介護保険料は免除できる? 払わなくていい人・払わなくてはいけない人について解説

40歳になると介護保険料の徴収が始まり、そしてそれは生涯に渡り続きます。収入が減った場合、例えば育児休業中の方、介護休業中の方、失業中の方、年金受給中の方、障害がある方などに介護保険料の免除規定はないのでしょうか?

介護保険料は免除できる? 払わなくていい人・払わなくてはいけない人について解説
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

介護保険の被保険者資格がある限り保険料を負担する

介護保険は社会保険の一種のため、被保険者に該当する方は強制加入となります。次のいずれかに当てはまる限り、介護保険の被保険者として保険料を負担しなくてはなりません。

  1. 市区町村内に住所のある65歳以上の方(第1号被保険者)
  2. 市区町村内に住所のある40歳以上65歳未満の医療保険加入者(第2号被保険者)
*参考:e-Gov法令検索「介護保険法 第9条
*ここでいう「住所」とは「住民票」ないし「住民登録」と読み替えられます。

逆に、次の場合は被保険者としての資格を喪失し、保険料を負担する必要がなくなります

  1. 市区町村内に住所のなくなった日の翌日
  2. 第2号被保険者が医療保険加入者でなくなった日
*参考:e-Gov法令検索「介護保険法 第11条

この前提を踏まえつつ、介護保険料を払わなくてもいい人払わなくてはいけない人をまとめると次のようになります。

介護保険料を払わなくてもいい人・払わなくてはいけない人一覧

介護保険料を払わなくてもいい人

海外居住者

介護保険の被保険者になれるのは40歳以上で国内に住んでいる方(住民登録がある方)に限られるため、海外に住んでいる方は保険料を負担する必要がありません

必要な手続き
  • お住まいの市区町村役場に海外転出届を提出(住民票を除籍)する。
  • 事業主を通じて介護保険適用除外該当届を提出する。

短期滞在者

介護保険の被保険者になるのに国籍は問われませんが、在留資格が3カ月未満の方は住民登録がないため、保険料を負担する必要がありません。外国籍であっても特別永住者や在留資格が3カ月以上の方は住民登録があるため、40歳になると保険料を負担しなくてはなりません。

適用除外施設の入所者

次の施設に入所している方は、ほかの法律に基づく給付を受けており、介護保険の給付を受ける可能性が低いことから被保険者とはなりません

必要な手続き
  • お住まいの市区町村役場に介護保険適用除外該当届を提出する。

生活保護受給者

生活保護受給中の介護保険料の取り扱いは年齢によって異なります。

40〜64歳の第2号被保険者の方の場合、生活保護受給開始と同時に医療保険から脱退することになるため、介護保険の被保険者資格も喪失します

一方の65歳以上の第1号被保険者の方の場合、生活保護の受給が始まっても介護保険の被保険者のままとなります。保険料は生活扶助から支払われ、介護保険サービスは介護扶助という形で支給されます

なお、40〜64歳の生活保護受給者が要介護状態となった場合については、介護保険サービスの利用料の全額を介護扶助として支給することで、第2号被保険者とみなす運用となっています(みなし2号)。

社会保険の被扶養者

社会保険の被扶養者(年間収入130万円未満*の配偶者など)に該当する場合、介護保険料は健康保険や年金と同じように扶養者の所属する医療保険(健康保険組合、協会けんぽなど)が負担します

*60歳以上、または、障害者の場合は年間収入180万円未満
必要な手続き
  • 新たに被扶養者になった場合、事業主を通じて被扶養者異動届を提出する

産前産後休業・育児休業取得者

産前産後休業や育児休業を取得する場合、事業主の申し出により休業中の介護保険料の納付が免除されます。保険料が免除される期間は、休業を開始した月から終了した月の前月まで(終了した日が月末の場合はその月まで)です。

必要な手続き
  • 事業主がおこなう

介護保険料を払わなくてはいけない人

介護休業取得者

産前産後休業・育児休業とは異なり、介護休業中に介護保険料を免除する規定はありません。たとえ給与が支払われなくても、休業中も引き続き保険料を納めなくてはなりません。

障害者

障害者手帳を持っていても介護保険料は負担しなくてはなりません。介護保険の適用除外施設に入居している場合を除き、原則、障害福祉サービスより介護保険サービスが優先して適用されるためです。

失業者

会社都合か自己都合かを問わず、失業した場合は国民健康保険に移行し、引き続き介護保険料を負担します

年金受給者

年金受給開始年齢になっても引き続き介護保険料を負担します。65歳になると第2号被保険者から第1号被保険者に移行し、保険料は基本的に年金から天引き(特別徴収)されます。ただし、年金受給額が年間18万円未満の方や年度の途中で65歳になった方、ほかの市区町村から転入した方などは納付書による支払い(普通徴収)となります。

要支援・要介護認定者

要支援・要介護認定を受け、介護保険サービス利用中であっても保険料は引き続き負担しなくてはなりません

介護保険料の減免措置を受けられる人

65歳以上の方(第1号被保険者)の保険料は所得水準により9段階(市区町村によってはそれ以上)に分かれていますが、その中でもとくに所得水準の低い第1段階〜第3段階に該当する方は保険料が減額されることがあります。

保険料の段階 対象者
第1段階 世帯全員が住民税非課税の老齢福祉年金受給者
世帯全員が住民税非課税で本人の年金収入が年間80万円以下
第2段階 世帯全員が住民税非課税で本人の年金収入等が年間120万円以下
第3段階 世帯全員が住民税非課税で本人の年金収入等が年間120万円超

また、災害などにより一時的に収入が減った場合には分割納付や徴収猶予、減額が認められる場合があります

  • 災害(地震、風水害、火災など)により生活基盤に著しい損害を受けた場合
  • 事業の休止や廃止、失業、長期入院などにより収入が著しく減少した場合
  • 保険料を納めると生活保護が必要になる場合(境界層該当者

これらの減免措置の要件や内容は自治体によって異なるため、詳細はお住まいの市区町村役場の担当窓口(介護保険課など)までお問い合わせください。

介護保険制度を支える保険料、支払いが難しい場合は早めに相談を

介護保険の保険料額は最初からそれぞれの支払い能力に応じて所得の高い人ほど多く、所得の低い人ほど少なく設定されています。一方で保険給付を受けるときは、基本的に支払い能力に関わらず利用したサービス費の1割を負担します*。

*現役世代並みの所得がある方は負担割合が2割や3割になりますが、対象者は合わせて1割弱と限定的です(参考:厚生労働省「介護保険事業状況報告(暫定)令和4年12月分」)。

このように支払い能力に応じて負担することを“応能負担”、利用したサービスの量に応じて(支払い能力とは関係なく)負担することを“応益負担”といい、介護保険を含む社会保険制度を支える基本的な考え方となっています

前者は高所得者にとって負担に見合った給付を期待しづらく、後者は低所得者にとって相対的に負担が重くなるという特徴があり、財源の確保はもちろん制度の公平さを担保するために両者が必要と考えられています。そのため、保険料の分納や猶予、減額は認められても、完全に免除することは基本的にできないのです。

保険料の滞納があると各種減免措置の対象外となるほか、滞納が長期化すると大きな負担を強いられるリスクもあります。保険料を支払うことが難しい場合は早めに相談することをおすすめします。

更新履歴
  • 2023/04/06 全面更改
  • 2022/03/30 本文修正
  • 2021/04/08 カテゴリ修正
  • 2020/12/11 タイトル・見出し修正
  • 2020/09/30 タイトル修正
  • 2020/09/15 初版公開

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