【テンプレートあり】長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは|点数の付け方・評価の仕方・その他の評価スケールなど

長谷川式認知症スケールとは認知症の可能性を判断するために用いられるスクリーニング検査です。医院での問診の際に用いられることもあります。

今回は家族について「もしかしたら認知症かもしれない」と不安に思っている方に向けて、長谷川式認知症スケールの設問内容や採点の方法、他の診断テスト、認知症の初期症状などを紹介します。

【テンプレートあり】長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは|点数の付け方・評価の仕方・その他の評価スケールなど

介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、認知症ケア上級専門士、認知症介護実践リーダー、米国アクティビティディレクター、他。介護職として働く傍ら、レクや認知症、コミュニケーションに関する研修講師も務める。2014年米国アクティビティディレクター資格取得。レクリエーションを通じ、多くの高齢者に「人と触れ合う喜び」を伝え、「介護技術としてのレクリエーション援助」を広める一方、介護情報誌やメディアにおいて執筆等を手掛けている。『認知症の人もいっしょにできる高齢者レクリエーション 』(講談社)など著書多数。

長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは

長谷川式認知症スケールは、認知症の可能性について9つの設問に答えることで判断できるスクリーニング検査です。スクリーニング検査とは「疾患の疑いのある方を発見することを目的におこなう検査」です。まだ症状が出ていない方を対象におこないます。

アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、血管性認知症など、認知症にはさまざまな種類があり、それぞれで症状も異なります。長谷川式認知症スケールを使うことで、見当識や記憶、計算力、判断力といった、異常をきたしやすい能力が正常に働いているか否かをおおまかに判断できるのです。

発案者の長谷川和夫氏について

長谷川式認知症スケールを発案したのは精神科医の長谷川和夫氏です。長谷川氏はアメリカに留学し、聖エリザベス病院、ジョンズ・ホプキンス病院で精神医学や脳波学の研究をしました。その後、1974年に「長谷川式簡易知能評価スケール」を発表しました。帰国後は、2005~2009年まで高齢者痴呆介護研究・研修東京センター長を務めています。

2018年には自身が認知症になったことを公表して注目されました。自身の状態を客観的に見てアルツハイマー型ではないかと予想しましたが、実際は嗜銀顆粒性認知症と診断されています。その後は認知症になった身として、等身大の目線での講演活動や絵本の出版などをおこない、2021年11月13日、93歳で亡くなりました。

長谷川式認知症スケール(HDS-R)は1991年に改訂された

現在、使われている長谷川式認知症スケールは正式には「(改訂版)長谷川式認知症スケール」となります。制定時に用いられていた質問内容は現在の状況にそぐわないとして、長谷川氏自身で改訂しました。以前のものであれば戦争や震災などに関する記述がありましたが、現在ではいつ誕生した方でも使えるような内容に変わっています。

家族だけで安易に長谷川式認知症スケール(HDS-R)を実践してはいけない

まずはじめに「長谷川式認知症スケールは家族だけで実践すべきものではない」ことを覚えておきましょう。その2つの理由を紹介します。

コンディションによって答えが大幅に変わり、誤認の恐れがあるから

認知症の可能性がある方は、その日の体調などによって、答えが大きく変化します。専門的な知見がある医師であれば、コンディションを把握したうえで冷静な判断を下せますが、家族としては症状の有無を誤って捉えてしまう可能性もあります。

人間関係を壊す可能性もあるから

また人間関係を壊してしまう可能性もあります。誰しも「認知症だ」といわれるのは、傷ついたり腹が立ったりするものです。説得力のある医師の言葉であれば受け入れられるかもしれません。しかし、身内から判断されると気分を大いに害してしまう可能性があります。人間関係を壊すことがあるので、安易に試してはいけません。

長谷川式認知症スケール(HDS-R)の点数と評価方法

医師による診断を受けることを前提として、実際に長谷川式認知症スケールの内容について紹介しましょう。長谷川式認知症スケールでは9つの質問をしたうえで回答を点数にします。具体的な質問内容は以下の通りです。

長谷川式認知症スケール
長谷川式認知症スケール 参考:一般社団法人 日本老年医学会「高齢者診療におけるお役立ちツール/HDS-R(PDF)

お歳はいくつですか?

この質問では記憶機能の衰退について観察します。ただし誤差・2歳までは正解とします。答えられたら1点の加算です。

今日は何年、何月、何日ですか? 何曜日ですか?

この質問では時間の見当識機能についての様子を見ます。年月日を完璧に当てる必要はなく、1つ正解するごとに1点を加えてください。

私たちが今いるところはどこですか?

こちらでは場所の見当識機能を観察します。自発的に正しい場所を返答できれば2点です。5秒おいて「家ですか? 病院ですか? 施設ですか?」の質問から正しく選択できれば1点が与えられます。

これから言う3つの言葉を言ってみてください。あとでまた聞きますので、よく覚えておいてください。(以下の1または2の単語を言う)
1:桜・猫・電車/2:梅・犬・自動車

この質問では「即時再生」という機能について観察します。即時再生とは短期的にみたものをすぐさまアウトプットする能力です。

100から7を順番に引いてください。100引く7は? それからまた7を引くと?

計算力を測るための質問です。計算は脳の前頭葉という部分が司っています。認知症のなかには前頭葉に支障をきたすものもあり、計算力が下がってしまうケースもあるのです。

私がこれから言う数字を逆から言ってください。「6-8-2」「3-5-2-9」

この質問では記銘力といって新しいものごとを覚える力を計測します。また同時に注意力に異常をきたしていないかをチェックしていきます。

先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください。
1:桜・猫・電車/2:梅・犬・自動車

4つ目の質問で覚えてもらった言葉を繰り返してもらいます。この質問では遅延再生という能力について調べます。遅延再生とは記憶をしたものを一定時間が経過した後に思い出してアウトプットする能力です。

これから5つの品物を見せます。それを隠しますので何があったか言ってください。(時計・鍵・タバコ・ペン・硬貨など必ず相互に無関係なもの見せる)

ここでも記銘力をチェックします。ただしこの質問では視覚的な情報をもとに考えるという点で6つ目の質問とは内容が異なります。

知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください。

この質問では流暢に発語できているかを調べていきます。認知症の初期症状では失語症のように上手く発語できないパターンがあり、その症状を調べていきます。記憶力を測る項目ではありません。

すべての質問が終わったら採点をする

最後に採点をします。30点満点で、20点以下の場合には認知症の疑いがあると診断されます。判定については以下の表のようになります。

まだ認知症と診断されていない場合
認知症の恐れが低い 認知症の恐れあり
21~30点 0~20点
すでに認知症と診断をされている場合
軽度の認知症 中等度の認知症 高度の認知症
20~30点 11~19点 0~10点

20点以下だった場合、どのような検査をするのか

長谷川式認知症スケールで20点以下になってしまったすべての人が「認知症」と診断されるわけではありません。疑いがある場合はその他の方法で認知症の検査を進めていきます。

長谷川式認知症スケールなどの評価スケールを用いて、認知症の可能性を調査したあとはMRIやCTによる画像検査を受けてさらに詳しく調べます。画像検査によって脳の断面図や血管の様子を観察するのです。認知症の多くは脳が萎縮しており、明らかな異常がないかを目視で調べていきます。

テストと画像検査の結果を踏まえて、最後に医師が診察をします。一部の認知症では神経に症状が出ることがあり、体の反応なども観察していきます。これらの結果を総合したうえで、認知症と診断されるのです。

診断のプロセス
診断 内容
1.問診 病歴や心身の不調、暮らしの変化などを医師から聞かれる
2.神経心理検査(認知機能検査) 長谷川式簡易知能評価スケール(改訂版)など、質問で記憶や見当識など認知機能の状態を測る
3.画像検査 CT,MRI,PET,SPECTなど。脳の実際の形(萎縮など)病変の有無を調べる
4.一般臨床検査 血液検査、検尿、検便など。身体疾患や感染症等が認知症の原因になっていないか調べる
5.身体所見 医師が身体に触れたり音を聴いたり五感を用いて異常の有無を調べる
参考文献:「認知症の人もいっしょにできる高齢者レクリエーション」(尾渡順子著/講談社)

長谷川式認知症スケール(HDS-R)の他にも認知症をテストする方法はある

認知症のテストをする方法は長谷川式認知症スケールだけではありません。以下の手法でもチェックをすることが可能です。その他のテストの手法についても紹介します。

世界的に一般的な検査法は「MMSE」

MMSE(ミニメンタルステート検査)は、アメリカで生まれた検査の手法です。長谷川式認知症スケールは特に日本で多く用いられる方法ですが、MMSEは国際的にスタンダードとなっているスクリーニング検査です。見当識や記憶力、計算力などを質問を通して診ていきます。30点満点で採点をして、27点以下であれば軽度認知障害の疑いがあり、23点以下であれば認知症の可能性があります。

No 設問内容 点数
1 日時等に関する見当識 5点
2 場所に関する見当識 5点
3 言葉の記銘 3点
4 計算問題 5点
5 言葉の遅延再生 3点
6 物品呼称 2点
7 復唱 1点
8 口頭での3段階命令 3点
9 書字の理解、指示 1点
10 自発書字 1点
11 図形の描写 1点
合計
  • 全問正解で30点
  • 27点以下は軽度認知障害(MCI)の疑いがあり
  • 23点以は認知症の疑いあり
参考:一般社団法人 日本老年医学会「認知機能の評価法と認知症の診断/MMSE (Mini-Mental State Examination:ミニメンタルステート検査)

MMSEについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

「認知症の検査」と悟られないために「時計描画試験」を

時計描画試験は非常に簡易的にできる認知症のテストです。A4の紙を用意して「紙面に合った大きさの丸」「時計の文字盤」「11時10分を指す短長針」を描いてもらうだけです。このテストでは空間認識能力、構成能力を診ていきます。時計を描くだけであり、認知症のテストに抵抗がある場合でも取り組んでもらいやすいのが魅力です。

そのほか立方体を模写するテストもあります。本人以外の方が立方体を描き、本人に模写してもらいます。立方体が上手に描けない場合は、認知症の疑いが強いとされるものです。自宅でもテストしやすいでしょう。

この他の認知症のテストの手法については以下の記事でくわしく紹介しています。

テストをする前にあらかじめ認知症の初期症状を知っておく

実際に長谷川式認知症スケールを試す方は、ご自身の配偶者や両親が「もしかしたら認知症かもしれない」と不安に思っていることでしょう。認知症の初期症状を知っておくことで、テストをする前に認知症か否かの判断がある程度できるはずです。

認知症の初期には以下のような症状があります。

代表的な認知症の初期症状
  • 物忘れ
  • 判断力の低下
  • 時間・場所の判断把握能力の低下
  • 人柄の変化
  • 強烈な不安
  • 意欲減退(うつ)
  • 暴力的な言動や行動
  • 妄想・幻覚
  • 徘徊

ただしこれらの症状がすべて表れるわけではありません。認知症の種類によって出てくる症状も違いがあります。脳のどの部分に異常をきたしているのかによって症状が変わるからです。

またなかには加齢による自然な衰えもあります。例えば代表的な症状である「物忘れ」には加齢が原因になっている場合もあるので注意をしましょう。見分け方は「体験そのものを忘れているか」「一部のみを忘れているか」です。

お昼ごろに「朝食を食べたか」を忘れてしまった場合は認知症の可能性が高いといえます。しかし「朝食のメニュー」を失念した場合は加齢が原因である可能性が濃厚です。

特徴的な認知症の初期症状については以下の記事で詳しくご紹介しています。

また、このほか認知症の初期段階で現れる症状を総称して「軽度認知障害」といいます。老化と認知症の中間ともいえる状態です。認知症を予防するうえでも重要ですので、軽度認知障害の症状についても把握をしておきましょう。詳しくは以下の記事で解説しています。

基本的には医師のもとで長谷川式認知症スケール(HDS-R)を試しましょう

長谷川式認知症スケールは9つの質問だけで認知症の疑いが分かるテストです。とても手軽なので、自分自身で試してみたくなることもあるでしょう。しかし前述した通り、家族で試してしまうと正確な結果を判断できなくなるほか、人間関係が悪化する可能性もあります。ですので、必ず長谷川式認知症スケールは医師のもとで実践してください。

また認知症は早期発見・早期治療が重要です。はじめのうちに対策を取っておけば、後から症状が重症化することを防げる可能性が高まります。自分で長谷川式認知症スケールを試して、もし20点以上が取れてしまった場合「認知症じゃなかった」と油断してしまうことにもなりかねません。

「もしかして認知症かも」と思った際にすぐかかりつけ医に相談をしましょう。医師によって確実な診断を受けると家族としても心から安心できるはずです。

病院での長谷川式認知症スケールは医療保険適用で240円以下で可能

長谷川式認知症スケールは2018年に保険適用範囲内となりました。検査のみの保険点数は80点(800円)です。医療保険が3割なら240円、2割なら160円、1割なら80円で受けられます。なお、先述したMMSEも同額です。

参考:厚生労働省「令和2年度診療報酬改定について/第2 改定の概要/1.個別改訂項目について

この記事のまとめ

  • 長谷川式認知症スケールは9つの質問で認知症の可能性を判断できる
  • 長谷川式認知症スケールは医師のもとで実践する必要がある
  • 長谷川式認知症スケールだけでは認知症だと確定できない

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