介護保険料は控除の対象になりますか?
今年40歳になり給与から介護保険料が天引きされるようになりました。また、これとは別に保険会社が販売している民間の介護保険にも加入しています。これらの保険料は控除の対象となるのか、どのような手続きが必要なのか教えてください。
A支払った介護保険料は年末調整や確定申告によって所得から控除できます
その年に支払った介護保険の保険料は、年末調整や確定申告をおこなうことで所得から控除されます。同じ所得控除でも公的介護保険の保険料は社会保険料控除、民間介護保険の保険料は生命保険料控除の対象となり、控除される金額が異なります。
そもそも所得控除とは
課税所得を減らすことで税負担を軽減する制度
所得控除とは、その年の収入のうち課税対象となる部分(=所得)から一定額を差し引く(=控除する)ことができる制度です。税額は課税所得に税率をかけて算出するため、課税所得が減ることにより納めるべき所得税や住民税の負担を軽減する効果があります。
所得控除には配偶者控除など“人”に関わる控除(人的控除)とそれ以外に関わる控除(物的控除)があり、今回ご質問いただいた介護保険料に関わる所得控除は物的控除の一種です。
人的控除 | 物的控除 |
---|---|
|
|
40歳以上の方に納付が義務付けられている公的介護保険の保険料は社会保険料控除、保険会社などで販売されている民間介護保険の保険料は生命保険料控除の対象となります。
所得控除を受けるには年末調整か確定申告が必要
所得控除を受けるには年末調整か確定申告が必要です。
会社員や公務員の方は、毎年10月頃になると勤務先から年末調整の案内がありますので、その指示に従って手続きを進めてください。自営業者や個人事業主の方、会社員や公務員でも次に該当する方は、翌年の2月16日〜3月15日までの間に確定申告が必要です。
- 給与の収入金額が2,000万円を超える
- 複数の会社から給与を受け取っている
- 給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円を超える など
年末調整で申告漏れがあった方や年金受給者の方も確定申告をすれば所得控除を受けられます。確定申告は紙以外にパソコンやスマートフォンを使って電子申請することもできます(参照:国税庁「確定申告特集」)。
社会保険料控除(公的保険対象)とは
支払った保険料が“全額”所得から控除される
自身や家計を一にする家族の社会保険料を支払った場合、その全額が所得から控除されます。対象となる社会保険料には次のようなものが含まれます。
- 健康保険料
- 介護保険料
- 国民年金保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 特別加入の労災保険料
- 国民年金基金の掛け金 ほか
社会保険料控除(介護保険料)の手続き
40歳になると公的介護保険への加入義務が生じます。40歳以上64歳未満の方は、健康保険料に介護保険料を上乗せして一緒に徴収される仕組みです。65歳になった月からは、健康保険料に上乗せせず、介護保険料として別々に納めます。なお、健康保険料や介護保険料の申告に控除証明書の提出は必要ありません。
年末調整の場合
給与から天引きされている自身の介護保険料(健康保険料)は勤務先が把握しているため、申告する必要はありません。
これとは別に生計を一にする家族の介護保険料(健康保険料)を支払った場合は「給与所得者の保険料控除申告書」の「社会保険料控除」欄に記入し申告します。控除証明書の提出は必要ありませんが、確認のため勤務先から提出を求められることがあります。
確定申告の場合
確定申告書の「社会保険料控除」欄に、前年に納付した介護保険料を記入し申告します。納付した介護保険料は、1月下旬頃に送付される次の書面で確認できます。
- 給与から天引きされた介護保険料 :給与所得の源泉徴収票
- 公的年金から天引きされた介護保険料 :公的年金等の源泉徴収票
- 納付書や口座振替で納付した介護保険料 :介護保険料納付済額通知書
なお、年金から天引きされた介護保険料を社会保険料控除に適用できるのは本人のみです。家計を一にする家族であっても、天引きされた介護保険料を本人以外の社会保険料控除の対象とすることはできません。
生命保険料控除(民間保険対象)とは
支払った保険料に応じて“最高12万円”が所得から控除される
医療介護保険料(医療保険料または介護保険料)、一般の生命保険料、個人年金保険料を支払った場合にそれぞれ最高4万円、3つの保険料控除を合計すると最高12万円が所得から控除されます。
区分 | 各区分の控除額 | 生命保険料控除額 |
---|---|---|
介護医療保険料 | 最高4万円 | 最高12万円 |
一般の生命保険料 | 最高4万円(旧契約*の場合は最高5万円) | |
個人年金保険料 | 最高4万円(旧契約*の場合は最高5万円) |
*旧契約…2011年(平成23年)12月末までに契約した保険
生命保険料控除(介護保険料)の手続き
生命保険料控除の申告には「生命保険料控除証明書」が必要です。毎年10月頃に各保険会社から届きますので、年末調整や確定申告が終わるまで失くさないように保管しておいてください。
年末調整の場合
おおむね以下の手順で申告します。
- 「生命保険料控除証明書」を手元に用意。
- 「給与所得者の保険料控除申告書」の「介護医療保険料」欄に保険会社等の名称、保険等の種類、保険期間又は年金支払期間、保険等の契約者の氏名、保険金等の受取人、本年中に支払った保険料の金額を記入。
- 支払った保険料を合計し、下記の計算式に従って控除額を計算・記入。
新契約(2012年〈平成24年〉1月1日以後に締結した保険契約等)に基づく場合の控除額年間払込保険料 控除額の計算式 2万円以下 年間払込保険料の全額 2万円超4万円以下 年間払込保険料 × 1/2 + 1万円 4万円超8万円以下 年間払込保険料 × 1/4 + 2万円 8万円超 一律4万円
一般の生命保険料や個人年金保険料の支払いがあれば同様の手順で記入し(旧契約:2011年〈平成23年〉12月31日以前に契約した一般の生命保険料と個人年金保険料については控除額の計算方法が異なります)、それらを合計した金額(上限12万円)が生命保険料控除額となります。
なお、勤務先が年末調整システムを導入している場合、控除額は自動計算されるはずです。
確定申告の場合
「生命保険料控除証明書」を添付した上で、確定申告書の「生命保険料控除」に控除額を記入し申告します。紙で申請する場合は上記の手順で控除額を自分で計算する必要がありますが、電子申請の場合は控除額を自動計算してくれます。
所得控除の申請は意外に簡単!
月々の保険料の負担は大きいものですが、年末調整や確定申告で所得控除の申請をすれば、所得税が還付されたり住民税が軽減されたりする可能性があります。
少し面倒に感じるかもしれませんが、近年はパソコンやスマートフォンによる申告が普及し、一度やってみれば意外に簡単な作業であることに気づくはずです。
CFP®認定者、CDA、相続手続きカウンセラー。大手金融機関での営業など、お金に関する仕事に約30年従事。乳がんを発症した経験から、備えの大切さを伝える活動を始める。2015年2月に金融商品を販売しないFP事務所を開業。子どものいない方やがん患者さんの相談、介護資金などの終活にまつわる相談、医療従事者へのセミナーなどをおこなっている。
豊富な施設からご予算などご要望に沿った施設をプロの入居相談員がご紹介します