透析とは|治療の種類・シャントについて・食事で注意すべきことなど

腎臓は人体において非常に大きな役割を担っている器官です。「体内の水分量を保つ」「体内の老廃物を体外へ排出する」などの働きをしています。そんな腎臓が病気になってしまうことで、透析をしなければならない状況に陥ります。

そもそも透析とはどのようなことをするのか、具体的に理解している人は少ないでしょう。自身が透析をするだけでなく、家族が透析をしなければならない場合にも、しっかりと透析について理解して生活しなければなりません。今回は透析とはどのような治療法なのか、その種類や透析にかかる実際の費用、透析になった際に必要な食事などを詳しく解説します。

透析とは|治療の種類・シャントについて・食事で注意すべきことなど
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

透析とは

透析とは、本来腎臓が担っている役割を助けるための療法です。主に腎不全をきたしている状態の患者に実施する治療法の一つとなっています。腎不全は、腎臓の機能が何らかの原因によって不十分となった状態です。腎不全が悪化すると体のバランスが崩れ、日常生活に支障をきたしてしまいます。

腎臓の働きが低下することで起きる主な症状は、体内の老廃物が適切に排出できなくなることによる尿の異常や体のむくみ、高血圧などです。腎不全の進行度や重症度、原因によっても症状は変化します。慢性的な腎不全の末期ともなると「尿毒症」となり、全身けいれんを引き起こすこともあるのです。

透析は、腎臓の働きが正常時の10%以下になってしまった際に、人工的にその働きを助けるための治療法です。ただし透析療法をしているからといって、腎臓の機能不全が改善することはありません。透析療法はあくまでも、腎臓の働きを助けて命をつなぐための方法なのです。

目的は腎臓の働きを助けること

腎臓は本来、血液中の老廃物をろ過し体外に排出させるための尿をつくる器官です。他にも血圧や水分量を調整したり、赤血球をつくったりもしています。腎臓の働きが不十分になってしまうと血液中の老廃物が正常にろ過できず、体外に老廃物を排出できずに体内に蓄積してしまいます。さらには血圧や水分量をうまく調整できず、赤血球も正常につくられなくなるのです。

体に現れる主な症状としては、老廃物が蓄積することによる倦怠感、食欲低下、悪心、嘔吐、頭痛などです。これらは「尿毒症」と呼ばれます。また体内のバランスの崩壊は心不全や肺水腫などを引き起こす原因の1つです。心不全や肺水腫では息切れや呼吸苦が現れます。そのまま放置していると最悪の場合、命にも関わってしまう病気です。

そのため腎臓が正常に働かなくなると、透析療法をして血液中の老廃物を体外に排出することが必要です。透析によって、ある程度は以前と同じような生活も送れるようになるでしょう。

透析を導入する基準

透析を開始するかどうかは、厚生労働省の「透析導入の基準」に基づいて判断されます。慢性的な腎機能不全、それに伴う臨床症状、日常生活への障害を認め、各項目の合計点数が原則60点以上となると透析療法が導入適応となります。項目は大きく分けるとⅠ臨床症状、Ⅱ腎機能の数値、Ⅲ日常生活障害度の3つです。

Ⅰ臨床症状
症状
1 水の貯留(むくみ、胸に水がたまる)
2 酸塩基電解質異常(高カリウム血症、酸の貯留)
3 消化管の症状(吐き気、嘔吐、食欲不振)
4 心臓の症状(呼吸困難、息切れ、心不全、著明な高血圧)
5 神経の症状(意識混濁、けいれん、しびれ)
6 血液の異常(貧血、出血が止まりにくい)
7 目の症状(目がかすむ)
点数
3つ以上の症状:30点
2つの症状:20点
1つの症状:10点
Ⅱ腎機能
血清クレアチニン(クレアチニンクリアランス)の数値 点数
8mg/dl以上(10ml/min以下) 30点
5~8mg/dl(10~20ml/min未満) 20点
3~5mg/dl未満(20~30ml/min未満) 10点
Ⅲ日常生活の障害の程度
程度 点数
起床できない(高度) 30点
生活が著しく制限される(中等度) 20点
運動・労働ができない(軽度) 10点
※10歳以下または65歳以上の高齢者または糖尿病、膠原病、動脈硬化疾患など全身性血管合併症が存在する場合は10点を加算する
参考:東京女子医科大学病院 腎臓内科「1. 血液透析導入基準」

透析の種類

透析は自身の持つ腎臓の働きを助けるためにおこなう治療方法です。透析の種類としては、2種類あります。1つは、血液中に蓄積した老廃物を浄化するために透析器を通して綺麗にして体内に戻す「血液透析」、もう一つは腹部にカテーテルを入れて透析液を出し入れする「腹膜透析」です。

どちらの透析が合っているのかは医学的な観点はもちろん、その人の日常生活や年齢、生活などを考慮しながら選ぶことが大切です。血液透析と腹膜透析のそれぞれの特徴について解説していきましょう。

血液透析

血液透析では、一度に多くの血液を透析器に入れる必要があります。そのために血液流量が多く太い血管が必要です。血液透析前には必ず、腕の動脈と静脈をつなぎ合わせて血液流量の多い太い血管を作る「内シャント」という手術から始めます。

内シャントが形成できたら、内シャントに針を刺してポンプを用いて血液を体外に排出します。取り出した血液は透析器を通り、透析器内で血液中に蓄積している尿毒素を除去し、血液中のミネラルを調整して水分量を調整します。その後、体内に戻されるのです。

血液を通す透析器は「ダイアライザー」と呼ばれ、体内における糸球体と同じくフィルターのような役割を果たしています。小さな穴が開いた細いストローのような膜が1万本以上束ねられており、血球成分やたんぱく質よりも小さいものだけが通過できる仕組みです。内側に血液、外側には透析液が流れています。そのため血液中の老廃物は透析液に排出され、必要な物質は血液中に残るのです。

血液透析は、1回につき4~5時間ほどかかり、週に3回は実施しなくてはなりません。保険適用は月に15回までですが、ほとんどの人は週に3回通院しながら血液透析をしています。1回につき4~5時間もかかること、週に3度もの通院が必要なことなどから一定の負担がかかることは否定できません。

しかし本来であれば1日中腎臓で担っている作業が、週に3回1日4~5時間しか実施されないことになります。血液透析を実施しても、本来の腎臓の15%ほどしか代行できていない計算になるのです。

血液透析をするうえで、透析と透析の間の生活を安定させることが重要となります。透析は、蓄積された体内の老廃物や水分量を短い時間で浄化したり調整したりする治療です。そのため、透析をするまでの間に食べすぎたり飲みすぎたりしてしまうと、心臓などの他の臓器にも負担が大きくなり影響が出やすくなってしまいます。

血液透析に必要なシャントとは

血液透析をする際に必要な「シャント」は、聞きなれない言葉でよく分からないという方も多いでしょう。概要を簡単に解説します。

血液透析を実施するためには、1分間に約150~200ml以上の血液を循環させることが必要です。しかしもともとの静脈では血液の流量が足りません。そこで静脈と動脈を皮膚の下でつなぎ合わせ、新たな太い血液の通り道を作ることを「シャント」といいます。

一般的には自分の血管同士をつなぐ「内シャント」が主流です。ただし血管が細い方など、自身の血管を使用できないケースでは、人工血管を用いてシャントを造設することもあります。

シャントをつくる手術にかかる時間は、およそ1~2時間程度です。腫れや痛み、感染症などが生じるリスクもあるため、シャントをつくったほうの腕を圧迫したり重いものを持ったりすることは避けましょう。

腹膜透析

血液透析同様に、腹膜透析療法を始める前にも手術が必要となります。腹膜透析の場合、透析液を腹腔内から出し入れするためのカテーテルを留置しなければなりません。その後、腹膜透析を開始します。

腹膜透析では、まずカテーテルから透析液を入れます。そのまま一定時間経過すると、腹膜を通して血液中に蓄積した老廃物や水分が腹腔内に移動してきます。腹腔内に十分に移動してから老廃物や水分を含んだ透析液を排出することで、血液を浄化する仕組みです。

腹膜透析は、拡散と浸透圧を利用している透析方法です。拡散とは、水に溶けた物質が濃度の濃いほうから薄いほうに移動して均一になろうとする性質のことをいいます。血液よりも薄い濃度の透析液を用いると尿素や老廃物が血液から透析液へと移動し、不要な物質を除去できるのです。

一方、浸透圧とは濃度が低いところから高いほうへと水が移動しようとする力です。体の糖濃度よりも高い透析液を使うと、ブドウ糖は腹膜を通れないため体内に拡散することができません。代わりに浸透圧がはたらき、体内の余分な水分が透析液側に排出されるのです。

腹膜透析は長時間にわたって実施する透析方法で、体内に透析液を貯めておく時間は1回6~8時間、交換は1日4回前後です。血液透析よりも血液の浄化作用が弱いことから毎日腹膜透析をする必要がありますが、間隔を空けずに透析ができるので心臓などの他の臓器への負担や影響も少なくなります。

腹膜透析の種類

腹膜透析には大きく分けて3種類あります。
CAPD(連続携行式腹膜透析)

CAPDでは24時間にわたって持続的に透析を実施します。1日に4回ほど透析液の交換が必要で、毎回20~30分程度の時間がかかる方法です。透析の量や頻度は個々の状態によって異なる場合があります。

APD(自動腹膜透析)

APDは、就寝中のみに透析装置を用いて透析液を交換する方法です。日中の時間を比較的自由に使えるため、学生や社会人でも導入しやすくなっています。

CCPD(持続周期的腹膜透析)

APDに加えて、日中も腹腔内に透析液を入れておきます。十分な透析量を確保できる方法です。

透析にかかる費用

透析は透析開始後、腎臓の機能が改善するものではないので一生涯継続していかなければなりません。しかし、その透析にかかる費用は1カ月あたり血液透析でおよそ40万円、腹膜透析ではおよそ30~50万円が必要とされています。

費用を軽減できる公的助成制度

透析は非常に高額となりますが、透析治療には経済的な負担を軽減するための公的助成制度がいくつも確立しています。これから透析を始める際に必要な申請をすることで公的助成制度を利用できるのです。ここでは、その公的助成制度をいくつか紹介します。

加入している医療保険の長期高額疾病(特定疾病)

加入している医療保険の一般高額療養費とは異なる特例での高額療養費として、透析治療の自己負担額の上限が1カ月1万円となります。加入している保険の窓口で申請することで「特定疾病療養受領証」の交付を受けられます。

重度心身障害者医療費助成制度

各都道府県や市区町村独自の助成制度となります。身体障碍者手帳の1級または2級(県によっては3級まで)の障害者であれば、自己負担分に対しての助成を受けられます。住んでいる都道府県や市区町村によって名称から制限の有無、助成対象となるか、助成金額などが異なります。各市区町村の障害者福祉課に身体障害者手帳などを提示すると申請が可能です。

さまざまな制度があり、どれを利用したらいいのか、どれが利用できるのかわからなくなってしまうこともあります。その際には、通院先のソーシャルワーカーや行政の窓口などに申請方法などを相談すると良いでしょう。

透析食とは

本来であれば24時間休むことなく腎臓が働いてくれていますが、透析が必要となると本来できていた腎臓の働きの15%ほどしか代行できなくなります。そのため、血液透析の場合にはより日々の食事管理が大切です。透析とうまく付き合いながら生きていくために透析食は欠かせません。

透析食は主にバランスの良い食事であること、消費エネルギー量に合ったエネルギーの摂取、たんぱく質は適量であること、塩分や水分は控えめにすること、カリウムやリンは摂取しすぎないことが挙げられます。基準となる数値は患者によって異なります。

エネルギーをしっかりと取る

そもそも人間の体は、体を動かさなくても体温を維持したり、呼吸したり、血液が循環したりすることでエネルギーを消費します。透析する際には通常運動しているのと同じくらいエネルギーを必要とする治療であるため、エネルギーとなる主食をしっかりと取ることが大切です。

エネルギーをしっかりと取ることで、体の抵抗力の低下や体力の低下を防ぐとともに、貧血や食欲不振などを予防することにもつながります。ただし、食べすぎると心臓への負荷が大きくなってしまうことや合併症を併発しやすくなってしまうので適切な食事管理と適度な運動をしていくことが必要です。

たんぱく質は体をつくるために必要な栄養素であることから、必要なたんぱく質を摂取していないと栄養失調や貧血などを起こしやすくなります。特に血液透析患者の場合、定期的に体内に蓄積した毒素を除去できることと、アミノ酸が透析で失われることから、たんぱく質の摂取量を比較的多めに設定できます。それでも、透析前だとかなり厳しいたんぱく制限が必要となるため、取りすぎには十分な注意が必要です。

塩分と水分に注意

透析患者の場合、通常よりも尿量が減っていたり出なくなっていたりするため、体内に水分が溜まりやすい状態です。そのため、塩分や水分を取りすぎてしまうと心臓への負担が大きくなるとともにむくみや血圧上昇、呼吸困難に陥ってしまいます。味付けなどを工夫しながら塩分調節をする、加工食品や漬物は塩分が多いので控える、水分量の多い食品を避けるなどを心がけましょう。

その他に気を付けるべき栄養素

血液中のカリウムは多すぎても少なすぎても体調に影響を及ぼすとされており、特に透析が必要な人は血液中のカリウム値が高くなりやすい傾向にあります。正常に尿として排出できていれば問題ないカリウムでも、摂取しすぎると手足のしびれや全身の倦怠感、不整脈などを引き起こす原因です。カリウムは果物や野菜などに多く含まれているため、摂取しすぎないようにする必要があります。

また、リンも同様に体内に蓄積されやすい栄養素なので、摂取しすぎないように考えなければなりません。そもそもリンはたんぱく質量の多い食品やカルシウム含有量の多い食品に含まれているので、過度な摂取は控えるようにしましょう。

必要なエネルギー量やたんぱく質量などは一人ひとりの状態によっても異なるため、栄養指導をもとに調整をしていくことが大切です。すべてを制限するのではなく、自身の生活に取り入れながらうまく透析と付き合うために食事管理をしていきましょう。

透析をする際は食事管理や水分調整も必要

透析は、今後の人生において一生涯付き合っていかなければならない治療となっています。腎臓の働きを助ける役割を担ってくれる透析ですが、すべてを担えるわけではないため日々の食事管理や水分調整が透析とうまく付き合っていくためには大切です。

透析をするからといってすべてを制限する必要はありません。どのようなことに気を付けなければならないのか、どのように折り合いをつけて生活していけるのかを家族で考えながら向き合っていくと、本人の精神的な負担も軽減されるでしょう。

この記事のまとめ

  • 透析は腎臓の働きを助けるための治療方法である
  • 今後付き合っていかなければならないものである
  • 日々の食事管理が大切である

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