今回インタビューした施設は、広島県の西風新都に根差した大型老人ホーム「メリィハウス西風新都」です。468室ある日本有数の大型老人ホームには、どんな魅力やメリットがあるのでしょうか。また、人数も多い施設で一人ひとりをケアするためにどんな工夫をしているのでしょうか。
設立当初から携わっているケア部長の山本房子(やまもとふさこ)さんにお話を伺いました。前半と後半に分けて、メリィハウス西風新都の暮らしを紹介します。
468室ある大型老人ホームの強みとは
――メリィハウス西風新都には「介護付き有料老人ホーム」と「住宅型有料老人ホーム」が併設されています。違いを教えてください。
介護付き有料老人ホームは、介護士はもちろん24時間看護師が常駐しておりますので、日々の健康管理や急な体調の変化に早期に対応できる体制です。
住宅型有料老人ホームは自立の方や要支援の方が対象です。その方のご状況によって、住宅型から介護付きに住み替えることも可能です。
実際に住んでいる入居者様にとっては「介護付き」「住宅型」という形態の意識はあまりありません。美楽るほうるやレストランなどで交流されています。
――居室数の内訳を教えてください。
居室数は全部で468室です。介護付きは380室、住宅型は88室となっています。
――居室数がすごく多いですね。
メリィハウス西風新都は全室介護付き有料老人ホームとして2005年に開設しました。当時は西日本一の規模の老人ホームといわれてました。敷地面積は5,374.09㎡あります。
※2015年に2フロアを「住宅型有料老人ホーム」に変更。
――大型老人ホームならではのメリットはありますか?
規模が大きいので、他の老人ホームと比べて共有設備が充実していると思います。
施設の中でも、高齢者の日常生活に必要な設備を作りました。理美容室、ガーデン、プール、カラオケルーム、温泉、レストラン、雑貨店、パン屋まで何でもあります。
――一般的な老人ホームにはない共有設備がたくさんありますね。
開設時、この周囲は住宅地で商業施設等なかったので、敷地内だけでも充実した時間を過ごせる複合型施設のような老人ホームを目指して建てました。
外出しなくても生活が楽しめるので、コロナのときもいつもと変わらない生活をお過ごしいただけましたね。
――設備を充実させた理由を教えてください。
当時、老人ホームってどちらかというと暗いイメージだった様な気がします。そういうイメージを払拭するためにも、普段の大人の暮らしをそのまま老人ホームにスライドさせたかったんです。
最近は住宅型フロアの5階をリニューアルしました。もっと自立の方が楽しめるように、ダイニングキッチンやリビング、ライブラリーを刷新しました。
――なぜリニューアルしたんですか?
10年前の高齢者と今の高齢者のライフスタイルは全然違います。今の高齢者は10年前に比べてアクティブです。その時代の空気感にあった、必要とされるフロアにしたいんです。
私もフロアの企画から携わっているんですが「自分だったら入居したい」という軸を大切にリニューアルのアイデアを出し合っています。
女性ならではのアイデア満載のフロア
――現場のスタッフの意見が盛り込まれているのですね。こだわっていることはありますか?
例えばネーミングですね。スタッフがいる所は「よろず相談室」、余暇活動やレクをする場所は「美楽(みらく)るほうる」、ダイニングキッチンは「母屋」と名付けました。
――老人ホームらしくないネーミングですね(笑)。
楽しそうな雰囲気になるでしょ(笑)。設備の名前だけではなく、身体機能が落ちないためにしている「個別リハビリ」のことも「夢合宿」と呼んでいます。ネーミングを変えるだけでも入居者様のモチベーションが上がりますね。
女性のスタッフが中心となってアイデアを出し合っていますので、女性ならではの目線がちりばめられているのがメリィハウスの特徴かもしれません。入居者様も75%が女性です。
――入居者様から人気がある共有設備は何ですか?
うーん、2階のフロアにある「雑貨店メリィ本舗」ですね。お菓子から衣服、装飾品などを売っている売店です。毎日開店を待っておられる方もいらっしゃいます。
――売店ですか。一番人気の商品はなんでしょうか?
フルーツですね。最近ではバナナ、洋梨、いちじくがよく売れています。あと、お漬物や佃煮も人気です。
――なんでも売っているんですね!
おむつとアルコール以外は売っています。
雑貨店メリィ本舗のこだわりとしては、可愛いものやきれいなものをたくさん並べている点です。女性はウィンドウショッピングが好きですよね。買わなくても通るだけで、気分が良くなるような店構えにしています。
――女性ならではの視点ですね。併設されているレストランやパン屋を利用している方も多いでしょうか?
どちらも人気です。数年前まではレストランのお食事は千円前後でしたが、皆様が利用しやすいようにホームで提供しているお食事と値段を近くしました。それからレストランでお食事する方が増えましたね。
――ホームで提供しているお食事とレストランのメニューはどう違いますか?
お食事を提供している会社が同じなので、味わいは変わらないと思います。どちらもおいしいと入居者様から好評です。
ただ、ホームで提供しているお食事は管理栄養士が考えた献立です。献立は固定ですが、高齢者の健康を配慮しています。
ホームのお食事に比べて、トータルの栄養バランスを意識したお食事ではありませんが、レストランのお食事はメニューを選ぶことができます。
「自分で決められる」「選んだ」という感覚って、生き生きとした生活を送るうえでとても大事です。レストランやパン屋、雑貨店にはそういう役割もありますね。
――今後もフロアをリニューアルする予定はありますか?
直近ではないですが、入居者様のご要望や時代に合わせて変えていきたいと思っています。皆様が楽しめる場所を作ったり、イベントを企画したりと、入居者さまの希望に沿う工夫は今後も続けていきます。
大人の暮らしをそのまま老人ホームへ
――「イベント企画」とありました。老人ホーム内で楽しめるような催しをしているのでしょうか?
はい。設備が充実していることも生かしつつ、入居者様の生活に張りが出るようなイベントを企画しています。
――入居者様に好評の企画を教えてください。
「メリィバー」です。「老人ホームで暮らしていてもお酒を飲みたいよね」ということで、レストランのスペースを使ってバーを企画しました。先ほどの「大人の暮らしをそのまま老人ホームへ持ってくる」というテーマにも通じます。
――老人ホームでバーですか! 斬新ですね。
そうなんです。最初は男性が数人来る程度で、初めての方が参加しづらい雰囲気でした。
そこで女性の方にも足を運んでもらえるように「いちごフェア」を開催するなどして、だんだん女性の皆様も参加してくださるようになり、今では人気の企画になったんです。
メリィバーに参加する際は、皆様ドレスアップされます。正装すると気持ちが変わるのか、背筋が伸びてシャキッとしていて、非日常を楽しんでおられます。老人ホームにいても、特別な時間って大切ですよね。
――他にも考えている企画があれば教えてください。
コロナが落ち着いたら、ディスコを企画したいと考えています。団塊の世代の皆様はディスコ世代なので、楽しんでいただけるかなと。
リズムに乗ったり、昔流行った音楽を聴いたり、入居者様の楽しんでいる表情が目に浮かびますね(笑)。
――メリィハウスらしい、楽しい企画ですね。
ありがとうございます。私たちメリィハウスを運営する八千代会グループは「おもてなしの心」を実践するという理念を掲げています。
入居者様をおもてなしできるようなアイデアをこれからも出していきたいですね。
【後編に続く】
インタビュー後編では、メリィハウス西風新都の「おもてなしの心」について、ケア部長の山本さんが具体的に実践していることを伺います。
老人ホーム・介護施設の概要
施設名:メリィハウス西風新都
事業者名:富士メディカル株式会社
住所:広島県広島市安佐南区大塚西3丁目2番9号
住宅型有料老人ホームメリィハウス西風新都の詳細ページ
介護付有料老人ホームメリィハウス西風新都の詳細ページ
この記事の寄稿者
井上
介護のほんねニュース編集部。
認知症サポーターです。介護に関する今話題のトピックや疑問を、分かりやすくお届けします。