スマホ認知症(デジタル認知症)とは|自分でできるチェックリストや治療法について解説
認知症は年齢を重ねれば重ねるほど、発症のリスクが高まります。しかし若い年代の方でも認知症になりえます。特に近年では「スマホ認知症」が問題視されています。
幅広い年代の方にとって、スマホは日常生活にはなくてはならない存在です。手軽に調べ物ができたり、ゲームや動画視聴をしたり、チャットで会話したりと便利に使えます。しかしスマホが原因で若くして認知症のような症状を抱えてしまうことがあります。今回はスマホ認知症についてご紹介しましょう。
大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。
スマホ認知症とは現代における社会問題
スマホ認知症は現代において、社会問題として近年注目され始めています。デジタル認知症とも呼ばれています。スマホ認知症には、認知症のような病的な物忘れをしてしまう症状があります。しかし他の認知症(「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「血管性認知症」)などと異なり、特定の疾患としては認められていません。
スマホ認知症の原因
スマホ認知症患者は常にスマホを携帯し、仕事でもプライベートでもメールの処理やチェックを欠かさず、インターネットでの情報収集も怠らない人に多く見受けられています。
認知症のうち多くを占める「アルツハイマー型認知症」は脳の萎縮によって認知機能の低下を引き起こします。しかしスマホ認知症の場合は脳の萎縮はあまり見られません。スマホ認知症は全身に指令を出す役割を持っている前頭前野の機能が停止してしまうことが原因となっています。
これは、普段の生活に加えてスマホから多くの情報を収集することで、前頭前野が処理しきれずパンク状態に陥ってしまうためです。前頭前野がいっぱいいっぱいの状態だと集中力も途切れがちになり、思考力も停止してしまうことが考えられます。
スマホ認知症の方の多くが働き盛りの世代でもあり、社会への影響も少なからず出てきてしまいます。現代ではスマホに関する依存症も確認されていることから、スマホが脳に与える影響は計り知れません。別の動作をしながらスマホを操作することで、脳に何らかの異変が起こり得るとされており、脳へのタスクが多い現代人にとって脳が疲弊する原因を自ら作り出してしまっている状態といえます。
スマホが認知症に影響するメカニズムとは?脳の疲弊・寝付きの悪化など
スマホ認知症とは言いますが、本当にスマホが認知症に影響を及ぼすのかと疑問に感じる人もいるでしょう。しかし、実際にはスマホが普及してから若年層での認知症のような病的な物忘れをしてしまうケースが増えています。普段から何気なく利用しているスマホは、認知症にどのような影響を及ぼしているのか解説していきましょう。
脳が疲弊する
スマホを長時間使用することによって、脳は疲弊してしまいます。スマホでニュース記事を読んだり、動画を流したりしている間でも脳は働き続けており、膨大な情報を取り込み続けているのです。
膨大な情報は「何気なく」収集したものであるため、外に吐き出すこともせず自身の中に残ったままとなります。情報を見てどう感じたのか、どう面白かったのかを表現できないことから、取り込んだ情報を外に排出する能力自体が衰えてしまうのです。
そもそも人間の脳は情報を取り込み、考え、行動することで外に排出するようにできています。しかし、スマホでの情報収集は「何気ないもの」であるため、アウトプットがされにくいです。取り込むだけ取り込んで、そこから先の処理はされず脳が情報過多で疲弊してしまう原因となり得ます。
脳が疲弊してしまうと、新たな情報を取り込む機能(記憶)や取り込んだ情報を思い出す機能が弱まってしまいます。その結果、スマホ認知症のような病的な物忘れが生じてしまうこととなるのです。
ブルーライトによって寝付きが悪くなる
スマホによって脳が疲弊してしまうこと以外にも、スマホが発している画面の光(ブルーライト)も人間の体に大きな影響を与えています。「ブルーライトは目に良くない」と聞いたことがある人も多いかもしれませんが、実は脳にも悪影響を及ぼしています。
特に就寝前にスマホでブルーライトを大量に浴びてしまうと、メラトニンという睡眠ホルモンの分泌量が減少してしまいます。睡眠ホルモンが減少すると寝付きが悪くなり、夜中に起きてしまうことにつながります。
「熟睡できていないこと」もスマホ認知症の原因の1つです。脳は寝ている間に起きている間に取り込んだ情報を処理しています。そのため眠れないことで、物忘れなどの症状が悪化してしまう可能性があります。
スマホ認知症(デジタル認知症)のチェックリスト
スマホ認知症は、今やスマホを持っている全員がなり得るものです。スマホ認知症を名付けられた脳神経外科医であり、おくむらメモリークリニックの院長である奥村歩先生が、スマホ認知症のチェックリストも作成されていました。ここからはスマホ認知症のチェックリストをご紹介していきます。
下記に挙げたチェックリストの中で、3つ以上当てはまるようであればスマホ認知症のリスクが高いため生活習慣を見直す必要があります。もしスマホ認知症かもと不安に思うことがあれば、一度チェックリストから実践してみてください。
ふとん・ベッドでスマホを使う
就寝前にふとんやベッド上でスマホを使う習慣があるかどうかチェックしてください。
スマホなしで初めての場所に時間通り着けない
スマホに内蔵されている地図アプリなどを使用しないで、初めていく場所に時間通り辿り着けるかどうかをチェックしましょう。
最近、漢字が書けなくなった
スマホの漢字変換などを使わずに、自筆で漢字を書く際に書けなくなった漢字が多くなったかどうかチェックしてください。
ここ数年、物忘れが増えた
ここ数年で一気に物忘れが増えたと感じられたらチェックしてください。
やる気・興味がわかなくなった
何事にもやる気が出ないことや、何事にも興味が持てなくなったと感じられたらチェックしてください。
仕事・家事の段取りが悪くなった
普段している仕事や家事でも以前より段取りが悪くなったと感じたらチェックしてください。
覚えておくものはスマホで写真を撮る
記憶しておかなければならない事項に対して、常日頃からスマホで写真を撮るなどして記録を残しているかどうかチェックしてみてください。
スマホ認知症の対策は「休息する」「制限時間を設ける」など
スマホ認知症はチェックリストから分かるように、普段私たちが生活の中でより身近な存在となってしまったことで生じてしまうリスクが高まります。しかし、現代社会において仕事でもプライベートでもスマホは欠かせない存在です。
スマホ認知症を防ぐためには、普段の生活習慣をどのように見直していけば良いのでしょうか?ここからは、スマホ認知症の対策について解説していきます。
休息時間を設ける
スマホ認知症とならないためには、やはり脳への疲労を蓄積しないことが重要となります。スマホを使用することで脳は少なからず疲弊していきます。そのため、休息時間を設けることが大切です。
休息時間はそれぞれ個人差があっても大丈夫です。目や脳を休ませる時間を作り、その間はスマホやパソコン、テレビなどのデジタル機器に触れないようにしましょう。日々の中でそういった時間を作ることは非常に有効です。
自分のルールを設ける
これは休息時間を設けることにもつながりますが、自分の中でスマホを見ない・触らない時間を作り、ルール化していきましょう。最近ではトイレに行く際にもスマホを持っていく人が多く見られますが、その時間だけでもスマホを触らないようにしたり、就寝前30分~1時間はスマホを見ない・触らないようにするルールを設けたりすると、常日頃から意識してスマホ認知症対策ができるようになります。
また、移動中のスマホも近年では社会問題となっています。自転車や自動車の運転中はもちろん危険ですし法律でもスマホの利用は禁止されています。歩行中であっても周囲への注意力が低下してしまうことから、できるだけスマホを見ないで歩いてみると事故に遭うリスクの軽減にもつながるでしょう。
あくまでも自分の中でのルールなので、自分ができる範囲で決めてみるようにしましょう。スマホ認知症対策には普段からの心掛けが大切になります。
分からないことをすぐに検索するのをやめてみる
スマホやパソコンなどのインターネット機器があれば、分からないことをすぐに検索できる時代です。しかし、それを継続してしまうことでどんどん脳が使われなくなり、脳の機能が低下してしまう原因となってしまいます。
そのため、インターネットでの検索はすでに当たり前となっているところをあえて検索せず、手持ちの辞書や分かる人に聞くようにしてみてください。手軽に利用できるスマホですが、利用しすぎている現代では逆に利用しないことを目標にしてみるとスマホ認知症対策にもなります。
デジタル・デトックスを実践してみる
休息時間を設けることや自分のルールを決めることともさほど変わりないですが、最近話題になっているデジタル・デトックスを実践してみても良いでしょう。デジタル・デトックスとはその名の通り、スマホなどのデジタル機器に一定期間触らないようにして脳と体へのストレスを軽減する取り組みを言います。
デジタル・デトックスを実践してみるだけで、その間に誰かと会話したり、自然と触れ合ったりして元々備わっている人間の五感を取り戻すことにもつながります。最近では、このデジタル・デトックスを体験できるプランを用意している宿泊施設が増えてきています。
チェックインの際に自身の持っているデジタル機器をすべてフロントに預け、宿泊中は一切デジタル機器に触ることなく過ごせます。実際にこのようなデジタル・デトックスのプランを利用した人は日々の疲れが取れたと言い、高い評価を得ています。近くにあればどうしても触ってしまうという人は、このようなプランを利用してみても良いでしょう。
機器に頼らず、自力で思い出す・記憶することがスマホ認知症予防の第一歩
スマホ認知症は、現代において大きな社会問題となりつつあります。認知症は今や高齢者のみの病気ではなく、働き盛りの世代へも迫ってきています。
現状ではスマホがない生活は難しいでしょう。しかし、少しでもIT機器に頼らない生活を送るよう意識することでスマホ認知症の対策になります。
IT機器は非常に便利で、検索能力から記憶能力まで頼ってしまう人は多いです。その方が確実性も高くなることもあります。しかし、それらの脳の機能を使わずにいることでどんどん人間の本来持っている機能が衰退してしまったり、IT機器による情報過多で脳が疲弊したりすることにもつながるでしょう。
まずは、少しでもスマホに触る時間を減らすことから始めてみてください。不便に感じることもあるかもしれませんが、以前はスマホのない生活ができて当たり前でした。自らスマホの利用時間を決めるなど工夫して、スマホと上手に付き合っていくことが今後重要となっていくでしょう。
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この記事のまとめ
- スマホが原因で認知症のような症状を発症してしまう
- スマホ認知症のチェックリストを見てみよう
- デジタル・デトックスが重要である
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