ケアプラン(介護サービス計画書)とは|文例・ケアプランセンターの概要・作成の流れ

ケアプランとは、簡単に説明すると「介護保険サービスを使うための計画書」です。ケアプランにもとづいて介護保険サービスを利用すると、自己負担額は原則1割となります。しかしケアプランを作成しないで介護保険サービスを利用すると、全額自己負担しなければいけません。

ケアプランは介護保険サービスを使う際に必須です。この記事ではケアプランの種類から作成方法、見直し方法まで、はじめてケアプランを作成する人が知りたい情報を分かりやすく解説します。

ケアプラン(介護サービス計画書)とは|文例・ケアプランセンターの概要・作成の流れ
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

ケアプラン(介護サービス計画書)とは

ケアプラン(介護サービス計画書)とは、利用者が直面している課題や支援方法、介護保険サービスの内容をまとめた計画書です。具体的には、ヘルパーをどこにお願いするか、デイサービスは週に何回通うか、月々いくらかかるかなどが記載されます。

一人ひとりによって生活の状況や疾患が異なるため、介護保険サービスの種類はさまざまです。加えて、介護保険サービスの自己負担額や限度額も利用者の所得によって異なります。

そのため、無計画では介護保険サービスを上手に活用できません。計画的に介護保険サービスを利用するために「ケアプラン」が必要となるのです。ケアプランの作成は、介護保険制度によって義務付けられています。

ケアプランの種類

ケアプランは「居宅サービス計画書」「施設サービス計画書」「介護予防サービス計画書」の3種類があり、それぞれ対象と目的が異なります。

「居宅サービス計画書」「施設サービス計画書」は要介護の人が対象です。「介護予防サービス計画書」は要支援の人を対象としています。

居宅サービス計画書

要介護1~5の認定を受け、自宅で暮らしながら介護保険サービスを利用したい人が対象です。「訪問サービス」「通所サービス」「短期入所サービス」「福祉用具レンタル」などのサービスを使えます。

施設サービス計画書

施設サービス計画書は、介護サービスが付いている施設に入居する場合に必要となります。身体介助などはもちろん、リハビリテーションなど計画に沿ったサービスが受けられます。

施設サービス計画書が必要な施設
  • 特別養護老人ホーム(特養)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 介護医療院
  • 介護付き有料老人ホーム(特定施設)

介護予防サービス計画書

要支援の人を対象に、介護をできるだけ予防することを目的として作成されるケアプランです。介護予防サービスには「介護予防訪問入浴介護」「介護予防通所リハビリテーション」などがあります。

ケアプランを作成するケアマネジャーとは

ケアプランは介護の知識がないと作成することが難しいため「ケアマネジャー(介護支援専門員)」という介護のプロが作成します。ケアマネジャーは介護に関する専門的な相談に対応してくれる頼れる存在です。

なお、ケアプランの作成料金は介護保険から全額支給されるため自己負担は無料です。利用者はケアマネジャーへお金を払う必要はありません。

次にケアプランを作成するケアマネジャーの具体的な仕事内容を紹介します。

ケアマネジャーの役割

ケアマネジャーの主な仕事は、利用者の心身の状況や置かれている環境に応じたケアプランを作成することです。他にもサービス事業者や関係機関への連絡など調整役も担っています。

まさに利用者と介護保険サービスをつなぐ役割です。

ケアマネジャーの主な業務
  • 利用者の希望に考慮したケアプランの作成・修正
  • 介護サービス事業者や地域包括センターとの連絡調整
  • 介護給付費の計算・管理
  • 要介護認定の申請代行
  • 利用者の自宅へ毎月訪問など

ケアマネジャーについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

ケアプランセンター(居宅介護支援事業所)とは

ケアプランを作成してもらう際に利用する事業所が「ケアプランセンター」です。「居宅介護支援事業所」ともいいます。厚生労働省によると「居宅介護支援」の定義は以下となっています。

「居宅介護支援」とは、居宅の要介護者が居宅サービス等を適切に利用できるよう、心身の状況、置かれている環境、要介護者の希望等を勘案し、居宅サービス計画を作成するとともに、サービス事業者等との連絡調整を行い、介護保険施設等への入所を要する場合は、当該施設等への紹介を行うこと
参考:厚生労働省「居宅介護支援(参考資料)

つまりケアプランセンターとは居宅の要介護者のサービス計画を作成し、事業者との連絡調整をする場所のことを指します。ケアプランセンターにはケアマネジャーが在籍しており、要介護の方それぞれの状況を把握したうえでケアプランを作成しています。厚生労働省の調査によると、1事業所あたりのケアマネジャー数は常勤換算で3.2人です(2016年現在)。

ただし介護施設に入居する場合は、施設にケアマネジャーが所属していることもあります。その場合は入居している施設内のケアマネジャーにケアプラン作成を依頼します。

要介護認定によって要介護状態と認定されており、これから自宅での介護をする場合は、ケアプランセンターを積極的に活用してケアプランを作成してもらうのがおすすめです。

居宅介護支援について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

ケアプラン作成の流れ

実際にどのような流れでケアプランを作成するかを解説します。

1. インテーク(情報共有・信頼構築)

まずは利用者と担当のケアマネジャーとの間でインテークをおこないます。インテークとは簡単な面談・顔合わせのことです。ケアプランを作成するためには「体の不調」や「成し遂げたいこと」といったパーソナルな部分もケアマネジャーに伝えることになります。そのうえでまずは、お互いのことについて1時間程度話をして、不安を解消するのが目的です。

対面、電話、リモート会議ツールなど、事業所によって方法は異なります。インテークの際に体の具合やニーズについてヒアリングをすることがありますが、基本的には信頼関係の構築を目的としておこないます。

2. アセスメント(利用者の状況を把握)

ケアプランを作成するために、利用者の状況をきちんと理解していきます。実際にケアマネジャーが利用者の自宅を訪問し、利用者や家族との会話を通して情報を収集していきます。「何を求めているのか」「解決すべき問題は何か」「家庭環境はどうか」「介護状況はどうか」などを理解していく段階です。

状況を把握する過程を「アセスメント」と呼び、そこで作成するアセスメントシートがケアプランを作成するための軸になるのです。

インテークとアセスメントはどう違う?

インテークが「面談による信頼関係の構築」としたら、アセスメントは「実際にケアプランを作成するうえでベースとなる『ニーズ』を掴むための調査」です。そのためインテークは初回のみですが、アセスメントはケアプラン作成後も、身体の調子やニーズが変化するにしたがって、何度も繰り返しおこないます。

3. ケアプランの原案作成

アセスメントの実施後、ケアマネジャーはケアプランの原案を作成します。あくまでもこの段階ではたたき台です。

4. サービス担当者会議の実施

ケアマネジャー主導で、ケアプランの原案を修正していく「サービス担当者会議」を実施します。ケアマネジャーや利用者、ご家族だけではなく、サービスの担当者や主治医または看護師などサービスに関わる人たちが参加しながら協議する会議です。

5. 利用者・家族に対する説明と同意

サービス担当者会議の意見を参考に、ケアプランの原案を修正していきます。利用者と家族に説明し同意を得たら正式にケアプランの完成です。

6. ケアプラン交付・サービス事業者と契約

利用する各サービス事業者と契約を進めていきます。契約完了後にサービス開始です。利用者と事業者の手続きや調整もケアマネジャーがサポートしてくれます。

7.モニタリング・ケアプランの再作成

ケアプランを作成した後も、ケアマネジャーは週に1回程度利用者の自宅を訪問して心身の具合を確認します。利用者を観察することを「モニタリング」といいます。

利用者の身体の調子やニーズは日々変化していきます。モニタリングをすることで、ケアプランを作り直すタイミングをつかめるのです。モニタリングを通じて介護保険サービスの継続を見直したり、新たな課題を発見したりと、ケアプランの向上につながります。

なお施設に入居している場合は、3カ月に1回のペースでモニタリングするのが主流です。

モニタリングの結果「作成し直すべき」となった際は、再度「アセスメント」をしてケアプランを再作成します。

ケアプランは自作できる(セルフケアプラン)

ここまでケアマネジャーによるケアプランの作成方法を紹介しました。実はケアプランは利用者またはご家族でも作成することが可能です。

ここでは居宅介護サービス計画書を自分で作成する場合の流れを紹介します。

1. 必要な書類を市区町村の介護保険課で入手する

  • 居宅介護サービス計画作成依頼届出書
  • 居宅サービス計画書
  • サービス担当者会議の記録
  • サービス利用票

2. サービス事業所の情報を収集する

介護保険サービスの情報は介護保険課や地域包括センター、インターネットで調べることが可能です。

3. ケアプランの原案作成

利用したい介護保険サービスの利用単位数と自己負担額の計算をしながらケアプランの原案を作成します。

4. サービス事業者へ直接申し込む

サービス内容や費用(単位数)などサービスを利用する際に気になる点も確認してください。

5. サービス担当者会議の実施

利用する各サービスに連絡を取り、利用者または家族が主導でサービス担当者会議を実施します。各方面の意見を取り入れてケアプランを完成させてください。

6. 介護保険課へ書類を提出する

25日までに提出すると翌月からサービスを利用することが可能です。同時に利用するサービス事業者にも「サービス提供表」を提出します。

以上の6ステップで介護保険サービスが利用できます。なお毎月サービス利用実績をまとめて市区町村に提出する必要があることも忘れないでください。

セルフケアプランは「納得できるサービスが受けられる」「不要なサービスを排除できる」などのメリットがありますが、手間や負担が大きいことはデメリットです。ケアマネジャーに無料でケアプランを作成してもらう流れが一般的といえます。

セルフケアプランについては以下の記事でも紹介しています。

ケアプランの内容とは

ケアプランの内容

ここまでケアプランの作成方法を解説しました。次にケアプランに記載する内容を紹介しましょう。ケアプランの種類ごとに計画書のフォーマットは異なります。

居宅サービス計画書の場合

居宅サービス計画書は第1表~第7表の7枚で構成されており、表ごとに内容が異なります(下記の表を参考)。第4表と第5表を含まない5枚の書類がケアプランです。利用者・家族および介護サービス提供事業へ交付します。

居宅サービス計画書の構成
居宅サービス計画書の構成 主な内容
第1表 居宅サービス計画書(1) アセスメントに基づいて利用者の基本情報、支援の方針
第2表 居宅サービス計画書(2) 利用者の課題、目標、具体的な介護保険サービス内容
第3表 週間サービス計画表 1週間の介護保険サービスと利用者の活動のスケジュール
第4表 サービス担当者会議の要点 サービス担当者会議での内容を記録
第5表 居宅介護支援経過 利用者の相談内容や事業者との連絡事項を記録
第6表 サービス利用票 サービス事業者ごと月ごとに表示
第7表 サービス利用票別表 1カ月の利用単位数と利用者負担額を記載

施設サービス計画書の場合

施設サービス計画書は第1表~第6表の6枚で構成されています(下記の表を参考)。第1表から第4表までがケアプランです。

施設サービス計画書の構成
居宅サービス計画書の構成 主な内容
第1表 居宅サービス計画書(1) アセスメントに基づいて利用者の基本情報、支援の方針
第2表 居宅サービス計画書(2) 利用者の課題、目標、具体的な介護保険サービス内容
第3表 週間サービス計画表 1週間の介護保険サービスと利用者の活動のスケジュール
第4表 日課計画表 1日の介護保険サービスと利用者の活動のスケジュール
第5表 サービス担当者会議の要点 サービス担当者会議での内容を記録
第6表 居宅介護支援経過 利用者の相談内容や事業者との連絡事項を記録

第2表に長期目標・短期目標を設定

第2表には利用者のニーズから導き出した「長期目標」「短期目標」の2種類の目標を記載します。これはケアプランの肝といえる項目です。長期目標には今抱えている問題を解決したときに望んでいる生活を、短期目標には長期目標を達成するための段階的な状態を設定します。

第2表のサンプル 第2表

ケアプランの文例

状況や目標は人によってさまざまですが、ケアプランの文例をいくつか紹介します。

ニーズ1:食事を安心しておいしく味わいたい。

長期目標 食事を安心しておいしく食べる
短期目標 日常的に口腔ケアを実施する
提案サービス
  • 口腔ケアの実施
  • 口腔リハビリテーションの実施

ニーズ2:長時間の歩行が困難でふらつく。1人で散歩を楽しみたい。

長期目標 自分一人で安全に、公園まで散歩することができる
短期目標 転倒しないで歩けるように下肢筋力を付ける
提案サービス
  • 歩行訓練
  • 下肢筋力のトレーニング

ニーズ3:大腿骨骨折してからベッド上で食事している。家族と食卓を囲みたい。

長期目標 1日3食、リビングの食卓で食事を楽しむ
短期目標 1日1回は離床してリビングで食事する
提案サービス
  • 車椅子の移乗介助
  • 下肢筋力のトレーニング

ニーズ4:日中ベッドの上で過ごすことが多いため、活動範囲を広げたい

長期目標 外出の機会が増え、生きがいのある生活を送る
短期目標 自宅内の活動領域を広げる
提案サービス
  • 職員付き添いのもと手すりを用いて室内で歩行訓練をする
  • 安全に移動するため車椅子での移動をする

このように、それぞれの状況に応じた目標を設定し、適切なサービスを提案します。

「軽微な変更」に該当する項目の場合は現行のケアプラン訂正だけで済む

先述したとおり、ケアプランは作成しただけでは意味がありません。実際に運用しながら、見直すことが大切です。

ケアプランを再作成するときは、もう一度アセスメントからサービス担当者会議まで実施しなければいけません。ただし「軽微な変更」に該当する場合は、現行のケアプランを訂正するだけで済みます。

下記の項目が軽微な変更に該当する内容です。詳細は厚生労働省の「介護保険最新情報Vol.155.pdf」に規定されています。

軽微な変更
  • サービス提供の曜日変更
  • サービス提供の回数変更
  • 利用者の住所変更
  • 事業所の名称変更
  • 目標期間の延長
  • 福祉用具で同等の用具に変更するに際して単位数のみが異なる場合
  • 目標もサービスも変わらない(利用者の状況以外の原因による)事業所の変更
  • 目標を達成するためのサービス内容が変わるだけの場合
  • 担当ケアマネジャーの変更

作成時に気を付けたい3つのポイント

ケアプランは介護生活を送る人にとって必須であり、入居者やご家族の生活を豊かにする計画です。最後により良いケアプランを作成するために、利用者とご家族が気を付けるポイントを紹介します。

「できること」「できないこと」の明確化

ケアプランを作成するには、介護に関わる人たちがきちんと利用者の状況を把握していることが大切です。そのためにも利用者、ご家族、ケアマネジャーが利用者の「できること」「できないこと」を整理しておきましょう。

「どのような生活を送りたいか」を共有

利用者が今後どのような生活を送りたいかは、家族間でも話し合わないと見えてきません。今の状況を維持したいのか、改善したいのかなど、希望の生活について話し合ってください。

「近所のスーパーまで買い物へ行きたい」「車椅子で孫たちと旅行を楽しみたい」などの具体的な目標を決めるのもおすすめです。また介護者である家族が希望する生活も共有してみましょう。

ケアマネジャーを頼る

ケアプランを作成するうえで、利用者やご家族は具体的な状況をケアマネジャーに話しにくいかもしれません。介護の現場では、羞恥心やプライドが邪魔をして、実際の現状がケアマネジャーに伝わらないこともよくあります。しかしそれでは良いケアプランは作成できないでしょう。

ケアマネジャーとは二人三脚の長い付き合いになります。ぜひケアマネジャーを信頼し、ありのままの状況を伝えてみてください。ケアマネジャーとの良好な関係を築けることは利用者にとっても大きなメリットです。

ケアプランに関する記事は下記にも紹介しています。ぜひ参考にしてください。

この記事のまとめ

  • ケアプランは介護保険サービスを適切に利用するための計画書
  • 要介護の人は無料でケアマネジャーにケアプランを作成してもらえる
  • ケアプランの作成時は、課題を解決するための長期目標と短期目標を設定する

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