パーキンソン病とは|症状や原因、検査方法、治療法など
「パーキンソン病」という病気の名前は聞いたことがある人が多いかもしれません。しかし、パーキンソン病とは一体どのような病気なのか、どのような症状があり、どのような検査・治療ができるのか知っている人は少ないでしょう。
指定難病にも登録されているパーキンソン病は、年齢を重ねれば重ねるほど発症しやすいとされている病気です。そこで今回は、パーキンソン病とはどのような病気なのか、原因や症状、検査・治療法などについて解説していきます。
大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。
パーキンソン病とは
パーキンソン病とは、脳に異常が起こることから身体的な動作に支障が出てしまう病気で、指定難病に登録されている病気の一つです。一般的に50歳以上に多く見られる病気ですが、40歳以下の若い人でもまれに発症することがあります。(40歳以下で発症した場合には若年性パーキンソン病とされます。)
パーキンソン病の患者数は、現在1000人に1~1.5人程度で、10万人に100人から150人ほどの患者数です。ただし、60歳以上となると100人に1人は発症する病気といわれています。少子高齢社会の現代では、患者数が多くなってきています。
主な症状としては、手足のふるえ、動作が遅くなる、筋肉が強張ってしまう、転びやすくなってしまうといった運動症状があります。パーキンソン病以外の病気でも同じような運動症状が現れることがあるので、運動症状だけでパーキンソン病とは診断できません。その他にも特徴的な症状などを加味したうえで、パーキンソン病と診断されます。
パーキンソン病の原因
パーキンソン病の原因は、脳内のドーパミン神経が減少してしまうことだとされています。人間が身体を動かそうとする際には、必ず脳にある大脳皮質という部分から全身に運動の命令が出されています。自分で考えている通りに身体を動かすために、運動機能の調節を指令しているのがドーパミンという神経伝達物質です。
ドーパミンは、大脳の下に位置している中脳の黒質にあるドーパミン神経で作られて線条体に送られ、大脳皮質へ命令が出されています。このドーパミン神経が減少してしまうと、ドーパミン自体が不足してしまいます。すると、脳から全身への命令伝達がうまくいかなくなってしまうことで、身体が動かしにくくなり、手足のふるえなどが起こりやすくなってしまいます。
パーキンソン病は遺伝するか
パーキンソン病は基本的に遺伝しないとされています。しかし、40歳以下の若年性パーキンソン病を発症する人の中には家族内に同じパーキンソン病の人が見られ、遺伝子も確認されています。そのため、基本的に遺伝はしませんが若くしてパーキンソン病を発症した場合、遺伝の可能性が考えられる場合もあるということになります。
パーキンソン病の症状を種別ごとに紹介
パーキンソン病はドーパミン神経の減少により発症する運動症状と、それに付随して他の中枢神経や自律神経へのダメージによる非運動症状も現れます。どのような症状が起こり得るのか、解説していきます。
運動症状
パーキンソン病による運動症状は、発症初期からみられる特徴的な症状です。診断時の大きな手掛かりとなり得ます。特徴的な症状は、無動、筋強剛、静止時振戦、姿勢反射障害です。それぞれ詳しく紹介します。
無動
無動とは、動きが遅い、動きが小さい、動きが少ないことを指します。動作を素早くできないことや歩く際に足が出にくくなること、声が小さくなってしまうこと、文字を書く際にも書く文字が小さくなることなどが挙げられます。
筋強剛
筋強剛は、その名の通り筋肉が硬くなってしまい動かしにくくなることです。肩や膝、指といった大きな関節付近の筋肉が固まりやすくなってしまうので、関節が動かしにくいと感じたり、動かそうとするとカクカクしたりします。その際に、痛みを感じることもあります。また、顔の筋肉が固まって無表情になってしまうこともあります。
静止時振戦
静止時振戦は、何もしていない状態のときに手足がふるえてきてしまうことを言います。身体を動かすとふるえは小さくなりますが、止まっていると顕著に現れます。手足のふるえは片方ずつ始まるケースが多いです。また、睡眠中はふるえが治まりますが、目覚めると再度ふるえ始めます。
姿勢反射障害
姿勢反射障害によって、バランスがとりにくくなり転びやすくなってしまうことがあります。歩いていても急に止まれなくなってしまう、方向転換が難しくなることも特徴です。転びやすくなってしまうことで骨折のリスクも高まってしまいます。
非運動症状
パーキンソン病は主に身体的な運動症状が顕著ですが、併せて非運動症状が現れることも多くあります。
自律神経症状
自律神経症状としては、便秘や頻尿、立ちくらみ等の起立性低血圧や食後に起こりやすい食事性低血圧、発汗、むくみ、冷え、性機能障害が挙げられます。
認知障害
認知障害は様々ありますが、物忘れなどの認知症症状が顕著となったり、いくつかの工程を必要とする行動ができなくなる遂行機能障害をきたしたりすることがあります。
嗅覚障害
嗅覚の低下による嗅覚障害で匂いを感じられないことがあります。
睡眠障害
不眠による睡眠障害や日中の眠気などが起こりやすくなります。
精神症状
何をするにも気力がなくなってしまうアパシーや抑うつ・不安、幻覚・妄想などの精神症状をきたすことがあります。
疲労・疼痛
疲れやすくなる、肩や腰などの関節の痛み、手足の筋肉痛などが起こりやすくなります。
体重の減少
一見、無関係のようですが、パーキンソン病の影響で体重が減少することがあります。
パーキンソン病の初期症状
初期症状としては、体の片側にだけ手足のふるえ(静止時振戦)や筋肉の強張り(筋強剛)がみられるようになります。普段過ごしているなかで、そこまで気にならないこともあるでしょう。
しかし、パーキンソン病の診断を早期に受けることは、適切な治療を受けてパーキンソン病の進行を抑えることにつながります。日常生活に支障がなく少し違和感を覚える程度であっても、不安なようであれば医師の診断を仰ぎましょう。
パーキンソン病の進行
パーキンソン病は突然かかる病気ではなく、何年もかけて徐々に進行していく病気です。一昔前であればパーキンソン病になると10年後には寝たきりになってしまうなどと言われていました。ところが現在では治療薬の開発も進み、適切な治療をすればより長く身体的に良い状態を保つことができ、日常生活に大きな影響もなく生活できるようになりました。
パーキンソン病の進行度合いは1~5度で分類されます。ここからは、パーキンソン病の進行について解説していきます。
1度
1度は、最も軽度な状態を指します。症状が現れるのは片側の手足のみであることがほとんどです。そのため、日常生活への影響もさほどありません。
2度
2度は両方の手足に症状が現れている状態を指します。両側に症状が現れたとしても、これまで通りの生活が送れる状態です。1度よりは多少不便に感じるかもしれません。
3度
3度になると、歩行障害や姿勢反射障害が現れてきて、日常生活に支障をきたすようになります。動作にやや制限がかかりますが、日常生活を自立して送ることは可能です。
4度
4度になると自立した生活を送ることも困難です。両側の手足に強く症状が現れてしまい、介助が必要となることが多くなります。
5度
最も重度の5度は、生活全般においての全面的な介助が必要となります。1人で立つことも難しくなり、車いすや寝たきりの生活となってしまいます。
パーキンソン病にかかった際の寿命が気になる方もいらっしゃるでしょう。詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
パーキンソン病を検査する方法
パーキンソン病の検査では、脳のCTやMRIを用いる画像検査はしません。脳の形を見るためのCTやMRIなどの検査では、健常者とほとんど変わりない状態となっていることから、パーキンソン病かどうかを検査するためにはあまり役立たないのです。では、パーキンソン病はどのような検査が必要となるのか解説していきましょう。
運動症状の有無の確認
パーキンソン病は特徴的な運動症状が顕著に表れる病気です。そのため、静止時振戦や筋強剛、無動などの症状が出ているかどうかを問診や診察で確認します。パーキンソン病の検査として、動作が遅くなるという無動があるかどうかは最も重視されます。
手足の振戦や筋強剛は他の病気でも似た症状が出てしまうことがあります。そのため、これらの症状が出ているからと言って一概にパーキンソン病だとは決定できません。
SPECT(スペクト)検査
脳のCTやMRIなどの画像検査は、健常者と区別できないことからパーキンソン病の検査ではあまり役立ちません。しかし、SPECT検査であればパーキンソン病が起こる原因となるドーパミン神経の減少を見られることから、鑑別診断にも用いられることがあります。
このSPECT検査も、CTやMRIと同様の画像検査となります。断面を見るだけでなく、ドーパミン神経が減少している様相を見られるため、パーキンソン病を判別しやすくなっています。
パーキンソン病と診断されるまでの流れ
パーキンソン病と診断されるまでの流れをご紹介します。まずは、医師による問診で手足のふるえや筋肉の強張りがないか聞かれます。その際に、手足のふるえなどの症状がいつから出ているのか、またその後他にどのような症状が出ているかなどの進行具合についても質問されるでしょう。
問診が終わると次に、関節の動作や体のバランスをチェックします。これを神経学的診察と言います。実際に医師が患者さんの腕や足を動かして、筋強剛や姿勢反射障害などを確認します。
問診と神経学的診察でパーキンソン病の疑いがあるとされた場合には、SPECT検査などの画像検査を用いて脳の検査をします。SPECT検査は2014年から保険診療の適応となったため、以前より検査しやすい環境となりました。
問診から画像検査までを実施し、パーキンソン病かそれ以外の病気かを判断します。
パーキンソン病の治療方法
日常生活に支障をきたしてしまう恐れのあるパーキンソン病は、早期発見・早期治療が有効とされています。パーキンソン病と診断された際にはどのような治療方法があるのか、主要な治療方法をご紹介していきます。
リハビリでの治療
パーキンソン病と診断された際に、すぐに始めることができる治療方法がリハビリです。パーキンソン病は進行していくにつれて、日常生活での自立が困難になるほど不自由になってしまいます。パーキンソン病だからと言って何もしないようにしてしまうと、さらに体の機能は衰えてしまい、生活における自立度も低下してしまうでしょう。
パーキンソン病の悪化を防ぐこと、そして自立度の低下を防ぐためにリハビリでの治療は非常に有効です。リハビリによって薬の使用が最小限で済むこともあります。有酸素運動やストレッチなど無理のない範囲でリハビリを続けていくことが大切です。
また、パーキンソン病は運動症状が顕著であることから口周りの動きにも影響が現れることがあります。声が小さくなったり、早口になったり、声がかすれてしまったりもするので、話し言葉のリハビリもしていきましょう。
投薬での治療
パーキンソン病は、ドーパミン系の薬を用いての薬物療法が一般的です。ドーパミン系以外にも複数の薬を組み合わせて治療していき、それぞれ薬の形状が異なるだけでなく飲み薬か貼付薬か、自己注射薬もあります。
中でも代表的な薬は「L-ドパ」と「ドパミンアゴニスト」という薬です。「L-ドパ」も「ドパミンアゴニスト」も、ドーパミンを補充するための薬となっていますが「L-ドパ」の方が速効性に優れているのが特徴です。「ドパミンアゴニスト」は徐々に効果が出てくる薬なので、1日を通して安定した効果を得られる特徴があります。
どれも患者さんの年齢や症状などを考慮したうえで処方されます。また、投薬での治療をする際には他に飲んでいる薬はないかどうか併用に注意しなければならないので、事前に確認しておきましょう。
パーキンソン病は早期の治療が必要な疾患
パーキンソン病は徐々に進行していく病気です。体の動きに違和感がある場合には、早めに相談・診察を受けてみるようにしましょう。早めに診断されれば、それだけ軽度の状態を保てたり、治療にも大きく影響したりします。
2004年に発表されたイーエルドパ試験の結果、早期から投薬による治療をすることでパーキンソン病の進行が抑制された可能性があり、改めて投薬での早期治療の有効性が示されました。自身がパーキンソン病かもしれないと疑ったらすぐに診断を受けるようにしましょう。
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この記事のまとめ
- パーキンソン病は運動症状が顕著に現れる病気である
- パーキンソン病は高齢者に多い
- 早期発見・早期治療が重要となる
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