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高齢者のQOLを高める方法を教えてください

親には、これからも元気に楽しく幸せに過ごしてもらうことを望んでいます。しかしときに弱音を口にすることもあり「元気に過ごしているのか」と不安になります。自分たち家族も協力するので、QOLを高めるための方法があれば教えてください。

A自分らしく充実した生活を送るために、本人の想いやできることを理解しながらサポートしましょう。また支援制度を活用しながら経済的な不安の解消も大切です。

さまざまな要因によってQOL(クオリティ・オブ・ライフ)は低下します。まずは、QOLが低下する要因を知ることが大切です。そして、QOLの向上のためには、「自分らしく充実した生活を送ること」がとても大切になります。日ごろから対象者とコミュニケーションをとり、対象者をよく観察し、本人の思いを理解することを心がけてください。また「適度に運動をする」「バランスのとれた食事する」「交流の場を設ける」「趣味を持つ」ことも、QOLを高める要因です。

松本健史
松本健史
合同会社松本リハビリ研究所 所長

介護の現場では「QOL」の維持や向上が重要だといわれています。そのためには、本人が満足して健康的な気持ちで、自分らしい充実した生活を送れることが重要なのです。

例えば、要介護状態になると身体的にもできることの制約が多くなり、日常生活に支障をきたしてしまいます。これは、QOLの低下につながる大きな要因の一つです。

今回は高齢者のQOLの重要性下がってしまう要因を解説していきます。QOLを高めるための方法もご紹介していくので、大切な家族の人生を支えるためにも参考にしてください。

QOLとは?

QOLは「Quality Of Life(クオリティ・オブ・ライフ)」の略で、和訳すると「生活の質」「人生の質」となります。介護の現場ではよく用いられる言葉のひとつです。人生における幸福や満足度の指標となり、どれだけ「自分らしく」、そして「充実した」毎日を送れているかがポイントとなっています。

人生においてのやりがいがなくなり、身体的だけではなく精神的にも不安定になった状態を「QOLが低下した状態」といいます。QOLが低下している場合には、日常生活や病気に関するケアを周りがサポートし向上を図る必要があります。

QOLが高い状態を保つことができれば、たとえ介護が必要な状態になったとしても自分らしく充実した生活送ることにもつながります。

WHOによってQOLこそが「健康」の定義に

WHOはかつて人の「健康」について「病気がない状態」という定義をしていました。しかし1947年に見直しがされています。以下の要素がWHOの健康の定義です。

「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます」

引用:公益社団法人日本WHO協会「健康の定義

肉体的と精神的、社会的にも満たされている状態を健康といい、QOLが高い状態といえます。

WHOでは「WHOQOL-100」という評価シートを作り、QOLを点数で評価できるようにしています。このシートでは健康の定義に基づいた合計100個の問題があり、それぞれについて1~5で評価していきます。日本語版のPDFは下記のリンクからダウンロードできるので、気になる方は試してみてください。

参考:WHO「WHOQOL-100

高齢者のQOLが下がってしまう原因

ではQOLはなぜ下がってしまうのでしょうか。原因が分かれば対策ができ、QOLの向上に役立ちますので、ぜひご覧ください。

身体的な健康状態の悪化

高齢になると、身体機能が低下していきます。身体機能が低下すると、歩くこと走ることはもちろん、日常的な活動量も減少。運動をしないままの生活が続けば、知らず知らずのうちに筋力が落ち、できないことが増えていくでしょう。

また、運動をせずに食べるだけの生活を続けていくと生活習慣病の発生にもつながります。日ごろから適度な運動を取り入れ、活動意欲が無くならないよう工夫することが大切です。

精神的な健康状態の悪化

精神的な要因によってもQOLは下がります。

高齢になると現れる心の変化には、若い時にできたことが思うようにできなくなることで感じる不安や、配偶者との死別や環境の変化により抱く孤独などが挙げられます。

また、要介護状態になると誰かの手助けが必要です。サポートをしてもらっていることに対して感謝はしているものの「本当は迷惑なのではないか?」と不安を感じてしまうケースも多いです。すると自分に自信が持てずに落ち込んでしまうこともあります。

対象者が何を必要としているのか、何があれば満足できるか、介護する側が対象者の声に耳を傾け、自分の思っていることを素直に話せるような環境や雰囲気を作ることが大切です。

生活環境の悪化

生活環境を整えることは暮らしやすさに影響を与えます。今まで安全に暮らしていた住まいでも、高齢になれば不便に感じることもあります。

高齢になり身体能力が低下すると、ちょっとした高低差も負担となります。例えば、自宅に入るまでに階段がある場合、段差が負担で移動が億劫になれば、自宅から出なくなり更なる身体能力の低下に繋がります。また、身体能力が低下して掃除が思うようにできなくなり、自宅が散らかるケースも多いです。汚い部屋自体にストレスを感じてしまえば、心の健康までもが損なわれてしまいます。

生活環境を整えることは、高齢者にとって重要なことです。介護される人が、生活にしくい環境であれば「手すりをつける」「階段をスロープにする」「扉を引き戸に変える」といったリフォームも検討してみましょう。

経済状況の悪化

経済面が安定していると、生活に余裕が生まれ、趣味や習い事も楽しめ、充実した生活を送れるようになります。

経済的な不安は、精神的な不安に直結してしまいます。内閣府が調査した「一人暮らし高齢者に関する意識調査」では、毎月の収入が高いほど幸福度が高いという結果になりました。経済状況もQOLには重要な要素となるのです。

参考:内閣府「第3節 一人暮らし高齢者に関する意識

QOLを高めるための方法

最後にQOLを高めるための方法をご紹介していきます。大切な家族の健康や日常を守るためにも、どう接していくことが大切なのか、しっかりと理解しましょう。

適度に運動をする

運動能力が低下してしまうと結果的にQOLも下がります。そのため、日常的に運動をしてもらうようサポートしましょう。

運動が苦手であれば続けることは難しくなります。「ショッピングモールを歩く」「観光地で散策を楽しむ」など、楽しみながら運動する方法はいくらでもあります。子どもや孫と一緒に散歩をすることや、地域の催しに出向くこと、デイサービスを活用してレクリエーションに参加することも有効でしょう。

バランスのとれた食事する

QOLを維持・向上させるには健康である必要があります。食べることは、身体の健康を維持することに大きく影響します。栄養素やカロリーなどのバランスの取れた食事をすることで、病気を予防できます。

年齢とともに栄養を吸収する力は衰えていきますので、「6つの基礎食品」を意識しながら、

必要な栄養が摂取できる食事を心がけましょう。

また、美味しくて楽しい食事は、充足感だけではなく、家族や社会との繋がりを感じられます。さらに「自分自身が大切にされている」という自尊感情を得られるのです。

6つの基礎食品
食品群 主な栄養素 主な食品
1群 たんぱく質 魚、肉、卵、豆、豆製品
2群 カルシウム 牛乳、乳製品、小魚、海藻
3群 カロテン 緑黄色野菜
4群 ビタミンC 淡色野菜、きのこ類、果物
5群 糖質 穀類、いも類、砂糖
6群 脂質 油、バター
参考:佐世保市「三色食品群と六つの基礎食品

交流の場を設ける

QOLを維持、向上させるためには「コミュニケーション」も必要となります。外との交流を図ったり、季節の行事やイベント、社会的な活動への参加したりは効果的でしょう。

人との付き合いを敬遠される場合は、買い物に行く、外食をするなど無理のない範囲でおこなうことをおすすめします。外に出て人のいる場所に行くことで、必然的にコミュニケーションが生まれます。

趣味を持つ

趣味を持つことは、気の合う仲間と出会うきっかけになります。同じ趣味の友人ができれば刺激になり、精神的な健康の維持にも役立ちます。

身体に問題がなく自由に動くことができるなら、体操教室など体を動かすことを目的とした趣味がおすすめです。身体的な事情などで無理ができない場合でも、散歩、写真、ボランティア活動など、外に出る機会がもてれば、必然的に体を動かせて適度な運動ができます。

経済的な支援制度を利用する

経済的な不安があれば支援制度の活用を検討してみましょう。高齢者向け給付金年金生活者支援給付金などがあるので、自分や親族が給付を受けられる対象なのか自治体に確認してみましょう。

また、暮らしやすい環境を整えるためにも住宅リフォームも検討してみてください。その際には、高齢者向け住宅リフォーム助成制度を活用することができ、手すりの設置や床にある段差の解消、床材の変更、浴槽の取り換えなど、さまざまなリフォームに活用できます。

住んでいる自治体によって支援制度に違いがある場合もあるので、どういった支援があるのか相談してみましょう。安定した生活にもつながるので、QOLの向上に役立つでしょう。

「生きがい」を作る

生きがいを作ることは生活の充実度をアップさせるために有効な手段となります。しかし、人によって生きがいには違いがあるので、無理に作らせないようにすることも大切です。

内閣府の調べによると、高齢者の生きがいには以下の内容が挙げられます。1位は「孫など家族との団らんの時」、2位は「趣味やスポーツに熱中している時」、3位は「仕事に打ち込んでいる時」です。

参考:内閣府「生きがいを感じる時

親が生きがいを見つけることができない場合には、家族は積極的にコミュニケーションを取りましょう。会話を通して「どんなことが好きだったか」「何に興味を持っているのか」を聞き出してあげることが重要です。

子どもが両親のQOLを意識する

QOLの低下は身体的だけではなく精神的にも不安定になります。生活の質を上げるためには、充実した時間や心地よい人間関係が欠かせない要因となります。

本人が望んでいないことであれば、サポートをしたとしてもQOLの低下を招くだけなので、日々近くにいることができる家族がしっかりとコミュニケーションを取り、QOLを高められるよう生活を改善していく努力をしていきましょう。

本人の声をしっかりと聞き、本人が望む生活を考えてサポートをしてあげることが肝心です。家族だけで解決することが難しい場合には、専門家のアドバイスも聞き協力しながら高齢者の生活を支えてQOLの向上を目指していきましょう。

松本健史

この記事の監修

松本健史

合同会社松本リハビリ研究所 所長

理学療法士。佛教大学大学院社会福祉学修士課程修了。専門は生活期リハビリテーション。病院・デイサービス勤務後2014年合同会社松本リハビリ研究所設立。全国の老人ホーム、デイサービス、介護施設でリハビリ介護のアドバイザー、生活リハビリセミナー講師、雑誌・書籍の執筆など活動中『転倒予防のすべてがわかる本 』(講談社)など著書多数。
YouTubeチャンネル「がんばらないリハビリ介護」/オンラインサロン「松リハLAB

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