ロコモティブシンドロームとは|代表的な症状・セルフチェックの方法・原因・予防法などを紹介

ロコモティブシンドローム、通称「ロコモ」は運動器が衰えている状態のことです。立ったり歩いたりという機能の低下によって、介護が必要になるリスクも高まります。

ロコモティブシンドロームは、決して高齢者だけの問題ではありません。日常的に体を動かす機会が減っている現代では、あらゆる年代の方に注意が必要です。

この記事では「ロコモティブシンドロームにならないためにはどうしたらいい?」「改善方法はある?」といった疑問にお答えします。ロコモの原因や症状、予防法を知って、早めに対策しましょう。

ロコモティブシンドロームとは|代表的な症状・セルフチェックの方法・原因・予防法などを紹介
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。

ロコモティブシンドロームとは

ロコモティブシンドロームは、運動器の衰えによって移動機能が低下している状態です。運動器には骨や関節、筋肉のほか、神経や脊髄なども含まれます。

運動器が衰えると「立つ」「歩く」という日常的な移動の動作が難しくなるのが大きな問題です。転倒や骨折のリスクが高まったり、自力で移動できなくなったりと普段の生活に支障が生じます。すると、要介護状態になるリスクも高まるのです。

またロコモティブシンドロームは高齢者に限らず、全世代に関係が深い問題です。現代社会ではエレベーターや自動車、電車など、移動の場面で足腰を使う機会が減少しています。そのため、比較的若い人でも運動器が衰えている可能性が高い状態です。

近年では「ロコモ」という略称もよく聞かれるようになり、対策の必要性が広く認識されています。

「ロコモティブシンドローム」と「フレイル」「サルコペニア」の違い

「ロコモ」とよく似た言葉で「フレイル」「サルコペニア」を聞いたことのある方もいるでしょう。いずれも高齢者によく見られ、心身機能の一部が衰えている状態を指します。しかし厳密にはそれぞれ定義が異なりますので、違いを紹介しましょう。

フレイル

「ロコモティブシンドローム」「フレイル」「サルコペニア」のうち、最も広い意味を持つのが「フレイル」です。身体的な衰えだけではなく、認知機能など精神・心理的側面や社会的側面も含めて、幅広く虚弱している状態を指します。

サルコペニア

「サルコペニア」は筋肉量や筋力に特化した考え方です。骨や関節などは含まず、あくまでも筋力が低下している状態を意味します。

ロコモティブシンドロームとフレイル、サルコペニアの関係

つまり「ロコモティブシンドローム」は「サルコペニア」を含み、さらに「フレイル」は「ロコモティブシンドローム」も「サルコペニア」も含むという関係です。

「ロコモティブシンドローム」「フレイル」「サルコペニア」の違いについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。

ロコモティブシンドロームの症状とは

ロコモティブシンドロームは機能が低下している状態とはいえ、病気ではありません。しかし運動器が衰えていることによって、さまざまな症状が現れます。

代表的な例は「筋力の低下」「バランス感覚の低下」「関節の痛み」です。それぞれの症状について見ていきましょう。

筋力の低下

加齢や運動不足によって筋力が低下すると、疲れやすくなり、さらに動く機会が減ってしまいます。このような悪循環に陥ることで、より一層筋力が低下するリスクがあるのです。

特に「最近疲れやすくなった」「足が痩せてきている気がする」という方は、筋力低下の悪循環に陥らないよう気をつけなければなりません。

バランス感覚の低下

バランス感覚には、筋力に加え視力と三半規管が関係しています。そのため筋力の低下だけでなく、視力の悪化や脳の障害などによってもバランスが取りづらくなる可能性があるのです。

脳や神経の病気を発症している場合もありますので、気になることがあれば早めに受診しましょう。

関節の痛み

関節の可動域が狭くなったり、筋肉量が減少したりすることによって、関節に痛みが生じます。骨や関節に関わる病気がひそんでいる可能性もあるので、痛みがある場合は医師に診てもらいましょう。可能性のある病気については次の項目で紹介しますので、参考にしてください。

このように、ロコモティブシンドロームには運動器に関するあらゆる症状が出ることがあります。「きっと加齢のせいだろう」と放置せず、早めに症状に気づいて対策することが悪化を防ぐうえで大切です。

ロコモティブシンドロームになる原因は

ロコモティブシンドロームの症状が分かったところで、次に原因について紹介しましょう。ここに挙げた以外の思わぬ病気が隠れている可能性もありますので、症状がある方は早めに医療機関を受診してください。

加齢

年齢を重ねると、筋肉や骨の量は減少していきます。何も対策をしなければ、年を重ねるほど自然に運動器が衰えてロコモのリスクが高まるのです。

運動不足

日常的に運動が不足していると、運動器は衰えてしまいます。反対に運動の習慣があれば、筋力を維持できるだけでなくバランス感覚も養われるのです。ロコモにならないためには、無理なく適度に運動することが大切になります。

骨粗鬆症

骨粗鬆症は、骨密度の低下によって骨がもろくなる病気です。閉経後の女性は骨を壊す細胞を抑える「エストロゲン」というホルモンの働きが弱まることから、特に発症しやすくなります。

骨粗鬆症になると骨折の危険性も高まり、また骨折した後の回復にも時間がかかってしまいます。そのため骨折を機に運動器が大きく衰えたり、寝たきりになったりしてしまうケースもあるのです。

参考:MEDLEY「骨粗しょう症

変形性関節症

関節の軟骨がすり減ってしまい、炎症を起こす病気です。加齢や体重による負担などが原因となります。

膝や股関節に発症すると、立ったり歩いたりするときに痛みが生じるのが特徴です。そのため体を動かすことが億劫になり、筋力の低下など二次的な運動器の衰えを引き起こします。

参考:MEDLEY「変形性関節症

変形性腰椎症

加齢に伴って腰の骨が変形する病気です。背骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板の水分が失われてつぶれやすくなることで、腰に痛みが生じます。

動くと激しい痛みが出ることもあり動きづらくなるため、運動器が衰えていきます。

参考:MEDLEY「変形性腰椎症

ロコモティブシンドロームのセルフチェックの方法

ロコモティブシンドロームは、早めに症状に気づいて対策することが必要です。ロコモの可能性があるかどうかは、自分でも手軽にチェックできます。

自宅でもチェックしやすい方法として、日本整形外科学会の「ロコチェック」「ロコモ度テスト」を紹介します。

ロコチェック

ロコチェックは簡単な7つの項目に答えるだけで、ロコモティブシンドロームの傾向があるかどうかが分かります。

ロコチェック 引用:ロコモONLINE「ロコチェック

これら7つの項目は、運動器の衰えによって現れる症状です。どれか1つでも当てはまれば、ロコモの可能性があるといえます。該当する項目がなくなるように、適度に運動器の機能の回復に努めましょう。

ロコモ度テスト

ロコモ度テストは「立ち上がりテスト」「2ステップテスト」「ロコモ25」の3つで構成されています。3つのうち1つでも当てはまれば、ロコモと考えられる状態です。

ロコモ度は1~3の3段階で評価されます。1~3に該当しなければ、現在はロコモではないという結果です。ただし、問題がなかった方も身体機能は日々変化していきますので、定期的にテストしてみましょう。

ロコモ度 状態
ロコモ度1 移動機能の低下が始まっている状態。運動を習慣づけ、バランスのとれた食事を取るなど、日常生活に気を配りましょう。
ロコモ度2 移動機能の低下が進行している状態。痛みがある方は何らかの疾患を発症している可能性もありますので、整形外科専門医の受診をおすすめします。
ロコモ度3 移動機能の低下が進行し、社会参加に支障をきたしている状態。介護が必要になるリスクが高いため、整形外科専門医を受診しましょう。

立ち上がりテスト

立ち上がりテストは40cm、30cm、20cm、10cmの4種類の高さの台を用意して実施します。それぞれの高さから両脚、または片脚で立ち上がれるかどうかを見るテストです。

立ち上がりテスト

手順と判定方法
  1. まずは両脚40cmでテストする。
    【できなかった場合】ロコモ度3
  2. 次に片脚40cmでテストする。
    【できた場合】10cmずつ低い台に移って、片脚ずつテストする。左右とも片脚で立ち上がれた一番低い台がテスト結果。
    【できなかった場合】30cmから始め、両脚でテストする。両脚で立ち上がれた一番低い台がテスト結果。
結果
ロコモ度 基準
ロコモ度1 どちらか一方の脚で40㎝の台から立ち上がれないが、両脚で20cmの台から立ち上がれる
ロコモ度2 両脚で20cmの台から立ち上がれないが、30cmの台から立ち上がれる
ロコモ度3 両脚で30cmの台から立ち上がれない
参考:ロコモONLINE「立ち上がりテスト

2ステップテスト

2ステップテストは、歩幅を基準にしたテストです。歩くために必要な筋肉やバランス能力、柔軟性などを評価します。

手順と判定方法
  1. スタートラインを決めて、両脚のつま先を合わせて立つ。
  2. できるだけ大股で2歩歩き、両脚を揃える。
    バランスを崩した場合は、再度やり直す。
  3. スタートラインから着地点のつま先までの長さ(2歩分の歩幅)を測る。
  4. 1~3を2回実施し、良かったほうの記録を用いる。
  5. 以下の計算式で「2ステップ値」を出す。
    2歩分の歩幅(cm)÷身長(cm)=2ステップ値
結果
ロコモ度 基準
ロコモ度1 2ステップ値が1.1以上1.3未満
ロコモ度2 2ステップ値が0.9以上1.1未満
ロコモ度3 2ステップ値が0.9未満
参考:ロコモONLINE「2ステップテスト

ロコモ25

ロコモ25は、25個の質問に答える形式のテストです。体の痛みやふだんの生活の様子を点数化し、ロコモの可能性を調べます。

ロコモ25
手順と判定方法

表にある25個の質問の回答をそれぞれ選び、合計得点を計算する。

結果
ロコモ度 基準
ロコモ度1 7点以上16点未満
ロコモ度2 16点以上24点未満
ロコモ度3 24点以上
参考:ロコモONLINE「ロコモ25

ロコモティブシンドロームの予防と対策とは

ロコモティブシンドロームそのものは病気ではないため、特定の治療法はありません。ただし、症状を改善するための予防法はさまざまなものが考案されています。

まず、原因として特定の疾患がある場合は、しっかりと疾患の治療をすることが大切です。薬が処方されることもありますので、自己判断で無理に予防法に取り組まないようにしてください。

病気ではなく、加齢や運動不足による運動器の衰えが気になる人は、ここで紹介する予防法を実践してみましょう。

日本整形外科学会「ロコトレ」

日本整形外科学会は、ロコモティブシンドロームの対策として「片脚立ち」「スクワット」を推奨しています。

参考:ロコモONLINE「ロコトレ

片脚立ち

片脚立ちのイメージ
  • まっすぐな姿勢で、床につかない程度に片脚を上げる
  • 1日の目安:左右1分間ずつ、1日3回
片脚立ちをする際の注意事項
  • 転倒防止のため、必ずつかまるものがある場所でする
  • 支えが必要な人は、机に両手や両指をついてもいい
  • 指をつくだけでできる人は、指先だけをつけるようにする

スクワット

スクワットのイメージ
  • 肩幅より少し広めに足を広げて、つま先は30度くらい開いて立つ
  • 膝がつま先より前に出ないように、膝が足の人差し指の方向に向くよう注意して、おしりを後ろに引くように体を沈める
  • 1日の目安:深呼吸するペースで5~6回繰り返す、1日3回
スクワットをする際の注意事項
  • スクワットができないときは、イスに腰掛け机に手をついて立ち座りの動作を繰り返す。机に手をつかずにできる場合は、手をかざしてする
  • 動作の最中は息を止めない
  • 過度な負担を防ぐため、膝は90度以上曲げない
  • 太ももの前や後ろの筋肉のしっかり力が入っているかを意識しながら、ゆっくりする
  • 支えが必要な人は十分注意して、机に手をついてする

毎日の食事でロコモ対策を

ロコモティブシンドロームの対策としては、食生活も重要です。規則正しく、栄養バランスのとれた食事をすることで、体の調子を整えられます。ロコモ対策として特に注意するべきポイントを見ていきましょう。

低栄養に注意

特に高齢者は食が細くなって、気づかないうちに低栄養に陥ることがあります。低栄養になると筋肉量が落ちやすいほか、骨粗鬆症になる危険性も高まるのです。

低栄養を防ぐためには、多様な食品を取る必要があります。次の10種類の食品をできるだけ数多く食べるように心がけましょう。

1 6 緑黄色野菜
2 魚介類 7 海藻類
3 8 いも
4 大豆・大豆製品 9 果物
5 牛乳・乳製品 10 油を使った料理
引用:地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所「食生活に要注意 -高齢者の低栄養はキケンー

主食だけでなく主菜、副菜を取ろう

お米や麺類など主食だけの食事では、十分な栄養が取れません。できれば毎食、主菜と副菜を添えた献立にしましょう。

また牛乳または乳製品と果物を毎日取ることで、栄養バランスを改善できます。

骨や筋肉を強くする栄養素

ロコモティブシンドロームを予防するためには「骨」や「筋肉」を強化することが大切です。効果的な栄養素を意識して摂取しましょう。

骨を強くするためには「カルシウム」「タンパク質」「ビタミンD」「ビタミンK」が有効です。また筋肉に必要な栄養素には「タンパク質」「ビタミンB6」があります。

それぞれの栄養素を多く含む食品を次の表にまとめましたので、参考にしてください。

栄養素 多く含む食品
カルシウム
  • 牛乳・乳製品
  • 小魚
  • 緑黄色野菜
  • 海藻類
  • 大豆製品
タンパク質
  • 牛乳・乳製品
  • 大豆製品
ビタミンD
  • 魚(鮭など)
  • キノコ類
ビタミンK
  • 納豆
  • 青菜
ビタミンB6
  • マグロの赤身
  • カツオ
  • 赤ピーマン
  • キウイ
  • バナナ

健康な体を作るためには、決まりきった食品や献立に偏ることなく、幅広い栄養素を取ることが大切です。またロコトレなどで体を動かしたら、その分のエネルギーを食事から取らなければいけません。

とはいえ、毎食の栄養バランスをきっちり整えるのは難しいものです。その場合は1日、1週間という単位で考えて、バランスを整えられるように心がけましょう。

困ったらロコモアドバイスドクターに相談を

ロコモティブシンドロームになると、要介護状態や寝たきりになるリスクが高まります。また原因として、加齢による衰えだけではなく病気の可能性もあるため、症状にできるだけ早く気づくことが大切です。

「もしかしてロコモかもしれない」と不安になったときは、ぜひ「ロコモアドバイスドクター」に相談しましょう。「ロコモアドバイスドクター」とは、ロコモティブシンドロームの啓発をしている日本整形外科学会所属の専門医です。

早期発見、相談をすることによって、より適切な治療法や改善策を選択できるでしょう。「まだロコモではないが対策しておきたい」という人も、この記事で紹介したトレーニングや体操をしてみてください。

日ごろから体を動かしてしっかり栄養を取ることを心がけ、運動器の健康を保ちましょう。

この記事のまとめ

  • ロコモティブシンドロームは、運動器が衰えて要介護のリスクが高まっている状態
  • ロコモは加齢や運動不足のほか、疾患が原因のこともある
  • ロコモ対策には適度な運動と栄養バランスのとれた食生活が必要

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