉ではなく、玄関扉を引き戸タイプに交換する場合は20万~40万円ほどかかります。
介護リフォームを決意したきっかけを事例で紹介
介護リフォームは、介護保険や自治体の助成金を利用できるとはいえ高額です。工事を決意するきっかけを分かりやすくお伝えするために、介護リフォームを決めた背景や理由を事例で紹介します。
風呂場に手すりの取り付け
Aさんは自宅で母親の介護をしていました。初期のころ、母親は1人でお風呂に入れていましたが、ここ1年間は入浴介助が必要でした。
週に数回、介護サービス事業者に入浴介助をお願いしていましたが、週に3、4回はAさんが入浴介助をする必要があります。しかし入浴介助に慣れておらず、母親やAさん自身がお風呂場で足を滑らせてしまうことがありました。
そのためお風呂場の改修工事を決意。ケアマネジャーと相談して「L字型手すりの設置」を決めました。
手すりの設置箇所は浴槽入り口、洗い場、浴槽と3つから選べました。業者と相談して浴槽入り口に設置することを決定。着工から2時間ほどで完成し、後から介護保険で補助金の申請をしたので、負担額を軽減できました。
トイレの段差を解消
Bさんの自宅は築30年を超えた一軒家です。バリアフリー化をしておらず家の各所や、トイレの入り口にも小さな段差がありました。
高齢の父親は、足を上げにくくなっており、ちょっとした段差であったとしても転ぶ危険性があります。実際に段差に指をぶつけてしまうこともありました。そこでBさんは危険だと判断し段差を解消してもらいました。
築年数が立っていたので床板を張り替える必要がありましたが、着工から完成まで2日で終わりました。
玄関の扉を引き戸にして階段をスロープに
Cさんの父親は長年、車椅子生活を送っています。自宅前には階段があり、通院や散歩のたびに弟と一緒に車椅子と父親を運んで出入りするか、遠回りをしなければなりませんでした。
車椅子での出入りが簡単になれば、父一人でも外出できる機会が増えると考え、家の玄関周囲をバリアフリー化することにしました。「玄関を扉から引き戸へ交換する」「家の前の階段をスロープにして移動しやすくする」の2点の工事をおこない、父親が簡単に車椅子で外出できるようにしました。
玄関の入り口を扉から引き戸に交換する工事は総額45万円、階段をスロープにしてバリアフリー化を図る工事は30万円ほどでできました。
工期としては階段が着工から完了まで約1カ月、引き戸への交換は1日ほどで完了しました。
安心して自宅で暮らすために介護リフォームが必要
ちょっとした段差でも、つまづいてケガをしてしまうと要介護状態が進んでしまう可能性があります。すると家族としても介護が必要な時間が増えてしまいますし、場合によっては入居できる介護施設・老人ホームを探す必要も生じます。
そのため、自宅での生活を安心して続けるにあたって介護リフォームは必要です。
ただしリフォームには多くの費用がかかります。そのため介護保険や自治体の助成金を上手に使いながら、住まいを整備しましょう。
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この記事のまとめ
- 介護リフォームとは要支援・要介護者が安心して暮らすための住宅改修のこと
- 基本的には1人に対して1回まで上限20万円で介護保険を使える(一部例外あり)
- 自治体によっては独自で助成金を支給してくれるところもある
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