介護にまつわる医療措置について

医療的な措置を施している場合は介護のやり方が大きく変わります。入居できる介護施設が絞られます。また在宅介護の際には専門的な機器類やサービスを用いなければいけません。

医療措置は介護に影響を及ぼすものですので、もし専門的な医療的ケアをしている場合は、必ず家族がケアの方法や注意点を把握しておく必要があります。今回は医療措置について詳しくは知らない方に向けて、介護にまつわる医療措置に関して紹介します。

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平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。

医療措置とは

重大な疾患やケガはいつ訪れるか分からないものです。脳梗塞、クモ膜下出血、脳出血の3種類をまとめた「脳卒中」は常に降りかかるリスクがあります。また段差などで転んでしまい、大腿骨や股関節などを骨折してしまう可能性もあるでしょう。事前の準備ができず、急な変化に戸惑ってしまうかもしれません。

しかし、もし自力での生活ができなくなってしまったら、周りの人が介護をする必要が出てきます。その際に疾患に応じた治療をしながら進めることが必要です。施設に入居する場合は、きちんと治療ができる体制がある施設を探さなくてはいけません。居宅サービスを使う際も同様に、医療的なケアをができるか否かを考える必要があるのです。

医療的なケアに関する知識を知っておくことで、介護生活において役立ちます。

基本的に介護職員は医療的行為はできない

介護をする際に介護職員に一任したくなりますが、介護職員は医療的行為は担当できません。

そもそも介護福祉士看護師とは大きく違う職業です。介護福祉士は日常的な生活をサポートする職業であり、福祉士に分類されます。しかし看護師は「療養」を目的にしている職業です。福祉職ではなく医療職になります。専門的な知識があるので、医療的なケアもできるのが特徴です。

ですから基本的には介護福祉士はサービス利用者に対して医療的な措置はできないのです。しかし利用者としては「体温測定」や「湿布の貼付」などの行為は介護福祉士ができる範疇に入ると思っていた人も多かったのです。その点で齟齬が生まれ、トラブルにつながっていました。

そこで2005年、厚生労働省は医師法、歯科医師法、保健師助産師看護師法の解釈を変えて、以下の行為を医療行為から除外しました。

  1. 水銀体温計・電子体温計による腋下の体温測定、耳式電子体温計による外耳道での体温測定
  2. 自動血圧測定器による血圧測定
  3. 新生児以外で入院治療の不要な者へのパルスオキシメータ装着
  4. 軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について専門的な判断や技術を必要としない処置(汚物で汚れたガーゼ交換を含む)
  5. 軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く)
  6. 湿布の貼付
  7. 点眼薬の点眼
  8. 一包化された内服薬内服(舌下錠の使用も含む)
  9. 座薬の挿入
  10. 鼻腔粘膜への薬剤噴射の介助
引用:厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の 解釈について

改正されてからは、この10項目に関しては介護職員が担当できるようになりました。訪問介護などで対応できる医療措置です。しかしこれ以外の医療行為は資格を持った医師や看護師でしか対処ができません。

まずは介護対象者にとってどのような処置が必要なのかを自覚しておきましょう。10項目以外の処置が必要で、かつ自身では対応できない場合は訪問看護などの医療的なサービスを用いることが必要です。

特定の研修を修了した介護職員は特定の医療的ケアを実施することが可能となりました。

そのうえで在宅介護で対応する時間がない、もしくは身体的な状況が改善されない場合は施設を利用する必要があります。では医療的な処置ができる施設について紹介します。

医療的な措置ができる施設

老人ホームの種別によっては医療的な措置ができる場合もあります。有料老人ホーム、グループホーム、老人保健施設、特別養護老人ホームの4種類に関して見てみましょう。

施設種別 医師の配置義務 看護師の配置義務 医療行為の充実度
有料老人ホーム 施設によって差がある
グループホーム ✕(任意)
介護老人保健施設
特別養護老人ホーム ◯(非常勤可能) 施設によって差がある

ただし配置義務はありませんが、看護師が24時間常駐している有料老人ホームはありますし、施設内に医師がいることもあります。老人ホームに入居する際は必ず事前に施設の特徴をチェックしておきましょう。

介護にまつわる医療措置や器具について

では介護にまつわる医療措置について具体的に列挙していきましょう。前述した10項目以外の処置が必要であれば医師や看護師などの医療従事者による処置が必要です。基本的には介護福祉士しかいない施設では入居を断られてしまいますので、ご注意ください。

胃ろう

身体機能が下がってしまうことによって経口での食事ができなくなる可能性もあります。その際にお腹に小さな穴を開けて、胃から直接栄養を摂取することを「胃ろう」といいます。胃ろうの器具は定期的な洗浄などの専門的処置が必要になります。対応可能な施設を探す必要がありますのでご注意ください。

職員 可否
医師
看護師
介護福祉士

胃ろうについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
【専門家監修】胃ろうとは|メリット・デメリット・費用・種類・手術・ケアを解説

ストーマ

消化器や泌尿器などを手術で取り除いた際に人工的に取り付けた膀胱や肛門などをストーマといいます。ストーマを装着している場合は交換や清掃などが必要です。経験を持った介護士が常駐している施設を探さなくてはいけません。

職員 可否
医師
看護師
介護福祉士

ストーマについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
ストーマとは|パウチ(装具)の種類、ケアの方法、介護方法などを紹介

透析

腎臓の機能が下がってしまうと、老廃物などを排出する機能が失われていきます。そこで必要になるのが人工透析です。なかでも最も頻繁に用いられるのが「血液透析」になります。血液に混ざった老廃物を取り除き、また戻す処置をする医療措置です。透析はやり方を間違えると命に関わるものであり、必ず医師の判断が必要になります。基本的には通院が必要になります。

職員 可否
医師
看護師
介護福祉士

透析については、以下の記事で詳しく紹介しています。
透析とは|治療方法・シャントの概要・食事で注意すべきことなど

インスリン投与

糖尿病になると、血糖値を下げるためにインスリンを注射で投与する必要があります。インスリンの投与によって血糖値が下がるので、糖尿病が改善する可能性があるのです。糖尿病を始めとする生活習慣病は、重大な疾患につながる可能性もあり、介護にも大きく関わります。その処置であるインスリンの投与も医療従事者にしかできないことになっているのです。特に夜間・早朝に投与が必要な場合は、24時間看護体制がある施設を選ぶ必要があります。

職員 可否
医師
看護師
介護福祉士

インスリン投与については、以下の記事で詳しく紹介しています。
インシュリン投与|投与の方法・利用可能な施設などを紹介

IVH(中心静脈栄養)

経口での食事ができなくなったり消化管に異常が起こったりすると、食事ではなく注射などで栄養を補給する「人工栄養法」が採用されることがあります。人工栄養法のなかでも静脈から栄養を取る手法を「経静脈栄養」といい、太い静脈から栄養を取る手法が「中心静脈栄養」です。

職員 可否
医師
看護師
介護福祉士

IVH(中心静脈栄養)については、以下の記事で詳しく紹介しています。
IVH(中心静脈栄養)とは|ポートやカテーテル手術の内容・入居可の老人ホームの探し方を紹介

その他の治療・介護用語

このほかにも治療や介護の方向性を決める要素があります。これらは医療的なケアとは違いますが、これから介護を始める方がぜひ覚えておきたい用語ですので紹介しましょう。

バルーンカテーテル

バルーンカテーテルとは、医療措置のために用いられる管です。手術や治療にも用いられますが、介護では主に排尿のために使われます。バルーンカテーテルによる排尿介助も施設によっては対応できない場合がありますので、事前に調査が必要です。

延命治療

医療措置によって死期を伸ばすことを延命治療といいます。治療によって身体的にも精神的にも苦痛が生じる可能性があるため、倫理的観点から常に議論されているのが特徴です。介護施設に入居される人のなかには「医療的なケアをせず、余生をのんびりと過ごしたい」と思っている人も多くいらっしゃいます。

延命治療については、以下の記事で詳しく紹介しています。
延命治療とは│メリットや拒否する方法、費用、家族の対処法など簡単に紹介

介護脱毛

介護脱毛とは医療的な措置ではありません。しかし介護をスムーズに進めるために重要なことです。介護度が重くなると、衣類の着脱や排泄介助などを介護者に任せなければいけません。その際に介護がしやすくなるよう、脱毛をする人が男女問わず増えています。

身体拘束

身体拘束とは、認知症などによって暴力性が高まってしまった人を介護するための方法の1つです。ベッドなどに四肢を縛りつけることによって、安全に介護処置をすることができます。基本的には禁止されています。ただし、やむを得ない場合には介護者の安全を守るためにも必要な行為です。

身体拘束については、以下の記事で詳しく紹介しています。
身体拘束とは|5つの方針・3つの原則などの知っておくべきこと

医療的な措置を知ると、介護の方向性を考える基準になる

疾患やケガがある場合、介護するうえでは専門的な医療的措置が必要です。種類によっては医師や看護師が常駐している施設を選ぶ必要があります。また処置に慣れている職員がいる施設を選ぶことで、より安心して家族を任せられるのです。

まずは家族が現在かかっている疾患とともに医療的な措置について把握をしましょう。どの施設に入居するかは家族の健康にとって重要ですので、しっかりと判別することが重要です。

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最後に「 介護にまつわる医療措置 」に関する記事を一覧で掲載します。あらためて気になる記事をご覧ください。

ストーマについて
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胃ろうについて
【専門家監修】胃ろうとは|メリット・デメリット・費用・種類・手術・ケアを解説

透析について
透析とは|治療方法・シャントの概要・食事で注意すべきことなど

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たん吸引について
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身体拘束とは|5つの方針・3つの原則などの知っておくべきこと

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ターミナルケアとは|介護や看護方法・保険料の計算・メリットとデメリットなど

延命治療について
延命治療とは│メリットや拒否する方法、費用、家族の対処法など簡単に紹介

この記事のまとめ

  • 看護師は専門的な知識があるので、医療措置に対応できる
  • 「体温測定」や「湿布の貼付」の行為は介護職員も担当できるようになった
  • 疾患がある場合は看護師を配置している施設を選ぶと安心