介護タクシーとは|料金やサービスなど利用前に知りたい情報を紹介
介護タクシーは、体の不自由な方や要介護の方が利用するタクシーです。車両には車いすで移動できる設備やストレッチャーが完備されているため、利用者は安心して外出できます。
しかし、介護タクシーで利用できるサービスや料金が分からず、利用を躊躇している方もいるでしょう。介護タクシーはケースによっては保険適用も可能で、自己負担を減らせます。介護サービスの一種であるため、思ったよりも広範囲のサービスが受けられることにも気づくでしょう。
そこで今回は、介護タクシーの料金などサービスの利用前に知っておきたい情報についてご紹介します。介護タクシーの利用を検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。
「介護タクシー」はあくまで通称の名前
介護タクシーという言葉はよく耳にしていても「どのようなサービスか詳しく知らない」場合もあるでしょう。ここでは、介護タクシーの基本的な特徴について解説します。
介護タクシーとはあくまでも通称で、法的には「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)」という名前です。
介護タクシーには介護保険適用と保険適用外(保険外)がある
介護タクシーには、介護保険が適用される場合と適用されない場合の2つがあります。介護保険が適用されるか否かは、利用対象や利用目的によって異なります。介護保険で決められた利用範囲であれば、ケアプランに組み込まれるため自己負担額が軽減されることがメリットです。
しかし、外出先や利用対象によっては介護保険が適用外となるケースもあります。保険適用外となると費用は全額自己負担となるため、金銭的に大きく差が出るでしょう。乗車の際は介護保険が適用となるのか、適用外なのかを確認しておくことが大切です。
介護保険が適用される条件については、後ほど詳しくご紹介します。
また、介護保険制度に関して知りたい方は以下の記事をご覧ください。
介護保険適用の介護タクシーは「訪問介護サービス」に含まれる
介護タクシーは、自宅で介護が受けられる訪問介護サービスの1つです。訪問介護サービスには、食事の手伝いや見守りをする食事介助や身体を清潔に世話する入浴介助といった各種サービスがあります。
そのなかで通院時の乗車・降車の介助が、介護タクシーの業務に該当します。ヘルパー2級などの介護資格を有する運転手から、送迎を受けられるサービスです。単なる移動手段ではなく、介護の技術や知識を持った運転手がサポートしてくれるので安心感があるでしょう。
その他の訪問介護サービスについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
介護タクシーと福祉タクシーとの違いとは【実は同じもの】
介護タクシーについて調べている方や利用を検討中の方であれば、福祉タクシーと呼ばれるタクシーを聞いたことはないでしょうか。実態としては介護タクシーと福祉タクシーは同じものです。全国的には介護タクシーという呼び方が認知されています。
介護タクシーおよび福祉タクシーの事業者は、国交省の営業許可を得ているのが特徴です。その中の一部の事業者が、厚労省の「訪問介護事業所」の許可を得て、介助の作業に介護保険を適用させています。とはいえ全国に約1万4,000台ある介護タクシーですが、そのほとんどは介護保険を適用していない事業者となっています。
介護タクシーは介護保険適用内で利用できる
それでは、介護タクシーで介護保険を利用できるケースとは、どのような時なのでしょうか。介護保険が適用される条件について、利用対象やサービス内容など詳しく見ていきましょう。
居住施設・要介護などが介護保険適用の利用条件
介護タクシーで介護保険が適用される対象は決まっています。保険の適用対象となるのは、自宅や有料老人ホーム、ケアハウス、サービス付き高齢者向け住宅などで暮らしており、単身で車や公共交通機関を利用できない要介護1~5の方です。要支援と認定された場合には、保険が適用されません。
要支援は、日常生活は自分できるものの多少の支援が必要な状態です。一方の要介護は日常生活において、何らかの介助を必要とする状態にあります。介護タクシーで保険適用となるのは、介護の必要性が高い要介護状態の場合と理解しておきましょう。
利用目的も保険適用の条件に
保険適用の範囲は「日常生活上または社会生活上必要な行為に伴う外出」と目的が制限されています。介護タクシーといえども、どこでも自由に移動できるわけではありません。
普段の生活に必要な買い物や通院、市役所など公的機関の利用、金融機関での手続きといった目的の場合のみ、保険が適用されます。補聴器やメガネなど本人が現地に行かなければできない内容も含まれます。一方で、仕事や趣味で介護タクシーを利用しても、保険適用は認められないので注意しましょう。
介護タクシーで受けられるサービス内容を状況ごとに紹介
介護タクシーでは、通院等乗降介助のサービスを提供します。介助の範囲はケアプランによって決まるため、事前にケアマネジャーとよく相談することが大事です。具体的なサービス内容は、以下のとおりです。
出発時のサービス
利用者宅までタクシーで出向き、安全な乗車をサポートします。タクシーへの乗車だけでなく、着替えなどの外出準備介助も業務に含まれます。介護タクシーは訪問介護サービスの一つであり、包括的なサービスが求められるからです。自宅からタクシーまでの移動および乗車を手伝います。
運転中のサービス
利用者を目的地まで運転します。往復の場合は、帰宅時の運転も含みます。
現地到着時のサービス
到着時は降車の介助、目的地までの移動をサポートします。通院時は、受付および受診科までの移動介助と病院スタッフへの声かけも担当します。病院内介助は、病院スタッフの役目とされるので、介護タクシーの対応外です。受診後は会計や薬の受け取りをします。
帰宅時のサービス
帰宅時の降車介助、室内までの移動介助をします。着替えやおむつ交換も必要であれば、併せておこなうところまでが対象です。
通院等乗降介助には、移動と介助の2つの側面があります。介助を必要としない移動に関しては、保険適用外と判断されます。
「通院等乗降介助」を利用するためには事前にケアマネジャーと相談を
介護タクシーの利用は通院等乗降介助として認められれば、自己負担額が軽減されます。利用する際は事前にケアマネジャーと相談し、利用目的や必要な介助を伝えておきましょう。介護タクシーの要望があれば、ケアプランに組み込んでくれます。
ケアプランとは、介護保険を利用してサービスを受けたい際に作成される計画書です。あとはケアマネジャーが介護タクシー事業者と連携し、必要なスケジュールで利用者宅に訪問する段取りをつけてくれます。
ケアプランについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
「通院等乗降介助」を使ううえでの3つの注意点
通院等乗降介助のサービス利用時には、他にも注意点があるので覚えておきましょう。
家族の同乗は原則不可
通院等乗降介助により保険適用となる場合、原則として家族の同乗は認められません。保険適用時の乗車は単なる移動ではなく、介助を伴う移動です。家族が同乗する場合には、運転手による介助行為は必要なくなるため、サービスの適用外と判断されます。
ただし、特別な事情があると自治体が認めた際には、家族の乗車が認められることもあります。基本的には、利用者本人だけが乗車するものと考えましょう。
状況によっては身体介護や生活援助の該当となる
介護タクシーを利用していても、ケースによっては通院等乗降介助ではなく、身体介護や生活援助と判断されることもあります。
例えば、要介護4・5の場合で外出前に30分以上の時間がかかる時、入浴や食事介助などで30分以上の身体介護が必要な時、外出中に生活援助が行われる時などです。車にヘルパーが同席する際は、移動中の介助内容によって通院等乗降介助と判断されるか、身体介護と判断されるかが決まります。
運転手の病院内介助は原則認められない
通院の場合、運転手が介助するのは移動中や車内であり、病院内は病院のスタッフが対応するのが一般的です。介護職の資格を持っていても、運転手は病院内に付き添えません。
ただし、例外もあります。例えば、病院内の移動に介助が必要な場合、認知症その他見守りが必要な場合、排泄介助を必要とする場合などです。病院内介助の判断は、各自治体によって異なる傾向があります。
介護保険適用外の介護タクシーの利用は目的に制限がないのが利点
介護タクシーに保険が適用されたら自己負担が軽くなって助かる反面、利用目的に制限があるので、使いにくいと感じることもあるでしょう。その際は、保険適用外で介護タクシーを利用するのも1つの方法です。
保険適用外の場合は要支援の方でも使える
介護保険を適用しない場合、利用対象は要支援や要介護の高齢者です。介護保険とは無関係のサービスであるため、ケアプランの作成も必要ありません。家族の乗車も認められるので、病院へも付き添えます。
保険適用外の場合は幅広い利用目的で使える
保険外の介護タクシーのメリットは、利用目的が自由である点です。保険適用時には「日常生活上または社会生活上必要な行為に伴う外出」との定めがあります。
しかし、保険外では利用目的に制限がないため、幅広い用途でタクシーを活用できます。仕事や趣味、習い事、ドライブ、冠婚葬祭などさまざまな行き先に対応します。全額自己負担という点さえ納得できれば、使い勝手も悪くないでしょう。
保険適用外の場合は身体介助の可否に注意
保険外の介護タクシーであれば、利用目的に合った多様なニーズに対応できます。しかし、なかには介護職資格を持たない運転手もいるため、身体介助ができるかどうかを事前に確かめておくと安心でしょう。
介護タクシーの料金の仕組み、医療費控除の条件など
ここまで、介護保険適用と保険外の介護タクシーについてご紹介してきました。保険適用であれば自己負担も軽くなる一方、保険外で全額自己負担の時は「一体、いくら料金がかかるのか」気になるところでしょう。
介護タクシーの料金の内訳は、運賃・介助料・機材使用料・その他費用の4つです。よく介護タクシーは「料金が高い」と言われる理由には、通常のタクシーと比較して介護タクシーは輸送の平均時間が長いことが挙げられます。
運賃は距離や時間で決まる
運賃は通常のタクシーと同じく、距離や時間によって発生します。距離制運賃は最初の2kmで750円、以降1km分ごとに300円などとなっており、時間制運賃は最初の30分が1,000円で、以降30分ごとに2,000円といった料金体系です。
タクシーによっては、時間距離併用制を採用しているケースもあります。またタクシー運賃には地域差があり、同じ地域でも車両の大きさによって運賃は異なります。時間や距離が長くなるほど料金は高くなる仕組みです。
介助料が別途かかる
介助料は乗車と降車、運行中に介助に適用される料金です。多数の介護タクシーでは、基本介助料の名称が使われています。介助料は提供する介助内容に応じて変動し、なかでも室内でのベッドから車いすへの移動介助、食事やトイレ介助などは「特殊介助」と呼ばれます。基本介助料は500円から1,500円とされており、室内介助は1,000円が目安です。
また介護タクシーでは、利用者への声がけや見守りも実施されるのが特徴です。車いすやストレッチャーを使用する場合には思った以上にシートが不安定で、揺れも強く感じます。
介護タクシーはただ利用者を乗せて走り、現地で乗降させているわけではありません。介助料は、乗り心地の良さを追求するためルート選びにも気を配るなど、利用者に必要なサポートをするための料金です。
本格的な介助の場合は「機材使用料」も
機材使用料は、介助で使用する機材や数量に応じて加算される料金です。移動で使用する車いすやリクライニング車いす、ストレッチャーなど機材によって料金は異なります。
目安料金として、車いすは無料から1,400円、リクライニング車いすは2,000円、ストレッチャーは6,000円です。使用後のメンテナンスに費用がかかったり作業時間も取られたりする機材は、金額が高くなりやすくなっています。他に酸素吸入器などの医療機器を貸し出している事業者もいます。
介護タクシーの料金に関して詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
介護タクシーにはその他の費用がかかることも
その他、上記の3つ以外に日常生活サポートによる料金がかかることもあります。買い物や清掃、薬の受け取りなどを、利用者に変わって運転手が実行するサービスです。
介護タクシーは、介護職の資格を持った運転手が送迎してくれるタクシーです。移動から介助までを担当してくれ、利用目的や対象次第では保険も適用されます。保険適用時は、自己負担が軽くなるためケアプラン作成時にケアマネジャーに相談しましょう。保険外は利用目的が定められていないので、仕事や趣味でも使えます。
介護タクシー料金には運賃のほかに、介助料や機材使用料など利用者をサポートする費用が組み込まれています。タクシー事業者を選ぶ時は、利用料金や対応の良さなど総合的に見比べて検討すると良いでしょう。
介護タクシーの上手な探し方
実際に利用する際には介護タクシーの運営事業者を選定する必要があります。その際に損をしないための探し方について紹介しましょう。
ケアマネジャーに任せる
介護保険を利用する場合は担当のケアマネジャーが事業者を選定してくれます。経験のあるケアマネジャーであれば、過去に介護タクシーを実際に探した経験があることも多いため、安心して任せられるでしょう。
ただしケアマネジャーに依頼する際には事前に要望を伝えておく必要があります。「価格帯」や「運転手に求めること」「付き添いの有無」などを伝達しておきましょう。
「伝達事項」を準備したうえでWebで検索する
介護保険を使わない場合は自力で探す必要があります。その際にWebで検索するのが最も効率的です。
「介護タクシー 地域名」などで検索すると、介護タクシーの事業所を検索できます。そのうえでヒットした事業所からご自身の求めていること(価格、スタッフの熟練度など)に合うところを選んで電話やメールなどで依頼をしましょう。
実際に依頼をする前に「介護タクシーの事業所に伝えるべきこと」をまとめておくのがおすすめです。主に以下の要素をまとめておくと、スムーズに探せます。
介護タクシーを探す前にまとめておくこと
- 利用時の距離
- 利用頻度
- 事業所側の料金設定
- 付き添いの有無
- ストレッチャーは必要か
- 本人の身体の状態
- タクシー利用時に医療機器は使えるか
このほかに、専門的な知見がある場合は「移乗介助で何に気をつけているか」などの要素も聞いておくと、より安心できるでしょう。
必ず事前に見積もりを取っておく
料金設定がわかりやすかったとしても、必ず利用前に見積もりを取っておくのがおすすめです。実際に乗車する区間を想定して、見積もりを依頼しましょう。イメージしていた料金と同じかどうかをあらかじめ確認しておきます。
ケアマネジャーがいる場合は、見積もりを確認してもらい、適正かどうかを確認します。
利用した後も評価をする
介護タクシーを探して実際に乗車した後に「快適に利用できたか」を評価します。定期的に通院する必要がある高齢者にとって介護タクシーは長期間にわたって頻繁に使うものです。長く利用し続けられるかを確認しておきましょう。ケアマネジャーがいる場合は、ケアマネジャーに確認してみてください。
市区町村によっては独自の移送サービスを展開しているところも
今回は介護タクシーについて、概要や費用、探し方などについてご紹介しました。高齢になると、通院などで外出の必要性が発生します。しかし一方で、車の運転や公共交通機関の利用が難しくなることもあります。介護タクシーは非常に便利なサービスです。長期間にわたって使い続ける方もいるでしょう。
なお、民間の介護タクシーサービスのほか、市区町村によっては独自で移送サービスを展開していることもあります。なかには助成券が配られ、介護タクシーよりも安価で利用できる自治体もあります。
例えば豊明市では「市町村特別給付移送サービス費助成事業」として「通院・入退院にかかる自宅と医療機関間」「入退所にかかる自宅と福祉施設間」で送迎をしてくれます。その際に月あたり4,000円分の助成券が配布されます。
参考:豊明市「市町村特別給付移送サービス費助成事業」場合によっては、民間事業者を使うよりもリーズナブルに移送してもらえるかもしれません。まだ知らない方はお住まいの自治体に問い合わせてみるといいでしょう。
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この記事のまとめ
- 介護タクシーには保険適用内と適用外がある
- 家族は同乗できないなどサービス利用の注意点がある
- 運賃には複数の利用料が含まれる
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