超高齢社会に突入している現代において、身近な家族が認知症になっているのではないかと気になっている人もいるでしょう。しかし、本人の自尊心もあるので簡単に認知症だと判断できませんし、病院でしっかりとした検査を受けることが難しいこともあります。
そんな時にMMSEを用いてチェックをすると、家族も病院での検査が必要なのかの判断材料になるでしょう。そこで今回は、MMSEという検査についてどのような検査なのか、点数のつけ方やカットオフの見方などを詳しくご紹介していきます。
更新日:大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。
MMSEとは、Mini Mental State Examinationといい、ミニメンタルステート検査の略を意味しています。ミニメンタルステート検査とは、世界中で最も多く用いられている認知症の検査としても有名で、1975年にアメリカのFolstein夫妻が開発したとされている知能検査です。
認知症の疑いがある人に実施している検査で、2006年に杉下守弘先生による日本語版が作成されてから日本でも広く用いられるようになりました。MMSE以外にも認知症のスクリーニング検査は存在しており、特に「長谷川式認知症スケール」は日本では広く活用されている検査方法となっています。
MMSEの目的としては、認知症スクリーニング検査でそのなかでもアルツハイマー型認知症の疑いがある場合に多く用いられていますが、アルツハイマー型以外の認知症のスクリーニング検査としても有効です。より広く有効に活用できるスクリーニング検査といえるでしょう。
認知症とならずとも、加齢による物忘れや人の顔をなかなか覚えられないことはよく起こり得ます。しかし、認知症となると加齢による物覚えの低下以に認知機能が下がってしまうため、このようなスクリーニング検査をして認知機能を客観的に評価してみることが、認知症を知る第一歩になるかもしれません。
あくまでもスクリーニング検査となっているので、MMSEでの点数がどうであっても実際に脳の検査や生活状況、本人や家族からの現在の状況などを踏まえて認知症の診断となります。
もし「認知症かもしれない」と自分自身で感じていたとしても自身や家族のみでMMSEを実行するのはおすすめしません。認知症かもしれないという自覚がない場合、本人の自尊心を大きく傷つけてしまう可能性も高いです。
また、本人が認知症かもしれないと自覚していた場合でもそれを恥ずかしいと感じてしまっていることも多くあります。MMSEを実行するにあたっては専門家に相談してみてから実施する、本人へしっかりと配慮するなど、家族だからといって無遠慮になってはいけません。
検査を受けるのはあくまでも認知症の疑いのある本人です。検査は本人の協力が不可欠となります。どのような気持ちになるのかしっかりと考えつつ、検査に協力してもらえるような言葉かけや態度を心掛けましょう。
医療機関でMMSEは検査可能となっており、2018年にされた診療報酬の改定によって保険診療可能な検査としても認定されました。そのため、医療機関でも取り組みやすい検査となりました。
医療機関でMMSEを受ける場合に実際にかかる診療報酬は、80点です。これは、MMSEがそこまでの労力を要さない簡易検査となっているためです。80点は通常800円となりますが、保険適用となるので3割負担の場合240円、2割負担の場合160円、1割負担の場合には80円とリーズナブルに検査を受けられるでしょう。
家族との人間関係を壊さないようにするためにも、いくら認知症の疑いがあるからといって自分で検査しようとせずに、しかるべき機関で検査を実施するようにしましょう。そのほうが正しい評価をもたらしてくれます。
No | 設問内容 |
---|---|
1 | 日時等に関する見当識 |
2 | 場所に関する見当識 |
3 | 言葉の記銘 |
4 | 計算問題 |
5 | 言葉の遅延再生 |
6 | 物品呼称 |
7 | 復唱 |
8 | 口頭での3段階命令 |
9 | 書字の理解、指示 |
10 | 自発書字 |
11 | 図形の描写 |
MMSEの評価項目は、全部で11問用意されています。主に質問形式となっていますが、最後の2問のみ文章や図形を自由に記入しなければなりません。
評価項目はそれぞれ意味を持っていますが、MMSE自体で男女の差は出ません。検査も10分程度で終わるので比較的負担の少ない検査方法だといえます。それぞれの設問に意味があるので、ここからは各設問にどのような評価・意味があるのかご紹介していきます。
アルツハイマー型の認知症に多い日時などの見当識障害を判断するために用いています。現在が何年であるのか、今の季節は何か、今日は何曜日か、今日は何月何日かを具体的に聞くことで評価できます。それぞれ答えられれば得点は1点ずつ加算されます。
設問1に続けて見当識障害があるかどうかの評価です。見当識障害は日時だけでなく場所に関しても起こります。現在いる病院や診療所の名前が言えるかどうか、所在地に関することをある程度認識しているかどうかで判断します。
記憶には、記銘・保持・想起という3つの段階が存在しています。この設問では短時間で言葉を記銘することができるかどうかの評価が可能です。
脳内における記憶力に関する評価と、記憶された情報に対してどのように作動できるかを判断する設問です。情報を脳が正確に取り込み、どのように処理するのかを判断できます。この設問をする際には「さらに7を引くと?」というように質問していくことで作動記憶の評価にもつながります。
この設問では、設問3で記憶した言葉を呼び起こせるか(想起できるか)を判断できます。記憶の保持・想起ができるかどうかで評価が変わります。認知症となっている場合には、この遅延再生ができなくなっている場合がほとんどです。
用意しておいた物品を見ながら、自分の目にしたものを記憶し正しい名称が言えるかどうかで即時記憶ができるかどうかと想起できるかどうかの判断につながります。
この設問でも記憶に関する判断ができます。相手が言っていることを間違えることなく記憶できるかどうかで長文に対する即時記憶の評価となるのです。口頭でゆっくりはっきりと言い、一度で正確に答えられたら正解となります。
口頭で3つの指示をして、それを理解できるかどうかを判断する設問です。この設問は認知症となっていたり、認知機能の低下が著しかったりすると非常に難しい設問となります。指示ごとに正確に作業できれば1点ずつ加算されます。
書いてある文字の理解と指示に対して実行できるかどうかを判断できます。文章を理解するための理解力と実行するための行動力があるかを評価します。
認知症となるとどうしても文章を構成する能力が低下することがあります。そのため、文章の構成能力がどの程度あるのかをこの設問で判断できます。例文を与えずに文章が意味を成している場合には正解となります。読み手が理解できる文章となっているかどうかが大切なので、文章でなく名称のみの場合には点数は加算されません。
図形の描写をすることで空間認知能力を判断できます。アルツハイマー型認知症が高度になっていたり、レビー小脳体型認知症になっていたりする場合には図形の描写が非常に困難となります。もし手指がふるえていてもMMSEの検査としては問題ないので、図形の描写ができているかどうかで判断します。
MMSEは、各設問の内容によって採点が異なります。30点でMMSEは満点となり、カットオフ値(正常範囲の値)で異常なしかどうか、認知症の疑いがあるのかどうか、また認知症の疑いが強いかどうかを判断します。
採点については、設問1と設問2、設問4が5点満点、設問3と設問5、設問8が3点満点、設問6が2点満点、設問7と設問9~11にかけては1点です。ここからは、カットオフ値に対しての評価について詳しく解説していきます。
MMSEでは問題ない状態であるとされますが、あくまでもスクリーニング検査となり実際の生活に影響があったり不安を抱えたりするようであれば、脳のCTやMRIなどのより詳しい検査をおすすめします。
軽度認知症の疑いがある状態という判断なので、早期治療のためにも正確な診断を受けましょう。軽度の認知症であれば早期発見できれば、その分早期治療も可能です。現段階では認知症は治らないとされていますが、進行を遅らせることはできます。
健常者であれば、MMSEで21点以下をとることはほぼないといっても良いです。認知症の疑いが強いので、病院や診療所でそのまま認知症の詳しい検査や診断を進めていくようにしましょう。
あくまでもMMSEはスクリーニング検査ですが、MMSEの設問自体認知症でなければさほど難しくはない問題ばかりです。MMSEを実施して疑いが強くなった場合には、しっかりと治療できる環境を整えながら本人の気持ちにも寄り添うようにしていきましょう。
認知症の疑いがある場合には、必ず病院で受診し認知症であるかどうかの検査から進めていくことをおすすめします。ただ、その場合には本人に納得してもらって病院へ行き検査に協力してもらう必要があります。自身が認知症かもしれないと家族から言われたら、自分だったらどう感じるかをしっかりと考えながら本人と向き合うようにしましょう。
MMSEは質問形式での検査となり、検査する際には必ず質問内容をアレンジせずに本人の体調が良い時に実施するようにしてください。万が一、体調不良時や精神的に不安定な場合、精神状態によって点数が低くなってしまう可能性があるためです。
不安が多い時にはやはり専門家に相談してみること、さらにCTやMRIなどの脳の検査、MMSE以外の認知機能に関する検査、生活状況や生活歴などから認知症かどうか、また認知症であった場合どのような認知症なのかを診断してもらいましょう。早期に発見することで早期治療につながり、認知症の進行を遅らせることができます。
疑いを持って検査することは重要ですが、MMSEなどの認知症に関する検査をした後のフォローも非常に大切となります。比較的簡単な検査ですし、本人もそこまで気にしているようには見えていなくても実際には大きな不安や絶望を抱えている場合が多くあります。
最近物忘れが激しかったのも認知症のせいだったのかと割り切れれば良いかもしれません。しかし、認知症が治らないものだと知っていればなおさら不安は大きくなりますし、今後の生活がどうなっていってしまうのか絶望感もあります。本人が特に気にしていないような素振りがあっても、それを鵜呑みにせずなるべく本人が安心できるように配慮していくことが大切です。
MMSEは、認知症であるかどうか簡単に検査できる評価項目となっています。現在、広く流用されており実際の医療現場でもよく用いられている検査方法でもあるので、MMSEと聞いて不安になることはありません。
疑いが強いかどうかを判断するための検査となっているので、正確な診断や検査をおこなわない限り認知症であるという診断は付きかねます。本人や家族同士でMMSEをおこなうことも可能ですが、より客観的な立場から検査すること、また検査結果によってはそのままより詳しい検査にスムーズに移行するために医療機関や専門家にMMSEを実施してもらいましょう。
年齢を重ねればある程度記憶力が低下したり、判断力が低下したりすることは誰にでも起こり得ます。生活状況にどの程度影響があるのかも認知症の判断基準となってくるので、本人の協力だけでなく家族の協力も不可欠となるでしょう。
認知症は、早期発見できればその分早期治療をおこない症状を遅らせることができます。気になることがあれば相手の気持ちに配慮しつつ、検査を受けてもらうように促していきましょう。
2021.01.15更新
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